安価で安住の地を見つける   作:ハンドルを右に

3 / 11
【悲報】ワンピ世界に転生したけど海賊から足を洗わせてもらえない件/3

713:名無しの海賊団 ID:hkzG1pTbt

【悲報】ヒグマさん、56皇殺しじゃなかった

 

714:名無しの海賊団 ID:YkYR3C/tx

 嘘乙

 

715:名無しの海賊団 ID:p1Pcd8pt+

 ソースどこ? 

 

716:名無しの海賊団 ID:mWJX96MZ0

 >>715

 映画でルフィが子供時代のシャンクスの懸賞金が10億だったと判明したから

 

717:名無しの海賊団 ID:4xpflnNzs

 麦わら帽子かぶってたのに二つ名は赤髪のままなのか

 

718:名無しの海賊団 ID:xbNyycYwp

 >>716

 そんな……ヒグマさんは四皇クラスを56人殺したんじゃなくて四皇幹部クラスを56人殺しただけだったなんて……

 

719:名無しの海賊団 ID:M1uuugYTN

 >>718

 充分強すぎて草

 

720:名無しの海賊団 ID:KhlCd2gxR

 >>718

 むしろ現実味増してきたな

 

721:名無しの海賊団 ID:qu4IYChlf

 >>718

 ODくん……とうとうヒグマさんに向き合う決心をしたんだね……

 

722:名無しの海賊団 ID:dz+LJU/IS

 >>718

 推定懸賞金560億ベリーはかたい

 

723:イッチ ID:oV+OwtFfi

 カタクリとキングと同格レベルを56人殺したって現実味ない……なくない? 

 

724:名無しの海賊団 ID:Hyh4DxM+2

 >>723

 ある!(ドン!)

 

725:名無しの海賊団 ID:uPl40CjMI

 来たか、イッチ(ドン!)

 

726:名無しの海賊団 ID:HG8rMyjVg

 >>723

 ヒグマさんが最強かどうかは俺達が決めることにするよ

 

727:名無しの海賊団 ID:Qy6Mz11If

 >>723

 仮にヒグマさんが最強じゃなくてもイッチ勝てないじゃんwwww

 

728:名無しの海賊団 ID:fAoVihOwE

 イッチ今どこ? 

 

729:イッチ ID:oV+OwtFfi

 >>727

 ア……ウス……

 

 今ドラム王国ついた

 ナミの五日病治さなあかん

 

730:名無しの海賊団 ID:vTIev6/OP

 強さで誰にもマウント取れるやつがいない件

 

731:名無しの海賊団 ID:uwndgQH0B

 なんでイッチ患ってないの? 

 

732:名無しの海賊団 ID:sreF6Jz2e

 そこは原作通りなのね

 

733:名無しの海賊団 ID:K4/8m+DzY

 >>730

 Mr.5撃破したじゃん

 

734:イッチ ID:oV+OwtFfi

 一応ローグタウンで買った蚊取り線香ナミに持たせたんだけどダメだったわ

 Mr.3の蝋溶かすための火種にして油に引火させたとか言ってた

 

 >>733

 真っ向から来たら普通にやられます(小声)

 

735:名無しの海賊団 ID:FswKQsWUf

 もっと虫除けスプレーとか持たせてやれよ

 

736:名無しの海賊団 ID:ZyMRbLEoW

 おじいちゃん、蚊取り線香は持ち歩くものじゃないわよ? 

 

737:名無しの海賊団 ID:XgQynMVaS

 さらっとMr.3攻略の一助してる

 

738:名無しの海賊団 ID:TWvQu5K//

(密林地帯の蚊は線香程度じゃ効果)ないです

 

739:名無しの海賊団 ID:fqql//YeV

 まあドラム王国経由しないとクロコボーイの刺客に襲われちゃうし

 

740:名無しの海賊団 ID:8ZZAsfBRh

 さーて、今週の安価はー? 

