転生して会長の甥っ子   作:ぬがー

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初試合のシトリー
第20話


「えーっと、これをこうすれば……おお、本当にできた。堕天使の技術はやっぱりすごいな」

 

 三大勢力の会談も終わり、人間界でやらなければいけないことはなくなったので、俺は一足早めに夏休みに入り冥界で研究を行っていた。

 内容は『天使、堕天使のアイテムと技術の解析、及びそれを流用した新しい魔法具の開発』だ。長年敵対した相手からもらった技術なので罠を忍ばせていないか確認は必須だし、使える技術なら取り込まない手はないからな。原作知識がなくても三大勢力の和平が結ばれたこと――というより『聖書の神』という技術チートが死んだのを公開したこと――で激動の時期に入るのは予想できるし、一刻も早く力をつけることが必要という名目で学校サボってこんなことをやっているわけだ。

 まぁ実際の理由は楽しいからなんだが、それを言うとソーナ姉さんに止まられてしまうので黙っている。

 そんな生活を日付が分からなくなるくらい続けていたら、とうとう誰かが呼びに来た。

 

「失礼いたします」

 

 入って来たのは爺さまに仕えるメイドの一人だった。見た目は若いが実際はシトリー家に長く仕えており、研究室に入っても問題など起こさないと信頼されているくらいには優秀な人である。爺さまが通信機を使うのではなく、彼女が言いに来たということはそれなりに大事な知らせがあるのだろう。

 

「ジョージさま、つい先ほどお嬢さまが冥界入りしました。仁村さまはこれが初の冥界ですので、列車を使って戻られるそうです。出迎えには来なくて構わないそうですが「明日ルシファードに向かうので準備は怠らないように」とおっしゃっていました」

 

「え、もうルシファードに行くのか? 今日何日?」

 

「人間界の時間で七月二十七日です」

 

 マジか、若手悪魔の会合明日じゃん。てっきりもう少し早めに冥界入りすると思ってたから、到着したって連絡が来てから準備すればいいと思ってたのに。いくら礼儀作法は全員に教えてあるからってギリギリ過ぎるだろう。

 

「ま、いいか。一応遅刻はしないんだし。じゃ、ソーナ姉さんには了解って伝えといて」

 

「承知しました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、結局俺達が最後でしたね」

 

「別に問題ないでしょう。時間には間に合ったわけですから」

 

 俺としてはサイラオーグさまがゼファードルさまのところにいる転生者と久しぶりに話でもしたかったんだが、ソーナ姉さんがギリギリの時間にしよう、と言ったので到着がこの時間になった。まぁその気持ちもわからないでもない。

 なにせソーナ姉さんは一般の悪魔には『魔王である姉の威を借りて好き勝手している横暴貴族』って印象を持たれているからな。実際は周囲の人がセラフォルーさまにビビって気を利かせすぎているだけなんだが、はたからだとソーナ姉さんが脅しているようにしか見えず、こんな噂が広まってしまったのだ。そのせいで冥界では眷属が集めにくかったので、ソーナ姉さんの眷属は全員人間なのである(シトリー領はそうではなかったが、ソーナ姉さん曰く「上下関係がはっきりしすぎてフレンドリーさがない」と言う理由で却下された。どうも魔王さまたちのような関係を眷属と築きたかったらしい)。

 まぁ人間界の学校になんか通ってないで冥界のメディアにでも出て人柄をアピールしていればそんなことはなかっただろうし、言ってしまえば自業自得なんだが。それでも自分が来たらそそくさと住人が去っていくようなところで長々と居たくないと思ってしまうのは仕方ないだろう。

 

 

 

 

 

 若手悪魔の待合室に着いてからは適当に挨拶をして回り、ようやく会合を行う部屋に通された。俺達が到着する少し前に吹っ飛ばされたゼファードルさまもだ。腫れは引いていないようだが、歩けるくらいにはなったようである。リアスさんもアーシア貸してあげればいいのに。でかい貸しを作るチャンスだと言うのになんで逃すんだろうか? まぁあの人は基本おバカなので深く考えてもしょうがない。ゼファードルさま、マジ哀れくらいに思っとこう。

 会合を行う部屋にはかなり高い位置に席が置かれていて、そこに現在の悪魔政府を運営していくうえで重要な役職を担う方々が座っていた。一番上は当然魔王さま達だ。今までこの会合に参加する魔王は多くて二人、悪ければ一人も来ないこともあったそうだが、今回は自分たちの弟妹が来ているとあって全員参加していた。

 そして、司会役と思われる初老の男性悪魔が口を開いた。

 

「よく、集まってくれた。次世代を担う貴殿らの顔を改めて確認するために集まってもらった。これは一定周期ごとに行う、若い悪魔を見定めるための会合でもある」

 

