【一区切り】レメディオスソード   作:傀儡兵C

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治療~レイナース

 セシルは屋敷の一室でインベントリから出したナイフやポーションを、キレイに拭いた机の上に並べた。ナイフもポーションも一種類ではなかった。ナイフはカミソリのようなものから分厚い鉈のようなものまで取り揃えられている。ポーションも同様にユグドラシル産の赤いポーションだけでなく、能力を強化するもの、それどころか明らかに毒を思わせる黄色い瓶まであった。

 

 

「何してるの?」

「お片付け? 手伝う?」

「いや、今日は少しこの部屋を占領する。なので、クーデリカとウレイリカは別の場所へ行っていなさい。というか、ケラが出した宿題もまだだろう?」

「うー、お勉強嫌い」

「遊ぼうよ! おじさんならケラも怒らないし」

「おじさんというかお爺さんな年齢なんだが……まぁ良い。ここでこれから行われることは、とても怖いものだ。だから、入らないようにな」

 

 

 ちぇーと口を揃えながら双子は去っていったが、勉強をするかは怪しいところだ。カルカのところにでも行くだろうと、判断してセシルは準備をしながら来客を待つ。

 いささか記憶が怪しくなっている部分が多く、準備に時間をいくら使っても足りるということはない。今日の牢番はレメディオスの時間を多く取って、セシルの空き時間が多くなるようにしてある。その時間を捻出するためにここ数日は時間配分が狂っているので、セシルの顔には少しばかり隈が浮かんでいた。

 こういう時はアンデッドであるアインズが羨ましい気もするが、一切睡眠がない人生もそれはそれでどうかと思えてしまう。

 

 そして、しばらくしてから扉を叩かれて客をセシルは招き入れた。入ってきたのはレイナースだった。彼女の呪いの解呪は今日から始めるのだ。

 レイナースは机に置かれた拷問器具のような代物の数に顔をひきつらせた。

 

 

「セシル殿……私は今日、呪いを解呪するために来たのですが……」

「そこら辺の説明から始めるので、とりあえず座ってくれ」

 

 

 レイナースは用意されていた背もたれの深い椅子に座った。意識しないと顔が斜めになってしまいそうだった。今日のセシルは医者のようであるが、本当にこれで治るのであろうか?

 

 

「サクッと説明すると呪い自体は第六位階魔法〈大治癒(ヒール)〉で治るのだが……」

「……少し待ってくださらない!? 第六位階魔法!?」

 

 

 そうなると眼の前の剣士が、魔法詠唱者(マジックキャスター)としても帝国の誇る“逸脱者”フールーダと並ぶ存在になってしまう。

 当の本人は至って普通にしている。その反応は見飽きたというような感じだ。

 

 

「やっぱり、そこからになるか。俺は有用なものなら第九位階まで使える。第十位階は到達してるが、魔法詠唱者(マジックキャスター)でも無いものが習得すると余分になるから習得していない。効果が大したことなくなってしまうからな」

「……魔法って第十位階までありますの?」

「正確にはもう一段階上があるぞ。派手過ぎて大抵妨害されるが……ああ、魔導王陛下が戦場で使ったとか言っていたな。アレだよ」

 

 

 “大虐殺”……レイナースは実際に見てはいないが、ニンブルから詳細を聞かされている。

 超位魔法は効果も絶大だが、発動までの時間が長すぎる。セシルのビルドは魔法も使えるが、それでも戦士としての方向に重きを置いている。そこで過度に魔法を習得するのは、端的に言うとまさに無用の長物である。

 

 

「私、その説明だけで倒れそうになりますわ」

「それでも構わんが、寝てるときに勝手されるのも嫌だろう。話を戻すが、回復系の魔法はそれほど時間が経っていない傷に使われる。が、古傷に使うと安定性が著しく下がる。どの時点が元の状態なのか分からなくなるからだ。レイナース殿も呪われてから結構時間が経っているだろう?」

「ああ……なんとなく想像がついてきましたわ……だからそのナイフの山ですのね」

「ご明察というやつだな。呪いの除去魔法だけ先に使って、その顔のデキモノを傷が残らん範囲で取り除く。それから〈大治癒(ヒール)〉で修復する。かなり昔にやった方法なので手先の器用さが若干不安だが、最終的に回復させるのだから問題は無い」

「我慢が必要ですわね……」

「いや、その辺はちゃんとするから痛みは大したことないよ。それに……あるだろ? 自分で抉ろうとしたこととか。昔から人の行動は変わらんな」

「……ここまで来たからにはお任せしますわ」

「任された」

 

 

 セシルはレイナースの呪いを隠している金髪をめくり上げた。髪の美しさに関してはカルカ以上ではないだろうかという余計な考えが浮かぶ。

 布のようにした長髪の下からは相変わらず冒涜的な膿を吐き出す器官に埋め尽くされていた。信仰系魔法の青い魔法陣が展開した手をセシルはレイナースの顔に当てた。目に見える変化はないが、この瞬間に彼女を悩ませていた呪いは砕け散ったのだった。

 

 次にセシルは鋭いナイフを手に取り、黄色いポーションを振りかける。麻痺の効果があり、本来は毒として使用されるが、それを麻酔代わりにするのだ。活火山のような吹き出物は削いでいき、フジツボのようなものはノミのような刃物で抉っていく。

 レイナースは時折、体をビクリとさせたが流石に戦士だけあってよくこらえた。念の為、切りすぎないよう耐久力増強のポーションも使用する。綺麗に呪いの産物が取れたときはすぐに回復薬を使い、時間をかけて根気よく取り除いていく。

 膿と血に手がまみれていく。レイナースの顔も血まみれになっていた。作業を開始してから何時間もかかってからセシルは手を洗い、レイナースの顔の血と黄色い液体も丁寧にぬぐった。

 そしてとうとう最後の仕上げだ。セシルの手に再び青い光が宿る。

 

 

「〈大治癒(ヒール)〉!」

 

 

 唱えるとレイナースの顔が見る間に修復されていく。それは先程までの汚れた顔ではなく、かつての顔だった。いや、呪いに侵されて以降、見たことが無い相応に成長した初めて見る顔となるだろう。

 セシルは麻痺も解除して、鏡の前にレイナースを案内する。

 

 帝国四騎士と呼ばれた女傑の顔に涙が伝った。

 




呪いを解く魔法はD&Dにもあったし良いかなって
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