転生して会長の甥っ子   作:ぬがー

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第29話

 真っ先にヴァーリが飛び出した。

 純白の翼を広げ、狙いをつけにくいよう空をジグザグに高速で進んでいく。

 地上からは兵藤が背中の魔力噴出口を全開にしてそれに続く。こちらは攪乱や回避を一切考えない愚直な突進だ。

 それらに対してロキは防御魔法陣を全身に展開しつつ、攻撃用の物も同時に展開していく。

 今回放たれたのは、追尾性の高い光の帯だった。光は悪魔の弱点だから選んだんだろうが、小手調べ感が半端ない攻撃だ。

 案の定、それらはヴァーリには全て回避され、兵藤は被弾しながら突き進んでいく。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

 十分に近づいたところでドラゴンの翼を広げて跳び上がり、16384倍に強化された拳で殴りつける。

 ロキが張っていた障壁は一撃で全て破壊されたが、ロキ自身には全く攻撃が届いていない。完全に威力を見切られてるな。

 

「――とりあえず、初手だ」

 

 障壁がなくなったところを狙って、ヴァーリが北欧魔術の大規模砲撃を放つ。ロキの耐久力を測るつもりのようで、ろくに収束せず採石場の三分の一くらいを撃ち抜いた。これで底が見えない大穴を開けられるというのはさすがだな。

 

「ふはははは!」

 

 だがロキもさすがは神と言うべきか、砲撃をとっさに展開した障壁で防ぎ、上空に転移したおかげで被害はローブが少々破れているくらいだ。反応も早かったし、俺が戦うなら魔力、魔法は補助程度と割り切って剣や槍で戦った方が良さそうだな。

 一方、兵藤は障壁で転移の時間を稼ぐこともできない威力の攻撃を選択したらしく、ミョルニルを手に取りロキに突きつけた。

 

「……ミョルニルか。トールが渡すわけがないし、レプリカか? それにしても危険な物を手にしている。オーディンめ、そこまでして会談を成功させたいのか……ッ!」

 

 怒りの表情で固まるロキ。それをチャンスと思ったのか、フェイントも入れずに兵藤がミョルニルで殴りかかるが当然躱された。勿論邪な心だらけの兵藤が振るっても雷は発生しなかった。込めたのが魔力やドラゴンのオーラじゃなく、神力だったらまた違っただろうけどな。

 

「ふははは、やはり貴様ごときには扱えないか。驚かせよって」

 

 本来の担い手以外でも使えるよう調整して来ていることを警戒していたのだろう。若干ロキの顔がほっとしているような気がする。

 が、それも一瞬で消えて、攻撃的は表情になった。

 

「そろそろこちらも本格的に攻めさせてもらおうかッ!

 ―――我が僕フェンリル! 神を殺す牙を持つ獣! おまえたちがフェンリルに勝てるというのならかかってくるがいいッ!」

 

 ロキがフェンリルに指示を出す。それと同時にリアスさんが合図を出した。

 

「はいっと」

 

 俺は魔法陣を展開し、そこから亜空間にしまっておいたグレイプニルを取り出す。巨大すぎて取り回しづらいそれを皆でフェンリル目掛けて投げつけた。

 

「ふん、そんなもの効くものか。グレイプニル対策などとうの昔に―――」

 

 ロキはそれを嘲笑い、フェンリルも避けようとさえしなかったが、ダークエルフによって強化された魔法の鎖は意志を持つかのようにフェンリルの体に巻き付いて行く。

 

「オオオオオオオンッ!」

 

 フェンリルは苦しそうな悲鳴を上げ、身を捩じらせるが直ぐに身動きがとれなくなった。

 その上で匙が『漆黒の領域』で力を吸い、『邪龍の黒炎』で焼き、『黒い龍脈』をフェンリルに巻き付け拘束するとともにフェンリルを閉じ込める『龍の牢獄』に吸った力を移して強度を上げていく。これで強化されたグレイプニル対策があろうと内側から抜け出すことはまず出来なくなった。

 俺はその黒箱と匙を氷で覆い、外部からの攻撃がすぐには届かないようにする。あとは戦闘終了までこれを守るのが俺の役割だ。

 まずは手始めに氷をさらに囲むように成長し始めている木を全て凍らせ砕く。

 

「黒歌っ! てめぇはロキの相手が仕事だろうがッ! 余計なことすんな、先に殺すぞ!!」

 

「ひどーい。私はもっと守りを堅くしてあげようと思っただけなんだけどにゃー」

 

「信用が欠片もねぇんだよお前はッ! 最前線で体張ってろッ!!」

 

 文句を言う黒歌を一喝して最前線に追い返す。

 原作知識だとグレイプニルで捕らえたフェンリルはスコルとハティに解放されるが、ヴァーリチームならそれを阻止することくらいならできたはずなのだ。牙と爪はフェンリル並でも、それ以外は大きく劣っているのだからできないわけがない。

