転生して会長の甥っ子   作:ぬがー

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第36話

 朝から俺たちシトリー眷属はグレモリー眷属と共に九重を連れて京都観光を始めた。

 がこの京都観光、始めからケチがついた。何を考えてるのか、グレモリー眷属どもは一般人の桐生と変態×2がついてくるのを許可しようとしやがったのだ。

 一般人がいちゃ行動が制限されるし、目論見通り俺たちに事件の首謀者が食いついた時人質に取られたらどうするつもりだったんだ。いざって時は敵もろとも斬り捨てる覚悟も決めずにつれてくんなと声を大にして言いたい。言ったら斬り捨て前提で考えてることを非難されて話がおかしな方向に行きそうだったから我慢したが。

 結局俺が三人を魔法で寝かせて、体調不良の名目でホテルに戻して外出を禁止したが、空気が気まずい。少なくとも「観光に夢中で隙だらけ」と言う雰囲気は出せていないな。

 まぁそれでも仕掛けてくるときは仕掛けてくるだろうし、居心地の悪さは無視してそのまま観光を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして昼飯も済みしばらく経った頃、渡月橋に来てようやく接触してきた。

 ぬるりとした感触が足元から広がり全身を包んでいく。

 

「よっと」

 

 無いとは思うが万が一転移からの爆殺みたいなコンボを避けるため、全員を防御障壁で包む。『永久に包まれた幻想郷(パラセレネ・ユートピア)』のような行動制限をかけてくるのとか、『異能の棺(トリック・バニッシュ)』みたいな封印系も防げる高性能な奴だ。

 まぁ結局無駄に終わったが、やらずにいて喰らわなくていいもんを喰らうよりはマシだ。幸いにして魔法力はアホみたいにあるからな。

 転移が終了した後で、観光客がいなくなり、足元に霧のようなものが立ち込めていることに他の連中が反応し始める。確かに駆け出しのうちはそっちの方が効率がいいとはいえ、こんな状況なんだから自分の得意分野だけじゃなく魔法とかも学んで感知できるようにしようぜ。

 

「―――この霧は」

 

 霧を見てアルジェントは察することが出来たようだ。

 

「……この感じ、間違いありません。私が捕まった時、神殿の奥でこの霧に包まれてあの装置に捕らわれたんです」

 

「『絶霧(ディメンジョン・ロスト)』だな。ディオドラの事件でも所有者が加担してたんだろ? なら規模と強度的にまず間違いなくそうだろうよ」

 

 とはいえ全然本気ではないんだろうけどな。他のほとんどの結界系神器ではここまでの物を造るのはきついが、『絶霧』の禁手ならこれをさらに大きく、魔術トラップを仕掛けまくった物も造れるだろうから。

 

「お前ら、無事か?」

 

 空からアザゼル総督がやってきた。転移を使わなかったのは魔術トラップを警戒してか。飛んだ方が付近の様子も探れるってのもあるかな。

 

「俺たち以外はこの周囲からキレイさっぱり消えちまってる。俺たちだけ別空間に強制的に転移させられて閉じ込められたと思って間違いないだろう。……この様子だと、渡月橋周辺と全く同じ風景をトレースして作り出した別空間に転移させたのか? ……つーかほとんどアクションなしで俺ら全員転移させるとか。神滅具はこれだから怖いもんだぜ」

 

 確かに事前に分かってないと反応するのはきつい速度で霧が広がったな。これでどんな結界装置でも作れるんだから壊れ性能にもほどがある。『聖書の神』も自分の適性と似たようなモノだから高性能なの創れたんだろうか。

 

「っと、来たな。お前ら構えとけ」

 

 アザゼル総督に促され、匙たちも戦闘態勢をとる。

 意識をアザゼル総督の見ている方に向けると、複数の気配が感じられた。次いで、薄い霧の向こうから人影が近づいてくるのが目視できた。

 一応、魔法とか込みの感知能力なら負けていないと思うのだが、これが年の功と言うやつか。

 

「はじめまして、アザゼル総督。そして赤龍帝、ヴリトラ、ゲオルギウス」

 

 俺らより少し年上に見える黒髪の青年が前にでて挨拶をしてきた。

 手には聖なるオーラを感じる槍。服装は学生服の上から漢服。こいつが曹操か。

 

「お前が噂の英雄派を仕切ってる男か」

 

「曹操と名乗っている。三国志で有名な曹操の子孫―――いちおうね」

 

 名乗ってるってことは、俺みたいな魂を継いだ者ではなく、襲名者か。いちおうって言ってるのは、三国志の英雄の子孫が集まってる集落の出身で、他の英雄の血も流れているとかそんな理由だろう。

 アザゼル総督が曹操から目を離さず、皆に向けて言った。

 

「全員、あの男の持つ槍には絶対気をつけろ。だが信仰心の強い連中はあまり見るな、心を持って行かれるぞ。最強の神滅具『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』だ。神をも貫く絶対の神器とされてる。神滅具の代名詞になった原物。俺も見るのは久しぶりだが……寄りにもよって使い手がテロリストとはな」

