転生して会長の甥っ子   作:ぬがー

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第43話

 この世界には他作品の登場人物も存在している。

 原作に名前だけでも登場したのは黄昏色の詠使いとヤキトリ先生だけだが、名前すら出てきていない奴らも探せば結構見つかった。

 どうも人間界ではファンタジー要素ゼロ、もしくはローファンタジー作品で、この世界にパクリっぽい作品がない作品のキャラはいるみたいだったな。設定をこの世界に合わせたモノに調整された状態で、事件とかにはあんまり関わらず平和に暮らしていたのが多い。原作より悲惨なのも当然ながらいるけどな。

 で、俺は他作品キャラを自分の将来の眷属にスカウトすべく動いていたんだ。

 主人公補正とかがないせいか事件に巻き込まれるようなことはあんまりなかったが、この世界に合わせて調整されてるだけで前世での物語通りの才能、資質は持っていたみたいだからな。なおそれは多少金と権力使って学校の健康診断とかで魔法力とかも測って確認もした。

 そうして見つけた中から眷属候補に選んだやつらはシトリー領内にある俺の屋敷か、人間界にあるシトリー家が所有する家に住ませているんだが、そうもいかないやつが出てきた。

 そいつは『ムシウタbug』と言う作品で主要キャラだった奴で、名前は花城摩理という。

 摩理は原作で最強ランクのキャラだったんだが、元は病人だった。原作ではある存在から力を与えられることで延命し物語に繋がっていたが、この世界では力を与えた存在はおらずそのまま死にかけていた。人間の医療技術は勿論、悪魔の医療技術でも耐え切れず死んでしまうレベルまで弱っていたんだ。生き延びる手段は『悪魔の駒』で生まれ変わらせることくらいって状況だった。

 だがその時の俺の手元に『悪魔の駒』はない。爺さまのコネで一時的な主を探すことはできなくはなかったが、彼女の才能を考えると返してもらえなくなりそうなのでやめた。

 なので『悪魔の駒』を魔王さまから下賜してもらえるまでコールドスリープしてもらうことにしたのだ。彼女は生き残れても親友と会えなくなると悩んでいたが、数年で貰えそうだし眷属になった後も友達に会いに行くのくらいは自由だと言ったら即契約に応じてくれた。親友の家は彼女の家より金持ちなのでさらに良い取引相手を得られる、っていう打算も伝えたら笑われたが。

 そして摩理は現在、『棺』の中身となっている。勿論一時的に解凍して許可をとってからだ。

 

「行くぞ。力を貸せ、摩理」

 

 摩理の入っている棺から銀色の魔法力があふれ、第三の腕に持たせた槍を強化していく。

 この世界において彼女の才能は五つの力に特化している。

 一つは今使っている『武器強化』。原作だと棒状の物と同化し槍になる“虫”が憑いていたせいか、今みたいに槍だと効率が上がる。斬撃を飛ばしたり、魔法力を広く展開して広範囲をガードしたりと色々できるので、正確には棒状の物を魔槍とかに変える力と言うべきかな。

 もう一つは『肉体強化』。原作で肉体強化と銃撃強化しかできない主人公を、特殊能力も持っているのに上回った身体能力を再現する。こっちは俺自身の使う肉体強化と干渉してかえって効率が悪いので使わない。

 そして三つ目がこれ。

 

「そらッ!」

 

 強化した槍を投げる。銀色の魔法力をまき散らしながら進んだ槍に対し、曹操は球体を操り黒い渦を発生させた。

 攻撃を他者に受け流す珠宝(マニラタナ)だろう。この球体の能力は原作と変化はなさそうだな。

 受け流そうとしている先は遠くからでもでかくて狙いやすい匙かな? 防御と同時に仲間の援護もできる良い能力だが、この場合に限っては悪手だ。

 

「何!?」

 

 黒い渦が銀色に染まっていく。それに合わせて渦が槍を吸い込む速度も遅くなり、ついに刺さったままの状態で動かなくなった。

 原作では死をも遠ざける『眠り』の力だが、この世界では『封印』だ。複雑な術式を構築することもなく、少し力の入れ方を変えるだけで封印効果を発揮する魔法力を放出できると言うのが正確か。

