【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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出迎え

 帝都アーウィンタールにたどり着いた一行は、その発展ぶりに目を見張った。街路という街路はきちんとレンガや石材で舗装され、皇城を中心に張り巡らされている。建物もどこか小綺麗であり、全体的に光輝いている印象を受ける。

 馬繋場に簡素な馬車を繋いで、それぞれが語りだす。

 

 

「キレイな街だ。浮いてる気分になるな」

「うぬぬぬ……ホバンスだって、そう負けてるわけでは……」

「競ってどうするんですか、姉様。それにこの都市は需要に合わせて発展させていったわけではなく、最初からこうなるように計画されたものです。比べるのは無駄ですよ」

「組合長、とりあえず拠点を置く必要がありますが、どこか心当たりがある場所はあるのですか?」

「こちらに伝手があってね。高級住宅街の屋敷を抑えて貰ったよ。この街で一番の宿は紹介状がなければ泊まれないし、滞在費用が大変なことになるからね」

「帝国は改革で貴族が大分没落したからな。屋敷が余っているのだよ。しかし、オスクに借りを作って大丈夫か? “金鎖”を闘技場に出せとでも頼まれそうだが」

 

 

 冒険者組合長と魔術師組合長がそろって一緒にいると、調子が狂うな、というのがセシルの感想だ。しかも二人とも冒険者に復帰したばかりなので長なのに階級は下である。ただそのあたりを除けば、人脈や経験で頼もしいことは確かだ。

 

 

「流石にアダマンタイト級冒険者に対して、無法がまかり通るほどの貸しじゃないよ。さて、嫌な大人の世界だが、一応ここの冒険者組合に仁義を通しておかないとな」

「――その必要はありませんよ。貴方方が来ることは関係各所には通達済みです」

 

 

 声を発したのは金髪碧眼のまだ若い男性。その身を黒いアダマンタイトのフルプレートで覆った姿だが、清廉な印象を受ける。隣に似たような格好の女性がいるが、その顔を半分金色の布で隠していた。

 彼らが近づいてきていたことはとっくに皆が気づいていたが、殺気がなかったので放置していたのだ。

 

 

「失礼しました。私はニンブル。こちらはレイナース。帝国四騎士を務めております」

「これはこれは。かの四騎士の方々にお目にかかれて光栄です。さらに我らのために骨を折ってくださったこと感謝します」

「ほう。帝国四騎士……なるほど、中々どうして」

 

 

 レメディオスは感心して頷いていた。だがセシルの見たところレメディオスに比べて一枚か二枚落ちるだろう。それでも強者であることは疑いない。

 ニンブルたちもレメディオスを見て、無意識に警戒していたが……セシルを見て固まる。

 

 

「ああ……セシルです。よろしく。そう固くならなくても、なにもしやしない」

「ええ……流石に魔導国のアダマンタイト級冒険者というわけですか」

 

 

 ニンブルはアインズと面識があるので、復帰も早かった。ニンブルとレイナースは戦士としての才能に恵まれているから、セシルの強さを読み取ってしまう。レイナースはこれまでデス・ナイトやデス・キャバリエは見てきたが、それを上回る怪物の存在に長く硬直したままだった。

 

 

「さて、高級住宅街にご案内しますね。自由に過ごされるよう、魔導王陛下と皇帝からうかがってはおりますが……なにか御用がある時は我ら帝国四騎士を通された方が早いでしょう」

 

 

 ニンブルの先導に任せて歩みだす。そのセシルをレイナースの片目が最後方からジッと見続けていた。

 そして豪奢な屋敷が並ぶ通りに入ったが、どうにも人気がなくて寂しい。貴族が没落して屋敷を手放すことになったというのは本当らしい。

 

 

「お借りになった物件はここですね。最近まで住人がいたということなので、状態は良いです。お望みならこちらの方で侍女などを手配いたしますが……」

「いや、身内ぐらしに慣れているものでね。お気持ちだけ受け取っておくよ」

「そうですか。ではそのように。掃除の方は事前に済ませてあるのですぐお使いになれます。家具や調度品もそのままです。連絡用の騎士を外に配備しますので、ご不便なところがあれば申し付けてください」

 

 

 その時、レイナースが動いた。ニンブルに向かって行き、話に割って入る。滑らかな動きは流石だが、一行に気付かれずにとはいかなかった。

 

 

「それなら私が外の連絡役を務めますわ」

「レイナース?」

「便宜を図るのに四騎士を通す必要があるなら、その一人である私が直接承った方が簡単に済んで良いでしょう?」

「確かにそうだが……」

 

 

 ニンブルはレイナースを見て考え込んでいる。同僚である彼女が魔導国と接触を図る機会を待っている……というのは皇帝ジルクニフから聞いていた。今回は機会の一つであることは確かだが、絶好の機会とまではいかない、そのはずだった。なぜならあくまで魔導国の冒険者派遣に過ぎないからだ。裏があっても派遣されるのは末端の人間だ。

 ……彼か。末端のはずが、とんでもない化け物が混ざっていた。いくら魔導国でもセシルという人物は決して軽い存在ではないはずだ。それがただの機会の一つを跳ね上げて、絶好の機会へと押し上げた。

 

 

「分かった。皇帝陛下にはそのようにお伝えしよう」

 

 

 元々レイナースの忠誠心は低い。彼女が魔導国に付く場合もジルクニフは想定しているだろう。ニンブル個人としては同僚を失うような事態は避けたいが、いまさら四騎士が魔導国に対してなんになるだろう? セシルどころかそのパーティメンバーにも及びそうにない。

 帝国はかつて常に上向いているような空気に満ちていたものだ。それが今はなんとも言えないような微妙な空気が混ざるようになってきていた。それは属国という響きだ。

 何をしても上には上がいるという諦念。それはニンブルにもあるものだ。レイナースが魔導国に対して何かできるというのならすればいいだろう。

 ニンブルは元々自分のために動く仲間を放っておくことにした。




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