【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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地下の捕物

 三人は儀式の場と、子どもたちを捕らえてある場所を探して走り回る。時折、黒い服を着た神官に出くわしたがレイナースとセシルのみね打ちで無力化する。

 服装が統一され、一定間隔で巡回している。奇妙な言い方になってしまうが、“ちゃんとした”組織のようだった。邪教らしい混沌さはここまでは出ていない。だが、ケラルトはそれが存在すると確信していた。

 

 

「セシル殿、もっと加減してください。死なれては元も子もないのですから……冒険者のように頑丈な部分など無いのです」

「すまない。気をつける」

 

 

 とは言うが最悪、大治癒(ヒール)で治してしまえば良いとセシルは考えている。ここまで差があると加減が難しすぎる。セシルがこれまで修行をつけた冒険者は、それなりの実力を元から持っていた。警備兵がここまで弱いとは思って見なかったのだ。

 やがて、大勢の足音が聞こえてきた。集団だが統率は皆無。警備兵とは思えない。セシルたちは身をかがめて様子を見ることにした。

 そこに現れた者たちの姿を見て、ケラルトとレイナースは絶句した。セシルはいまいち分からない、とでも言うような様子だ。その集団は全裸姿に骸骨を模した覆面を被っていた。客観的に見れていたセシルは彼らのほとんどが老人だということに気付いたが、そんなことはどうでもいいだろう。

 集団は扉の中へと入っていった。

 

 

「あれが貴族たちか。何と言うか……個性的な集団だな? あれが最近の流行なのか?」

「いくらなんでもそれは無いですわ……確かにアレなら処罰しても十分に理解が得られそうですわね」

 

 

 レイナースは自分も貴族の血に連なるものとして、思わず擁護してしまいそうになった。国に対する忠誠心は薄くとも、アレが帝国貴族のスタンダードだと考えられるのは恥でしか無い。

 

 

「とりあえず連中を捕らえよう。あんな姿になっているんだから、儀式とやらが近いのだろう」

「どのように進めましょうか。自分たちで無防備になっているので、どうにでもできるでしょうが……ロープ持ってきてますか?」

「うん。まぁ一本しか無いから切って使うことになるが……中に普通に突入して制圧するが、万が一にも逃げられないように扉の前に安寧の権天使(プリンシパリティ・ピース)を配置してくれ」

「しっ! また何か来ましたわよ!」

 

 

 今度は二人だった。大きめの革袋を協力して持ち運びしている。その中身は……一行の想像は一致していた。そんな未来を避けるべく、ケラルトが天使を召喚すると一気に部屋へと踏み込んだ。

 そこにはケラルトが予想していた通り、気色の悪い光景が広がっていた。全裸の老人たちが祭壇に向かってひれ伏しながら、奇妙な叫び声を上げている。

 先鋭化した小型の集団はより過激に、より極端になる傾向が見られる。しかし、その儀式などはありきたりになっていく。既存の神殿勢力を敵視するため、その反対を目指して似たようなものになってしまうのだ。

 神官団長だったケラルトはそれをよく知っていたから、彼らの目的が生贄だと気付いたのだ。彼らの個性といえば全裸であることぐらいだろう。

 

 そんな儀式に対する興味はすぐに消え失せてセシルは一気に踏み込んだ。とりあえず近場から手を出す。

 

 

「なんだ……ぐぺっ!?」

 

 

 木剣がぶよぶよした腹を打つ。だが、狂乱の中にある邪教徒たちは気付かずに袋をリレーして渡していく。セシルは後ろの連中を無視して祭壇の前に滑り込んだ。祭壇の前に立つ神官はしばらくしてからようやく気付いた。

 

 

「贄を……?」

 

 

 儀式の始めの言葉を発そうとした口に木剣の平を叩き込む……少し力を入れすぎて下顎が吹き飛んでしまっている。そして次は儀式の担い手だ。刃物を持った三人の男女を軽くべしべしと叩けば、崩れ落ちて動かなくなった。