 一度凍らせれば解凍するまでずっとそのままな『氷碧眼(ディープ・フリーズ)』と違って力を供給している間だけだが、なんでも封じられるのは同じで効果範囲はずっと広い。

 摩理の力で一時的に封じて、『氷碧眼』で完全にこの戦闘中には使えないようにするっていうのが効率がいいな。

 ちょうど今第四の腕で凍結の魔力弾を撃って珠宝(マニラタナ)を封じたみたいに。

 

「はぁッ!」

 

 防御手段が一つ減った曹操にデュランダルで斬撃を飛ばす。

 球体の一つが輝き、転移して避けられた。馬宝(アッサラタナ)は原作通りみたいだな。

 このまま俺を無視して合流されるのが一番まずいが、曹操の行動制限もあるし、なにより消費された力が少なかったのでそう長い距離は飛べないはず。

 となるとやってきそうなのは……。

 

「よっと」

 

「ッ!」

 

 頭上に転移し奇襲を仕掛けようとした曹操に、先手を取って攻撃を仕掛ける。

 摩理の四つ目の特化技能が『気配察知』なので今は奇襲はまず効かないんだよな。

 バランスを崩したところに連撃を仕掛けるが、曹操は攻撃を短距離転移で回避する。

 

「その転移はうざいな!」

 

 摩理の最後の特化技能『領域支配』を発動する。これはこの世界では結界系の力として発現しており、効果範囲内では敵の弱体化及び空間に作用する術の阻害だ。転移も空間系の力なので、『領域』の中では使えない。

 

「ッ!」

 

 次の槍を取り出しつつ凍結弾を放つ。曹操は横跳びして回避した。

 曹操が球体を三つこちらに飛ばしてくる。

 能力不明の状態で三つの対処はきつい。再度時間操作を発動し、接近していく。

 その判断は正しかったようで、いきなり球体が六つに増えた。

 

「うおっ!?」

 

 即座に凍らせるか封じて落としたが、ぶつかってくるタイミングをずらした球体が一つ残りまた増えていく。きりがないな。

 こういう時の対策は無視して使い手を狙うことなのだが、この球体は普通に俺の障壁を突き破ってくる上掠った程度でも一撃で致命傷になる。迂闊に突っ込めないぞこれ。

 おまけに曹操の奴、その場から動かず居士宝(ガハパティラタナ)で人型を大量に作りだしつつ槍に力を溜めている。溜め撃ちで消し飛ばす気満々じゃねーか。

 今溜めてる量で邪魔な球体ごと相殺いけるか? いけるよな? これでダメならもう無理だからいけてくれ。

 

「はぁあああああッ!」

 

「おらぁああああッ!」

 

 曹操と人型が同時に放つ砲撃に合わせて、三つ目の『棺』に開戦時から溜めていた力を解放する。

 膨大な光があふれ辺り一面に破壊をまき散らし、どちらも相手の力を貫けないまま消滅した。

 

「……(あっぶねー! マジ死ぬとこだった! 生きててほんと良かった!!)」

 

「今のは光か? それに強力過ぎる。その棺には何が入っている?」

 

「言うわけないだろ。企業秘密だ」

 

 中に入れているのは改造した堕天使だ。正確には改造堕天使だな。何年も前に捕まえ色々な機能を削除しながら頑丈にして行き、コカビエルの羽根を始めとして今まで倒してきた天使、堕天使の羽根を移植して大量の光力を持たせた。その副作用で多すぎる力を制御できず体も全く動かせないが、『棺』の中身にする分には問題なかった。

 ただ今のような撃ちあいでは非常に強力だが、チャージに時間がかかるのと細かい制御は不可能なのが欠点だ。

 もう一回撃ちあいをすることになったとき、力が同じだけ溜めれているかはわからない。

 逆に向こうは人型をもっと出して放てば威力を上げられそうだ。もっと機動力を重視して攻めるべきか。

 そう考え時間操作の度合いをさらにきつくしようとしたのだが、それは無駄に終わった。

 

「何ッ!?」

 

 足元から霧が立ち込め、あっという間に全身を包んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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