俺の聖剣ブッパと、誠二とヴァーリの魔力攻撃で三度魔法使いたちが全滅した校庭に『騎士』の走力で駆け出す。
再度魔法使いたちが転移してくる前に移動しておかないと不意を突けない。俺よりは遅い『戦車』の誠二と本気を出していないヴァーリ、そして速度重視の『騎士』である真羅さんと木場も置き去りにする速度で校庭の中心に移動した。
そして魔法陣が輝き外から魔法使いたちが転移してくる。
「「「「「うおっ!?」」」」」
「おおおおぉぉぉぉぉッ!」
驚く魔法使いを余所に全力で魔力を放ち一気に凍結させる。そうして出来上がった氷像は即座に亜空間にできるだけ放り込んだ。
また魔法使いが転移してきた。今度はど真ん中に俺がいるのを感知されていた様で中心付近の奴らはこっちを見ていたが、それは誠二が放った魔弾で全滅し、俺も背を向けて校舎を攻めている奴らの手足をデュランダルで斬り飛ばして凍らせ異空間に放り込んだ。
その後は近接対策にキメラも転移してきたりしたがやることは変わらず、斬って動きを封じてから速攻で凍らせて確保していった。
少しの間、そんな風に戦い続けていると、余裕が出て来たのか誠二が話しかけてきた。
「なんだ、今日はやけにやる気じゃんか。全部凍らせて倒すとか、縛りプレイでもやってんのか?」
「バーカ、そんなんじゃねーよ。戦場で加減して死んだらどうするんだ」
特に神器持ちには禁手化という一発逆転のチャンスがあるのだ。さらに例え持っていなくても、実はまだ覚醒していなかっただけで土壇場になって目覚めることもある。おまけに不完全な覚醒だと制御が不可能なかわりに匙の『黒い龍脈』が過剰な速度で力を吸い上げていたように、また真羅さんの『追憶の鏡』が異形の存在を鏡を通して呼び寄せる力を与えていたように、本来の物以上に強力だったり、本来の物とは全く別物の力が発現したりもする。それ以外にも危険だらけの実戦で無意味に隙を作るほど俺は馬鹿じゃない。
「後でこいつらの頭を調べて、研究成果を回収するんだよ。テロリストに加担するくらいだし、俺ら真っ当な悪魔や魔法使いには出来ないような実験のデータとか溜めこんでるだろうしな。対象の生存を考慮せずに脳みそ調べればかなりの事は分かるし、どうせ殺す相手なんだから有効活用しないと損だろ? 十中八九大した成果は持ってないとしても、可能性はゼロじゃないんだからさ。それに何の情報も得られなかったとしても、魔法の実験台とか、キメラの材料とか、用途は色々あるんだし捨てるのはもったいないだろ?」
「……本当に裏に関わってからの5年で悪魔とか魔法使いの考えに染まってんだな。悪魔歴の短いうえに人間界暮らしの俺にはできねー考え方だわ」
「いや、こんだけ殺しまくってるお前も相当だろ? 悪魔の体に精神が引っ張られまくってるって。固有能力で戦うタイプか、魔法も使うタイプの違いだと思うぞ?」
誠二のような自分の体と魔力、神器で戦う奴らにとって、テロリストと手を組んだ魔法使いなど害悪でしかないのだからためらいなく排除するだろう。だが俺のような魔法も使うタイプなら、わずかながら価値は見いだせるからこうして回収しているだけの話。それを年季の差みたいに言うのは間違っていると思う。
その後も雑談を続けながら魔法使いを虐殺していると、校舎からアザゼル総督と見たことのある高位の悪魔が飛び出してきた。
「お、出て来たな。あれって原作通りカテレアであってるか?」
「たぶんな。旧魔王派の資料に載ってたのと同じだからあってると思う」
悪魔は見た目を自由に変えられるけど、それだけに公式な場とかで使う姿は一つに決めるものだからな。アザゼル総督と互角に戦えているところを見ると影武者ではないだろうし、他に戦える連中が来たのなら自分の姿で戦うだろうから間違いないだろう。
「そうなるとあいつは真の魔王の血を引いてるのか。不意打ち仕掛けて試料取りに行ったりしねーの?」
「んなことするか。それでアザゼル総督巻き込んだら向こうの作戦通り和平が決裂しかねないじゃねぇか」
「コカビエルの時みたいに話してるところを狙えばいいじゃんか。実力的に隙を突けばどうにかなりそうだぞ? 原作でも『魔人化』の薬とか作れてたし、あんたなら狙いそうな気がしてたんだが」
「俺はお前にどんな風に見られてるんだ。そんなレヴィアタン家に恨まれそうなことやらねーよ。殺しても文句つけてくる奴のいない魔法使いと一緒にするな」
