転生して会長の甥っ子   作:ぬがー

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第40話

「侵入成功。結界に弾かれた奴は出てますか?」

 

「いやいない。予想以上に結界が上手く斬られてたからな。あれで脱落者を出すような真似はしないさ」

 

 デュランダルで英雄派がいる異空間と元の空間を遮る結界を斬って穴をあけ、セラフォルーさまが選んだ増援のサポートを受けて侵入した。

 地力では俺の方がかなり上だろうが、経験の差か彼らのサポートを受けながらだとすごく簡単に侵入できた気がする。

 確かに現時点での匙は爆弾みたいなものだし、『漆黒の領域』も『龍の牢獄』も戦いながらだと狙いが大雑把―――というより元々狙いを定めて周囲を巻き込まないように使う物ではない―――で連携はとりづらいから同行させないってのは納得できる。だが実際に補助を受けてみると多少連携に不備があっても始めから連れてきておいた方が良かったんじゃないか、とも思えてくるレベルだ。味方が優秀というのは心強いな。

 侵入前の打ち合わせ通り気配を探り、その後匙に一度だけ電話をかけてみる。戦っている気配がなく、電話にも出ない場合は既にやられていると考えて行動開始だ。気配はないし、戦力的には繋がってほしいとこだがさてどうなるか。

 

『やっと来たのか。待ちくたびれたぞ』

 

「護衛の引き継ぎとか色々面倒なことがあったんだよ。それより掛けてすぐ出たってことは、俺ら待って隠れてたっとことでいいな。今どこにいる?」

 

『気配遮断解いて火柱上げるからそこに来てくれ。待ってる間に伏兵とか罠とかも通り道にあるのはこっそり壊しておいたし、どうせこの後は二条城にまっすぐに突っ込んでいくだけなんだから目立ってもいいだろ?』

 

 匙は『漆黒の領域』に仲間を入れることで漏れ出す気配を遮断できる。範囲を広げ過ぎると空気中を漂う気も吸ってしまいそれから居場所がばれるので仲間とはかなりくっついていないといけないし、仲間を消耗させない程度にとどめるのはそれなりに精神を使う作業らしく相応に疲れるという欠点はあるが、短い時間隠れるには十分な技術だ。

 あと吸った力の量や質から周囲の状況を把握することもできるようになってきている。これは吸う量が専用の機器がないと俺も感知できないほど少量でいい。ヴリトラは「周囲のすべての物から力を吸っていけばいずれ目標も殺せる」と言う考えなので感知とかはしないので、匙が独自に開発した技術だ。生半可な魔法よりは感知精度が良いのだが、感覚でやっているらしく吸収系の能力を持っている奴でも真似はまずできず、下級悪魔でも使える技術の開発を望んでいるソーナ姉さんは残念がっていた(なお俺が開発する道具や技術も強いやつが使う前提の物ばかりだが、それは諦められている)。

 この二つの技術を駆使出来る匙が「壊しておいた」と言っているのだからもう本当に残っていないのだろう。

 なら時間も押しているし、匙の言うとおりにした方が良さそうだな。

 

「もうそこまで準備は済んでるのか。じゃあそれで行こう」

 

『了解』

 

 オフェンス部隊の指揮権は未だ俺にあるので流れで行動を決めた。

 匙たちの気配が感じられ、その方角で火柱が上がったのを見て全員に指示を出す。

 

「今から空路で匙たちに合流します。砲撃等は俺が警戒しますんで、狙われる時間が少なくなるよう全力で向かって下さい」

 

「俺は飛べないんだが……?」

 

「では自分が担ぎます。動物形態で乗る方が良いですか?」

 

「あ、いや、乗馬とかはできないんで担いでもらえれば」

 

「わかりました」

 

 援軍の一人が真っ先に名乗り出た。動物形態で人を乗せられるという利点があるので止められなかったようだが、結局担ぐのなら自分がやりたかったと他の奴らが悔しそうにしている。

