【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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一旦の到着

 ナザリック地下大墳墓と呼ばれる建造物の執務室で、その人物はコツコツと指先で机を叩いて音を立てていた。いや、人物と言って良いのか……“彼”は人ではなかった。骨がそのまま動いている。

 今はアインズ・ウール・ゴウンと名乗り、同時に魔導王と呼ばれる存在であった。

 

 

(ハンゾウが倒された……それも聖王国に配置していたハンゾウが。これまで見てきた情報では、レベル80台のハンゾウに勝てる現地種族はいない。これは、ひょっとして釣れたか?)

 

 

 アインズは意を決すると腹心に伝言(メッセージ)を送った。智者である彼ならばきっとよい方策を立案してくれるだろう。

 

 

 リ・ロベルを目指していたカルカ一行は徒歩で北寄りに進んだ後、山すそに沿うような形で移動した。セシルによって飛行(フライ)を付与され、低空飛行で自分たちの国の関所を避けた。

 女性三人、特に王であったカルカは複雑な思いであった。まるで、自国から捨てられたように感じたのだ。そして、それは決して間違いではない。社会的には三人の居場所は既に無いのだから。

 

 死人から生者に戻るということは、そういうことであった。

 

 

「しかし、アレ程のモンスターが追ってくるとは、リ・ロベルとやらに着いても安心はできないかもな」

「私が戦っても良かったんだが……それほど強いのか? 随分と余裕そうだが」

 

 

 レメディオスの発言に頷く。

 地面に叩き落とした後もしばらくは戦闘が続いたほどだ。正直なところレメディオスでは傷一つ付けられるかさえ怪しい。セシルもあれほどの戦いをした覚えは、こちらに来てから数えるほどしかない。

 

 

「ですが、なぜモンスターが追手に? 私達を蘇らせた影響にしてはおかしく無いですか?」

「おかしいどころではありませんよ、カルカ様。普通なら騎士や兵が追ってくるはずです」

 

 

 モンスターが追手に、というのは確かにおかしかった。ヒューマノイド系といっても、モンスターはモンスターだ。それがカルカ達を追ってくるということはモンスターを使役する存在がいることになる。

 カルカの復活がバレたとなると、やって来たのは首都方面だと考えるのが普通だろう。

 

 

「聖王国の中枢はモンスターを隷属させてるのか?」

「そんなわけが無いだろう! これはきっとアレだ、あの骨野郎の魔導王の差し金に違いない!」

「でも、魔導王がそんなことをする理由は……? 聖王国を襲ったあの、あのヤルダ……バオトを倒したのも魔導王というではありませんか」

 

 

 特定の言葉に震えが走ったカルカの肩にセシルは手を置く。今は大丈夫だ、というように。そうだヤルダバオトは倒された。そしてこの男を信じるしか無い。

 

 

「きっと、ヤルダバオトと魔導王はグルだったんだ。私は最初からそれを疑っていた」

「まぁ姉様の考えは置いておいて……追手がいるというのはマズいですね。カルカ様に安住の地を探さないといけません」

「森とかに住むと、意外と快適だぞ。水があると特に」

「お前の世捨て人趣味にカルカ様を巻き込むな!」

 

 

 こうして、一行は無事リ・ロベルを目指すことができた。あれだけ騒いでも見つからなかったのはリ・エスティーゼ王国と、聖王国が険悪ではないからだ。

 最後にカルカは一度後ろを振り向いて、故郷に別れを告げているようだった。

 

 

「ほほう」

 

 

 眼の前の光景に目を奪われたのはセシルだけだった様だ。港湾大都市リ・ロベル。やや白っぽい壁の家が立ち並び、眼下には海が広がる。森に暮らしていたセシルにとっては久方ぶりに見る海だ。少々は感慨深くなっても仕方が無いだろう。

 

 

「とりあえず、目的地に到着、ですね」

「意外に大きな都市だな。ここならしばらくは大丈夫そうだ」

「しかし、聖王国の航路があるんだろう? 聖王国の人間もいるはずだから、顔は隠したままか」

 

 

 う、とレメディオスが言葉に詰まった。レメディオスが持っていた路銀は大分目減りしている。ここから更に北へ向かいたくとも、物資が足りない。ここらで一稼ぎする必要があるだろう。

 

 

「今日の宿代ぐらいはあるだろう? ここらで少し働くか」

「ああ、カルカ様にはケラルトを付ける。万が一のことがあってはならないからな」

「その万が一を無くそうと思ってな」

「?」

 

 

 安宿を取ったセシル達は部屋で、少々着替えをすることになったのだ。いつまでも聖王国の紋章が入った服を着ている訳にはいかない。

 そこでセシルは「貸すだけだからな」と言って、インベントリから魔法の武具を取り出した。

 

 

「あんまり目立たない方が良いし、兜を被れば顔も隠れるからな。それにお前達の着ている鎧よりは性能が良い」

 

 

 魔法の武具は装着者に合わせて、サイズも可変するので問題はない。ユグドラシルでは比較的低位であった遺産級(レガシー)の装備だ。

 

 

「ちょっちょっと待って下さい。着た感じ、これ伝説の装備とかそんな感じじゃないですか!?」

「いや、そこまでの装備じゃない……ただマジックキャスターでも着れる鎧になると限られていてな。手持ちではそれぐらいしかない」

 

 

 ケラルトに渡したのはグリーンクリスタルメタルで作られた装備だ。装備制限が無いので、その分、性能はかなり落ちる。落ちるのだが、あまり他者と関わってこなかったセシルはユグドラシルのアイテムをこの世界の武装と比べる発想に乏しかった。

 

 

「俺がデザインしたんだが、派手なのより地味な風が好きでな。それならあまり目立たないだろう」

「これは……これなら私達も戦えますよ、セシルさん!」

 

 

 同じ様に地味な鎧と兜を被ったカルカが熱を上げる。

 

 

「そ、そうか? まぁ近くにいた方が守りやすくはあるか?」

「お前は、こんな物持ってるなら早く出せ!」

 

 

 レメディオスの拳がセシルの頭を打ったが、痛がったのはレメディオスの方だった。

 

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