転生して会長の甥っ子   作:ぬがー

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第46話

 サイラオーグさまは捜索開始早々に見つかった。

 なにせ大規模破壊で周囲の木々をなぎ倒し、平地となった場所で気配を周囲にばら撒きながら堂々と待ち構えていたからな。向こうからは確実に感知できない距離からでも簡単に発見できた。

 護衛はバアル眷属の『女王』クイーシャ・アバドンだけが控えている。それ以外の眷属は周囲には見当たらない。

 魔法の技術は俺の方が上なので、アバドン家の『(ホール)』の中にでも隠れているのではない限り伏兵はいないはずだ。

 サイラオーグさまの性格的に自分の安全を確実にするより攻める方を選ぶだろうから、下僕悪魔で二番目に強いクイーシャさんがいるのに他まで手元に残しておくとは考えづらい。他はシトリー眷属を探して離れて行動しているのだと思う。

 俺個人としては戻ってくる奴が出る前に仕掛けたいが、『女王』としては『王』の意見に聞いて行動しないとな。

 

「敵は『王』と『女王』のみ。他の気配はありません。サイラオーグさまの性格的に伏兵ってこともないと思います。仕掛けますか?」

 

「少し待ちましょう。バアル眷属の索敵能力でこのフィールド程度の広さなら、さほど時間をかけずに真羅たちを見つけるはず。そしてその頃には、匙もバアル眷属を見つけるはずです。『龍王変化』を使って暴れ始めれば目立ちますから、バアル眷属の『兵士』を匙が抑えるのを確認してから仕掛けましょう」

 

 ハルトはバアル眷属で唯一サイラオーグさまとガチでやり合える実力者だ。この二人を確実に分断してから戦うっていうことだな。

 

「匙が戦う相手にハルトが混じってなかったらどうします?」

 

「その場合はサイラオーグの護衛として『穴』に隠れて残っているかもしれませんし、放っておけば匙が勝つでしょうから、匙と合流してから仕掛けます。向こうが行動を起こした場合はそれに対応する形で動きますよ」

 

「わかりました。じゃあそれまで魔物に襲われないよう、気配消して移動し続けるっていうのでいいですか?」

 

「それでかまいません」

 

 一ヶ所に留まってるとじきに魔物が感知して寄ってくる。結界なしで隠れ続けるのには限界があるので、ソーナ姉さんも同意してくれ

 

た。

 さて、後は匙がどう動くかだ。念話したら位置がばれるからできないし、できれば早く派手に暴れてほしいものだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――匙元士郎 side ―――

 

 

 

 

 『漆黒の領域』で自分の気配を消し、『黒い龍脈』を振り周囲の魔力や気を採取して索敵を行いながら移動する。

 このフィールド自体が魔力で造られており、魔物の放つ魔力も混ざって分かりづらいが、確かに感知することが出来た。

 副会長たちの方に、気配が二つ向かっている。

 遅れて二つの集団が別方向からも向かっている。

 そしてこの2グループ両方から、強大な獅子の気配がする。それもほぼ同じ大きさの力をだ。

 ありえない事じゃない。アバドン家の『穴』なら神滅具『獅子王の戦斧』に封じられたネメアの獅子の気配を一時保管しておき、それを放出しながら移動することも可能なはずだ。

 だがそうだとすると眷属を全て攻撃に回し、サイラオーグさんは後方で一人でいることになる。敵が一塊でいる保証などないし、実際に俺たちは分かれて行動しているので、いっそ全員で攻撃に回った方が安全で確実だ。あの人がこんなミスをするとはとても思えない。

 ならなんで気配が二つあるのかって疑問に戻っちまうが、考えても答えは出そうにないな。

 待つのも飽きたし、とりあえず片方襲撃してみよう。そうすりゃどういうことか相手の反応でわかるだろ。バカの考え休むに似たり、だ。

 

『それでいい。我らに考え込むなど似合わぬ。見つけた傍から焼いて行き、いずれは本命に突き当たる。それくらいがちょうどいいのだ』

 

「そうかもな。じゃあ、行くか!」

 

『ああ、みな焼き払ってやろうぞ!』

 

 森を駆け、最短ルートで近い方の集団に向かう。

 『漆黒の領域』では気配は消せても音は消せない。ある程度近づいた時点で『龍王変化』を発動し、派手に炎をまき散らしながら体当たりをする。

 

『『グルァァアアアアアアアアアッ!』』

 

