転生して会長の甥っ子   作:ぬがー

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第16話

「ほいっと」

 

 まずはデュランダルを異空間から取り出してソーナ姉さんの防御。『停止世界の邪眼』は視界に収めたモノの時間を停止させる神器なので、魔力で『視界を遮る』効果を持たせた霧でも発生させれば全員を一度に守れるんだが、他のお偉いさんの自衛を妨害してしまったら政治的にまずいのでこういう手段をとった。

 ちなみに俺自身は特に防御とかはしていない。常時発動している『聖馬の寵』の障壁があるから追加で防御するまでもないからな。

 

「動けるやつ残ってるか?」

 

「俺は動けるぞ」

 

「私も動けます」

 

 ギャスパーとろくに会っていないため事態が理解できていないソーナ姉さんに代わってシトリー眷属に呼びかけると、匙と真羅さんだけが返事を返してきた。

 見てみると匙の体と椅子を大量のラインが繋いでいる。たぶん匙に作用した時間停止の力を全て椅子に流したのだろう。

 真羅さんの方は『追憶の鏡』でも出して防御したんだと思う。何でもできる『女王』じゃなく、速度強化だけの『騎士』になったせいか、原作よりも反応速度とかは速くなってるっぽいからな。持久力はともかく、瞬発力なら木場やゼノヴィアよりも上だ。匙を呼びに来たときなんかにギャスパーの神器も見ているし、これくらいは防げて当然だろう。

 

「他の皆は?」

 

「止まってるよ。とりあえず、ラインを繋いでおくな。本数は少ないからすぐには無理だろうけど、少しすれば時間停止の力も抜けるだろ」

 

 そう言って匙がラインを皆に繋ぐ。このペースで吸ってれば、十分もすれば動き出すだろう。

 

「ジョージ、予想されていた妨害が行われたというのは分かるのですが、何をされたのかがわかりません。説明してもらえますか」

 

「うっす。どうもギャスパーが反対派の連中に捕まったみたいで、あいつの神器を魔法なり神器なりで強化して外にいる護衛の兵を固めたんだと思います。こっちはついでじゃないですかね? 『停止世界の邪眼』は実力差があるやつには効かないんで、反応もできないし、護衛も付けてない地位の低い雑兵を除くために使ったんじゃないかと」

 

「なるほど。それならこの状況も納得できます」

 

 ソーナ姉さんの視線の先には、各陣営のトップたち―――サーゼクスさま、セラフォルーさま、グレイフィアさま、ミカエルさん、アザゼル総督の五人――と俺と同等の魔法力を持つ誠二、スルト・セカンドさまに鍛えられて一気に強くなったライザーさまとその『女王』のユーベルーナと『僧侶』の二人などの実力者が時間を止められずに状況把握に努めていた。リアスさんだけは動ける理由が謎だったが、たぶんサーゼクスさまが過保護した結果だろう。

 そしてサーゼクスさまに言われて俺と誠二、ユーベルーナさん、美南風さんの四人の魔力攻撃で魔法使いたちを何度も全滅させていると、兵藤と木場が動けるようになった。

 

「さて、そろそろこっちも動き出そうか。まずはテロリストの活動拠点になっている旧校舎からギャスパーくんを奪い返すのが目的となる。このまま『停止世界の邪眼』の効果を高められると、私たちも止められかねないからね。そうなれば校舎ごと吹き飛ばされるだろうし」

 

「お兄さま、私が行きますわ。ギャスパーは私の下僕です。私が責任を持って奪い返してきます」

 

 強い意志を乗せてリアスさんは進言するが、奪われてテロに利用されたこととか、上級悪魔の眷属は魔法使いの協会に契約の為データを送っているんだから当然テロリスト共は知っていると分かっていたはずなのに何の対策も講じなかったこととか、その辺の責任についてはどう考えているのだろうか? なんか都合よく無視している気がする。サーゼクスさまもリアスさんには激甘だからその辺のことはうやむやにして、功績だけ与えたりしそうだしさ。魔王が実家から縁を切ったというのはなんだったんだ。

 それに原作と違って部室に『戦車』の駒を置いてたりもしない。誠二に使ったからな。どうやって旧校舎まで行くつもりなんだろうか?

 

「言うと思っていたよ。妹の性格くらい把握している。―――しかし、旧校舎まではどうやって行く? 通常の転移は魔法に阻まれるよ」

 

「あれくらいの相手なら正面突破も可能です。罠があればそれも消し飛ばしてみせます」

 

 まさかのゴリ押し。

 いや、確かに表にいる程度の奴らなら誠二が暴れればそれで押し通れるけどさぁ、だからって真っ向から攻めるのは脳筋過ぎないか?