 なにせ兵藤は大物貴族グレモリーの次期当主のお気に入りの上、戦功もすごいし『少し関わりがある』くらいだと事件に巻き込まれることなく、むしろ自分に何かあったときに味方にできる奴だからな。。

 グループで協力したとかだと弱いが、担いで飛んだことがあるとかだと違ってくる。現にいま飛びながら名前くらいは交換してるし。抱えて飛ぶだけでこれほどのリターンと考えれば誰だってその役はやりたいだろう。

 俺としては任務中に仲違いを起こさないのなら誰がやってもいいんだがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、向こうも実験を始めちまったみたいだし始めるとしますか。攻撃は俺らオフェンス組だけで行きますので、皆さんは撤退用の結界の切れ目を開けますからアルジェント達と維持してください。匙、ラインの準備をしてくれ」

 

「了解」

 

 俺たちが合流しに動いたタイミングで英雄派も実験を始めた。

 たぶん様子をうかがってないでさっさと仕掛けてこいという意思表示なのだろう。

 俺と兵藤が来るのを待っていたからこのタイミングで始めたんだろうし、実験はスポンサーの意向で英雄派の今回の目的は俺たちと戦うことで間違いなさそうだ。

 だが俺らがそれに正直に付き合ってやる必要は全くない。全力で不意打ちさせてもらおう。

 亜空間から氷でできた棺を取りだし、それから生えている氷の鎖を俺の体に繋ぐ。

 この棺は納めてあるやつ―――人間、人外は問わないが生きていないといけない―――の特殊能力、神器などを使用できる、俺特性の魔法具だ。使い魔契約や洗脳、支配系の魔法を刻んで造っている。

 神器は後天的に所持すると上手く扱えなかったり、元から持っていた力が使えなくなったりしてしまうリスクがある。人工神器でも自分と相性の悪い物は扱えず、無理に使おうとすると使用者に負担をかけないために自壊するようになっている。種族固有の特殊能力の移植はこれ以上にリスクがでかい。それらのリスク無しで使えるようにと開発したのがこれだ。

 利点としては本来の目的である特殊能力などを使用することが出来る事に加えて、中にいるやつの魔法力や魔力を使用することもできると言うのがある。大技を使っても自分の魔力なんかは消費しないで済むというのはかなり助かるな。

 ただ欠点もあり、能力を使用できるように体に接続している間は常時魔法力を消費し続ける。魔法力の量がかなり多いやつを中身にしないと、かえって消耗が激しくなるので中身は厳選しないといけない。

 あとは中にいるやつは生きてないと能力は使えないんだが、意識が残り過ぎていると消費する魔法力の量が加速度的に跳ね上がることか。かといって完全に封じてしまうと感情で動く神器の類は使用できないっていう性質もある。そのせいでそう簡単に作れるものではなくなってるんだよな。それにメンテナンスも大変なのでほとんどの魔法使いには完全に欠陥品だ。棺が他の奴の手に渡れば中身として狙われる側の俺としては、この構造上直しようのない欠陥はむしろ長所だったけど。才能あふれる俺の場合はコールドスリープをイメージして凍らせればそれでメンテナンスは大丈夫だったし。

 現在中に収められているのは、拷問が終わった後俺が引き取った転生者のユーリ。禁手は実戦的ではないのでリセットしたかったが、それをすると体に戻しても効率が落ちてしまうので断念した。

 こいつを使って超高速で接近し、反応できない内に全員殺す。

 力を使ったことは感知できるだろうが、英雄とは言え電気信号で指示を出して動かしている人間の体だ。落雷を軽く追い越せる速度での攻撃を躱せるわけがない。

 速度にリソースを割く分、匙のラインで繋いだ兵藤たちも加速させて連れて行くし、『絶霧』を切り裂くだけの余力を残しておけば火力は十分なはずだ。

 

「んじゃ今から突っ込むぞ。霧使いは俺が殺るから、後は流れで行くぞ」

 

「「「了解」」」

 

 

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