「おらぁぁああああああああッ!」

 

 獅子堂はこっちの集団にいたらしい。奇襲にも対応され、炎で模った頭部が両断された。

 だが纏った炎が余波も防ぎ切ったため肉体にはダメージは無しだ。問題なく戦いを続けられる。

 あえて龍体を再構築せず、一気に爆発させ辺り一面を焼き払う。

 

「アルトブラウッ!」

 

「はぁあああああっ!」

 

 馬に乗った騎士―――『騎士』のベルーガ・フ―ルカス―――は空を飛んで呪いの炎を回避し、不気味な杖を携えた小柄な少年―――『僧侶』のミスティータ・サブノック―――は魔法で障壁を展開し炎を防ぐ。

 結果、ベルーガは炎から逃れられたが、ミスティータは炎に障壁を構築している魔力を奪われそのまま焼かれた。獅子堂は予想以上に強力だった『獅子王の戦斧』の能力により炎を無効化して被害をマントだけに抑え、避けるそぶりすら見せなかった。

 ミスティータを腹に収め、龍の体を再構築する。

 

『もう禁手状態か。道理で硬いはずだな』

 

 マントを剥いだハルトは、重厚な鎧で覆われた右腕で戦斧を持ち、他は金色の軽鎧(ライト・アーマー)を着込んでいた。堕天使の資料でみた通常の物ではないが、禁手化でできた鎧だと気配でわかる。あのマントは気配をある程度抑え、禁手状態だと分からないようにするための物だったのだろう。

 

「だてに鍛えてないからな。一月くらいこの状態を維持することだってできるし、ゲーム開始と同時にもう使ってたさ。ところで、ミスティータの奴は今どうなってんだ? リタイアのアナウンスがないってことは生きてるんだよな?」

 

『ゲームを止められるようなことはしてないさ』

 

『我が半身よ。下らん話は後にしろ。普段は暴走させぬよう自重しているのだ、こういう時くらい派手に暴れさせろ!』

 

 ヴリトラが駄々をこね、炎の制御が甘くなる。

 規則性のかけらもない炎が溢れ出し、ベルーガは慌てて回避行動を取った。

 

『わかったよ。それじゃ、いくぜぇッ!』

 

 獅子堂に飛び道具は効かない。ゆえに炎は飛ばさず纏ったまま喰らいつく。

 頭を両断されれば二つに増やして喰らいつき、胴を切り裂かれれば頭や尾を生やして反撃する。

 ベルーガも攻撃や妨害してくるが、剣やランスによる攻撃は本体に当たらない限りかえって呪いの炎に焼かれるだけ。魔力で造った幻影も『漆黒の領域』の中では一秒と持たず薄れて消えるのみ。なので逃走以外の行動は無視して獅子堂を追った。

 途中で他のバアル眷属も合流してきたが、こいつらもベルーガと同じで有効打は打てず、妨害もさしてできないため逃がさないようにだけ注意して獅子堂を追う。

 追いかけっこをしばらく続けていると、アナウンスが響いた。

 

『サイラオーグ・バアル選手の『僧侶』一名、リタイアです』

 

 腹の中でエネルギータンクにしていたミスティータがついに空っぽになった。

 俺はここでバアル眷属はこちらは「燃費が悪い」と理解し、動じることなくガス欠を狙ってこのペースを維持するものだと思っていた。燃費が悪いように見せかけているだけで実際は『漆黒の領域』でこいつらから吸い上げている分だけで維持には十分なので、存分に持久戦に付き合ってやるつもりだったんだ。

 だが『僧侶』のコリアナ・アンドレアルフス以外は一気に間合いを狭めてきた。本体の位置も掴めていないはずなのにバアル眷属がこんな博打を仕掛けてくることには違和感しか感じない。

 何か狙っての行動なんだろうが、対処法は同じだ。近づく奴は焼いて丸呑み。

 そうするべく口の中に呪いの炎を集中させる。

 

『GOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!』

 

 物理的な破壊力すら帯びた咆哮が轟き、なぜか俺だけを打ち据えて炎で模った龍の体をまとめて吹き飛ばした。

 炎を剥がれ無防備となった俺に、『蒼ざめた馬(ペイル・ホース)』の炎を纏ったランスが、強大な重力と共に振り下ろされた剣が、怪力を誇る拳が、右腕のみ龍へと変化した拳が、そして物理的な破壊力では最高の神滅具による一撃が立て続けに叩き込まれた。

 

 

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