転生して会長の甥っ子   作:ぬがー

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第28話

 ――決戦の時刻。

 既に日は落ちて、夜になっている。

 俺と匙、回復と補助以外の能力が死んでるアルジェントの足役をすることになった由良(俺、誠二提案。機動力ゼロ、紙装甲の回復役を放置とかありえん)は他の前線メンバーと共に会談が行われる高層高級ホテルの屋上にいた。

 周囲のビルの屋上にはうちの『王』と残りのメンバー、レイヴェル嬢が配置され、ロキが来たときに用意した戦場に飛ばせるよう準備していた。本気でロキがここで戦うつもりなら端から削られて全く機能しないような準備だが、向こうは自身の戦力に絶対の自信を持ってるようだし、こっちの目論見を看破したうえで乗ってくると推測された――つーかオーディンに断言された――からこうなったんだよな。

 アザゼル総督は原作と同じで会談のバラキエルさんにロスヴァイセさん、タンニーンさまも原作通りの配置についている。

 原作と違う点といえばライザーさまだな。レイヴェル嬢以外の眷属率いて前線で戦うつもりで来ている。

 その戦闘態勢って言うのが独特で、『兵士』が全員鳥に変化し『戦車』『騎士』の背中に二羽ずつ付き、援護をしたり不意打ちに備える、という物なのだ。レーティングゲームではまず使わない、罠などが存在しない戦場でのフォーメーションらしい。

 歳経た悪魔なら人間体以外の姿に成って戦う方が強いと言う純血悪魔はそこそこいるが、百年も生きていないのに動物形態を実戦で使えるレベルまで鍛えてるとこなんて聞いたことがない。セカンドさまのしごきが始まってからじゃ間に合うとは思えないし、以前から鍛えていたんだろう。

 ライザーさま、自分は鍛えるの嫌いだったのに教師適性めちゃくちゃ高いな。原作でも兵藤が半年くらいでライザーさまを追い抜けるだけの才能があるって見抜いてたし、そっち方面に才能があったんだと思う。実はライザーさまはオリ主で、俺らはモブ転生者だって言われたら信じてしまいそうなレベルだ。

 ヴァーリ達は少し離れたところで待機している。もう少し近い方が黒歌が何かやらかしたときに首が刎ねやすくていいのだが、断られてしまったのでそもそもやらかしにくい場所に配置されたのだ。

 

「――時間ね。」

 

 リアスさんが腕時計を見て呟く。

 会談が始まったってことは、すぐにロキが来るな。原作以上の戦力が集まってるし不意打ちしてこないか若干心配だが、この時間までは何もしてこなかったんだから今さらそう言うことはしてこないと思う。

 

「来ました。予想通り小細工なし、連れてるのも今はフェンリルだけです」

 

 精霊魔法を用いれば感知ではトップの誠二が到来を告げた。

 その直後ホテルの上空が歪み始め、空いた大穴からロキとフェンリルが現れた。

 ソーナ姉さんと俺ら以外のシトリー眷属はそれに合わせ、戦場を移すための大型魔法陣を展開する。リアスさんもできればこっちを担当してほしかったんだが、絶対嫌だと言う上に唯一止められるアザゼル総督――入り婿のライザーさま、姫さまとして扱うタンニーンさまでは止められない――も止めなかったので戦闘メンバーなっちまったんだよなぁ……。

 まぁそれはもういい。置いておこう。

 ここでもロキは予想を裏切ることなく、転移に抵抗することはなかった。

 どんな罠があろうと食い破れるだけの戦力を持ってきたという自信がそうさせるんだろうが、原作より大分多い戦力を用意しているのに反応が変わらないとなると少々おっかないな。追加でなにか持って来ていると考えて行動した方が良さそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 で転移先、現在は使われていない古い採石場に着いた。

 普通なら転移による逃走、及び増援対策として結界が張られるのだが、今回は無しだ。理由は張ったところでフェンリルが軽く爪を振るえば飛んだ斬撃であっさり壊されるだろうから。現在はまだ知らないことになっているが、仮にフェンリルを抑えられたとしても採石場の外にはスコルとハティもいるし、マジで張る意味ないんだよな。

 転移後の配置はヴァーリチームを少し離れたところに飛ばして、こっちは固まってフェンリルを警戒。ロキとフェンリルは転移班程度の実力ではばらけさせるのは無理なので、反応できる程度に距離をとったところに転移させられていた。

 

「逃げないのね」

 

 リアスさんが皮肉げに言うと、ロキは笑ってこう返した。

 

「なぜ逃げる必要があるのだ? どうせ抵抗してくるのだから、ここで始末した後でホテルに戻ればいいだけだ。こういった場では形式を気にして会談には時間はかかるだろうからな。遅いか早いかの違いでしかない。どちらにしろオーディンには退場していただく」

 

「貴殿は危険な考えに捕らわれているな」

 

「危険な考え方を持ったのはそちらが先だ。各神話勢力の協力などと……。元はと言えば、相容れぬ存在が手を取り合う前例を作ってしまったせいで全ては歪みだしたのだ」

 

 バラキエルが発した言葉に、ロキはとても忌々しそうな顔をする。その気持ちは分からないでもない。

 なにせ前例ができた結果が、自尊心の塊みたいな神々の交流だ。今までは接点がなかったから問題は起きなかったが、これからは起きてしまう可能性があるし、下手すれば全神話勢力を巻き込んだラグナロクだってあり得る。「『余所の神話勢力ごときの神』がでかい顔していた」とかで短気な戦神が暴れ出すとかのかなり起きそうなきっかけがあれば十分だろう。

 今までではありえなかったことにオーディンが興味を引かれなければ『禍の団』だって他人事で済ますことが出来た北欧神話勢力からすればいい迷惑ということだな。

 まぁなんでラグナロクを起こす側のロキに言われるのかだけは謎だが。自分以外が原因というのは納得できないとかだろうか?

 まぁ悪魔としてはそうしなければ対処しきれるか怪しいので、いくら迷惑かけようがやめることはないだろうけどな。他に手がないから。

 

「話し合いは不毛か」

 

 お互い何を言おうとやることは変わらない事の確認も終わり、バラキエルも十枚の翼を広げ雷光を纏い戦闘態勢になる。

 

Welsh(ウルシュ) Dragon(ドラゴン) Balance(バランス) Breaker(ブレイカー)!!!!!』

 

Vanishing(バニシング) Dragon(ドラゴン) Balance(バランス) Breaker(ブレイカー)!!!!!』

 

 兵藤とヴァーリも禁手を発動し、それぞれ赤と白の全身鎧を纏う。

 それを見てロキは忌々しそうだった顔を一転させ、とても楽しそうな表情を浮かべた。

 

「これは素晴らしい! 二天龍がただ一人の神を倒すために共闘すると言うのかッ! おそらく我が初めてだろうなッ! こんなに胸が高鳴ることはないぞッ!!」

 

 超嬉しそうだな。やっぱり会談に反対したのは自分が目立てなくなる可能性が高いっていうのが理由っぽいな。

 そんな気の抜けたことを考えながら、命がけの戦いが始まった。

 

 

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