「援軍が来るまで一時間ですか……。本当にぎりぎりまで連絡しなかったんですね」
ついにコカビエルが宣戦布告に来たらしい。内容は駒王学園で大騒ぎするから街を吹き飛ばされたくなければ出てこい、とのこと。その時、同行していたフリードとかいうはぐれエクソシストがエクスカリバーを五本も持っていたとか。さすがにこれはヤバいと無駄にプライドの高いリアスさんに無断で姫島さんが連絡を入れたという。まぁ堕天使にここまでされて引いちゃったら後々ヤバいことになるだろうし、撤退っていう最終手段が取れなくなったらさすがに連絡は入れるよね。
聞くところによると、木場たちが囮をやって釣り上げた連中を二人で追いかけて行って、見事に返り討ちにあったらしい。それで『擬態の聖剣』と『破壊の聖剣』を奪われたとか。ゼノヴィアの方は『奥の手』を使ってどうにか逃げ延びたらしいが、紫藤は普通に負けてボロボロの状態でリアスさんに渡されたそうだ。
この辺はフェニックス家の教育のおかげで木場が追撃に同行しなかったせいだろう。フェニックス眷属の『騎士』カーラマインさんは前に聖剣使いとやり合ったことがあって、そっちから色々心構えとか教わったらしいからな。聖剣使いと対峙する時はなにより不意打ちを警戒しないといけないとか、反応の遅い味方を守らないといけないとか、本当に色々な。いきなりだと抑えきれず会談では暴走してしまったみたいだが、時間をかけて落ち着いてれば教えを生かして行動できたのだと思う。
その結果、敵戦力は増大してしまったが、この程度なら誤差の範囲内だ。原作組に加えて俺と誠二もいるし、匙が大幅に強化され、本人よりも武器が強いタイプと戦う時のセオリーを木場は学んでいる。どうにでもなるだろう。
「しょうがないじゃない。ただでさえ私たちは「魔王の血縁という立場を利用して好き勝手している」なんて言われているのよ? 簡単に自分の土地のことで力を借りるわけにはいかないわ。それにライザーには連絡しておいたから十分もすれば着くはずよ」
お、ライザーさまは来るのか。到着したら戦力的にもずいぶん余裕が出るし、袋叩きにするのもいいかもしれないな。ま、その辺は実際にそうなってから考えよう。
「今更な気がしますが……まぁ良いでしょう。で、どのように対処するつもりですか?」
「私たちはオフェンスに出て時間を稼ぐから、ソーナたちには結界を張って被害拡大を防いで欲しいのよ。構わないかしら?」
「いいわけないでしょう。なんであなたはそう他人の力を借りることを嫌がるんですか。少しは予想を裏切ってください」
「えっ!?」
「あなたが前線に出るなんて相手の思うつぼでしょう。それくらいは分かっているはずです。なんでそれでそんな対処法を考えたんですか? それに回復役を前線に連れて行ってどうするんですか? コカビエルの光にしろ、聖剣にしろ、悪魔にとっては毒であり、すぐに治せるようなものではないんですよ? 連れて行くだけ無駄。護衛のために戦力を割かねばならず、足を引っ張るだけです。それから―――」
「わ、わかったわ! 私の案じゃ駄目なのはわかったからもうやめて!」
「ならどうするのですか? 今の作戦でダメなら新しいものを考えないといけないでしょう。それならまずは先の案の欠点の洗い出しを早急に―――」
「あなたに任せるわ! 昔からこういうことであなたよりいい案出せたことないもの!」
「大声で言うようなことではないでしょう。それにいきなり振られても困ります。宣戦布告に来てから時間も経ちましたし、コカビエルがしびれを切らすまでそう時間は残されていないでしょう。……まぁあらかじめ作戦は考えていたので問題はありませんが」
「さすがソーナ! あなたなら考えてるって信じてたわ! で、どんなの?」
「立場的に出ないとまずい者と戦力になりうる者だけが前線に出て、後は結界の展開と援軍の警戒です。具体的には譲治、匙、朱乃、木場君、兵藤兄弟が前線ですね」
この前線組の内訳は、立場的に出ないとまずい者が姫島、戦力になりうる者が匙、木場、兵藤兄弟、両方が俺だ。さすがに堕天使の幹部相手に側近である『女王』も出ずに雑兵ばっかりだったら、コカビエルもキレて駒王学園から離れて暴れ出しかねないからな。
援軍の警戒の方は原作通りだと白龍皇とかち合う可能性があるが、その辺は見守ってる大人たちがどうにかするだろう。ベオウルフさまも来ているらしいし、適当に妨害して追い払ってくれると思う。和平後の堕天使の立場が悪くなり過ぎると和平に応じなくなるかもしれないので、警戒を妨害して素通りさせる可能性もあるが。
