ようやく三大勢力の会談がやってきた。色々と忙しかったけど、準備段階では何も問題が起きなかったのは幸いだったな。この分、始まってからは反対派の妨害があるだろうけど、ずっと嫌がらせを喰らうよりはマシだからな。
ソーナ姉さんを先頭に会議室に入る。そこには既にリアスさんとその眷属以外の全員が揃っていた。
まず悪魔側ではサーゼクスさま、セラフォルーさま、給仕係のグレイフィアさま、そして戦争再開派の殲滅を行っていたライザーさまと眷属一同がいた。普段は魔法少女姿のセラフォルーさまも、ワル系ホストっぽいライザーさまも今日は正装だ。学校の制服で来て大丈夫だったのだろうかと、今更ながら思えてきた。
次に天使側。先日もお会いしたミカエルさんに、お付きの女性が一人。お付きの人は護衛も一応兼ねているようでそこそこの光力を感じるな。
最後に堕天使側。アザゼル総督に銀髪の誰かが座っていた。この銀髪がおそらく白龍皇のヴァーリなのだろう。ただ説明がまだなので悪魔側の大半の人から「誰だこいつ?」みたいな目で見られていた。
これを見た感想としては「悪魔側だけ人員連れて来すぎだろ」これに尽きる。
よくこんな今まで敵だった奴らがたくさんいる場所に自勢力のトップが向かうことを部下たちは認めたな。魔王も二人いるし、魔王級のグレイフィアさまも、最近はスルト・セカンドさまを相手に食い下がるようになったというライザーさまもいる。袋叩きにすれば確実に天使と堕天使のトップを討ち取れるような状況だぞ。普通もっと護衛を連れて行かせようとするだろう。
まぁ、サーゼクスさまがいる時点で過剰戦力だし、足枷になるソーナ姉さんやリアスさんも参加してるからトップがろくに護衛を連れずに来ても問題なかったのかな? いくら考えても分からないんだし、今はこの辺でやめておくか。
「私の可愛い妹と、眷属たちだよ☆ この間のコカビエル襲撃でも大活躍したんだから!」
元気いっぱいにセラフォルーさまが言う。服装は普通でも、言動はいつものままなんですね……。
「報告は受けています。改めてお礼を申し上げます」
ミカエルさんの礼に、ソーナ姉さんは会釈を返した。直接の上役じゃないし、過剰な返事をするわけにはいかないからな。これくらいが妥当だろう。
「悪かったな。俺のとこのコカビエルが迷惑をかけた」
軽いなー、堕天使の総督。悪びれる様子が欠片もないし、自分とこの実質的な軍部の最高司令を殺されたってのに気にした様子もない。原作でもコカビエルはアザゼル総督を疎んじていたし、政敵を排除できた程度なのか? どうとらえていいか分からず、ソーナ姉さんも微妙な顔をしていた。
「そこの席に座りなさい」
サーゼクスさまに指示されて、グレイフィアさまに促された席に着いてしばし待つ。
俺達から遅れる事少し、リアスさんたちが入室してきたことで全員そろったため、会議が始まった。
「というように我々天使は―――」
ミカエルさんが話し、
「そうだな、その方が良いだろう。このままでは確実に三勢力とも滅びの道を―――」
サーゼクスさまがそれに同意しつつ話を進め、
「ま、俺らは特にこだわる必要もないけどな」
アザゼル総督が場の空気を時々凍りつかせる。
本人は周りの反応を楽しんでいるのかもしれないが、こっちからしたらシャレにならないので本当にやめてほしい。
なにせ堕天使だけは悪魔や天使と違って、戦争をする理由を無くしていないのだ。いや、始めから無かったと言うべきか。
悪魔は魔王ルシファーを新たなる神にするため、天使は『聖書の神』を守るために戦争をしていたが、堕天使の戦争をしていた理由は『感情に任せた暴走』だったからな。興味が別の物に移ったために戦争は中断されたが、また戦争をしたい気分にならないとは言えない。契約では嘘はつかない悪魔や亡き神に誓ったことは反故にしない天使と違って、堕天使は種族的な制約をほぼ持たない上に『聖書の神』を裏切ったという前科を持っているからなおさらだ。
