転生して会長の甥っ子   作:ぬがー

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死傷覚悟のレーティングゲーム
第45話


 修学旅行が終わって少し経ち、あっという間にバアル眷属とのレーティングゲームの日がやってきた。

 事前のインタビューや宣伝などは一切なし。それどころか試合内容の一般公開すらしないそうだ。

 レーティングゲームは『実戦経験を積むため』という名目で大々的に行われているが、実戦とは程遠かった。『王』は誰もが領地と多くの領民を背負う貴族であるため、対戦相手の面子を潰さないようにしないといけないからな。隙を見せずに圧倒するのは厳禁で、対戦相手の見せ場も必ず作る。飛び抜けて強い個人が無双するのも非難され、チームで強いのだと示さなければならなかった。その他にも多くの制約がある戦いであり、こんなのを実戦経験とは言えないだろう。

 だが今回は試合内容非公開。貴族としてのしがらみも興業としての利益追求も切り捨て、名目通り『実戦経験を積む』ためのゲームだ。

 …………まぁセラフォルーさまのことだから、ソーナ姉さんが恥かくところを冥界の住人に見せたくなかったって理由もありそうだがな。それは忘れておくことにしよう。

 そして今、ゲーム開始を目前して俺たちは控室で各々の方法でリラックスしながら待機していた。

 時間がギリギリまで迫って来たとき、ソーナ姉さんが重い口を開いた。

 

「……皆さん、分かっているとは思いますが今回のレーティングゲームは普通のものではありません。観客の目もなく本当になんでもありな、実戦とほぼ同じ戦いです。ですがほぼ同じなだけで実戦ではありません。医療班も控えているので、死を恐れる必要もないんです。格上相手に喰らいつき、戦いの中で飛躍してみせなさい」

 

「「「「「「「「はいッ!」」」」」」」」

 

 ソーナ姉さんの言葉に全員で大きく返事をする。

 その直後にアナウンスが響いた。

 

『ゲーム開始の時刻となりました。両チームの選手は転移魔法陣まで移動してください』

 

「行きますよ。ついてきなさい!」

 

「「「「「「「「はいッ!!」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 転移した先は森林地帯だった。周囲には木ばかりでそれ以外の物は全く見当たらない。

 ただし魔物の気配がそれなりにするな。姿を隠す能力を持った奴がいるみたいだ。障害物の代わりか?

 

『今回のバトルフィールドは冥界にある管理者不在となった森林、それを複製した異空間です。森には多くの魔物が配置され、近づいたものを攻撃するよう躾けられています。相手チームの攻撃以外でも大きなダメージを負えば脱落となり、先に『王』が脱落したチームの敗北です。今回の特殊ルールは、転送位置は両陣営ともにランダムで「本陣」が存在せず、自由なタイミングで「プロモーション」が可能となっています』

 

 アナウンスでルールが告げられる。原作でのグレモリー眷属は毎回だったが、うちは事前にルールを伝えられていないのは初だな。これもゲームを実戦に近づけるための手段の一つなのだと思う。

 勝つには魔物にやられないようにしつつ、敵を探して倒していかないといけない。だが地力で劣るシトリー眷属ならまずは負けない事を目的に行動すべきだな。

 ソーナ姉さんじゃバアル眷属と戦闘になれば瞬殺される。走るの遅いから逃げるのすら無理だ。見付からないよう結界を張り、それと合わせて範囲攻撃対策の障壁も張ってソーナ姉さんを隠しておくのが最善かな。それで俺か匙が拠点から離れてゲリラ的にバアル眷属と戦えばそれなりにいけるはずだ。

 

『また森の魔物には特別な術式が施されており、結界等で隠れているとそれを感知し優先的に襲うようになっています。それを留意し行動してください。それではゲーム開始です』

 

「なっ!?」

 

 作戦で一番大事なところがいきなり使えないと言われた。

 だがまぁ、結界は感知されないための物だ。感知する術式より高度なものを構築できれば使用できる。

 そう思って試しに結界を構築してみたのだが、造っている段階で魔物が集まり始めた。後でわかったことだが、片手間で即興で、とはいえ術式を造ったのはアジュカさまだったらしい。そりゃ俺みたいな若輩じゃ誤魔化しきれんわ。

 騒ぎが大きくなる前に全て凍らせて片付けられたが、魔物の強さもバカにならなかった。これでは結界を使うのは無理だ。

 

「どうします? バアル眷属の面々とは個人的にも付き合いがありますけど、備え無しでやり合えるのは俺と匙だけです。あとは真羅さんなら多少足止めできるってところですね」

 

「…………ジョージ、ベイに私も乗せなさい。そのうえで隠れます。桃、魔力で私に化けなさい。憐耶は真羅をジョージに化けさせなさい。桃と真羅を偵察に放って本隊は安全確保のために行動しているように見せかけ、バアル眷属を釣りだします。ただし匙、私がいるのにあなたがいると偽物とばれます。単独行動を取り自由にバアル眷属を襲撃しなさい」

 

 『犠牲(サクリファイス)』か。まぁ他のメンバーは戦力にならない以上、囮にするしかないわな。

 匙への指示も納得できる。ヴリトラは旱魃を起こすドラゴン。水使いのソーナ姉さんとの相性は最悪だ。ヴリトラの力を引き出しきれていない現時点でも『龍王変化』を使うと水が周囲からなくなって、ソーナ姉さんの戦闘力が七割減くらいになるからな。

 そんなのをセットで扱うわけがないし、細かい制御を気にせず無差別に周囲から力を吸う方が匙も実力を発揮できるので単独行動以外の選択肢はありえない。

 

「「「「「「「「はい」」」」」」」」

 

 ソーナ姉さんの指示通りに全員が行動を開始する。

 姿を隠し、他のメンバーから距離をとったところでソーナ姉さんが話しかけてきた。

 

「………………ジョージ、バアル眷属は囮に引っかかると思いますか?」

 

「引っかかるとは思いますよ。この実力差だと向こうは罠があったら踏み抜いて突き進む気でしょうから。なので囮にかかった奴が単独行動じゃなかったら、攻撃した途端に俺らが袋叩きにされるとは思いますけど」

 

 俺からすれば歓迎すべき事態だがな。実力差が事前にはっきりわかってるから、負けたとしてもソーナ姉さんの恥にはならない。それに今回のレーティングゲームは戦いを通して何かを掴むための物だ。苦境に立たされるくらいでちょうどいいのでソーナ姉さんが判断をミスったとしても、致命的でない限り止める気はなかったし。

 

「ならバアル眷属が彼女たちの近くに隠れているはずの私たちを探している間に、別行動で『王』を狙いに行きますよ。どうせ『王』を倒さない事には勝てないんですから。護衛が多かったときはその時に考えましょう」

 

「分かりました」

 

 囮をやってる連中には声をかけずにこっそりと移動する。俺とソーナ姉さんが近くにいると本気で思っていてくれた方が敵の目を誤魔化せるからな。リアスさんみたいに眷属相手に過保護なことをする『王』じゃなくて良かった。

 ……そういえば前にハルト経由でサイラオーグさまに「手加減無しで来てくれ」って言ったな。障壁や鎧は硬くても肉体はそこまでじゃないから死ぬかもしれない。

 ま、どうにかしてみせよう。これから逃げれば多少延命できても、次の戦いでより酷い死に方するだけだ。

 

 

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