転生して会長の甥っ子   作:ぬがー

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第49話

「そりゃお前、そんなので禁手に到れるわけねェよ」

 

「そうですか。自分追い込めばいけると思ったんですけどね……」

 

「死ぬ気で頑張るのと無策で挑むのは違うさ。それにお前、命の安全が保障されてる状況じゃそこまでマジにはなれないタイプだろ? 戦力増強の為にああいうゲームを提案したのは俺だけど、お前に関しちゃゲームの中での成長は全く期待してなかったぞ」

 

 バアル眷属とのレーティングゲームの後日、俺と匙は堕天使の研究施設に来ていた。目的は俺と匙の検査だ。匙は別室で先に検査を受けていて、今この部屋には俺とアザゼル総督だけがいる状況だ。

 昨日の試合はバアル眷属の勝利で幕を閉じた。

 まずは匙対ハルト、ラードラ、ガンドマの戦い。こっちは相打ちで終わった。

 ラードラとガンドマを落し、終始匙優勢で戦いは進んでいたようなんだが、ハルトが『覇獣(ブレイクダウン・ザ・ビースト)』まで使い始めたため運営により強制リタイアさせられたんだ。暴走しているヴリトラ―――ゲームの後で完全に龍化が済んで暴れていたと聞いた―――に神滅具の『覇獣』はやり過ぎとの判断だとか。記録映像で強大な力が荒れ狂っていたのに、アジュカさまが介入した途端完全に抑えつけられてフィールドから退場させられたのには目を疑ったな。超越者の凄さを垣間見た感じだ。

 で両チームの『王』と『女王』のコンビ対決だが、これはこっちが負けた。

 『氷碧眼(ディープ・フリーズ)』で防御することで攻撃時に『凝』を使うことを強要し、闘気が薄くなったところに反撃を叩き込むと言う戦法はそこそこ上手くいった。初回のようにアバドン家の『(ホール)』で別の方向から衝撃波を飛ばしてくるなどしてくるので防御が空振ることもあったが、強力な武装の存在もあり片腕を切り落とし腹に穴を開けるとこまでは行けた。こっちは無傷だったが消耗も考えると、押されてたのはこっちだったけどな。

 そこでソーナ姉さんの仕掛けが発動。一寸先も見えなず、異常に粘性が高いためサイラオーグさまですら動きがかなり遅くなり、供給され続けるので拳の衝撃波で払うこともできない濃霧を発生させた。この霧の中でもソーナ姉さんとソーナ姉さんに接触している者は普通に見えるし、動けるように作られている。おまけに異空間に繋がる『穴』ができると周囲の霧が固まって自動で塞ぐよう術式を組んでいた。対バアル眷属用の特性の術だそうだ。

 欠点としては魔力の消耗が激しいのに加え、下準備がそれなりに必要なこと、発動まで時間がかかること、発動中は他の行動がとれなくなること辺りがある。今回は準備は十分に行えたし、発動までの時間も稼げたし、俺の後ろに乗せていたから自衛出来なくても問題なく運用できていた。

 実際発動後は即座にクイーシャさんを落せたし、サイラオーグさまとの戦いも一方的に俺が斬り続けるみたいな状況になったからな。

 ただ有利になり過ぎたせいでサイラオーグさまが守りを固めてしまった。一切動くことなく、攻撃される箇所に闘気を集中させて防ぐと言う戦法をとりだしたんだ。そのせいでいくら攻めてもなかなかダメージを与えられず、時間だけが過ぎていった。

 そして起こる匙の完全龍化。距離がかなりあったし、龍化が進むくらいで完全になってしまうとは考えていなかったためソーナ姉さんが作っていた霧はもろに影響を受けた。ヴリトラの『旱魃を齎す力』によって霧が晴れ、いいのを一発もらってしまった。

 そこからは防戦一方となり、いくらか粘ったが波乱はなく負けてしまった。これがゲームの顛末だ。

 

「ならゲームが終わった後でいきなり禁手化したのはどういう事態なんでしょうか? これについてはさっぱりわからないんですが」

 

 ゲームが終わった後で敗因について考えていると、唐突に神器が禁手化したのだ。戦闘中には全く変化しそうな兆候はなかったのでかなり驚いた。

 

