転生して会長の甥っ子   作:ぬがー

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第48話

 遠くで黒い龍が暴れはじめる。

 強大な反撃が龍を襲い、余波で周囲の木々が吹き飛んでいく。

 頭部を両断された龍は頭を増やして攻撃を繰り返し、八岐大蛇みたいになりながらその他のバアル眷属を適当にいなしつつハルトを追いかけまわしている。

 バアル眷属の連中は多少頑固で常識はずれな現象には弱かったりもするが、後ろの心配をしなくていいなら喜々として勝ち目のない相手にも突っ込んでいくバトルジャンキーどもだ。サイラオーグさまの護衛任務を解かれて攻撃に回っている以上、あそこから動くことはまずないな。

 一番の問題はハルトだが、こちらも問題ないだろう。あいつは未知の敵とか自分対策を立ててきた敵とかを打ち破ることを好んでいる。そのせいでこっちが対策を立てて敵を封殺するよう行動する原作の事件には協力してもらえなかったんだが、おかげで匙との戦いを途中でやめることはないと予測できる。お互いに手の内を知っていてどっちが先に当てるかの斬り合いにしかならない俺より、ヴリトラの力をアレンジして使っている匙と能力バトルしてた方が楽しいだろうからな。

 ソーナ姉さんもそう判断したようで、匙たちの方を見るのをやめて指示を出してくる。

 

「匙がサイラオーグの『兵士』を捕まえましたね。では向こうが終わらない内にこちらも仕掛けるとしましょう」

 

「はい」

 

 本当はまだレグルスの方が確認できていないんだが、別行動できることは契約で教えてはいけないことになっているし、サイラオーグさまの性格的にも残しておくのはありそうにないので問題ないだろう。

 さて戦いに行くのなら魔法力を消費し続けるから、隠れて移動してる間は装備してなかった武装をまずは揃えよう。

 まずは鎧。京都で曹操と戦った時のとは違う、背中から腕が四本生えているやつだ。ベイにも腕が生えてる馬鎧を着せ、後ろに乗るソーナ姉さんが落馬しないよう補佐をする。

 次に武器。右手に聖剣デュランダルを、左手に量産品の聖愴を持ち共鳴させて強化する。背中の腕で魔剣ダインスレイブ、バルムンク、ノートゥング、ディルヴィングを持つ。

 さらにゲオルギウスの特殊能力『竜殺し』の付与を行う。これをすることでデュランダルは完全にグラムの聖剣バージョンになり、量産品の聖槍はアスカロンを凌駕する力を持つ。さらに魔剣四本は聖なるオーラも帯びて聖魔剣になり、魔法も合わせることでほぼ完全に使用時のリスクを克服した。燃費の悪さは変わらずだけどな。

 ここまでは全力だが、今回は『棺』は無しだ。あれの中に入っているやつは一応生きているので、ゲームのルール上持ってくることは出来なかった。弱い使い魔だけじゃなく、上級悪魔顔負けの戦闘力を持つ『蒼ざめた馬(ペイル・ホース)』のアルトブラウとかも連れ込んでるんだからこれもいいじゃん、って言ったんだが受理されなかった。あれが許されたのは家系の特性上、騎馬がいないと本来の実力を全く発揮できないと分かっているからであって、あった方が良い武装でしかない俺は駄目なんだそうだ。

 

「準備は出来たようですね。ではいきましょうか」

 

「ソーナ姉さんの準備はいいんですか?」

 

「隠れてる間に仕込んだ分だけで十分です。多すぎても使い切れません。現在の量でもそれにかかりきりになって他の事は出来ないでしょう。それを念頭に入れて戦いなさい」

 

「わかりました」

 

 俺としてはベイに乗っているとはいえソーナ姉さんは武器も防具も軽装過ぎる気がするが、本人的にはこれでいいみたいだ。まぁ俺としても誰かを守りながら戦うというのはいい経験になりそうなので異存はない。

 武装を準備する時から気配を抑えるのはやめていたので、向こうもこちらに気付いているだろうからもう隠れる必要はない。

 一直線にサイラオーグさまのところへ向かうと、彼は挑戦者を待つ王者みたいな感じで待っていた。

 

「ようやく来たか。では始めるとしよう」

 