まぁ和平の意思は本当だったようで、順調に会談は進み、ついにリアスさんとソーナ姉さんの出番になった。
「さて、リアス、ソーナ。そろそろ、先日の事件について話してもらおうか」
「「はい」」
事件が起こるまでの出来事についてはリアスさんが説明し、事件が起きてからの対応についてはソーナ姉さんが説明した。聞いている人の反応は様々だったが、リアスさんは「穴があったら入りたい」って感じの顔をしていたな。自分の領地で問題が起きたのに、その解決にほぼ自分が関われていなかったという報告をしているんだから仕方ないとは思うけど。かといって宣戦布告を受けたのはリアスさんなんだし、報告役にしないわけにはいかなかったので我慢してもらうしかない。
リアスさんがつっかえながらもどうにか報告は終わり、後は事前に話し合いで決めていたことをなぞっていくだけになったので、前払いでもらったという堕天使の研究資料の検証について考えていると、急に話題を振られた。
「さて、そろそろ俺たち以外に、世界に影響を及ぼしそうな奴らの意見を聞こうか。騒動に好かれるドラゴンさまと、トンデモ性能の転生者にな」
? アザゼル総督がこっちを見て何か言っている。えっと、つまり―――
「……………………俺らもっすか?」
「そうだよ。決まってるだろ? なにせどの神話勢力のシステムにも従わず、摩耗して亡者になることもなかった魂の生まれ変わりが『転生者』だ。その転生者の中でも異常に強いってんだから、不確定要素としては二天龍よりよっぽど警戒されてるぞ。一応体は悪魔にはなっているようだが魂まで変化しているかは怪しいし、すでに『神の子』や英雄でさえ不可能だった自力での完全な蘇生をやってのけてるんだからな。また異常なことを起こしてもおかしくない」
あー、魔法使いでは転生者は『優秀な後継者』として好意的に受け入れられてるけど、各神話勢力のトップ勢にとっては『どこにも所属していないはぐれ者』に見えるわけか。そのうえ普通ならどこにも所属していなければ悪魔にも感知できない亡者となり、最後には消滅するだけだが、その状況でどうにかできてしまった俺らみたいなのは『不可能とされていることでもどうにかできてしまう存在』に見えると。そりゃ行動の方針くらいは聞きたくなるか。
「で、どうなんだ? 和平は賛成か、それとも反対か?」
「俺は賛成です。領地をそこそこに運営して、魔法の研究をのんびりやっていくにはそっちの方がいいので」
「俺も賛成です。戦いたいならレーティングゲームがありますし、わざわざ命をチップに戦争したいとは思いません」
裏の世界に関わるようになって荒事には慣れて来たし体に引っ張られて殺し合いも平気になって来たけど、それでも犠牲者がたくさん出る戦争は勘弁だ。やりたいこともろくにできなくなっちまう。
「そうか。じゃあドラゴンどもはどうだ? お前らは世界をどうしたい?」
口じゃどうとでもいえるし、一応聞くだけだったんだろうな。和平に反対はしていないってことを確認したいだけだったのかもしれない。早々にアザゼル総督は視線を二天龍に移して質問をしていた。
「俺は強いやつと戦えればそれでいいさ。とは言え、俺もまだまだ未熟だからな。今は実戦経験を積めるなら何でもいい。戦争でも、交流試合とかでもな」
ヴァーリは戦闘狂らしく、玉虫色の答えを返す。アザゼル総督が他の全員から「きちんと教育しとけやコラ」って感じで見られてるけど、ヴァーリもアザゼル総督もまるで答えた様子がないな。
「じゃあ赤龍帝、おまえはどうだ?」
「えっと……。俺、馬鹿なんでこの会談の内容も9割くらい意味不明です。正直、後輩悪魔の面倒を見るのに必死なのに、世界どうこうとか言われても、なんというか、実感が湧きません。でも、俺―――」
兵藤がバカを自白した後、なにか良さげなことを言おうとした時、覚えのある力がこの部屋、いやもっと広範囲に作用した。
―――ついに来たか、旧魔王派の襲撃が。