【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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最後の都市

 竜王国王都、今日の指示出しを終えた女王ドラウディロンは宰相を相手に素の態度に戻っていた。いつもなら擦れた態度で不平不満を述べているところだが、今日は笑っている。といっても乾いた笑いであり、若干自棄になったような雰囲気だ。

 

 

「あれだ。やるならド派手に使ったほうが安心できるというやつだ。借金王が大事にされるのと同じ理屈だな。それでも人が死なないだけ良いというものだ」

「一番高いセットを買いましたからね……軍事費三年分が吹き飛びましたよ。おかげで財宝なんかの類は城から消えてなくなりましたね。まさか一括で払う羽目になるとは思いませんでしたが」

「分割払いと手数料で自国の内部を気にするよりマシだ。あっはっは。あとは魔導国の売り文句が正しいか次第だが、どのみちあの国と敵対したら終わりだしな」

 

 

 ドラウディロンの下で長年宰相を務めてきた男がぶるりと肩を震わせる。購入したアンデッド傭兵の底しれぬ力量にもだが、あの転移門(ゲート)という魔法。両方を合わせて考えれば、魔導国への敵対など不可能ではないか? 皮肉にも取引という対等な立場に一度立ってしまったため、現実を正しく認識した。宰相は今、世界で最も魔導国の強大さを知る者の仲間入りを果たした。他はバハルス帝国とスレイン法国だ。

 資金を捻出するため、今城内には美麗な花瓶一つないが、そんなものがあったところでどうしようもないという気持ちにさえなっている。

 

 

「さて、あとは応援に出した新戦力が到着する前に、どれほど戦況が進んでいるか。ここまでくれば見守るしかないなー」

「あの魔導国が送り出したアダマンタイト級冒険者がいるというだけで、なんだか安心してしまいますよ」

 

 

 魔導国、あの国の基準は狂っている。宰相がそう考えたのと同刻、北東にあるビーストマンの国に近い占領された都市では事態が動いていた。

 

 誰もが扉が開くのを心待ちにしている。彼ら、誇り高きビーストマンに守勢の二文字は無い。戦力を整えた以上、あとは打って出るまでだ。先の二軍が敗北した以上、反省もしている。恥とも思っている。だがそれは攻めに活かされる教訓であり、獲物を前に防備を固めるためのものではない。

 

 その扉の中央に線が走った。それはかんぬきごと扉を切り裂いて、次の瞬間には扉が蹴破られていた。もちろんこれはセシルの所業である。今までわざわざ中に入ってまで扉を開いていたのは説得力のためだ。だが、配慮しない。さっさと終わらせると決意したセシルにはこの程度。圧倒的な膂力と鋭い刀剣をもってすれば扉の裂け目を斬るような真似も容易い。

 

 

「全隊突撃。早めに終わらせるぞ。俺は奥の方に行く……レメ、こちら側から攻めるのは任せたぞ」

「勝手に決めないでいただきましょうか。最も戦果をあげるのは、この私です!」

「好きにしてくれ、セラブレイト殿」

 

 

 着いてこれるのならと、セシルは前に進みだした。当然、ビーストマンたちが飛びかかり食らおうとしたり、武器を振り回してくるが……空中で両断された。武技を使えないセシルはスキルも無しに正確に早く切り裂いているだけだ。

 攻撃の瞬間さえ見えないまま、ただ恐ろしい速度で殺される。自分たちの死が全く役に立たない光景を見て、さしものビーストマンたちも怯みかけたが、相手は畜生であるという事実を思い出し、奮起してセシルに挑んでは死んでいった。

 

 

「そろそろ中央部分か」

「ゼェゼェ……敵将の首は私がいただきます」

「大した根性だな……」

 

 

 驚いたことにセラブレイトは、未だにセシルに先を越されまいと着いてきていた。全体の戦いには“クリスタル・ティア”の他のメンバーを残してきたらしい。

 セシルの目的は一度奥まで行って引き返し、仲間たちと挟撃を果たすこと。そして手強い相手をなるべく刈り取っていくことだ。この場合の“手強い”はセシルの基準ではなく、レメディオスと一騎打ちが成立するぐらいを目安にしている。

 

 いつもはゆったりと歩きながら敵を屠っていくセシルだが、今回は違う。小走りに目的地へ向かって走りながら、迫ってくるビーストマンには果敢に攻め立てる。今のセシルと出会うこと自体が死を意味する。レメディオスやセラブレイトが人の極致なら、セシルは降臨した剣神だろう。

 

 

「好き勝手してくれるな。この雑魚どもめが。兵士長ベニグノが相手をしてやろう」

「セラブレイト殿、仕事だぞ」

「ふぅふぅ……ようやく幹部が出てきましたか、竜王国アダマンタイト級冒険者セラブレイトが引導を渡す!」

「俺は先に行くよ。存分に活躍してくれ」

 

 

 先の街における惨状から、竜王国軍への気遣いをやめたセシルは淡々と雑魚を相手にしながら奥へと進む。兵士長といえば一度セラブレイトが敗れそうになった相手だが、本人が挑むつもりなのだからセシルは邪魔をしない。

 

 

「ほう、冒険者か。聞いているが、多少はやる連中らしいな……面白い」

「ふ。その頂点に立つアダマンタイト級冒険者だ。存分に楽しむと良い」

 

 

 ベニグノは狼の頭をしたビーストマンで、刀身が広い槍を持っている。セラブレイトは間合いに注意しながら果敢に突撃した。迫ってきた槍を弾いて袈裟に斬りつける……が傷は浅く血を流させるに留まった。

 

 

「ふむ。家畜にしては中々、いや俺に傷を負わせるとは大したものだ」

「大きいやつに褒められても一向に嬉しくないな。次はその首を刎ねてやりましょう。覚悟するんですね!」

 

 

 激戦を繰り広げるセラブレイトとベニグノ。それを放っておいたセシルがとうとう街の反対側まで到達した。ここから反転して仲間たちと敵を挟み撃ちにする。

 

 

「本当はこう、熱を持って戦うのは良くないんだろうが……根絶やしにされた住人の仇だ。徹底的にやらせてもらうぞ」

 

 

 行くまでに散々に斬り伏せたビーストマンたちの遺骸をたどるように、セシルは街の入口へ向けて進撃しだした。ここにこの一戦の結末は決まった。




戦闘回は短くまとめられるようにならないとな…
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