第33話
ロキとの戦いの処理も終わりようやく落ち着けてきた頃、次の原作イベントである修学旅行がやってきた。
欲しがる人が俺以外誰もいなかったので捨て値で引き取ることが出来たスコル以外の魔物の死体の解析をしたかったのでサボることも考えたが、ソーナ姉さんが「ジョージがいないと人手が足りなくなる(意訳:兵藤たち変態三人衆は男子に任せた)」と言うので参加した次第だ。
というのは建前で、実際は京都での事件で原作キャラに死なれると今後の原作の事件に対応する戦力が足りなくなる可能性が高いからだ。兵藤はリアスさんとそこまで仲良くないのでアジュカさまから『鍵』も受け取ってないので『赤龍帝の三又成駒』フラグが折れてるし、俺ら転生者がいるとはいえこれ以上の戦力低下は避けたい。
まぁロキ製の魔物は解析したところで実用性のある技術に発展させるまで持って行くには時間がかかるし、悪魔として長生きするコツは「生き急ぎ過ぎない」「明日以降でいいことは先送りにする」だと爺さま達からも言われていたからっていうのも理由の一つではあるんだが。
んで今は京都に向かう新幹線の中で防音結界を張って生徒会会議をやっている。
議題は「確実に覗きに来るであろう変態三人組の対処」だ。
「ジョージ、匙、頑張って下さい。以上です。他に何かありますか?」
「ちょっ、会長! 俺らに丸投げですか!?」
「しょうがないじゃないですか。聞くところによると一誠君は女性の服だけを破壊する技を開発したんでしょう? そうなると女子メンバーは戦力外となりますし、他に手がありません」
「そりゃそうなんですけど、あいつら行動的過ぎてどこから覗くか分かりませんし、人手が……」
「まぁいいじゃんか匙。俺ら二人で十分だって」
どうにか助力を求める匙を止める。非難するような目を向けられるが、こっちにも考えがあって提案しているんだよ。
「ほら魔力を込めて耳を澄ませ。変態どもが騒いでるのが聞こえるぞ。これの罰則って名目で女子の入浴中は反省文でも書かせるなり、作業の手伝いなりさせてればいい。俺らが見張ってれば逃がすこともないだろ」
聞こえてくる声からして騒いでる理由は「旅館でのエロDVD鑑賞会」みたいだからな。機材だのDVDだのを持ってくるのは駒王学園では黙認されることも多いがルール違反だ。しょっ引く理由には困らない。
「マジっぽいな。さっそく行こうぜ」
「おう。んじゃ、こういうことで構わないですよね?」
「勿論です。騒ぎが落ち着く前に抑えに行きなさい」
よっしゃぁ! 面倒なこと一つ安全に片付いた! いくら魔王さまが運営してる頑丈なホテルとは言え、『龍王変化』まで使って妨害しようとしたら倒壊の可能性も出てくるからな。幸先のいい滑り出しだ。
「そう思ってたのにまた事件が起きた。おのれ天龍!」
「しょうがないだろ!? 俺だって好き好んで事件呼んでるわけじゃないんだからさ!」
原作通り京都の妖怪の大将、九尾の狐が行方不明になっていると料亭『大楽』に呼び出されセラフォルーさま直々に伝えられた。原作知識でわかっていたことではあるが、またかと思う気持ちもそれなりにはある。
少なくとも現地に俺らがいない状況なら、正規の戦闘向きな部隊が派遣され俺らは動かなくて済んだだろうからな。バタフライ効果とやらでちょっとくらい変わってくれたっていいだろうに。
アザゼル総督は「何かあったら呼ぶから子供は気にせず旅行を楽しめ」と言ってくれたが、大騒動がほぼ確実に起こると分かっているのにのほほんと遊んでいられるか。無茶言うにもほどがあるわ。
「おい兵藤」
「なんだよ、まだ文句あるのか?」
「いや、それはもういい。それより明日からお前ら夜間の無断外出でこれから自由時間なしな。俺らの仕事を手伝ってもらう」
「ちょっ!? なんだそれ!? 八つ当たり!?」
「お寺、行けないんですか!?」
「それはないだろう。私たちはアザゼル先生に呼ばれて外出したんだ。無断外出ではないはずだぞ」
「そうよ! それなのに遊んじゃ駄目なんて横暴だわ!」
兵藤に言ったら教会三人娘も騒ぎ出した。つーかあの話聞いた直後に遊びの話か。たいがい図太いなこいつらも。
「そう言うことじゃなくてな、まとまって動くための言い訳だ。京都でなんかやらかしてるやつらなら、邪魔になりそうな俺らを先に確固撃破しとこうとか考えてもおかしくないからな。俺もお前らも実力はあっても経験が不足してるし、少人数じゃ足元掬われかねないから提案したんだよ」
特にアルジェントが危険なんだよな。単独戦闘能力ゼロのチームの要であるヒーラー。俺がテロリストなら真っ先に不意打ちで殺しておいてから事件を起こす。その次はアルジェントの死で動揺している兵藤あたりが狙い目かな?
