【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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人魚の後を追って

 ヤブを抜け、森を切り開き、山を登る。

 帝国における“魔導国の冒険者”らしい仕事は順調で、ただのちょっとしたサバイバルだった。

 

 元々帝国は魔法にも力を入れている。飛行(フライ)が使えれば大体のところは探索できるわけで、未調査の場所自体が少なかった。

 問題など帝国の冒険者組合が、希少な薬草や鉱脈の場所を隠匿していたことが発覚したときぐらいだ。まぁ当の組合長にとっては人生の一大事であり、青い顔をして騎士にしょっ引かれていった。

 

 一方のセシルたちの組合長……アインザックとラケシル……にとっては丁度いい復帰活動であり、和やかに仕事は進んだ。セシルとしても男が同数になったので、二人からとっておきの馬鹿話など聞けて悪くなかった。

 

 だからというわけではないだろうが、問題は日常の中で起きる。

 セシルとカルカたち三人はそれなりの関係であるが、現在は同じ邸内にアインザックとラケシルもいる。仮にそうでなくともセシルたちが常に行動をともにしているわけではない。

 彼女たちも変わった出自と立場を持つが、人間であることに変わりはなく、一人で行動したいときもある。もちろんセシルとて止めはしない……というより基本的に放任するタイプだ。

 

 それでも、この日は少しばかり驚いた。

 

 

「レメが捕まった?」

「はい。レメ殿は現在、警備騎士の方で詰め所でお預かりしています。正直なところ我々もどうして良いか分からないところです」

 

 

 レイナースも困惑した顔をしている。ひどい話だがレメディオスの気性を思えば、多少の問題を起こすことは理解できた。

 問題は帝国が属国であり、宗主国のアダマンタイト級冒険者を拘束しているという点だろう。事務的に厳格な法を適用すればいいわけではない。

 

 

「それは、なんとも申し訳ない。騎士の詰め所に我々“金鎖”を行かせてもらえるだろうか? 問題の内容によっては厳罰もやむなしという場合もあるかもしれない」

「そうしていただけると、こちらも助かりますわ」

 

 

 レメディオスの捕らえられているところへは、レイナース自身が案内してくれることになった。同じように用件を聞いたケラルトとカルカも、申し訳無さそうな顔で素直に案内された。留守は二人の組合長に任せておくが、場合によってはアインザックが何か責任を取らねばならない。

 

 

「姉様が問題を起こしそうなところは、やはりあそこでしょうか……」

「ですが、自分で近づかないようにしていたはずですが……」

 

 

 ケラルトは何か思い当たることがあったようだが、切り替えて帝国の法が書かれた本を読み始めた。カルカは兜の奥でなんとも言えない顔をしていた。

 レメディオスの能力からすると暴力沙汰ではないだろう。帝国の騎士や兵士にレメディオスを力で捕まえられる者などいないはずだ。となると何かを起こしたのは事実でも、大人しく捕まったのだろう。過程で帝国の人間を傷つけていないなら、解放される目もあるだろう。カルカはそのように考えていた。

 

 レイナースの案内で騎士の詰め所に着いたが、そのレイナースは顔を抑えて少し席を外してしまった。

 詰め所には騎士たちに囲まれて、レメディオスが椅子に腰掛けていた。なんの拘束もされていない。バツの悪い子どものような表情をしていたが、カルカを見て頭を下げる。

 

 

「カル様、このような次第になって申し訳ありません」

「謝罪は受け入れます。ですが、なぜこうなったかは説明してもらいます」

「はい……その……奴隷市場での声が聞こえてしまって」

「やはり……ですが、国によっては事情が違うと自分を律していた貴方がなぜ?」

「その……聖王国の人魚(マーマン)だと聞こえて……それで見に行ったらまだ子どもで……頭に血が上って……競売人に食って掛かりました……」

 

 

 聞き役に徹していたセシルは意外に思った。レメディオスは聖人君子ではない、というか程遠い。特に人間種至上主義的なところがあり、それはビーストマンの国との戦いでも発揮されていた。

 そう考えているとケラルトが耳打ちしてくれた。

 

 

「聖王国では人魚(マーマン)と昔から協力関係にあるのです。亜人種の中で例外ということですね」

「なるほど……しかし、どうしたものかな。こういう場合、普通はどうなるんだ?」

 

 

 多少、怯えたような様子で騎士が返答する。彼らも困惑しているのであろう。

 

 

「その……あくまで一般的な事例ですが、ひと月の間勾留される場合が多いです。今回は競売を妨げましたが、暴力は胸ぐらをつかんだ程度ですので……場合によっては罰金だけで済むこともありますが」

「なら、保証人には私がなりますわ」

「レイナース様……」

 

 

 戻ってきたレイナースがそう宣言してくれた。正直なところ大いに助かったと言える。ひと月の間、レメディオスが大人しくしているかというのもあるが、魔導国の冒険者は国の所属員だ。勾留されていたなどと外聞が悪すぎる。

 魔導国においてカルカたちの立場は絶対ではないのだ。それを知っているのはセシルのみ……というよりセシルが例外なのだ。同じプレイヤーとしてアインズの立場に近いという特別性を持っているのだから。

 

 

「レイナース殿。おかげで金で解決できました。感謝します」

「お気になさらず……私も下心あってのことですわ。それより、ついでに件の人魚(マーマン)を押さえられるか試してみましょう」

「ではカルはレメを連れて屋敷に戻っていてくれ。俺とケラで間に合うか追ってみる」

「すいません。よろしくお願いします。これが資金です」

 

 

 一同の活動資金をまとめて預かり、レイナースの先導で走る。そして奴隷市場にたどり着くが……

 

 

「遅かったか……」

「珍しい出物だったんで、すぐ売れましたよ旦那。それに帝国人は身売りが基本なのもあって、子どもはすぐ売れちまうんです」

 

 

 彼女たちの故郷の人を救えなかった。そうセシルがわずかに落胆したが……レイナースが前に出て競売人に話し始めた。

 

 

「少し職権乱用ですが……売れた先が分かりました。多少おかしいところもありますし……追えるところまで追ってみましょう」

 

 

 レイナースの権力で追跡の糸は繋がったのだった。




想像で一般的なイメージで書きましたが
オバロ世界の奴隷市場ってどんなもんでしょうね

レイナースのレギュラーっぷり
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