 

741:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ

 ナミの弔い安価しろ

 

742:イッチ ID:oV+OwtFfi

 ころすなころすな安価もしない

 

 >>735

 >>738

 それしかなかっただけ

 現代ほど何でも揃うわけじゃないのよ

 

743:名無しの海賊団 ID:hoW1bHc4i

 は? 

 

744:名無しの海賊団 ID:xCLpSLEJL

 許さん

 

745:名無しの海賊団 ID:WiP8Br5dh

 見損なったぞイッチ

 

746:名無しの海賊団 ID:IXMbxoGYV

 リトルガーデンでのイッチはもっと輝いていたぞ! 

 

747:名無しの海賊団 ID:kwAiavlFU

 まあ島国やから物資運ぶにも限りあるし

 東の海で密林に行くやつなんていないだろ

 

748:イッチ ID:oV+OwtFfi

 というかやることが多くて安価の余地ないわ

 

 ドクトリーヌが山から降りてきてるから待ち伏せしてナミ連れてってもらうし

 ワポルたちはルフィサンジチョニキが戦う上に武器も安価で決まったから同行する必要もない

 というかウソップが俺の側から離れるなってしがみついてきて動けん

 

749:名無しの海賊団 ID:sH6h2VK4v

 思いっきり原作知識使ってて草

 

750:名無しの海賊団 ID:hsN219stB

 知識なくても見聞色でわかるもんな……

 

751:名無しの海賊団 ID:9piKHeK8e

 ウソップ必死で草

 

752:名無しの海賊団 ID:ENrZeWN9Z

「し、仕方ないから勇敢なる海の戦士である俺様が守ってやる! 絶対側から離れるな! いいな! わかったか!」とか言ってそう

 

753:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ

 歩くレーダーみたいなもんやからなイッチ

 

754:名無しの海賊団 ID:dqdKuVC11

 雑魚だけど無能ではないことが判明した

 船降りたいなら降りたいなりに無能アピールしろ! 

 

755:イッチ ID:oV+OwtFfi

 >>752

 一言一句同じこといってるぞ

 さては現地にいるのか

 

 >>754

 やだよ

 ただでさえ戦闘で役立たずなのにこれで更に無能だと思われたら本当にいたたまれなくなるだろ航海中地獄だぞ

 

756:名無しの海賊団 ID:uHQKoY9WJ

 >>752

 イッチの他にも見聞色持ちが現れるなんてな

 

757:名無しの海賊団 ID:GSXQ68Ns+

 >>752

 現地いるなら実況よろ

 

758:名無しの海賊団 ID:aeXwuFJ9P

 >>752

 一般ドラム王国民くんオッスオッス

 そのまま現地実況よろ

 

759:名無しの海賊団 ID:ENrZeWN9Z

 草

 ワイ、ウソップの才能あるかもな……

 

760:名無しの海賊団 ID:fmRS+HZJE

 さらっと流されてるけどイッチ虚栄心バリバリで草

 

761:名無しの海賊団 ID:P4Ucp+jA0

 このスレで最も助言らしき助言が出たのにな……

 

762:名無しの海賊団 ID:A+4iEdMCC

 このイッチ、いくら助言しても「やだよ」の三文字で却下しそう

 

763:名無しの海賊団 ID:NUw3DzVRN

 ・努力して強くなればいいじゃん

 →やだよ努力嫌いだし

 

 ・なら無能アピールして追い出されればええやん

 →やだよ航海中の肩身狭くなるし

 

 うーんこの

 

764:名無しの海賊団 ID:scwu4kBuX

 スレ民も大概だけどイッチも大概で草

 

765:名無しの海賊団 ID:EfXs5WLDb

 体だけじゃなくて心までワガママ

 ある意味覇王の器だな

 

766:名無しの海賊団 ID:4mQydixzj

 >>765

 ワガママどころかカスカス

 クズの末路

 

767:イッチ ID:oV+OwtFfi

 そんなことないぞ実際アドバイスくれた>>754にはめっちゃ感謝してる

 

 ただこんな気のいいやつらからボロクソにされて捨てられてみるの想像してみろ? 

