転生して会長の甥っ子   作:ぬがー

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停止校庭のアウトロー
第13話


 コカビエル襲来の傷跡(ほぼ俺が弾いたケルベロスとドラゴンの炎弾が原因)も修復し終わり、魔王二人がやってくるという豪華すぎる公開授業も(他の裏絡みの保護者がビビっていて参観どころではなかったこと以外は)無事に済んだ次の日の事、俺と匙はリアスさんに頼まれて旧校舎一階の「開かずの教室」に来ていた。俺等の他にグレモリー眷属が勢揃いしている。

 なんでもコカビエル討伐の功績で、討伐に共に参加したシトリー眷属が同じ場所にいれば封印状態だったもう一人の『僧侶』を解放してもいいと四大魔王、大王バアル家、大公アガレス家なんかのお偉いさんから許可が出たそうだ。今日はその『僧侶』との顔合わせの為に前線メンバーとして共に戦った俺と匙は呼ばれたらしい。

 『女王』である俺に問題児を見せておくのはともかく、匙まで呼んだのは誠二の仕業だろうな。『黒い龍脈』で『停止世界の邪眼』の力を吸わせて安定させるつもりなんだろう。どうせ対価はとるんだから初めからそういう理由で呼べばいいのに。

 ソーナ姉さん抜きでとなると、『女王』である俺が交渉をしないといけなくなるのだ。そして俺はソーナ姉さんのように花壇の手入れ手伝いとかのただ同然の対価でで願いを叶えてやるのを認められない。そんなことしているのがばれたら、ただでさえ低いシトリー家の評価がさらに下がってしまうからな。もう『グレモリー家の腰巾着』認識なんだから下がりようがないとかは言うな。そうなると交渉が長引く。グレモリー眷属は俺にとって居心地の悪い場所なのでそんなことはしないで欲しかった。

 

「………………」

 

「なんだよゼノヴィア。言いたいことがあるなら言えっての」

 

「……いや、なんでもない。納得してやったことだからな」

 

「ならじっと見るのやめてくれ。気になってしょうがない」

 

 コカビエルの戦闘の後、リアスさんの『騎士』になってからこいつはずっとこんな感じだ。いつもぼーっとしていて元気がなく、俺を見つけるとじーっと見続けてくる。正直、うっとおしくてしょうがない。俺にとってグレモリー眷属が居心地の悪い原因がこいつだった。

 そんなゼノヴィアを見かねたのか、兵藤が話しかけてきた。

 

「なぁ譲治、頼むからゼノヴィアにデュランダル返してやってくれないか? 今まで心の支えにしてたもの、二つとも一気になくしちまって、見てられないんだよ」

 

「嫌に決まってるだろ。正当な『契約』で渡された物なんだから、あれはもうシトリー家の財産で、下賜された俺の所有物だ。欲しけりゃ相応の対価を用意しろ」

 

 そういえばゼノヴィアの元気がなくなったのって、俺にデュランダルを渡してからだったな。デュランダルを扱う特訓に集中しすぎて忘れてた。

 なんで俺にデュランダルが渡っているかというと、簡単に言うと紫藤イリナが騒いだせいだ。

 曰く「教会の最終兵器である聖剣を悪魔に渡すわけにはいかない」だとか。使い手がゼノヴィア以外いないデュランダルはともかく、他に使い手が見繕えるエクスカリバーは返さないとまずいとか言いだしたのだ。

 だが俺は返す気はなかった。魔力でも同じことはできるがこっちの方が使い勝手がいいし、実際のところ返さなくても問題ないだろうと考えていたからだ。元々教会はメンツの為に捨てるつもりで二人にエクスカリバーを持たせて奪還任務に向かわせていたのだから、返さないとまずいというのはこいつらの勝手な思い込みだろうってな。

 だがリアスさんが教会に恨みを買わないように返却するように言ってきたので「グレモリー家は伝説の聖剣一本にその使い手、そして領地を守れたこと。シトリー家は伝説の聖剣一本と『グレモリー領で事件を起こしたコカビエル討伐で多大な貢献をした』という恩をグレモリー家に売れたこと。これで戦利品の分配は平等にできているのだから、文句は聞かないしこちらの所有物についてリアスさんに命令する権利はない。だが手持ちの聖剣を誰に渡そうがそちらの勝手」と返した。その後は長々と交渉が続いたが、結局『グレモリー家の戦利品がエクスカリバー、シトリー家の戦利品がデュランダル』ということで話が付いたのだ。これはリアスさんの『騎士』になることに応じたゼノヴィアも承知の上での決定だった。最後の奉公とか言ってたな。

