転生して会長の甥っ子   作:ぬがー

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第38話

 作戦会議も終わり、まずセラフォルーさまとアザゼル総督が退室した。

 次いで俺も退室しようとする。匙が被るパンツはあいつに持たせているが、制御を補佐しパンツを隠すための呪符は俺がまかないといけないからな。巻き方にも魔法的な意味があるから匙に「自分で適当にやれ」と言うわけにもいかないしその準備が必要だ。

 そのタイミングで巡たちが話しかけてきた。

 

「ちょっといいかな。皆に聞きたいことがあるの」

 

 なにやら深刻そうな表情だ。無視するわけにはいきそうにないので、再び腰を下ろす。

 

「で、聞きたいことってなんだ? 時間がないから手短に頼むぞ」

 

「……どうしてあの人たち相手に戦えるかを聞いたいの。だって下位の魔物や理性がなくなったはぐれ悪魔と違って話は出来るし、洗脳されて戦わされてるだけって聞いてるもの。昼間の人たちだって、あそこ以外行くところがないから、あんなことをするようになっちゃったんでしょ? 正直なところ、敵って割り切ることが出来なくて……」

 

 辛そうな顔で巡が言う。

 その顔を見て俺も一つ思い浮かんだことがあった。昼間、曹操が人員を無駄に消費して俺たちにぶつけてきたときに感じた違和感だ。あれは、これの事だったのかもしれない。

 原作では、兵藤たちは自分より格上の連中が相手だろうと何度も勝利を収めてきた。神滅具の持つ強大な力を乳をきっかけに引き出しての勝利だが、力を引き出せたと言うのは強靭な精神力の証明でもある。

 だがこちらの世界では、コカビエル戦では俺、誠二が参戦。レーティングゲームは砲撃撃った後は俺の一騎駆けで終了。ロキ戦も原作の戦力で十分だと言われていたのに、転生者に加えて魔改造ライザーさまとその眷属も参戦。原作のような強靭な精神を持っていると判断できるほどの戦闘を行っていないのだ。

 それで曹操はこちらを試す意味を込めて、戦力外の者たちをけしかけてきたのだろう。あるいはふるいにかけてきたのかもしれない。

 境遇的に同情すべき相手でも、遠慮なく倒せる精神を持っているのなら良し。正面からぶつかってみて、データを取らせてもらうとしよう。

 ためらいを見せるなら、それもまた良し。動揺させまくり弱体化させてから確実に討ち取らせてもらうとしよう。

 曹操の考えているのはこんなところだと思う。

 動揺しなかったのが原作でオフェンス組だったやつと俺、ダメだったのがシトリー眷属女組か。

 

「そういう質問だと、私は答えられそうにないな。殺し殺されの生活は子供のころからの日常だ。イリナもそうじゃないか?」

 

「そうね。私も小さいころは普通に暮らしてたけど、訓練できる年になってからはエクソシストとして過ごしてきたし。命乞いする人とか、知らずに騒動を起こしちゃった人を斬った数なんて数えてないもん」

 

 元エクソシスト二人が平然と言い、聞いた連中は若干引いていた。

 さすがは三勢力内の組織で最も好戦的な教会の戦士と言うべきか、明らかに弱い者を殺すことは日常に含まれるらしい。

 慌てて兵藤が自分の戦える理由を言って空気を換えようとする。

 

「俺は上級悪魔になってハーレム王になる! その欲望と、仲間や部長の為に戦うだけだ! 細かいことは考えるな!」

 

「それはそれで人としてどうなの……?」

 

 敵対者の境遇や人格を完全に無視した戦う理由に、やっぱりシトリー眷属女組は引いていた。

 欲望に正直なのは、悪魔としてはいいことなんだがな。歳若い悪魔だと燃え尽き症候群にならないか心配されたりもするが、戦う上では実力以上の物を発揮しやすい性格だ。なろうと思ってなれるものじゃないけどな。

 次は匙が話しだす。兵藤とは逆に落ち着いた口調だ。

 

「俺は正直英雄派の下っ端連中に親近感持ってる。俺も神器の力のせいで普通の生活を送れなくて、会長に救われてこっちの業界に踏み込んだんだし、境遇的には似たようなものだからな。実際助けてくれたのが会長じゃなくて曹操だったら、俺は英雄派についてただろう」

 

 そこで一息入れて、力強く言い放つ。

 