 俺はこの傷を抱えて一生生きていかないといけないのか? 

 二度目の人生とはいえ耐えられない

 

768:名無しの海賊団 ID:RmfBEAijp

 気持ちはわかる

 

769:名無しの海賊団 ID:sWV/nEdqv

 まあ確かに

 

770:名無しの海賊団 ID:UR1M3BHcg

 麦わらの一味で駄目なら本当に世界不適合者すぎて救えないわ

 

771:名無しの海賊団 ID:KAvDAsPpv

 でも努力嫌いなのは単にクズなだけなんだよなぁ……

 

772:名無しの海賊団 ID:M00+BoSxj

 せっかく覇気の才能あるのに勿体なさすぎる

 そのまま肉体改造して覇王目指して♡

 

773:イッチ ID:oV+OwtFfi

 ああ忙しい

 ゾロが寒中水泳とかアホなことやるから服とか用意しておかないといけないし

 巻き添え食らったカルーも救出しないといけないし

 私いじけちゃうし

 

774:名無しの海賊団 ID:jhVOZiAmp

 逃げた

 

775:名無しの海賊団 ID:3Iv3n1IXU

 逃げたぞ

 

776:名無しの海賊団 ID:Az5bl5QIS

 追うえ! 安価させろえ〜! 

 

777:名無しの海賊団 ID:3D9tuhJqw

(イッチがいじけるのは関係なくない?)

 

778:名無しの海賊団 ID:9+bwCzsqj

 実際助言聞かないなら恨みっこなしで安価させるしかないのでは……? 

 

779:名無しの海賊団 ID:8ZZAsfBRh

 よし安価だ

 

780:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ

 やっと安価? 

 

781:名無しの海賊団 ID:L2k5jMbiI

 >>779

 >>780

 こいつら安価のためにしか生きていないのか? 

 

782:名無しの海賊団 ID:qXlp2qjiB

 あれ、ゾロの寒中水泳ってことはその後戦闘じゃね? 

 

783:名無しの海賊団 ID:qaLPYATKu

 あっ

 

784:名無しの海賊団 ID:Gn5yun5Q3

 せやな

 

785:イッチ ID:oV+OwtFfi

 おう

 ワポルんとこのいっぱんへたちが来た(白目)

 

786:名無しの海賊団 ID:richHfmCB

 草

 

787:名無しの海賊団 ID:/iccbnkQo

 草

 

788:名無しの海賊団 ID:JK63hxPdp

 イッチ忘れてたな

 

789:名無しの海賊団 ID:NlVZlJFmk

 まあここゾロがさらっと全滅させてたしな

 

790:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ

 いいから安価しろ

 いつまでパンツ脱いでればいいんだよ

 

791:名無しの海賊団 ID:8ZZAsfBRh

 安価まだ??? 

 そろそろ逆立ち辛いんだけど

 

792:名無しの海賊団 ID:uAlzajcUj

 この二人ブレないな

 

793:名無しの海賊団 ID:qvMeWvH5k

 イッチが安価するまで何かの耐久レースとかされてるんです……? 

 

794:名無しの海賊団 ID:C2baLvO+N

 このまま安価しないとお腹冷やすやつと頭に血が上りすぎるやつが生まれてしまう! 

 はやくしろーっイッチー! 

 間に合わなくなってもしらんぞー! 

 

795:イッチ ID:oV+OwtFfi

 作戦>>804

 

796:名無しの海賊団 ID:lh4Qoa0+c

 ヒャッハー! 新鮮な安価だー! 

 

797:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ

 さすが俺達のイッチだぜ! 

 

798:名無しの海賊団 ID:N2dI2YKzB

 別に安価しなくてもお腹冷やすやつと頭に血が上りすぎるやつが生まれるだけなんだよな……

 

799:名無しの海賊団 ID:8ZZAsfBRh

 しゅき♡

 

800:名無しの海賊団 ID:5FvXw9DSH

 初めての対多人数の戦闘か

 

801:名無しの海賊団 ID:JsvM3e/w5

 安価の時間だああああああ!!!! 

