転生して会長の甥っ子   作:ぬがー

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第41話

 『棺』の魔法力を駆動させ、時間操作を発動させる。

 罠が仕掛けられた所を迂回しながら地をに駆け、二条城に向かう。

 時間操作はかなりの魔法力を消費するので、空路を一直線に駆けていきたいのだが、山のように足止め目的の魔法式の罠が仕掛けられていて無理だからな。空路なら『棺』無しでも人体では反応できない速度で奇襲出来るので、曹操たちも警戒していたのだろう。

 逆にこっちはまっすぐには進めないが、ほぼ何の罠も仕掛けられていない。精々引き返すのを妨害する結界くらいのものだ。

 全力のこちらと戦いデータをとるのが英雄派の目的とすればここまで守りが薄いのも納得できるが、一番の理由は情報不足だろうな。

 時間操作無しならこうも曲がることが多いと速度を出しきれず奇襲しても反応できる程度の速度になってしまう。家を壊しながらまっすぐに進んで奇襲しようとすれば、途中の家の中に仕掛けられているであろう罠に引っかかりやっぱり失敗しただろう。レーティングゲームの時の映像や、ロキ戦を覗き見して情報を集めていたとしたら対策はこれで十分と判断してもおかしくない。

 こうも上手く嵌ってくれると、今まで『棺』を表では使わず温存しておいた甲斐があるというものだ。

 

「サンキュー死ね!」

 

 まず殺すべきは英雄派の足であり、今回の実験を実行するゲオルグだ。換えが効かないレベルで凄腕の魔法使いでもあるので、こいつさえ消しておけば英雄派の行動は大分制限することが出来る。

 ゲオルグは遠方で大きな魔法力が使われたのを感知して、その方向を見ようとしているところだ。事前に仕掛けた罠を信じて、まだ霧で障壁も造っていなかった。

 なら切断面がきれいで治療しやすいデュランダルより、氷の鈍器で潰した方が良い。デュランダルとは逆の手に持った聖なる槍の先端に巨大な氷を生み出して叩きつける。肉体的には頑丈ではない魔法使いでしかないゲオルグはこれであっさりミンチになった。

 

「もういっちょ!」

 

 デュランダルを振るい、英雄派で一番頑丈であろうヘラクレスだと思われる巨漢を両断する。

 半神の英雄の魂を受け継いでいるだけあって、肉体の頑強さも魔法に対する抵抗力も並じゃないからな。俺以外が殺ろうとしたら、止めを刺しきれなくて反撃を喰らうかもしれない。

 俺の後ろから三人も攻撃を放っていく。

 

「ドラゴンショット!」

 

 兵藤が放った砲撃が曹操の体に大穴を開ける。

 

「燃えろ!」

 

 匙が放った黒炎がジークフリートらしき剣士を包み、あっという間に灰に変える。

 

「僕は一番脆そうな相手をもらうね」

 

 木場が長大な聖魔剣を作り、ジャンヌっぽいやつの首を刎ねる。

 これで英雄派中心メンバーはレオナルドを除いて全滅だ。時間操作を終了する。

 

「よしっ、終了。実験の術式も止まってるし、戦利品回収して八坂姫連れて戻るぞ。分配は後で相談、神器の回収は無しだ。ゲオルグ殺したからこの空間すぐに崩壊し始めるだろうし時間ないからな」

 

「お、おう。なんかあっけなかったな。こんな大事になってるのに一撃で勝負がつくとか」

 

「相手は人間だからね。悪魔や神なんかと違って体はそこまで頑丈じゃないから、先手をとれれば一撃で終わること自体はよくあるよ。……まぁこのレベルの相手に反応させずにって言うのは珍しいけどね。こんな隠し玉があるなんて思ってもみなかったよ」

 

「試作品の実験に付き合ってる俺も知らなかったしな。会長でも開発室には入らせなかったし、そこまでやって隠してただけの価値があったってことだろ」

 

 三人は思い思いのことを言いながらジークフリートが死んで亜空間から放り出された魔剣を回収していく。名の知れた魔剣だけあってただ拾うのすら魔法具を使ってもひと手間かかるな。

 俺は八坂姫助け出しに歩いていく。京都中から流れてくる気のせいで術者が死んでも八坂姫を拘束する術式が停止していないので、それをデュランダルで切り裂いていく。操っていたゲオルグが死んだんだから自力でもすぐに動き出すだろうが、少しでも早いに越したことはないからな。

 万が一にも八坂姫を傷つけないよう少しずつ術式を切り裂いていると、ふいに違和感を感じた。

 

「……?」

 

 振り返って曹操を見てみると、胸に大穴を開け確実に死んでいる。

 死を偽装している様子はないし、手に持った槍も光を失っている。何もおかしなところは―――。

 

「って、槍がある!?」

 

 使い手が死んだら神器は次の所有者の元に転移するはずだ。原作での『獅子王の戦斧』や『紫炎祭主による磔刑』のように独立具現型の神滅具であればそのルールに従わないこともあるが、武装型の神滅具である『黄昏の聖槍』にそんなことは不可能なはず。

 ここから考えられることは―――!

