転生して会長の甥っ子   作:ぬがー

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第12話

―――木場佑斗 side ―――

 

 

「――僕は剣になる」

 

 僕の魂と同化した同志たちよ。一緒に超えよう。あのとき、達することのできなかった願いを、今こそッ!

 

「部長の、グレモリー眷属の剣になる! 僕の想いに応えてくれッ! 魔剣創造よッ!」

 

 僕の神器と同志の魂が混じり合う。同調し、新たな形に変化していく。

 魔なる力と聖なる力が一つになった。

 僕の神器が、同志の魂が教えてくれる。これは昇華だと。

 神々しい輝きと、禍々しいオーラと共に僕の手元に現れたのは一本の剣。

 完成したよ、皆。

 

「――禁手(バランス・ブレイカー)、『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)』。聖と魔を有する剣の力、その身で受けてみろ」

 

 僕は聖剣使いに向かって走り出し――

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――突然聖なるオーラが飛んできて聖剣使いを吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――木場佑斗 side out―――

 

 

 

「…………………………………………………………」

 

「空気読めよゼノヴィア……」

 

「ここは木場がかっこよく木偶野郎を倒すとこだろ……? なんで横槍入れてるんだよ!」

 

「魔力はイメージで、神器は感情で扱う物ですから場の勢いというのは大事ですのに……それを考慮せずに邪魔をするなんて。もしかしてコカビエルと共倒れを狙ってたりしてませんよね?」

 

「な、何を言ってるんだ!? 私は敵を倒しただけだぞ!? 隙を突くのは当たり前の事だろう!? なんでそんな反応なんだッ!?」

 

 魔物どもを割と本気の聖なる氷柱で始末した後、落ちていたエクスカリバーを回収してからグレモリー眷属と合流すると、カオスなことになってた。

 聖魔剣を構えた姿勢で呆然としている木場、デュランダルであろう大剣を携え困惑しているゼノヴィア、ゼノヴィアの空気の読めない行動に憤慨している兵藤兄弟、本気でゼノヴィアへの警戒を強める姫島さんと言った感じで、戦場とは思えない空気に包まれている。ツッコみを入れてくれそうなバルパーは何かぶつぶつ呟きながら考え事に集中してるし、戦う気のあるやつはいないようだ。

 

「なぁ匙。こいつら無視してコカビエルと戦わね? 手柄分けてやる必要ないと思うんだ。元々全体の指揮官は姫島さんだったし、責任は全部被ってもらってさ」

 

「いや、そうしたい気持ちは分かるけどさ。一応声くらいかけてやろうぜ? これでこいつらが死んだら後味が悪い」

 

 まぁそれもそうだな。ここで死んだら木場が禁手に到れるように魔物を引き受けた意味もなくなるし。一言声を掛けとくくらいはしてもいいか。

 そんなことを悠長に考えていると、先にバルパーが動き出した。

 しかしこっちに向かってはいない。彼はコカビエルに向かって叫んでいた。

 

「コカビエル! もしや魔王だけでなく神も死んでいたのかッ!? そうでなければ反発し合う二つの要素が混じり合うなどあるはずがないのだ! 頼む! 教えてくれ!!」

 

 それが事実だと確信しているのに、否定されたくて尋ねているようだった。神の下僕として生きてきた今までの人生が無意味だったと突きつけられるようなことだから、誰かに否定してもらって安心したいのだろう。

 だがコカビエルはそんな願いには答えてくれなかった。

 

「その通りだ。よく理解できたな、誉めてやろう」

 

「そん、な…………」

 

「嘘をつくな! 主が死ぬなど聞いたこともない!!」

 

 かすかな希望を打ち砕かれうなだれるバルパーと、躍起になって否定するゼノヴィア。それにコカビエルは自然体で答える。

 

「貴様らが知らないのは当然だ。神が死んだなどと、誰に言える? 人間は神がいなくては心の均衡も保てず、法も機能しない者の集まりだぞ? 我ら堕天使や悪魔も下々にそれを教えるわけにはいかなかった。どこから情報が漏れるかわかったものじゃないからな。この真実を知っているのは三大勢力のトップと一部の者だけだ」

 

 コカビエルはこういってるけど、実際は他の神話勢力を警戒しての事なんだろうな。個人の戦闘力はともかく、物作りチートとも言える『聖書に記されし神』が死んだと聞いたら、攻め込んでくるような奴はいただろうし。

 しかし、戦闘を開始するつもりが会話パートに入っちまった。とはいえ時間も迫ってるし、隙を見て仕掛けるとするか。

 

「……主が、いない? 主は……死んでいる? なら私たちに与えられる愛は……?」

 