 

802:名無しの海賊団 ID:uYUKbtH+c

 雪玉投げる

 

803:名無しの海賊団 ID:t32sv7WP2

 効くまで覇王色飛ばし続ける

 

804:名無しの海賊団 ID:Ybxlw2X2j

 雪だるま作ろう

 

805:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ

 ストリングプレイスパイダーベイビー

 

806:名無しの海賊団 ID:8ZZAsfBRh

 ひたすら武装色パンチ

 

807:名無しの海賊団 ID:VU6pluIkK

 >>804

 !? 

 

808:名無しの海賊団 ID:hI1TzVFrS

 >>804

 ドアを開けて一緒に遊ぼう!? 

 

809:名無しの海賊団 ID:wgjTSliC+

 >>804

 どうして出てこないの!? 

 

810:名無しの海賊団 ID:Q42OvW4UY

 もう10年近く前になるのか

 はやいもんだな

 

811:名無しの海賊団 ID:mv0nHRsQA

 >>810

 うせやろ……

 

812:名無しの海賊団 ID:8ZZAsfBRh

 >>810

 嘘……

 

813:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ

 >>810

 そんな……

 

814:イッチ ID:oV+OwtFfi

 >>810

 あり得ない……

 

815:名無しの海賊団 ID:IznEMuxnS

 イッチ安価の結果よりもショック受けてて草

 

816:名無しの海賊団 ID:/3embf612

 年月って経つのはやいよね

 

817:名無しの海賊団 ID:qoP6iFY8X

 草

 

818:名無しの海賊団 ID:6DHlh+kej

 やーいやーいおじさーん

 

819:名無しの海賊団 ID:dvMlPweTa

 いやでもこれどう戦うんだ? 

 

820:名無しの海賊団 ID:9g4nb7Pel

 そりゃあもう雪だるま作るんだよ

 

821:名無しの海賊団 ID:2FkUneHXU

 当たり前だよなぁ? 

 

822:名無しの海賊団 ID:ca3rb0M8W

 安価は絶対だからな

 

823:イッチ ID:oV+OwtFfi

 まあやって見るわ

 少なくとも覇王色何度も飛ばすよりはやれそう

 

824:名無しの海賊団 ID:pPVG2CZT8

 覇王色より楽なのか

 

825:名無しの海賊団 ID:/HZSPJ4me

 結構疲れるのあれ

 

826:名無しの海賊団 ID:mH8KhrX/n

 >>825

 なお効くのはネズミだけの模様

 

827:名無しの海賊団 ID:aX1R+EUUT

 こういう場面とか覇王色あると楽ちんちん(効くとは言っていない)

 

828:名無しの海賊団 ID:5qjAou9hn

 忘れてないかイッチ

 終わったらカルー助けるために寒中水泳だぞ

 

829:名無しの海賊団 ID:Z+Ln8p+Eo

 あっ

 

830:名無しの海賊団 ID:rcckbeJxC

 あっ

 

831:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ

 せやな

 

832:名無しの海賊団 ID:GuYDQc7NM

 ビビの好感度あげないといけないもんな

 

833:イッチ ID:oV+OwtFfi

 ちくせう! やってやらぁ!

 

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 かつて、この冬島はドラム王国と呼ばれていた。

 過去形なのは、とある海賊が襲撃しに来た際に国民を置いて我先に国王が逃げ出したため。悪政者はいなくなったが、かつて『医者狩り』と称して国中の医療を独占したせいで、もはや医療大国の影も残っていなかった。

 

 リトルガーデンで病気を患ったナミを助けるためには、この島で唯一残った“魔女”と呼ばれる医者を見つけるしかなかった。

 定期的に村に来て病人・怪我人を診てくれるが、つい先日来たばかりで次に来るのはいつになるか。旅を急ぐビビは当然だが、何よりナミの方がもたない。つまり、こちらから件の“魔女”へ会いに行くしかなかった。

