【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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決定の合間に

 バハルス帝国皇帝ジルクニフはがりがりと頭を掻いた。以前、魔導国相手に謀略の最中にあったときよりは少ないが、髪の毛が幾本か抜け出てまた落ち込んだ。

 今回帝国四騎士レイナースが捕縛した貴族たちの問題について頭を悩ませているのだ。自分に従う有能な貴族ばかりを残したと思っていたが、蓋を開ければ邪教徒の集団がいたとは。そのトップがウィンブルグ公爵というのも問題だ。あっさりと処刑させるには公爵という肩書は重きに過ぎる。

 だが、宗主国である魔導国の手前、最終的には全員処分しなければならないだろう。自国の範囲で身動きできないなどと思われたら、あの怪物たちに何をされるか分かったものではない。

 

 

「レイナースは完全にこちらを切ったな。受けた恩を返すまでは残る……ハ、恩は返し終わったらしいな」

「魔導国から派遣されていた冒険者に、凄まじい者が混ざっていましたからね。恩を返すというよりは、今回の件であの男に貸しを作るのに成功したのでしょう」

 

 

 帝国四騎士ニンブルが応じる。幸か不幸か彼は魔導王アインズの超越的な力を間近で見ている。方向性は違うのだろうが、セシルからも同じ隔絶を感じ取っている。となると、あれほどの存在が下っ端であるはずもないと思うのも無理はなかった。

 

 

「まぁレイナースについては遅かれ早かれ、離脱することは目に見えていた。最後の土産に神殿勢力との争いを持ち込んだことが問題だ。しばらくは魔導国と神殿勢力の両方に媚びを売ることになるだろう。邪教徒が魔導国と関係があるように思われるのも不味い。処分は神殿勢力立ち会いのもと厳正に……だな」

「俺だけ見てないんですよね。そのすげぇ強いやつ。帰るまでに会えたら良いんですがね」

 

 

 同じく帝国四騎士のバジウッドが羨ましそうに言う。バジウッドのように豪放なタイプなら話を聞いているだけ、というのは耐え難いのだろう。だが、ニンブルはあんな存在など見ないほうが良いと、心底思っていた。

 

 

「自分と比べるだけ無駄ですよ」

「“そのすげぇ強いやつ”だが、厄介な捕虜も連れてきたらしいな」

「はい。アレも我々の基準からすると強いやつ……ということになりますね。ですが、調査などには協力的ですのでかえって扱いに困ります。いかが致しましょうか」

「確保した奴隷の扱いも含めて、できるだけ魔導国の怒りを買わないようにする。そうした方針で……一つぐらい厄介な種は持って帰ってもらおう。お前たちをそいつの監視にいちいち拘束するわけにはいかんからな」

 

 

 さて、全ては今日の会談次第だ。ジルクニフは久しぶりに胃痛を起こしていた。

 

 

 一方、高級住宅街のフルト邸では牧歌的な光景が繰り広げられていた。

 レメディオスが両手にクーデリカとウレイリカをぶら下げて、回転して振り回して遊んでやっているのだ。子どもの笑い声が響くのは空き家も没落貴族も多い、この住宅街では珍しい。

 

 

「キャハハハ、もう一回、もう一回」

「おばさん。力つよーい」

「お・姉・さ・ん、だ! そういうことを言う子はこうだ!」

 

 

 さらに高く振り回した。見ているカルカは肩が抜けるのではないかと、気が気でない。だが、レメディオスとしてはこれで大分抑えている。本気でやったら腕がちぎれかねない。

 回転もゆっくりと速度を落としてから止める。意外にも遊び相手としてはレメディオスが一番適しているようだった。

 クーデリカとウレイリカは現在カルカ、ケラルト、レメディオスの三人交代で相手をしている。分散されているし、双子もそこまで手のかかる年齢ではない。擬似的家族は無事機能していた。ちなみに三人で一番敬遠されているのは勉強させ、宿題まで出してくるケラルトだった。

 

 

「おっと、そろそろ交代の時間だ。二人ともカル様の言う事はちゃんと聞くんだぞ。ではカル様、行ってまいります」

「はい。レメも気をつけて。相当な腕前の人なんでしょう?」

「ははは、なぁに今の私なら勝てるでしょう! 問題ありませんよ!」

 

 

 意気揚々と仕事に出るレメディオス。それを見送るカルカ……ケラルトと組合長二人はすでに出ている。毎日が繰り返しのようになってきていることにカルカは安堵を覚えた。他の仲間は変化を楽しむのだろうが、カルカはそうでもない。穏やかな変化ならともかく、修羅場は義務感で乗り切っている。

 もうしばらくしたら、レメディオスと交代でセシルが帰ってくるだろう。それを楽しみにしながらカルカはいつも通り食事の準備をすることにした。

 

 

「つまりその……盟主とやらの居場所は分からないのか? なにかしようとするなら拠点があった方がいい気がするけれども」

「んー、もしかすると持っているのかも知れないけど、それを私に教えるほど馬鹿じゃないってことだね。私が言えることは十二人の高弟と、その下の弟子たちで構成されてるってこと。つまり結構な規模の組織なんだー。仮に一丸となれば、それだけ目立っちゃうねー」

「やれやれ。こちらから探して討つには面倒なことだな」

 

 

 セシルはクレマンティーヌからズーラーノーンのことを聞き出していた。聞けばズーラーノーンは秘密結社ではあるが、各国に認知された存在であり、それなりの被害を出しているらしい。セシルはそれと出会えば討つ気でいる。

 そんなセシルをクレマンティーヌは猫のような目で見ながら、興味深そうにしている。

 

 

「ねぇ、なんでそんなに盟主をやっつけたいわけー?」

「それは周りに被害を出すようなやつだからだろ。消極的ならともかく、積極的なら容赦はしない」

「いや、でもあんた強いじゃない。盟主のことなんて放っておけば良い。周りが被害を受けようが、あんたの周りは無事でしょ? まさか人助けのつもり?」

「……? まさかもなにも人助けだろう」

「は?」

「交代の時間だな。また話を聞きに来る」

 

 

 強大な力を持ちながら、自然体のセシルをクレマンティーヌは呆然とした顔で見送った。




ズーラーノーンを滅ぼしたい
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