そんなことしたら敵が増えすぎて研究どころじゃなくなっちまう。そんな本末転倒なことする気はないぞ。
いや、まぁ、確かに真の魔王の血ってのには興味あるんだけどな。
なにせかつては悪魔と一つにまとめ上げていた存在だ。現在では内乱の火種をいくつも抱え、超越者を輩出し『悪魔の駒』で戦力を補充して戦力的には最大であっても「三大勢力で最弱」と誰もが認識しているほどまとまりがない種族を、セラフォルーさまやファルビウムさま、レーティングゲームのトップランカーなんかと同等程度の力で完全に支配していたのだ。なんらかの特別な力を持っていたに違いない。普通の悪魔にしか感じられないほど血が薄いとしても、わずかでも流れているのだから調べたいと思う気持ちは確かにある。
だがあそこまでただの悪魔と変わらないようなら、傍流とされている連中が攻めて来たときに確保すればそれで十分だ。わざわざ幹部を狙って買う恨みと釣り合う程の価値はない。
それにアザゼル総督も同じことを考えている可能性はあるしな。赤龍帝の血が神器所有者の成長に有効と知っているのなら、それと対になる白龍皇の血液についても調べているのだろう。魔王の血が混ざったときの反応について調べるため、グリゴリにヴァーリの血が残されている可能性は十分にある。
「おい、カテレアが何か取り出したぞ。あれってオーフィスの『蛇』じゃないか?」
「お、もうか。じゃあヴァーリの裏切りもすぐだな」
『蛇』を飲んで急激にパワーアップしたカテレアにアザゼル総督は無数の光の矢を放つが、それはカテレアが腕を一振りするだけでかき消されてしまった。
そしてヴァーリが反旗を翻し、アザゼル総督を襲う。
俺と誠二は「カテレアはなぜ追撃しないのだろう?」と思いながら、他の余裕があった者は呆然とそれを眺めていた。
「……来ないな」
「? 何がだ?」
「ああ、いや、なんでもない。ただの考えすぎだったみたいだからな」
「……それならいいんだけどさ。あんたしか知らない情報を話さなかったせいで心構えなしで事に当たらされるのは勘弁してくれよ」
「できるだけな。そんなことになって俺も巻き込まれそうだったら話す。心構え無しで当たった方がよさそうな時は言わんぞ」
話している間にも展開は進む。アザゼル総督がドラゴンっぽい形をした黄金の鎧を纏ってカテレアを圧倒し、自爆用の術式で道連れにされかけるも片腕を犠牲に離脱した。
その次に、ヴァーリが『宿命のライバル』ということになっている兵藤に向き直る。
「これで雑魚の相手は終わりだな。回収っと」
一時的に神器の展開をやめ、再度すぐ近くに出現させた。
「…………やっぱり回収すんのか。もうちょっと兄さんに貸してやってくんない?」
「無茶言うな。兵藤なんか乗せてたら実力の十分の一も発揮できずにやられるだろうが。ベイが殺されたら俺も死ぬんだぞ? 貰うことになってる対価じゃ全然足りねぇって」
「だよなぁ。火事場の馬鹿力に期待するしかねぇか」
「それで十分だろ。少なくとも、下手に協力するよりはな」
感情の高ぶりに合わせて理不尽なまでの力を発揮する神滅具に、おかしなところで常人どころか悪魔の域も超えて感情が高ぶる兵藤、そして本領を発揮できるまで待ってくれる敵と三拍子揃っているため、大して心配はせずにいると、空気が変わったような気がした。
「なんだ、これ?」
「結界……にしては変な気がするな。何かの神器の禁手か?」
「―――ええ、その通りです」
気配もなく近づいてきた声の方に、俺と誠二はすぐさま振り返る。
見れば俺らと変わらない量の魔力と魔法力を感じさせる悪魔が立っていた。この顔は前に見たことがあるな。
「はぐれ悪魔のユーリか。遅い登場だったな。来ないのかと思ってたぞ」
「禁手の仕様上、どうしてもこのタイミングまで仕掛けられなかったもので。
そんなことより、私はあなたたちに話があってここに来たのです。聞いてくれませんか?」
「……えーと、どういう状況だ、これ?」
「ちょっと黙ってろ。たぶん直ぐに説明してくれるからよ」
「ええ、それは勿論です。事情も話さずに協力してもらえるとは思っていませんよ」
ユーリはそこで一息入れてこう続けた。
「ではまず本題から。同じ『原作』が存在した世界からの転生者のよしみで、私に魔王の元へ案内してほしいのです」