 国土は広くないにせよ、止むことのない雪の中、たった一人の人間を探すのはどれだけ骨の折れることだろうか。

 

 幸い、現地人のドルトンが住処を知っていた。断崖絶壁のような山の上に建つ城こそ、“魔女”の根城。病人を抱えて山登りは無謀すぎる。

 一刻の猶予もない以上やるしかないと思われたが、その必要はなくなった。

 

 

『ヒーーッヒッヒッヒ! なんだいお前ら、若さの秘訣でも聞きに来たのかい?』

 

『いや知らねェよ!』

 

 

 山登りする前にタイミング良く近隣に降りてきていたところをギリギリで接触することができたからだ。

 

 Dr.くれは。

 年齢といい性格といい色々とデタラメな人であったが腕は世界最高峰の医者なのは確かだ。

 ナミの容態を見せた途端に即座に病名を当てて、治療のために城まで連れて帰った。曰く、あと三日遅かったら命が危なかったという。

 

 

「いやー、一時はどうなるかと思ったけど何とかなったな」

 

「そうね……って、ウソップさん。ちゃんと地図見てる?」

 

「お、おう! この道であってるぞ! 進め進め!」

 

「心配だわ……」

 

 

 雪原を滑走する橇の上。

 ウソップとビビは前述の出来事を振り返っていた。

 

 ──────ワポルが戻ってきた。

 

 その知らせを聞いたドルトンは一目散に村に戻ってしまった。あの思い詰めた表情から、彼自身もあの王様とは因縁が深いことを察することができる。

 

 Dr.くれはの城にはルフィとサンジが付き添っている。あの二人なら、どんな敵が現れても対処できるだろうと踏み、村に残った面々は先にドルトンが戻ったビッグホーン村まで引き返している最中だ。

 

 

「ねえハジメくん。この道で大丈夫? 看板も見えないけど」

 

「んー、大丈夫大丈夫。人の気配があるところ目指しているから」

 

「良かった、なら安心ね」

 

「オイ、ビビー? 俺と扱い違くね?」

 

 

 御者席で手綱を握るハジメは一面の雪景色を迷いなく進んでいる。

 地図を見ずに慣れない雪道を通るのは自殺行為だ。

 しかし、彼にとってはあってもなくても変わらない。気配に人一倍敏感な彼は、離れた場所でも察知する能力があると聞いた。リトルガーデンでもそうだったし、ここでも山から降りてくるDr.くれはの存在を見事に感じ取った。

 もはやビビに疑う余地はない。頑なにハジメと別行動させないようにしたウソップの行動も充分に理解できた。

 

 

「あ、ごめん。ちょっとストップ」

 

「どうしたの?」

 

 

 滑走する中、途中で橇が止まった。

 何か問題があったのかと覗き込む。見たところ近辺で雪崩が起きたようで、至るところに針葉樹がなぎ倒されている。

 おもむろに御者席から降りたハジメは膝上まで積もった雪をザクザクと踏み鳴らして突き進む。

 

 少し離れたところで止まり、雪に手を突っ込んで引き上げると、見慣れた髪色の男が姿を現した。

 

 

「んあ?」

 

「Mr.ブシドー!?」

 

「ゾロ!? お前何やってんだ!?」

 

「……何って、寒中水泳だ。見ればわかんだろ?」

 

「アホかお前!」

 

 

 上半身裸で歯ぎしりさせながら答えるゾロには似合いの言葉だった。余程酔狂な求道者でもない限り、こんな無茶な特訓をするやつなんていない。

 見渡す限りの雪原、そこから一発で仲間の位置を特定する。これは特別な力を持っていることの証左になった。

 

 

『小僧、ひょっとして“覇気”が使えるのかい?』

 

『まあ少し……珍しいんですかね』

 

『そりゃあねェ。こんな前半の海で持っているやつなんて、それこそ海軍くらいしかいないってのに』

 

『へぇー、まあ俺はこれしか能がないもんで。へへ』

 

 