「そんなものは無い。神がすでにいないのだからな、当然のことだ。ミカエルは本当によくやっているよ。神が使用していた『システム』を不完全ながら機能させ、神への祈りも祝福もエクソシストもある程度動作させているのだから。――ただ、神がいるころに比べて、切られる信者は格段に増えたがね。そこの小僧が聖魔剣を作れたのも、神と魔王が死に、聖と魔のバランスが崩れたせいだ。これがなによりの証拠だろう」

 

 それで納得してしまったのか、ゼノヴィアもバルパーと同様に崩れ落ちた。

 一通り説明して満足したのか、コカビエルは拳を天にかざして叫び始める。

 

「俺はあの小娘どもの首を土産に、戦争を始める! 俺だけでもあの時の続きをしてやる! 我ら堕天使こそが最強なのだとサーゼクスにも、ミカエルにも見せつ、ッ!?」

 

「ッ、ああクソ! しくじった! やっぱり拾ったばかりの物をぶっつけで使うもんじゃねぇな!」

 

 俺等を完全に無視して叫んでいたので仕掛けたのだが、腕を一本と翼を二枚切り落とせただけだった。問題なく使えると思ったのだが、問題がなさ過ぎて失敗してしまった。今後は大丈夫そうでも、不確かな手段はできるだけとらないようにしよう。

 

「ま、いいか。このまま畳み掛ける!」

 

「ぐッ、がぁッ!? 最後まで話すくらいさせろ、クソ悪魔が!」

 

「あんな隙を晒すあんたが悪い。おら、さっさと死ね!」

 

 腕を失い体勢が崩れたコカビエルに攻撃を絶え間なく叩き込む。初めはどうにか防いでいたが、すぐに言い返す余裕もなくなり、最後は槍に胸を貫かれてコカビエルは消滅した。

 

「よし、これで戦いは終わりだな。魔法陣もちゃんと消えてるし、あとは壊れた校舎の修理だけか」

 

「……なぁ譲治? お前何してんだ?」

 

「何って、敵を倒しただけじゃねぇか。つーか俺にばっかり戦わせてないでお前らも仕掛けろよ。邪魔になったかもしれないけど、街を守ろうとか、功績を挙げようとか、積極性がまるで見られなかったぞ」

 

 あっちは時間稼いで術式を発動させれば勝ちだと思ってるし、実際そういう設定で戦ってるんだから隙があれば相手の話など無視して仕掛けるべきなのだ。それなのになんで大人しく聞いてんだこいつらは。匙は特訓をよりきつくするようソーナ姉さんに進言しとくか。

 

「あー、それは悪かった。あと、聞き方も悪かったな。お前、その手に持ってるものはなんなんだ?」

 

「エクスカリバーだよ。どうやら俺にも聖剣使いの因子はあったみたいでな、便利そうだから使った。ちなみに最初の一撃は『擬態の聖剣』で扱いやすい槍に変形させて、『透明の聖剣』で姿を隠して『天閃の聖剣』の速度で斬りつけたんだが、速すぎて目測が狂っちまってな。あれがなきゃ一発で終わってたんだが」

 

 聖剣見ても全然怖い感じがしなかったのはこのせいだったっぽいんだよな。目の前にある聖剣が、今の持ち主より俺を選んだことがなんとなく察知できていたためだったのだと思う。

 四分の一は生まれつき悪魔な俺に聖剣使いの因子があったのには驚いたが、あって困るものではないし深く考えなくていいだろう。どうせ『システム』が上手く機能していないからとかに違いない。

 

「よく三つも同時に使えたな。しかも手にしてすぐに」

 

「そんなに難しくなかったぞ? 少なくとも俺にとっては」

 

 原作でもフリードは『天閃の聖剣』『透明の聖剣』『擬態の聖剣』を同時に使用して、見えない無数の刃が高速で飛んでくるという攻撃を統合が済んですぐに繰り出していた。原作のゼノヴィアが不器用過ぎただけだと思う。

 

「何はともあれ、これで事件は解決だ。姫島さん、号令を」

 

「え? ……あ、そうですね、わかりましたわ。皆さん! 戦いはお終いです! 部長達と合流しましょう!」

 

 俺が話を振っても理解できず、少しの間呆けていたがきちんと撤退の指示は出してくれた。これでバルパーを縛ってソーナ姉さんと合流すれば今回の事件は決着だ。

 いやー、それにしても堕天使の幹部撃破って言う功績に、七つに分けられたうちの五本だけとはいえ伝説の聖剣エクスカリバーが手に入るとは。やったことの割に報酬が大きくて笑いが止まらないな。今夜はいい夢見れそうだ。

 

 

 

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