 ここでようやく混乱が始まる。彼らもコレが悪事だということは理解していたのだろう。手入れだ! と誰かが叫んだのを皮切りに一斉に逃げ出そうとするが、そこにはレイナースとケラルトがいた。

 言うだけあってきちんと手加減された槍で邪教徒たちを気絶させるレイナース。ケラルトは相手が第1位階の魔法でも死にかねないと判断して杖で頭を小突いている。

 

 

「さて、他に出入り口は無いかね……?」

 

 

 セシルはそう呟いて風の流れを感じようとして……木剣を横にして高く掲げた。そこに何者かの手が当たって防がれた。手に持ったスティレットによる攻撃である。

 猫のような印象を持たせる金髪の女性だった。防がれたことがよほど不服だったのか、舌打ちして後方に回転しながら飛び退いた。

 

 

「少しはやるようだねー」

「……マトモな警備兵もいたのか」

「あ? 私が警備兵? 舐めてくれるじゃない」

 

 

 顔に若干の狂気がある女の顔を見ながら、セシルは相変わらず木剣をだらりと下げたまま突っ立っている。セシルの力量をレイナースなどは初対面で感知してきたのに、こいつは分からないようだと考えると微妙な顔になる。

 一方のセシルの方は大体のところ感知できている。以前の出会った頃のレメディオスぐらいで、現在の彼女には劣る程度だろう。

 

 

「死んでなまった体を戻すのに丁度良さそう……で、いつまでそんなおもちゃ持ってるわけ?」

「……いや、これで十分だし」

 

 

 眼前の女はどうも他の参加者より事情通に見える。ぜひ捕らえたいところだ。レイナースの手には少し余るし、ケラルトは相性が悪いだろう。ということでそのままセシルは自分が相手にすることにした。

 

 

「真剣を取らせたいなら相応の実力を見せてほしいもんだ。セシルという、冒険者だ」

「冒険者って連中はすぐに調子に乗っちゃうよねー。このクレマンティーヌ様を侮った報いを受けることになるわよー」

「そうか。まぁ勝負ってそういうもんだしな。俺としても後ろの変人共を相手にするよりこっちの方が良い」

 

 

 互いに構えて相対する。クレマンティーヌはネコ科の猛獣のように体を低くたわませて、一気に食らいつくつもりだ。対するセシルは木剣をレイピアのように構える。

 その落ち着きが気に入らなくて、クレマンティーヌはどうすれば痛みをより与えられるか考えた。まず目を潰してやろう、と。

 

 

「〈疾風走破〉、〈能力向上〉……!」

 

 

 そう言った瞬間、セシルの文字通り眼前にスティレットの刃先があった。あったので……それが数センチ先に届くまでにセシルはスティレットを叩き落とした。

 

 

「……は?」

 

 

 木剣だというのにまるで巨大な戦鎚にでも殴られたような衝撃に、クレマンティーヌは武器を取り落とした。そして、そのまま……腹に木剣を叩き込まれて、血反吐をぶちまけながら壁まで弾き飛ばされた。

 

 

「こ、んな……でたら、め……」

「よし。丁度いいぐらいの威力になったな」

 

 

 その頃には全裸集団も全員取り押さえられていた。セシルはクレマンティーヌをかついで合流した後、邪教徒たちを縛る作業に参加した。

 山登り用のロープを切っては手足を縛っていく。叩きのめすよりこちらの方が面倒だった。

 

 

「よし。ここはこれでいいとして、ケラと俺は子どもたちを探す。レイナース殿は神殿勢力へ通報してもらいたい」

「分かりましたわ」

「天使にはここを監視させましょう。それでセシルさん、その捕虜はかついだままなのですか?」

「こいつだけはあそこで目を覚まされては危ない。ロープも千切れるだろうし。手近なところに置いておきたいが、ケラ一人で探索させるわけにもいかないからな」

 

 

 こうして邪教の拠点は制圧された。ただ一人、セシルとクレマンティーヌの戦いを隠れて見ていた小さな影は、こっそりと墓地を抜け出した。自分が戦いに出なくてよかったと、ミイラのような小男は安堵していた。




ミイラくんはよく分からないのでちょろっと
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