 Dr.くれはとの会話を思い出す。

 覇気(・・)。それがハジメの持つ不思議な力の正体。

 雪の中で埋もれていたゾロを見つけたのもこの力のおかげなのだろう。

 

 聞き覚えのある単語ではあったものの、なかなか思い出せないビビ。何やら人の気配を感じとる力なのはわかるが……もしかしたら故郷に何か文献が残っているのかもしれない。

 

 

「ほらほら、さっさとタオルで体拭いて。橇に靴と防寒着あるから着替えて行くよ」

 

「悪ィな。ナミはどうなった?」

 

「良い腕の医者があの城で診てくれるってさ。ルフィとサンジが付き添うから俺達は戻ることにした。

 あ、村から分けてもらったお酒あるから後でそれも飲んで。結構度数高いから体温まるよ」

 

「マジか。今飲もうぜ」

 

「俺は運転中だから後でね。あと何か村の方でゴタゴタしてるっぽいから多分戦闘になると思うよ。さすがに刀は持ってないけどどうする?」

 

「あー、仕方ねェ。敵の奪うか」

 

 

 用意周到にゾロの装備を整えて橇を発進させる。

 ハジメの言うとおり、戻ってきたビッグホーンではワポルたちの家来が村を制圧していた。

 ああ、こうなることがわかっていてゾロを拾ったんだな、と今までの行動について合点がいった。現に、いつの間にかゾロは橇から降りて家来たちに飛びかかっていた。

 

 

「ウソップとビビはあっちの雪掘ってもらっていい? ドルトンさんが埋もれていると思うから」

 

「大変!? わかったわ!」

 

「お、おう! 任せろ!」

 

 

 指差した方向に迷わず駆けるウソップとビビ。

 掘ってみれば、明らかに土とは違う感触が手袋越しに伝わる。

 

 

「おーい! 見つかったぞー!」

 

「わかった! 皆、ドルトンさんを助けるぞ!」

 

「「「おおーっ!」」」

 

 

 ウソップの言葉に反応した村の住民や、ドルトンに従う者たちが総出で救助にあたる。彼の人望も相まって、ワポルの家来に怯えていた人たちが全員駆け寄ってくる。

 

 ……数日前、ハジメは己の役割は雑用と自称していたが、とんでもない。

 覇気とやらで危険を察知し、さらに無駄のない行動を思いつき、実行する判断力と行動力。リトルガーデンから彼の能力には驚かされてばかりだ。

 

 

「おーい! お前何やってんだハジメー!」

 

「雪だるま作ってるー!」

 

「「はぁ!?」」

 

 

 明らかに無駄なことをやっていた。

 

 こちらは村の住民たちも手伝ってくれて人命救助に当たっている中、何を呑気に雪遊びしているのかまるで意味がわからない。

 

 ……いや、待て。落ち着け。

 

 ビビは頭を振る。

 リトルガーデンでもそうだった。一見無駄なように見えて、実はれっきとした作戦なのだ。

 いやしかし、共に過ごした時間の長いウソップも何やってんだと突っ込んでいるあたり、もしや本当に遊んでいるのでは? 

 

 

「よしできた!」

 

 

 見れば人間サイズの雪玉が出来上がっていた。

 それをハジメが触ると、綿のように白かった雪玉が大砲の玉のように真っ黒に染まった。

 

 

「んしょ……何とかなれーッ!」

 

「う、うおおおおおおおお!!!」

 

 

 ハジメが転がす度に大きくなる雪玉。

 ゴロゴロと家来たち目掛けて接近していき、避ける間もなく追突する。

 通過した跡には、家来の姿が消えていた。

 異様な光景を目の当たりにした家来たちは、黒色(・・)の雪玉めがけて銃撃を始める。

 

 

「な、銃弾を弾くだと!?」

 

「なんだあの雪玉は!? 鉄球みたいに硬いぞ!?」

 

「スッゾオラー!」

 

「「グワーッ!」」

 

 