 キャスリングで転移しようが、正面突破しようが、魔王や天使長、堕天使の総督が直接乗り込んできた場合に備えてた罠が仕掛けていたら高確率で死ぬのは変わらないとはいえ、これはあんまりだと思う。

 ライザーさまもそう思ったのか、慌てて前に出た。

 

「サーゼクスさま、次期当主たる妻を支えるのは婿の役目、リアスの補佐を俺と眷属が務めます。ユーベルーナとレイヴェル、誠二に暴れさせて気を引き、美南風に穏行と気配遮断をさせれば相手に気付かれることなく、リアスと俺は消耗せずに侵入するのも不可能ではないはずです」

 

「ふむ、確かに君たちがついていればどうにかなるかもしれない……」

 

 そう言ってサーゼクスさまはライザーさまとその眷属を見て、次に誠二を見て返事をしようとしたが、それをアザゼル総督が遮った。

 

「その程度じゃ陽動としてはいまいちだろ。ヴァーリ」

 

「なんだ、アザゼル」

 

「お前も悪魔の新人どもと外で暴れてこい。二天龍が前線に出てくれば、野郎どもの作戦も多少は乱せるだろうさ。それにここからトップ勢以外がほぼいなくなれば、向こうも何か動きを見せるかもしれない」

 

「それは、私も眷属を率いて前線に出ろ、ということですか?」

 

 アザゼル総督の言葉にソーナ姉さんが反応する。確かにソーナ姉さんもトップ勢以外の新人の悪魔ではあるが、この場でその反応はまずいだろう。堕天使の総督が悪魔の人員に勝手に指示を出したようになってしまうし、なによりセラフォルーさまが凄い顔をしている。テロリストより先にセラフォルーさまがアザゼル総督を殺しにかかりそうな表情だ。

 しかしアザゼル総督は動じない。先ほどの会議と同じく、からかって遊んでいるような表情だ。

 

「ほぼっつったろ? シスコン魔王の妹まで意味もなく前線に出られちゃ逆に困る。悪魔の新人つーのはサーゼクスも出すつもりだった連中のことだよ。なぁ」

 

「まぁ、そうだね。リアスとソーナの眷属には前線で暴れてもらおうと思ってたよ。それに白龍皇も加わってくれるならより敵の目を引き付けることができるだろう」

 

「どっちかつーと敵の排除じゃなくて、研究試料の奪い合いみたいに群がってくる気もするけどな。少なくとも俺ならそうする」

 

「そこはあまり関係ないでしょう。肝心なのは敵が集まってくるということだけ。こちらからは戦力を出せないのが心苦しいですが、その辺は護衛を多く連れてきた人の義務ということで」

 

 アザゼル総督の言葉にサーゼクスさまとミカエルさんが同意したため、この作戦で行くことになった。

 まず俺が突撃して前線を崩し、その後誠二とヴァーリが魔力攻撃を叩き込み、それから残りが攻め込むと言う手筈だ。

 だが実行の直前でリアスさんが話しかけてきた。

 

「ジョージ、ちょっといいかしら?」

 

「なんすか? 戦闘直前なんでさっさと済ましてもらいたいんすけど」

 

「そう時間はとらせないわよ。簡単に言うと『聖馬の寵』をイッセーに貸してあげてほしいの。一気に駆け抜けるのならともかく、あの子はまだ地力が低いから集中的に狙われたら危ないもの」

 

「それが狙いなんじゃないですか。ヘイト集めない兵藤なんてただの足手まといですよ」

 

 まだ弱くても『赤龍帝』だ。打ち倒せば大きな功績になるし、貴重な研究試料も手にすることができる。魔法使いにとっては三大勢力の和平なんてなんの興味もないもので、戦果を上げて経歴に箔をつけるためか、貴重な純血悪魔や純粋な天使、堕天使を研究試料として捕らえるために参戦しているのだから、こっちの狙いが分かっていても飛びつくだろう。

 そして兵藤が狙われた時、それを止めるのは誠二と木場の仕事だ。結果として守りの薄い木場が弾幕張られて死のうが、誠二が神器で力を封じられてやられようが、兵藤が手足をもがれようが、『赤龍帝の死』で魔法使いたちが興味を失わなければOKという作戦なのだから、過剰に守りを固めて諦められては駄目なのだ。

 なので話を終わらせてさっさと敵に斬り込もうとしたのだが、ソーナ姉さんがリアスさんに助け舟を出してしまった。

 

「いいじゃないですか、貸してあげれば。大きな攻撃さえ被弾しなければ中級悪魔と同程度の力量しかない魔法使いには手におえない硬さを誇る相手だとばれたりはしませんし、その分騎乗していないあなたに敵は集まるでしょう。シトリー眷属の『女王』として、グレモリー眷属の『兵士』に助力しながらでも十分に活躍できるところを見せてもらえませんか?」

 

「まぁぶっちゃけ無しでも俺個人は困らないから構わないですし、ソーナ姉さんがそう言うなら絶対にダメとは言いません。狭い場所での戦闘に向けて神器なしの戦い方も鍛えてますからね。でも対価を貰えないと無理っすよ、悪魔的に」

 

「何がいいの?」

 

「現金がいいです。和平が成ったら他勢力の物も流れてきますから。金はいくらあっても困りません」

 

「いいわ、言い値を払ってあげる。だから余程の事がない限り馬を回収したりしないでよ?」

 

「了解です、ではテロリストの集団との戦闘中は貸出ということで。じゃあ俺は行きます。ベイ、きちんと兵藤を守ってやるんだぞ」

 

 ベイは返事に一度鳴いた後、兵頭のほうに歩いていき襟首くわえて振り回して騎乗させた。

 よし、これで準備は完了。開幕の聖剣ブッパ喰らえやオラァッー!

 

 

 

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