 それなのに解放されたということは、フェンリルを手に入れる口実を作るために見逃したと言うことだ。わざわざ『支配の聖剣』も持って来ているし、ロキと戦うことに次ぐ第二の目的が『フェンリルの確保』というのはこの世界でも変わらないんだろう。

 そんなヴァーリチームの黒歌に防御を担当させたら絶対ろくなことにならない。成長させた樹を操って、氷ごと匙を押しつぶしフェンリルを強奪していくくらいはするだろう。

 匙を守るためにも、将来敵になるかもしれない連中に過剰な戦力を持たせないためにも、そんなことをさせるわけにはいかないな。

 こんな感じでいきなり仲間割れを起こしているそばで、ロキは余裕を保ち次の召喚を行っていた。

 

「スペックは落ちるが―――」

 

 ロキの背後の空間が歪み、そこから二頭の狼が現れた。フェンリルには及ばないが巨大な躰を持ち、牙と爪からはフェンリル並に嫌な気配がする。

 

「フェンリルとヤルンヴィドに住む巨人の子、スコルとハティだ。親と比べても遜色ない爪牙を持っていてな。十分に神を葬れるだけの力を持っているのだ」

 

 灰色の毛並みを撫でながら言うロキ。リアスさんを始め何名かが愕然とした表情をしているが、これならまだ十分に対応できる範囲内だ。これとミドガルズオルム・クローンで終わりだといいんだがな。

 

「そして」

 

 終わりではなかったらしい。再びロキの背後の空間が歪みだす。

 現れたのはかなりの力を感じる馬だった。異形ではないが魔法の力は感じるな俺のベイも並のドラゴン相手なら当たり負けしないくらいの力はあるんだが、それよりは遥かに強そうだ。アレは一体なんだ?

 

「我が夫スヴァジルファリだ。元は巨人族の魔法の馬でな、巨人をも上回る力を持っている。我らのコンビネーションを前に貴様らはどれだけ持つかな?」

 

 馬に騎乗し自慢げに言う。虚勢って感じは一切しないな。

 原作の戦力に転生者二人、魔改造ライザーさま、ライザーさまの強化に伴って与えられる力が増大したフェニックス眷属が加わっても戦力の追加がこれだけってことは、相当な自信があるんだろう。実際、ロキの魔法にスヴァジルファリのパワーの組み合わせは厄介そうだ。少なくともミョルニルを投げて当たることはまずないだろう。

 あとは他にも何か持って来ているかだな。原作でもミドガルズオルム・クローンを追加で出してたし、そこでもさらに何か出てくると考えておこう。

 それにしてもグレモリー眷属が静かだな。敵が新しい手札を見せたら一々大騒ぎするやつらだと思ってたんだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ、えええええええええぇぇぇぇぇッ!!!!!!???? 夫!? 相棒とかじゃなくてッ!? ホモのケモナーか!!?? ハイレベルすぎるだろッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………いきなり何言ってんだこいつは。呆けてただけかよ。

 神話読めば獣姦も同性愛も性転換も普通にあるだろうに何を今さら……ってああ、そういえばこの世界は各神話勢力が自陣営の情報を漏らさないために神話とかあんまり伝わってなかったな。前世知識で神話情報あったから忘れてた。

 よく見てみればグレモリー眷属は全員そんな感じでグダグダな雰囲気に包まれている。うちの由良も同様だ。

 それを落ち着かせるためにフェニックス眷属が動いている。そのせいでグダグダな雰囲気がフェニックス眷属まで伝染しているのが現状だ。

 タンニーンさま、ライザーさまの両名が落ち着かせるのは部下に任せて油断なく警戒してくれているのがせめてもの救いだな。

 

「…………」

 

 で、当のロキはと言うと、こっちもグレモリー眷属の反応が気に入らなかったのか不機嫌そうな顔をしていた。怒っていると言うよりふて腐れているような様子だな。誇り高い神として、自分と戦うと言うのに変なところでグダグダになっているのは嫌だったんだろう。

 と思ったら何か悩んでいるような顔に変わった。何か思いついたのか?

 再度召喚を始めた。どうもさらに手札を見せてこの妙な空気を換えようとしているのだろう。

 空間のゆがみから現れたのは原作にも出てきた五体のミドガルズオルム・クローン。明らかに危険そうな咆哮で場の空気は一変する。ロキもまともな反応が返ってきて満足げだ。

 だがこれでは終わらなかった。空間の歪みから八本脚の馬が出てくる。それが十頭。スレイプニルの複製体か。ミドガルズオルムやフェンリルを量産しようとしてるんだから、そりゃこっちも量産するよな。

 

「下僕たちよ、前座は早々に終わらせて『神々の黄昏』を始めるぞ! さぁ、食い殺すがいいッ!」

 

 

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