 そう言ってようやく椅子から立ち上がり、オーラを増大させて戦闘態勢に入った。

 

「先手をくれてやってもいいが、どうする?」

 

「冗談はやめてください。あんた相手に突撃するなんてできません」

 

 サイラオーグさまが攻撃の順を提案してくるが、これは断った。

 なにせこの人、ハルトから『HUNTER×HUNTER』について教えられているのだ。全身に纏って肉体を強化する闘気とオーラが使いからが似ているって理由で。

 そのせいで通常時の『纏』と一時的に闘気を増大させる『練』くらいしか使ってなかったのが、闘気を放出せず回復速度を速める『絶』、武器に闘気を乗せる『周』、闘気を隠す『隠』、闘気を集中させて増幅する『凝』、闘気を増幅させた状態を維持する『堅』、闘気を広げて振れているモノを感知する不定形の『円』、『凝』と『絶』を併用し完全に一部に闘気を集中させる『硬』、『凝』を使う位置を変えながら戦う『流』を習得している。

 そのせいで体全体の防御力は原作と大して変わっていないだろうが、攻撃力とピンポイントでの防御力は跳ね上がっているのだ。来ると分かっている単発の攻撃では倒すことはできない。先手を取って仕掛けたら、完全に防ぎきられたうえに反撃でそのままやられるだろう。攻撃を避けて闘気が薄くなっているところに狙うのが最適だ。

 なお魔力を使った固有の技を思い浮かべるのか『発』だけはできないそうだ。ウボォーキンの『超破壊拳(ビッグバンインパクト)』みたいなのならいけただろうが、そう言うのを必殺技とは思えないんだとか。このへんは魔力と同じで本人がどう思っているかが肝心だし、通常攻撃が全部必殺技みたいな状態だから技名つけて強化した攻撃とかはいらなかったのが理由だと思う。

 

「そうか。では俺から行くぞ。ソーナが死なないようしっかり守れッ!」

 

 サイラオーグさまが拳を突きだす。

 それだけで手が届くような距離ではなかったが、衝撃波が発生し直線上にあったものはまとめて消し飛んでいく。

 それを俺は横に大きく動いて躱す。躱した先にはサイラオーグさまがいた。

 

「はぁッ!」

 

 再度拳撃が飛んでくる。今度は近距離からだ。

 デュランダルで飛ぶ拳圧を分割し、障壁を貫けない程度まで弱らせ防いだ。

 その間にサイラオーグさまはサラに近づいていた。

 

「おおおぉぉぉぉっ!」

 

 ゼロ距離から拳撃が放たれる。当たれば即リタイアだが、最大のチャンスでもある。

 攻撃される箇所に『氷碧眼(ディープ・フリーズ)』を発動し、闘気を凍らせてただの打撃に変える。この時に腕まで凍らせればかなり戦力を削げる。後先考えず全力で魔力を注いだ。

 

「ッ!?」

 

 サイラオーグさまの拳が途中で消えた。

 全く違う方向から衝撃波が浴びせられる。

 

「ッ、らぁあああっ!」

 

 ダインスレイブを触媒に氷を作り出して防ぐ。

 巨大な氷柱もついでに作り、サイラオーグさまを弾いて距離をとらせた。

 

「今のを障壁に当たってからのタイミングで防ぎきるか。予想以上だな」

 

「……元々障壁が割られてるうちに魔力や魔法で防御する戦闘スタイルですから。つーかクイーシャさんサイラオーグさまの攻撃に合わせて『穴』開けたりできたんすね」

 

 原作では兵藤の突撃にすら反応できない程度の反射神経だったし、この世界でもそこまでじゃなかったと思ってたんだがな。

 そう思って発現するとカラクリを教えてくれた。

 

「俺が動き始めて何秒後に『穴』をいくつ、どこに空けるかパターンを決めているんだ。後は俺がタイミングを合わせて攻撃している。まだクイーシャでは俺にはついて来れんからな」

 

「なるほど。でも言っちゃっていいんすか?」

 

「構わん。俺を無視してクイーシャを狙えるような余裕がお前にあるとは思えんからな」

 

 全く持ってその通りだ。そんなことをしようとすればサイラオーグさまに後ろから殴られてお終いである。

 

「さて話はここまでだ。2セット目を始めよう」

 

 

 

 

 

 

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