 まず会合の意味について説明され、その後は魔王さま方が引っ掻き回しながらも、レーティングゲームについてのややこしい話以外は例年と同じように会談は進んでいった。レーティングゲームは今回の若手悪魔の顔ぶれがあまりに豪勢なので急遽することになったイベントだったらしい。

 この途中でサイラオーグさまが「前線で暴れたい」的なことを言っていたが、やんわりとサーゼクスさまに止められていたな。俺も経験が薄いうちは罠に嵌りやすいので、いくら実力があろうがただの子供が前線に出るのはやめた方が良いと思う。理不尽としか言いようのない力を場の勢いだけで引き出し状況を打破できる神滅具持ちや前例がないおかげで対策の立てられにくい変異種基準で発言しないでほしいものだ。

 そして誠二や匙、兵藤などの人間組、つまりこういった場に不慣れな連中がいい加減辛そうになった頃に、ようやく話がついた。

 

「さて、長い話に付き合わせてしまって申し訳なかった。なに、私たちは若いキミたちに私たちなりの夢や希望を見ているのだよ。それだけは理解してほしい。キミたちは冥界の宝なのだ」

 

 そう思うのなら貴方の妹への贔屓をどうにかしてほしい。セラフォルーさまのわがままアピールとは違って、必要なことではないんでしょう? 今回話が長引いたのだって『リアスさんたちを弱い方から順に戦わせようとする』サーゼクスさまと、『サイラオーグさまとシーグヴァイラさまが活躍できる順で戦わせ旧序列が今だ健在である』と示したい貴族派での言い争いが長引いた原因だしさ。

 勿論そんな口は挟めず、サーゼクスさまは話を続けた。

 

「では最後に、それぞれの今後の目標を聞かせてもらえないだろうか?」

 

 本日、俺にとって最も嫌な話題を振られた。原作知識でわかっていたとはいえ、自分の『王』の脳のお花畑具合が知られるのは恥ずかしい。何度か進言したが結局改めてはくれなかったんだよなぁ。むしろ余計頑固になってしまった。もう俺にはどうしようもない。

 何か事件でも起きて中断されろ、と願うが現実は思い通りにはなってくれず立場が上の者から返事をし始めた。

 

「俺は魔王になるのが夢です」

 

 最初に答えたのはサイラオーグさま。貴族派筆頭のバアル家の次期当主であり、誰もが『若手悪魔で最強』と認めている人物なので当然の位置だろう。言ってる夢が叶った時にはバアル家の次期当主ではなくなるので、バアル家は『滅びの力』を持った次男が当主となることができ、後援している貴族派の権限も大きく増すことができるのでお偉いさんたちには受けが良かった。バアル家の権力が強くなり過ぎるのを警戒している現魔王派の人には「前代未聞だ」って警戒されてたけどな。

 

「私はグレモリー家次期当主として生き、レーティングゲームのプレイヤーとして各大会で優勝することが近い将来の目標ですわ」

 

 次は魔王のまとめ役であるサーゼクスさまに贔屓されまくっているリアスさんだ。人間界の領地の経営では無能を晒したが、そんなこと冥界の人たちは知らないのでこの順番になった。親の光は七光りというが、『ルシファー』である兄の光は七どころでは済まないらしい。

 その次は、大公アガレス家のシーグヴァイラさまだった。旧序列2位のアガレス家の生まれながら、魔王眷属としてもう働いている人の言葉はさすがに重みがあったな。原作のレイヴェルと同じで誰かの眷属になると駒がもらえなくなるんだが、功績あげて自力で駒を獲得しただけのことはあるって感じだった。

 四番手はアジュカさまを輩出したアスタロト家の生まれで、和平以前に「教会の聖女、高名な修道女などを堕落させる」という功績をいくつも挙げているがディオドラさま。ただ三大勢力で和平を結んでしまったので修道女には手を出せなくなったし、アジュカさまはサーゼクスさまのように弟を贔屓しようとはしないので若干落ち目となっている不遇な人だ。ゆえにこの順番になった。

 そして今まで次期当主ですらなかったゼファードルさまの発表が終わり、ようやくソーナ姉さんの番が来た。

 この順番になった理由は色々あるが、傍にいた人が止められるようにするため魔王の中でセラフォルーさまは一番格下とされているのが大きいだろう。人間界にばかりいて、冥界での人脈が乏しいと言うのもあるかもしれない。贔屓されるのが当然みたいな顔しやがって、という思いも混ざってる気がする。

 そんな冥界では浮きまくってるソーナ姉さんが、悪魔の常識では頭に蛆でも湧いてるのかと思われるようなことを言い放つ。

 

「私の目標は、冥界にレーティングゲームの学校を建てることです」

 

 

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