「小猫は? あの子も戦力になると思うのだけど」
「塔城さんはあなたの護衛です。別働隊の不意打ちでやられるわけにはいきませんから。私も真羅を護衛に残していますし」
「なるほどね。よく考えれば確かにその通りだわ。それに別働隊以外にも、逃げたもう一人の聖剣使いが聖剣やコカビエルの首の代わりに私たちを狙って来るという可能性もあったわね。それを考えれば護衛は必須か……」
「ついでに言うと、コカビエルに渡された聖剣使いの監視も必要ですね。彼ら神の信者はいくら傷ついていようが、時には自身の死もいとわず暴れることがありますから。これくらいで作戦は十分ですね?」
「ええ、問題ないわ。なら早く行動に移しましょう。コカビエルがいつまで待つかわからないもの。朱乃」
「わかりました。リアス・グレモリーの『女王』として、前線部隊の指揮を執ります」
「ジョージ」
「ソーナ・シトリーの『女王』として、匙に指示を出しグレモリー眷属を補佐します」
「よし。行ってちょうだい! この街を守るために!!」
「つーわけで俺等が来たわけだ。説明、こんなもんでいいか?」
「とりあえず、俺が舐められていることはわかった。ひとまずはグレモリーとシトリーの娘に出向いてもらうとしよう。わざわざ俺が向かってやるなどありえんからな。……見ているのはわかっているぞ、小娘共。聖剣を使った街を吹き飛ばす術も十数分もすれば発動しするし、止める方法は俺を倒すことだけだ。戦力の逐次投入などアホのすることだぞ?」
「俺等がやって駄目だったときゃ逃げるに決まってるだろ。何言ってんだあんた」
「口の減らん餓鬼だな。貴様らを殺さずに捕らえる。そうなればグレモリーとシトリーのことだ、こちらの思うつぼだと分かっていても逃げることなく死にに来るに違いない」
戦闘時の連携についての話し合いを終え、来て早々に「なぜグレモリーとシトリーの娘は来ていないのか」と聞かれたので答えてやったらなんかキレていた。敵対勢力の奴だからと敬語を使わなかったのがまずかったのだろうか。ソーナ姉さんたちが来たらまずいのは分かりきってるんだし、こいつも当然こうなることは予想していたと思っていたんだが。
それにしても街を吹き飛ばす術式発動まで十分そこそこか。こいつみたいに俺等を侮ってるやつはわざわざ嘘なんかつかないから間違いではないだろう。あと五分もすればライザーさまが来るはずだし、到着してから攻撃に移っても十分だな。
ちなみに初めに説明しようとした姫島さんはバラキエルのことでおちょくられ、役に立たなくなったので後ろに下がっている。同じ『女王』として、それがどうした言い切るくらいの気概が欲しかったんだがなぁ。
「かといって俺が雑魚の相手をするというのも面倒だ。バルパー、お前らで片付けろ。魔物も何体か貸してやる」
お、雑魚との戦闘をまずするらしい。これでゆっくり始末すればそこそこ時間が稼げるな。
「ああ、任せてくれ。赤龍帝を含む一団なら統合されたエクスカリバーの初陣に相応しい」
「………………」
胡散臭い笑顔を浮かべて神父に促され、虚ろな目をした白髪のエクソシストがエクスカリバーを構える。白髪と言うことはフリードと同じ教会の戦士育成機関出身なのだろう。というか、フリードいないのに五本も統合したエクスカリバーを使えるやつを作れたんだな。原作では聖剣使いの因子を埋め込まれたやつはフリード以外全員死んだって言ってたのに。統合が済んでいたことよりそっちの方が意外だった。あいつほどの改造適正ってそうそういないと思ってたんだがなぁ。
あと聖剣の纏ってるオーラがなんか拍子抜け。他の皆は差はあれど恐れを抱いたようだが、俺にはまるで感じなかった。なんというか、ただそこにあるだけって気がしてならない。
まぁ俺の感想は置いといて、聖剣使いの後ろから魔物がぞろぞろと現れ出した。ケルベロスが二頭に下位のドラゴン―――翼もないし魔力の質も良くないので地龍ではなく亜龍とかその辺だろう―――が数体、人間には名前も知られていない程度の実力の魔物も含めて雑魚が数十体か。これだけの数をさばくのはグレモリー眷属にはきついだろう。遠距離からバカスカ撃ってればいい誠二はともかく、倍加の済んでいない兵藤あたりがぱっくりいかれそうだ。
それに木場の成長イベントを折るのもな。今後の事考えるとここらで壁を越えてもらいたい。
「魔物はこっちで始末するんで、聖剣使いは任せていいっすか、姫島さん?」
「え、ええ。聖剣使いは任せてください」
「んじゃそういうことで。行くぞ匙!」
「おう!」
時間稼ぎが目的だ。コカビエルがタメ撃ちしないよう警戒しながら、確実に、安全に行こう。