なお俺は神器の効果で常時障壁を展開しているし、匙はヴリトラとの同化が進んでいるせいか凄まじく死ににくく、他のシトリー眷属は優先して排除しなくてはならないほどの価値はないので、実質グレモリー眷属を気遣っての提案だ。
アザゼル総督もそれを察してくれたのか、話に乗ってくれた。
「じゃあ俺の方から生徒会の連中と一緒に無断外出したオカ研の連中を捕まえに行ってたって他の教員には伝えといてやるよ。イッセーが連れ出したってことにすれば違和感はないし、他の生徒巻き込みにくくなるだろうからな。それに一ヶ所に固まっててくれた方が緊急時に連絡もしやすいし」
「んじゃ、そういうことでよろしくお願いします。良かったなグレモリー眷属、これで修学旅行中だいぶ安全に過ごせるぞ」
「……了解。うぅ、せっかくの修学旅行が」
「残念です」
「まぁこの事態ではしょうがないか。敵が潜んでいる土地ではまとまっていた方が安全だからな」
「ただのエクソシストだった頃の任務でも、少人数で行動して死んじゃった人いたもんね。敵を見つける前に戦力減らされちゃ困るし、そのほうがいいかな」
「旅行を楽しめるのも、命あってこそだしね。僕は提案してもらえて良かったと思うよ」
実戦経験の多い剣士三人は勿論、実戦経験と危機意識の薄い二人も外堀を完全に埋まっているので納得してくれたようだ。正直、集団行動が必要な奴こそ理解していないっていうのは心配になるが、その辺の教育はリアスさんの仕事だ。将来それで大事になっても俺は知らん。
「ま、この事件の解決に貢献できれば京都旅行くらいいつでもできるようになるし、修学旅行で遊びたかったら卒業した後でもう一回学校通いなおせばいいさ。麻帆良とかおすすめだぞ。駒王学園より認識疎外結界がきつくてかなりカオスなことになってるからな」
ちなみに麻帆良は通称『ヤキトリ先生』で知られるある魔法の副作用で人外となった高名な魔法使い―――現在は研究の為堕天使陣営に所属―――が完全な人間だった頃、教師をやっていたこともあるらしい。馬鹿でかい樹が結界の中心だし、どこかで聞いたような学園だな。
「……なんか修学旅行の楽しさが減りそうな提案だな。一回しかない高校の修学旅行だからこそ思いっきり楽しめるっていうのに」
「そう考え方もあるな。まぁ今後どうするかは各々自由に決めればいいさ」
『王』の許可なく拠点を変えるわけにはいかないが、ソーナ姉さんやリアスさんはその辺で制限かけてくることはあんまりないだろうからな。やりたいと言えばさせてもらえるだろう。
選択の余地があるのならどうするかはその時に決めればいい。悪魔になったおかげで、時間はたっぷりとあるんだからな。
「話は終わったか? ならそろそろホテルに戻るぞ。ホテルは駒王学園ほど強力な認識疎外結界張ってないから、長時間外出してると一般人の教師に事情説明するの面倒なんだよ」
本気でめんどくさそうなアザゼル総督が言う。長引いたとしても説明するのは教師ってことになってるアザゼル総督に押し付けられるので俺はどうでもいいが、ここにいる意味もないのでさっさと戻るか。