 みるみる家来たちの数が減る。

 ただの雪玉だったはずのものは家来を巻き込んでみるみる姿を大きくしていく。

 質量は武器、ということを体現しているようだった。あれほどの雪玉を押し返すことなんて家来達では出来るはずもない。

 

 

「はあ……はあ……げほっ、おえっ、ちょっとタイム……」

 

「もう息切れしてるーっ!?」

 

 

 無論、それを動かしている者も当然に疲れてくる。

 わずか一回往復しただけでこの始末。最初ほどの速度で押すこともできまい。さすがにこれには相手も慣れて対処されてしまう。

 ……ただ、それが一人ではないなら話は違う。

 

 

「面白そうなことやってんな。オレも混ぜろよ」

 

「助かる。正直そろそろ腰キツかった。おえっ」

 

「結構足腰にクるな。へっ、ちょうどいい……!」

 

 

 ちょうど雑兵狩りに飽きたゾロが加勢に来た。

 明らかにハジメが押していたときよりも速い速度で転がる雪玉。ハジメはもはや手を添えるだけで充分だった。

 家来たちは抵抗する暇もなく、誰一人残らず雪玉へと飲み込まれていく。そうして完成した雪玉は家一つを飲み込めるほどにまで育ってしまっていた。

 

 

「で、どうすんだコレ?」

 

「せっかくだし、記念に雪だるまにしようか。その後近くの坂に移動させて適当に転がしておこう」

 

「ちょっ、ちょっと二人とも! 今はそれどころじゃないと……ウソップさんも何か言って!」

 

「お前らァ! ウソップ様が顔作ってやったぞ!

 

「「でかした!」」

 

「ウソップさん!?」

 

 

 ワポルからこちらに寝返った医者たちによってドルトンが治療されている中、この三人はメリー号の船首を模した雪だるまを作っていた。なお、ドルトンが一命を取り留めたことがわかった後、家来たちも雪玉から救出して拘束してからはビビも普通に雪だるま作りに参加していた。

 

 緊張感があるのかないのか。

 それでも傷を負わずに勝ってしまうのだから、この一味は底が知れない。

 

 こうしてワポルもルフィが倒し、ナミも助かり、新たにチョッパーという仲間もできた。別れ際に見た桜はチョッパーだけでなく、皆の心に深く刻まれた。

 あとはカルーが極寒の海の中で溺れていたのをハジメが助けたり、助けたハジメが全身筋肉痛と風邪で寝込んでしまいチョッパーが怒ったが、まあ語るまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、ビビ。看病してくれてたの?」

 

「……えっ」

 

 

 ようやく、ビビは自身がうたた寝していたことを思い出した。起き上がってみれば、薬が効いて随分と顔色が良くなったハジメの姿が。

 少し気恥ずかしくなって視線をそらす。

 同時に自分でも不思議なくらいに、この一味に心を開いていたことを自覚してしまった。

 

 察しのいい彼にはお見通しなんだろう。深くは追求せずに優しく笑っている。

 むくりと起き上がり、体を大きく伸ばす。

 

 

「駄目よ! まだ病み上がりなんだから寝ていないと!」

 

「いやあ、そうもいかないでしょ。これから騒がしくなる(・・・・・・)んだし」

 

「えっ」

 

「ほら、来るよ」

 

 

 ハジメの視線は部屋の扉に向けられている。

 耳をすませば、ドタドタと廊下を走る音。突き破られた扉から押し寄せるように三人の人間がなだれ込む。

 

 

「ハジメェ!!! 宴だァ!!! チョッパーの歓迎会とナミの退院祝いだァ!!!」

 

「お、おい! おれのことは良いから、アイツ寝かせてやれよ! その、歓迎会してくれるのは嬉しいけど、治ってからでいいって!」

 

「そうだぞ、ルフィ。ハジメだって病気のときくらいは休ませてやれ──────って何ビビちゃんの看病なんてクソ羨ましいこと受けてんだ皿洗いィ!!! 表出やがれクソッタレもう一度海に叩き落としてやる!!!