「だからこそ哀れむようなことはしない。俺だって「悪魔の手先にされるなんて可哀そう」なんて本気で言われたらキレると思うし、手加減されて倒されるなんて絶対に我慢できない。そんなことになるくらいなら死んだ方がマシだ。だから俺はあいつらの意思を尊重して、本気であいつらを倒す。加減しくじって殺すことになったとしてもな」

 

「聴いた限りじゃ、僕は元エクソシスト組に近いみたいだね。復讐を成し遂げる力をつけるために剣を振るって、気づけば人を切ることにも慣れてたから。今は復讐じゃなく、匙君みたいに恩義に報いるために戦ってるつもりだけど」

 

 木場が匙に続いてそう言った。

 そして最後まで話していない俺の方に視線が集まる。

 

「俺はまぁ、なんというか、この流れだと言いにくいんだが……一言でいうと怖いから、だ」

 

「怖い? 昼間の人たちが?」

 

「ああ」

 

「コカビエルやロキに比べたら全然な気がするんだけど。私たちでも余裕で対処できるレベルだったのよ?」

 

 まぁもっともな疑問だな。俺の戦闘力ならあいつら相手ならどれだけ攻撃され続けようと負けることはまずありえない。怖がると言うのなら、障壁を突き破り致命傷を与えることのできる歴戦の堕天使や他の神話勢力の悪神の方だと思うよな。

 

「戦闘力って意味では怖くないな。だが万が一負けてしまった後が怖いんだよ」

 

「負けた後?」

 

「そう。明らかに俺たちより強くて、自分の強さに自信がある敵に負けたんなら、最悪でも殺されてお終いだ。だが昼間の連中みたいなのに負けた場合はそうじゃない。誇るようなものが何もない連中は何でもするんだ。無くすものなんてないから、目的の為なら躊躇うことなく非道な手段も取る。実験体や魔法具の材料として利用価値のある俺らが捕まれば死んだ方がマシって状態になるのは確実だな。

 だから俺は自分と周りを守るために容赦はしない。同情して隙を見せれば、こっちが殺されることになるからな」

 

 この世界は強いやつと弱いやつの差が大きい割に、『無限』と『夢幻』を除けば世界最強だった二天龍が上位十名に入るやつが一人もいない三勢力に討ち取られるくらい、相性が大切な世界でもあるからな。いくら弱かろうと油断をすることはできない。

 それにいくら雑魚でも人数が集まれば大規模な魔法を使うこともできるので、危険性は跳ね上がるし。拠点から出てきて殺しやすくなったときにできるだけ数を減らしとかないといけない。

 これは領主とかの「税を納めてる領民優先で食い詰めて賊になったやつは処分」と同じような考え方だと思うんだが、小市民的な言い方をすると「いじめられないよう、いじめる側に回る」っていうのとも似たようなものだからな。自分の欲も多分に含まれているとはいえ、忠誠心で動いてる連中の後に言うのは言いにくい。人間の一般社会では絶対受け入れられない実験や開発をやってるって意味では俺も変わらんし。

 とはいえこの方針を変える気は一切ないが。この業界に関わるようになって母さんに初めて見せられた、あの標本のようになるのだけは絶対に嫌だ。他人に何を押し付けようと、自分の周りは守る。それが俺の本心だ。

 ちなみにこう言った場合、うちの女性陣のように迷いながら戦うのが一番駄目だったりする。傷つけたくないと思いながら魔力を使えば、本当に相手を傷つけない形で魔力は発現するからな。無意識のうちに体を魔力で強化してしまう体術なんかも同様。今回はそこまではいかなかったが、そんなんじゃ戦力にはならないし、全部放り出して逃げ出してくれた方がまだマシだ。

 

「ま、俺らが言ったことはあくまで参考でとどめとけ。一番大事なのは自分で納得すること。俺や匙みたいに自分なりの理由を見つけるのでもいいし、兵藤みたいに何も考えないのでもいい、剣士組みたいにただ慣れるってのでもいい。納得できてもいないのに、無理やり思い込もうとしても上手くはいかないだろうからな。どうしても無理って言うんならソーナ姉さんに長期休暇でももらえ。他の厳しいとこみたいに廃棄処分されたりとかはないだろうからさ」

 

「……うん、わかった。とりあえず少し考えてみるわ」

 

「時間がないから後でな。話し込んじまって時間が迫ってる。あと三十分くらいしかねぇぞ。準備急げ! 解散!」

 

 

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