【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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再びの港街

 セシルたちは竜王国を離れる挨拶のため、王城を訪れていた。そこには違和感なく、妙齢の美女となったドラウディロンが玉座に腰掛けていた。女王は現在、多忙ながら充実した日々を送っている。それがアンデッドのおかげというのは複雑だろうが。

 

 

「それにしても随分と派手にお披露目したものですね」

「派手じゃなければ意味がないだろう。それに民が食われている横で仕事をする日々も終わったので、変化が欲しかったのもあるな。大体こっちが本来の姿なんだ」

「おかげで慟哭していたのが一人いましたけど」

「ああ、アレな。小さければ誰でも良いというわけではないので難儀よな。だが、竜王国には残ってくれた。パーティの総意というやつだが、指名依頼を受けてくれるかどうかは謎になってしまった。まぁ防衛戦力に関してはこの上なく充実したので、なんとかなる」

「では、私たちは魔導国に戻ります。名残惜しくはありますが……」

「うむ。貴殿らの尽力は決して忘れん。たまには遊びにでも来てくれ」

 

 

 血なまぐさい任務だったが、終わりはさっぱりとしたものだった。冒険者なんてこんなもので良いんだよと、セシルは思った。憎しみを覚える感情が復活したりと、多くのことがあったので精神的に疲れていた。

 帰り際には第一都市で助けた兵士と住民が見送りに来てくれた。兵士は再編のため、住民も一旦庇護下に置くため、王都に来ていたのだ。

 

 

「ありがとうございました。他の都市は残念でしたが、我々が生き残れたのは貴方がたのおかげです」

「あんな目にあったのにまだ兵士を続けるのか?」

「ええ、今度は食われっぱなしじゃありません。貴方がたのように強くなって助ける側になります……まぁ兵士でありながら、食料扱いだったことが無念なんですよ」

「国のため、人のためか……眩しいなあんたは」

 

 

 セシルは目を細めて、かつての虜囚たちと別れた。彼らは確かに弱者だったが、その心がけは立派なものだった。

 王都も来たときはどんよりとしていたものだが、帰りは人々の笑顔に溢れていた。彼らの中には事情を知っている者もいて、“金鎖”と“虹”に歓呼の声を送った。商店の店主がニヤリとしながら放ってきたリンゴを受け取って齧りながら都を出た。

 用意されていた馬車に乗り、入国した港街ド・ラ・ポエルトへと運ばれていく。行きとは違って、ゆっくりとした旅路で港街へと向かう。

 

 そろそろ〈伝言(メッセージ)〉で船を頼んでおきたいところだが、人目があるところではセシルとアインズの間柄が気安いものだと知れてしまう。結局連絡できたのは街に着いてからだった。

 

 

(おお、セシル! 期待以上の成果だったな! 一番高いセットが即金で売れたぞ!)

(そりゃ良かったな……そんなに高い価格だったのか)

(当然。デスシリーズはともかく精霊髑髏(エレメンタル・スカル)は上位だからな。この世界では未知の存在と出くわさない限りは負けない……ので相応の値段を付けさせてもらったわけだ)

 

 

 確かにこれまでこの世界で強者とみなされていたのは大体レベル三十ぐらいの感覚であった。精霊髑髏(エレメンタル・スカル)のレベルは六十八。まず無敵と言って良いだろう。

 

 

(あー、これで国庫が潤った。ユグドラシル金貨だけじゃなく、国家運営にはこちらの金貨も必要だから。それと帰りの足だったな。船は準備してあるから一日で迎えに行けるよ)

(よろしく頼む……来たときより早いぐらいだな)

 

 

 丁度、〈伝言(メッセージ)〉の制限時間が過ぎたので会話は途切れた。

 

 

「セシルさん? どうしたんですか、そんなところで?」

「いや報告やら何やら。今日はこの街に泊まることになりそうだ」

「それに関しては手遅れですね。レメと“虹”の皆さんが酒盛りを始めちゃいましたから。また酒樽を買いに行きましょうか」

「今度は最初から二樽だな。まったく……」

 

 

 カルカと並んで歩き出すセシル。何もかもが来たときの焼き直しのようだ。カルカの耳には螺旋貝殻の飾りがまだ付いている。

 このまま宿屋へと戻れば、また騒がしく迎え入れられるのだろう。うんざりするような流れだが、だからこそ良いのだろう。変化には犠牲が伴う、そして“金鎖”と“虹”は一人も欠けなかった。そうでなければ変わらぬ宴会など開けなかっただろう。

 そんなことを思いながらセシルは宿屋の扉を開いた。そこは思っていたよりもずっと静かな空間だった。というかほぼ全員が床に突っ伏している。

 

 

「おやおや、お二方とも早かったですね。ああ……買ってきた酒樽は無駄になりそうですねぇ」

 

 

 その“ほぼ”から外れた一人、ケラルトは静かに椅子に座っていた。机の上には木製ジョッキが山と積まれているが、そこから読み取れることは一つしかない。

 

 

「……飲み比べでケラが優勝した?」

「うっふっふ。賞品が出るなら優勝と言っていいでしょう。お二方もやりますか?」

「……いえ、私は飲むなら静かに飲む方が好きです」

「右に同じ」

「おや、気が合いますね。私も本来そうなのですが、姉様があまりにも羽目を外されていたので少々たしなめるつもりで……」

 

 

 カルカもレメディオスも知らなかったのか、ケラルトが酒豪ということを。二人が知らないなら当然にセシルも知るわけはない。

 それから三人で静かに卓を囲んだ。飲みすぎて倒れた連中は床の端へと寄せて、レメディオスだけはベッドに放り込んだ。

 

 

「それにしても竜王国は観光する暇もありませんでしたねぇ」

「観光する場所があるのか? 全部壊されてそうだったが」

「これから作られていくのでしょう。セシルさんの銅像が立ったりするかも知れません」

「せめてそこはセラブレイトにしてやってくれ」

「まぁ魔導国に所属している限り、行く場所に事欠かないでしょうね。それだけは楽しみです」

 

 

 願わくば竜王国のように、助ける立場に回りたいとケラルトは願っているようだ。確かに魔導国の大方針に自分たちは関われない。ビーストマンたちのようにならないようにしたいと願いつつ、次にゆく場所へと思いを馳せながら、一行は幽霊船の到着を待った。




どこまでやろうか…
この調子でオリジナル各国需要は微妙な気もしますね
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