 

「エエーーッ! さっきと言ってること違うぞお前!」

 

 

「……ね?」

 

「……ふふっ」

 

 

 先を歩く少年の背中を押して、甲板へ向かう。

 

 故郷までの道程はまだ先だ。国の情勢もまだ不安定で気が気でないのは変わらない。

 けれど、自分たちは最高速度で向かっている。

 

 空にはまん丸の満月。そして舞散る桜。

 確かに、大人しく寝ているわけには行かない。

 今日は何もかも忘れて、ただ笑ってみようと思った。

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

878:名無しの海賊団 ID:eC6AvfJN+

 イッチどじょうすくいノリノリじゃん

 

879:名無しの海賊団 ID:5XdaC5+wa

 作画崩壊してて草

 今こそメマーイダンスするときだろ

 

880:イッチ ID:oV+OwtFfi

 カルー酔いつぶれたからだめだわ

 あほくさ

 

881:名無しの海賊団 ID:9hC9WhHw8

 鳥類のくせになんでアルコール飲んでんだよ

 

882:名無しの海賊団 ID:zxE0OZeuQ

 てかイッチ戦えるやん

 雑魚って言ってたの嘘かよ

 

883:名無しの海賊団 ID:bH2cqLMvQ

 >>882

 よく見てみろ

 ギャグ補正で無理矢理勝ってるだけだぞ

 

884:名無しの海賊団 ID:2bKDhSpb8

 多人数で囲まれて棒で叩かれたら何もできないもんネ……

 

885:名無しの海賊団 ID:O+8iAYPhD

 今まで好き勝手やってたけどこれから海軍絡んでくるから派手なことできないもんな

 

886:名無しの海賊団 ID:8ZZAsfBRh

 でも安価はするんでしょ

 

887:名無しの海賊団 ID:+KxR9/Blt

 つーかビビといい感じじゃん

 玉の輿いける? 

 

888:名無しの海賊団 ID:IBieLvRkL

 リア充しね

 

889:イッチ ID:oV+OwtFfi

 >>887

 計画通りですわタマノコシコシコシ! 

 

 まあマヂレスするといい友達程度で終わるっしょコーザくんいるし

 俺NTR嫌いなンだわ

 

890:名無しの海賊団 ID:Q0lpH0KJq

 ん? 

 

891:名無しの海賊団 ID:9ZfKbgyxr

 ん? 

 

892:名無しの海賊団 ID:ZHrIp45YJ

 あっそっかぁ……(察し)

 

893:名無しの海賊団 ID:hSBVzv0sE

 ひらめいた

 

 





・ハジメ(イッチ)
 船は降りたいけど嫌われたくないという贅沢な悩みを持つ男。雑用は勿論、索敵や指示も手を抜かず一味に貢献するあたりそういうところやぞとスレ民に指摘されるも治す気はない模様。お前本当に船降りるつもりあるの?
 多人数相手にはギャグ補正でゴリ押しをする。え、雪玉は転がすと固まるから都合よく人を巻き込むことはない? 感じろ。
 なおフィジカルはまるで成長していない。大体モチベーションとルフィのせい。チョッパー??? 自分より強いから全力で媚びますが???
 あとNTRは苦手。

・スレ民
 善良なスレ民はしっかり助言するも「やだよ」の三文字で一蹴されるせいで悪のスレ民へと堕ちていく。安価スレにされるのは相談する側のイッチにも原因があることをお前に教える。

・チョッパー
 ルフィがナミサンジを抱えて山登りしなかったこと以外は原作と流れは変わらず仲間になった。

・Dr.くれは
 絶対知ってると思って覇気のことを言及してもらった。若さの秘訣は冗談抜きで聞きたい。


 日間1位ありがとうございます。
 供養のつもりが続きを書いてしまいました。なっちゃったからにはもう……ネ……。

 拙者、ドラム王国編の王女とウソ八の掛け合いが一味に馴染んでいることがわかって好こ侍。義によって視点を王女側で描写いたす。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。