ロキとの戦闘が始まり、フェンリルを抑えてから数分が過ぎた。
戦況はロキ、スヴァジルファリ戦以外はこちらが優勢だ。ヴァーリチームは個々の戦闘力が高いから安定して敵戦力を削ってるし、リアスさんたちもスコルに炎を無効化されるせいで決定打に欠けているが、それでも少しずつ敵を減らしている。
俺の方も隙を窺って仕掛けてくるやつをデュランダルで斬ったり、フェンリルを閉じ込める氷牢に氷柱を生やして弾き返したりしてしっかり守れているからな。
ただ肝心の二天龍が押されているのがまずい。ロキが健在だとさらに増援を呼ばれる可能性がある。
まだまだ体力は残っているっぽいのがせめてもの救いだが、要は全力で攻撃しても炎の壁を突破できないから適当に反撃しながら逃げてイラつかせるしかないって言うのが現状だ。
まぁヴァーリの方は炎を避けながら何か対策を立てる余裕があるみたいだが、兵藤は出来るだけ消耗を抑えながら避けるだけで手いっぱいのようなので、早めに援護に行かないと危ないかもしれないな。
「匙の準備が終われば手伝えるんだが――――って、行った傍から終了か。ナイス匙」
見れば『龍の牢獄』から『黒い龍脈』が生えて氷牢に繋がっている。これは全力じゃなくても抑え続けられるまでフェンリルが弱体化したことを表わしている。
匙の負担が軽減され多少の揺れがあろうと問題なく抑えられ続けるようになったので、本格的に行動ができる。
まずは氷牢に亜空間から取り出した脚部パーツを取り付ける。氷牢が大きすぎたせいで八つ取りつけたので、巨大なクモみたいになった。
さらに砲門を取り出して氷牢に接続。とりあえず前後左右上下にそれぞれ三つずつくらいつけとけばいいか。
これで機動砲台の完成である。匙がフェンリルから流している『神殺し』の力を砲弾に乗せて放つのでロキには効果抜群だ。
「二天龍、いい加減飽きて来たぞ? 逃げてばかりではないか? これ以上退屈させると言うのなら下僕相手に善戦しているあちらに相手してもらうとするが。そうだな、手足を端から焼いて楽しませてもらうとしようか。何やらミドガルズオルムのクローンたちはあの回復役の少女が気になっているようだし、喰わせてやるのもいいかもしれんな」
「ッ! んなことさせるか! 勝ったわけじゃないのに逃げてんじゃねェぞッ!」
兵藤が怒りと共に本日最大のドラゴンショットを放つ。それをロキは喜々としてレーヴァテインを振るい打ち消した。
「ははははは。なんだ、できるではないか。その調子で頑張れ」
「舐めんなッ!」
怒りに任せて兵藤はドラゴンショットを乱れ撃つ。それらは全てレーヴァテインの炎で焼かれて消えていった。
が、悪いことばかりではない。炎がそちらばかりに集中して、反対側は大分薄くなっている。こっち側が薄くなったら砲撃してみるか。
今ッ!