 

「させるかぁッ!」

 

 曹操に向かって最速で斬撃を飛ばす。

 だがそれよりも早く槍が再び輝き始め、先ほどまでとは比べものにならない量の光が視界を覆い尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……危なかったな。まさかこんな切り札を持っているとは思わなかったよ」

 

「こっちもだよ。確実に死んでたはずなのに生き返りやがって。神滅具ってのはどこまでデタラメなんだ?」

 

 光が収まった後、即座に匙たちを捕まえて曹操から距離をとらせた。

 おそらく曹操は死にかけた状態で『覇輝(トゥルース・イデア)』を使ったのだろう。大量の出血で意識も薄れ、胸に空いた大穴で詠唱もできないと思ったから、最後の一撃を喰らわないために追撃を避けたのが仇になったか。

 見れば他の英雄派の連中も困惑しながら起き上ってきていやがる。死んだ仲間ごと全員蘇生とか規格外にもほどがあるぞ。いくらなんでもおかしすぎる。

 

「……ああ、そこまでぶっ壊れ性能ってわけじゃないんだな。肉体を復元して剥がれかけた魂を戻しただけか。だから匙に焼かれて魂まで消えたやつは復活してない」

 

 ジークフリートを焼いたヴリトラの黒炎は高密度の呪詛も含んでいるからな。わざわざ意識して放たなくても丸焼きにされれば人間の魂くらい軽く消し飛ぶ。ヘラクレスのように半神の英雄の魂でも引き継いでいれば違ったかもしれないが、あいつはただの襲名者だったっぽいからな。

 

「それに槍が纏っている光も昼に挨拶に来たときより弱くなってるな。『人間』としてどこまでやれるか知りたい、なんて言っておきながら最初の一手でいきなりゲームオーバーになりかかったから、聖槍に見放されかけてるんじゃねぇか? 消耗だけじゃねぇだろそれ」

 

「……それはどうかな? というか俺らは弱っちい人間に過ぎないんだ。相手の土俵で戦わされたらこうなるのは分かっていたことだし、万が一の対策くらいしてるさ」

 

 曹操は俺の指摘に言い返してきたが、消耗が激しいのは全然誤魔化せていない。こんな『万が一の対策』を講じるくらいなら罠がない道で誘導するのではなく、消耗が最低限で済む道を選ぶしかなくなるくらい罠を仕掛けるだろう。明らかな虚言だ。もしくは戦意を維持するための虚勢だな。

 

「こいつらはここで始末するぞ。ただし無理はしなくていい。増援が来るまで逃がすな」

 

 空間を切り裂き出入り口を作りながら、匙たちに指示を出す。

 乳神が出現していないことでリゼヴィム再起フラグは折れているし、兵藤も活躍が地味になってるからユーグリットも過剰な反応はしないだろう。ここでゲオルグを倒せば脱走手段の無くなったレオナルドも倒せるし、はぐれ魔法使いどもも矢面に立つ連中がいなくなれば保身を優先させある程度は大人しくなる。裏で支援してるやつらもここまで組織の崩壊が進めば支援をやめて、次の機会を待つだろう。そうなれば残った敵はシャルバだけだ。

 もうこれ以上原作通りに事態を進めていくメリットは存在しない。奇襲の時ほどの時間操作には大きなタメが必要なので普通に戦うしかないが、これならリスクに見合うだけのリターンはあるはずだ。

 

「俺が曹操の相手をする。匙、お前は霧使いだ。兵藤と木場はコンビで大男と女。一人で戦おうとするんじゃねーぞ」

 

 原作では匙はゲオルグが戦って負けていたが、今は『龍王変化』を使って暴走したら巻き込んでしまう弱者もいないし、時間が経てば八坂姫も自力で拘束を破って加勢してくれる状況にある。勝機は十分にあるはずだ。

 逆に兵藤と木場は少しきつい。兵藤の鎧は硬いが現時点ではサイラオーグさまの皮膚程ではなく、木場も攻撃力が低いと言う弱点は改善はされてきたが克服したとは言えないレベル。バラバラに戦えばヘラクレスの相手をした方は死ぬかもしれない。増援が来る前にそうなれば形勢逆転もありうるのだから慎重に戦わせなくては。

 

 

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