 

『―――ッ!?』

 

 事前に知っていた俺以外のほぼ全員が驚いて槍を注視している。

 唯一の例外は九重だ。槍のことなど無視して曹操に叫ぶ。

 

「母上をさらったのはお主たちか!」

 

「左様で」

 

「母上をどうするつもりじゃ!」

 

「お母上には我々の実験に協力していただくのですよ」

 

「実験じゃと? お主ら、何を考えておる!?」

 

「スポンサーの要望を叶えるため、ということになっています」

 

 涙を浮かべ歯をむき出しにして激怒しながら問いただす九重に、曹操は慇懃無礼に返答する。俺らとしては素直に応えてくれて楽でいいが、九重には我慢ならないだろうな。実力行使できるほど強くないから自制してるけどさ。

 問い詰めるために前に出ようとしていた九重を下がらせ、アザゼル総督が曹操に問いかける。

 

「スポンサー……オーフィスのことか? それでこっちに顔見せたのはどういうことだ?」

 

「実験も最終段階に入りましたので、招待しに来たんですよ。これ以上隠れ続けるのは厳しいですし、下手なところから入り込まれても困りますから。そちらとしても突入時の事故は避けたいでしょう?」

 

 曹操は俺の方を見ながらアザゼル総督に返事をした。

 まぁ確かに八坂姫を使って京都の気を操り始めたら異空間にいようと存在する座標を割と簡単に見つけられる。上手く気を操作するために、魔法的な意味で離れた場所には連れていけないからな。

 そうなれば『絶霧』で造った結界の中にいようと、『すべて』を切り裂く力を持つデュランダルを俺が使えば乗り込むことはできる。それも八坂姫がいる場所に直接だ。

 英雄派としても実験に必要な存在を取り返されるわけにはいかないから、実験場から少し離れたところに招待しようと考えたんだろうな。

 でこちらとしてもメリットはある。八坂姫のところに繋がる穴を空間をデュランダルで切り裂いて作ると、運が悪いとその斬撃で八坂姫の首を落としかねないのだ。ただ斬りつけてしまっただけなら命に別状はないだろうし、まず起きはしないことだが、『絶霧』越しではそこまで細かくは感知しにくいので起きないとは言い切れない。

 俺としてはこの話に応じてほしいところだな。

 八坂姫を殺してしまって協力提携失敗の原因になりたくはないし、向こうの連れてきた人員に子供はいないのでここでやり合っても『魔獣創造』のレオナルドを討ち取ることはできない。

 英雄派で換えの効かない人員は頭である曹操ではなく、発見を困難にし神出鬼没の移動を可能にするゲオルクと大量のモンスターを作り戦力分散を強制することができるレオナルドだ。特にレオナルドの方は未熟なので、魔力や魔法による洗脳で誰でも利用することが出来てしまう危険物。この二人を倒せるチャンスというならともかく、そうでないなら無駄に戦闘要員と戦って戦力低下の危険を冒しては欲しくない。

 

「……いいだろう。招待に応じてやる。八坂姫を手荒に扱うんじゃねェぞ」

 

「それは勿論。彼女は万全の状態でなくてはこちらの望む結果を出せるとは思えませんので。では最後に一つ」

 

 ほんの少し悩んだようだが、アザゼル総督は曹操の申し出を承諾した。受けるメリットは分かってるはずなので、悩んだ理由は慇懃無礼な態度がムカついて素直に応じるのが嫌だったとかだと思う。

 曹操が九尾の姫の安全を告げた後、連れてきていた連中が前に出てくる。

 

「こいつらは一応英雄派のメンバーでね。実力はうちの組織では中の下程度しかないんだが、『人間の敵を倒し英雄となる』っていう英雄派の目的に心から賛同してくれている者たちだ。スポンサーの意向もあるから作戦に参加させることはできないが、俺としては彼らにもチャンスがあってほしいと思ってね。そちらにとっては意味のない戦いだろうが、悪いが付き合ってもらうぞ」

 

 そう言うだけ言って曹操は霧に包まれ転移していった。

 同時に英雄派の連中が神器を発動し突っ込んできた。

 

「うおおおおおぉぉぉぉっ!」

 

「死ねぇえええええええッ!」

 

「俺らは化け物じゃないッ! 英雄に、なるんだッ!!」

 

 あまりに必死な形相に、経験豊富なアザゼル総督以外の連中の反応が遅れる。

 が、作戦に加われない程度の奴だけあって反応が遅れた程度で負けはしない。あっさりと撃退することが出来た。

 撃破しきると同時に霧が立ち込め始める。

 初戦はクリアできたので一旦解放ということか?

 それにしたってこっちに被害がなさすぎる。この程度の戦いでは、こっちの戦力の確認すら向こうはろくにできていないだろう。今の人員も他の作戦でなら使うことはできただろうし、何が目的で突っ込ませたかが全然わからん。

 あれか、本気でチャンスを与えたかっただけとでも言うのか?

 部下のガス抜きと考えればなくはないんだが、いまいち信じられん。なにかある気がするな。

 

 

 

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