「…………何するんだよヴァーリ」
「俺が遊んでいる玩具だ。横取りは許さん」
俺が放った『神殺し』の弾丸は炎の壁を突き破りロキに迫ったが、ヴァーリの砲撃によってロキごと吹っ飛ばされた。
妨害がなければレーヴァテインは弾き飛ばし、ロキに自身にもダメージを与えて戦闘不能にできただろうに邪魔しやがって。結局ダメージは全身が焦げてるくらいで済んじまったじゃねーか。
「そう怒らないでほしいんだがな。こちらにも思惑はあるし、あの炎とやつらの持つ抵抗力に対する対抗術式が今完成した。披露してやるからそれで許せ」
そう言ってヴァーリはジグザグにロキへ向かって飛んでいく。
ロキも吹き飛ばされた恨みか、険しい表情で炎を放ちヴァーリを迎え撃つ。それらは先ほどまでと同じように全て回避された。
そのままロキに迫るヴァーリ。だがそれを炎の壁が遮る。
ヴァーリは手元に複雑な魔法陣を展開し、それを通して神器の力を発現させる。
『
宝玉から音声が流れ、ロキを守る炎の壁の体積が半分になった。正確にはロキとヴァーリを遮る部分だけがなくなり、ロキの逃げ場を塞ぐように炎が残っている。
「はぁッ!」
ヴァーリの拳がロキを捕らえ、スヴァジルファリの上から吹き飛ばす。自分で出していた炎なので咄嗟に動かしていたが、それでもローブに少し燃え移った。
スヴァジルファリもロキを殴った勢いで回し蹴りを放ち、ロキとは反対方向に蹴り飛ばした。
『
『
さらにスヴァジルファリの力を半減させ、距離を半分にすることで急接近しスヴァジルファリの力を上乗せした拳で殴りつける。
これでミンチにならないスヴァジルファリの耐久力はさすがだが、もう戦闘は出来ないだろう。
「とまぁこんな具合だ。これ以上は消化試合にしかならないから俺達は帰らせてもらう」
一発いいのをかましてスッキリした様子のヴァーリが言う。
一発殴っただけで動かなくなったとはいえまだまだ元気なのに勝った宣言もどうかと思うが、攻撃時に出していた魔法陣の構成をみる限りもうロキはヴァーリにとって敵にはなりえそうになかったんだよな。防戦しているうちに完全に解析しきったということか。殴ったことで『半減』の発動条件も満たしたし、これ以上やり合う意味を感じなくなったんだろう。
まぁレーヴァテインが本来の使い手かそれと似た性質を持つ者の元にあればこう上手くはいかなかっただろうけどな。
ロキは『聖書の神』と同じで作るのが本領であって、自分で使う、戦うのは得意分野とは言えなかったから数分解析した程度で完封できるような魔法を構築できたんだろう。スルト・オリジナルが使ってたらどんなに対抗術式を用意しようとそれごと焼き払われた可能性が高い。
「ここから先はこっちに丸投げか。兵藤への試練か何かか? あとテロリストが神殺しの狼持って行くのはやめてほしいんだが」
責められるのは無理言ってヴァーリチームを参戦させたアザゼル総督のはずだが、テロリストが『神殺し』を手に入れるのを見逃した、となると同盟を組むことになる他の神話勢力のやつに何言われるかわからないんだよ。俺は『女王』として交渉の場とかにも出るし、前線メンバーとして参戦している上に過保護してくれる強力な後ろ盾もない「文句の言いやすいやつ」なので絶対言われるだろうから勘弁してほしい。
「それは聞けないな。まぁ後始末はアザゼルがするから気にしないことだ。あとロキについてだが、ライバルには早く俺と戦えるようになってもらわないと困るんでね。半端にダメージを与えたから奥の手を使ってくるはずだ。支援込みでならちょうどいい特訓相手だろう」
「き、貴様! 我を当て馬扱いする気か! 許さんぞ!」
「別にお前の許しは必要ないさ。トリックスターらしく裏でこそこそしていればいいものを、見せ場にこだわって表に出てくるからこうなる。精々俺のライバルの糧になってくれ」
怒り狂うロキを無視して、ヴァーリはミドガルズオルム・クローンとスレイプニル・クローンを始末し終えて観戦モードのアーサーたちと合流し、ハティを連れて転移で去って行った。
後には俺と兵藤、そして怒りが限界を超えたのか静かになったロキが残された。
「貧乏くじ引いちまったな。ま、しょうがないか。おい兵藤、もっと距離とっとけ。そこだとたぶん巻き込まれるぞ」
「え、巻き込まれるって何が、ってうおぁッ!?」
ロキが巨大化し始め、兵藤は慌てて距離をとる。
兵藤が離れた後もロキは炎と霜をまき散らしながら着ている服やレーヴァテインごと巨大化し続け、タンニーンさまよりでかい女巨人になった辺りで変態は終了した。
「赤龍帝、貴様自身には特に恨みはないが、我を踏み台扱いした白龍皇への報復だ。使い手を殺し、器を砕き、魂を燃やし尽くし滅ぼしてやるぞッ!」
『相棒、俺がピンチだ。頑張ってくれ』
「ここからが本番だ。行くぞ兵藤ッ!」
「おうっ! 縮尺がおかしいけどかなり美人だからな! 俺の新技が火を噴くぜ!」