 この後、デュランダルを使用可能だった俺に―――まさかここまでの因子があるとは思わなかった。研究試料にするくらいのつもりだったんだがな。―――ソーナ姉さんが下賜したため、俺が兵藤に「返せ」とか言われてるわけだ。そういう文句はこっちに渡したリアスさんに言ってほしい。

 

「ならどんなのなら対価になるんだよ。せめてそれくらいは教えてくれ」

 

「デュランダルと釣り合うくらいの伝説の聖剣だな。聖王剣コールブランドとか、七本全部が統合されたエクスカリバーとか。あと、アスカロン。俺の神器はゲオルギウスも持ってたらしいし興味あるんだよな。名前もジョージだし」

 

 聖ゲオルギウスの英語読みが聖ジョージだからな。俺がアスカロン持ってベイヤードと同じ馬に乗って暴れてたら、聖人が悪魔になったみたいで(悪魔社会では)いい意味で注目してもらえると思うんだ。天使どもは嫌な顔しかしないだろうけどさ。

 

「五本統合されたエクスカリバーとで交換した物なのに七本統合じゃないと駄目なのかよ」

 

「五本統合でもいいって言ったのはそっちだ。こっちとは違う。これで話は終わりだな。ほら、お前がいらんこと言ったせいで『僧侶』の封印を解けなくてリアスさんが困ってるぞ」

 

 実際は困っているという感じじゃなく、かなりおっかない表情でこっちを見ている。それに気づいて兵藤は慌てて謝った。

 

「すみません部長! どうぞ開けてください!」

 

「……はぁ。できるなら始めから静かにしておいて欲しかったわ。じゃ、開けるわよ」

 

 扉に刻まれていた刻印を消し去り、ゆっくりと扉を開いていく。

 

『イヤァァァァァアアアアアアッ!!』

 

 とんでもない声量の悲鳴が響くがリアスさんと姫島さんは無視して進む。明らかに人外の咆哮っぽい大きさの悲鳴にビビってる兵藤は置いてけぼりだ。

 

『ごきげんよう。元気そうで良かったわ』

 

『な、な、何事ですかぁ~~~!?』

 

『封印が解けたのですよ。もうお外に出られるのです。さぁ私たちと一緒にでましょう?』

 

 リアスさんも姫島さんもやわらかい声で話しかける。声にいたわりを感じるな。やんわりと接してあげようって感じだ。

 しかし―――

 

『やですぅぅぅぅぅ! ここがいいですぅぅぅぅぅ! 外に行きたくないっ! 他人に会いたくないですぅぅぅぅぅっ!』

 

 うん、原作通り酷い引きこもりだな。のんびりやってたらすごく時間がかかりそうだ。具体的には、部屋の中で自力で『停止世界の邪眼』を制御できるだけの魔法の腕が身につけるまで。聞いた話では一応努力はしているらしいんだよ、魔法の本読んだり、ネット通信で冥界のコルネリウスさんに教えを仰いだりな。もっとも吸血鬼の国に置いて行った幼馴染を助けたいとも思っているらしいが、長命種ゆえに数百年くらいの計画をたてているせいでがむしゃらさはないと聞いたけど。

 ただこれから原作の事件が本格的に起こり始めるのでそうも言ってられない。さっさと行動を始めてもらわないとな。

 部屋をのぞいてみると、奥に駒王学園の女子制服を着た美少女っぽいやつがいた。あれがギャスパーだろう。

 マジで美少女にしか見えないギャスパーに興奮する兵藤に木場が説明して大騒ぎをしている中、リアスさんが俺に話しかけてきた。

 

「どうかしら、ギャスパーは?」

 

「そうっすね、魔力とか魔法力の量じゃアルジェントに負けてるっぽいっすけど、吸血鬼の能力もあるし強力な神器も持ってる。すごい人財だと思いますよ」

 

 これでさらに内側にバロールの欠片が眠ってるんだっけ? 教会の連中が狩るせいで実験体が手に入りにくい吸血鬼ってだけで興味があるのに、本気で解体して調べたくなるな。

 

「そうじゃなくて、神器の暴走よ。どうにかなりそう?」

 

「匙の協力があればどうにでも。暴走っつっても要は力を入れ過ぎてるだけですから。慣れれば治まるでしょう」

 

「そう。じゃあ対価は―――でどうかしら?」

 

「ちょっと匙のこと軽く考えすぎじゃないっすか? ―――くらいは貰わないと」

 

「それは身内贔屓が過ぎると思うわ。とはいえ私も軽く見ていたかもしれないし、―――でどう?」

 

 当のギャスパーほったらかしのまま交渉は進み、兵藤の血液とそこそこの金銭で片が付いた。他の条件を言いまくってから譲歩したように要求したおかげで、神器を強化できる赤龍帝の血がかなりの量手に入ったぜ。これで匙や真羅さん、そしてもちろん俺も強化が期待できるな。

 

 

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