「そういう事例は少ないからな。悪魔側に渡したデータにゃほぼ書かれてなかっただろうし、そう言う反応になるわな」

 

「というと?」

 

「神器は所有者の想いを糧に進化と変化を繰り返しながら強くなっていく。で、ある程度神器を強化した所有者が、強烈な危機感や感情を抱くことをきっかけに至るのが普通の禁手化だ。だがこれには例外もあってな。所有者がきっかけなんぞ必要ないほどの才能があった場合、『どんな力が欲しいか』をある程度具体的にイメージすることで至る場合がある。たぶん曹操のもこっちだろうな」

 

 あー、なるほど。そう言うこともあるんだな。

 曹操の『|極夜なる天輪聖王の輝廻槍《ポーラーナイト・ロンギヌス・チャクラヴァルティン》』も強烈な感情を元にしていたり、危機的状況に対応するために発現した物じゃないからこそ万能な力を作り出すことが出来たんだろう。俺のもそれと同じってことは、案外拡張性は高いのかもな。

 

「まぁそれでも普段の思考とか戦い方の影響で知らない内に妙な機能が追加されてることもあるんだけどな。そう言う意味もあってお前にもグリゴリ(うち)で検査受けとくように言ったんだよ」

 

「でも趣味八割くらいっすよね?」

 

「九割五分くらいだな」

 

 ほぼ完全に趣味じゃねぇか。

 まぁこの人の性格的に、趣味に絡まないことで全力出せって方が無理か。趣味と一致してて良かったと思っておこう。

 しばらく雑談をしつつ、一番設備が充実している部屋で行われている匙の検査が終わるのを待つ。

 

『総督、ヴリトラ2号の検査終了しました。ゲオルギウスを検査室に入れて下さい』

 

「終わったみたいだな。じゃあ検査いってこい。俺は部下が採ったデータ見てくるから」

 

 放送を聞いたアザゼル総督は、検査室の入り口を指差した後走り去ってしまった。

 突っ立っていてもしょうがないので検査室に入る。部屋中に魔法陣が刻まれただだっ広い部屋だ。

 

『準備完了しました。ゲオルギウス、禁手を使ってください』

 

「はい」

 

 アナウンスに従い、ベイを出して発動させる。

 体を覆っていた障壁が結界へと変質し、部屋いっぱいに広がる。これで見た目の変化は終了だ。

 能力としては『騎乗した者の体を障壁で覆い保護する』から『結界の内部を神器所有者の肉体と定義し、外部からの干渉は遮断する』という物に変化している。結界も通す、通さないを自由に決められるので入るだけで出られないトラップとして利用したりもできる。

 これはゲームの反省をしていて「魔力を放出して攻撃するのではなく、離れたところにタイムラグなしで魔力を作用させられていたら、動き出すために足に闘気を集中させた瞬間を狙い放題だったんじゃないか」と考えた時に発現した禁手なんだと思う。

 なので当然、内部では自由な地点をタイムラグなしで凍結させたりできるようになっている。あと俺の肉体扱いされているせいか、内部はかなりの低温で、一定以下の実力の物は即座に凍りつき、俺より強くても隔絶した差のない者は弱体化は免れない。氷使いとかは強化しちゃうんじゃと思って試してみたが、どうも内部で俺の遺志によらずに『氷』『凍結』の力を使った場合は俺に力を貢いでいるみたいになるようだな。量が過剰ならの過回復みたいになってダメージを負うかもしれないが、そんな相手なら端から勝ち目ゼロだろうから考えなくていいだろう。

 名前はまだない。思いついたらつけるつもりだが、思いつくのがいつになるかは不明だ。いっそアザゼル総督辺りにつけてもらうのもいいかもしれない。

 

『計測、終了しました。部屋を出て総督と合流してください』

 

 アナウンスに従い部屋を出た。

 アザゼル総督曰く「神器の仕組みは俺の考えていた物でまちがいないが、結界の方は現状遮断だけだが他のもいけるようになりそう」とのことだった。さすがに一枚につきバラバラの能力を付与とかは無理だろうが色々出来そうで夢が広がるな。

 

 

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