試験に向けて勉強をしていたある日のこと、唐突にアザゼル総督からの呼び出しがあった。
なんでも「明日眷属全員連れてイッセーん家来い。会わせたいやつがいる」と突然呼び出されたらしい。
この世界では兵藤の家にリアスさんたちが住み着いたりはしていないので、広い部屋は地下に作った訓練室くらいしかない。シトリー
眷属とグレモリー眷属+αが全員集まって話をするには向かない場所だ。
原作知識なしでも何かありそうとわかるので、シトリー眷属はかなり警戒しながら兵藤の家に向かった。原作知識で誰と合わせようとしてるかわかる俺は「やっぱり
客を迎えるように模様替えされた訓練室で待つことしばし、アザゼル総督が客を連れてきた。
「久しい。ドライグ」
やってきたのは露出が凄まじいゴスロリを着た細身の少女。予想通り客はオーフィスだった。その後ろにルフェイと黒歌の姿も見える。
「オ、オ、オ、オ、オオオオオオオ、オーフィス!?」
凄まじい露出のゴスロリを着た少女の出現に兵藤は大声を出して困惑し、慌てて戦闘態勢をとった。他多数も似たような対応をとる。
まぁいきなりラスボスがやってきたらそんな反応になる気持ちも分からなくはない。オーフィスは『無限』なので、気配が大きすぎるせいで何も感じられず恐怖で硬直とかもしないしな。
「ほらほらほら! 昨夜言ったじゃねぇか! 誰が来ても攻撃はすんなって! こいつもお前らに攻撃したりしない! やったとしても俺らじゃ束になっても勝てやしねぇよ!」
「シトリー眷属はそれ聞いてないんですが」
「言わんでも問題なかっただろ。女組は即座に抑えつけられるレベルだし、匙も周りに気を使って暴れられない。お前はむしろ止める側に回ってるしな」
「いや、まぁそうなんですけどね?」
原作知識で誰が来るか分かっていたから取れた行動だし、先に一声かけておくくらいの事はして欲しかった。
そんなことを仙術を暴走させて人型でなくなりつつある塔城を誠二と協力して抑えつけながら、同時にその辺の布で匙が漏らしてしまっている呪いを防ぎつつ思った。
「放してください……ッ!」
「いや、放したら暴れるでしょ? 今暴れるのは駄目だって」
「リアスさん、もう凍らせて置いておきませんか? 後で解凍して話の内容伝えとけば問題ないでしょう?」
「……お願いするわ」
「了解です」
抗議しようと暴れるのを抑えたまま『
これでようやく話を始める体勢が整った。
「まずは一応謝っとく。俺はオーフィスをここに連れてくるのに色々な奴を騙している。これは言い逃れできない協定違反で、それにお前らを巻き込んだわけだからな。だがこいつの願いは、『禍の団』の存在自体を揺るがすものになるかもしれないんだ。無駄な血を流さないために、それが必要だと俺は判断した。すまんがこいつの話だけでも聞いてやってくれ」
そういって頭を下げるアザゼル総督。誠意を示してるつもりなのだろうが、オーフィスがここまで来ている時点で選択肢などない。『無限』を止められるやつなんて一人もいないんだからな。
「……わかったわ」
「こちらも構いません」
「助かる。ここでお前らに拒否されて、オーフィスが暴れたら確実にばれるからな。そうなればオーフィスにやられなくても俺の首は本当の意味で飛んでた」
話をすることに決まった後、オーフィスは兵藤に『赤龍帝の籠手』を出させてぺたぺたと触り始めた。
ひとしきり触った後、今度は兵藤をじろじろと眺め、ぺたぺた触った後でようやく口を開いた。
「ドライグ、天龍やめる?」
『……どういうことだ?』
「宿主の人間、今までと違う成長をしようとしてる。我、とても不思議。今までの天龍と違う。アルビオンとヴァーリも同じ。不思議。とても不思議。だから聞きたい。ドライグ、何になる?」
『わからんよ、オーフィス。こいつが何になりたいかなど、わからんが……面白い成長をしようとしているのは確かだ』
「そう」
兵藤はドライグがオーフィスに対応してくれて助かった、みたいな顔をしている。まぁ俺らとは感覚が全く違う龍神の相手だ。『無限』ゆえに警戒心とかはほぼなく、地雷を踏んだところで気にもかけない相手とはいえ、よく知ってるやつが代わりに受け答えしてくれれば気が楽になるよな。
そう思って油断していると、オーフィスが何かを『赤龍帝の籠手』に沁み込ませた。
「――――――ッッッッッッ!」
「「「「「「「イッセー(君、さん、先輩)ッ!?」」」」」」」
「おいオーフィス! お前兄貴にいきなり何してんだ!?」
「我、見ていたい。ドライグ、この宿主、もっと見ていたい。だから、わかり易くした」
激痛に悶える兵藤と、心配して駆け寄るグレモリー眷属、そしてオーフィスを問い詰める誠二。それらを前にしてもオーフィスはマイペースに返事をした。
「具体的には何をしたんだ?」
「『蛇』を入れた。誓約を受けさせる機能をつけたら、変化の仕方が変わりそうだからつけてない。だから安心していい」
「んー、まぁそれならただのブーストアイテムだし、大丈夫か? だがわからんように隠しとかないと不味いな……」
アザゼル総督が険しい顔をする。オーフィスの『蛇』を赤龍帝に入れるとか、言い訳不能な協定違反の物証だもんな。全力で隠さないといけない。隠しきれるかは怪しいところだがな。
「隠す手段については俺がどうにかする。だからお前ら、こいつをここに置いてやってくれ。どかすのは無理だし、さっきの以外は見るだけならいいだろ?」
「……選択の余地ないじゃない。わかった、受け入れるわ」
「そういうことになると、私たちはなぜ呼ばれたのでしょうか? 今の話しだけなら情報漏えいのリスクを背負って私たちまで呼ばなくても、グレモリー眷属だけで良かったですよね?」
苦虫を噛んだような顔でリアスさんは了承する。
そしてソーナ姉さんが、シトリー眷属の誰もが疑問に思ったことを聞いてくれた。マジで今まで俺ら全く会話に関わってないからな。
「それは戦力確保のためだ。言ったろ? こいつの願いは『禍の団』の存在を揺るがせるものになるかもしれないって。現にオーフィスはここに留まることを選んだし、そのままこっちについてくれるかもしれない。そうなれば神輿なしの『禍の団』はあっという間に分解するだろう。ヴァーリ達が誤魔化してくれてるが、じきにそれを見破った奴らがオーフィスを取り返しに来ることは目に見えてる。それを撃退する人員が必要だったんだよ。オーフィスが自衛したりしたら、うっかり太陽系を丸ごと破壊してもおかしくないしな」
「そう言うことですか。なら一応、納得しておくとしましょう」
原作知識が正しければ、オーフィスが狙われていて守るためにここへ連れてきたはずだが、それはいくら聞いても答えてくれそうにないな。俺はこの場では口を挟まずに置物やってるのがベストか。
「オーフィス。一応確認したいんだが、お前が今代赤龍帝に会いたいと言ったから俺はここに連れてきた。でもイッセーがいるなら住む場所はここじゃなくてもいいよな?」
「構わない」
「じゃあ決まりだ。グレモリー眷属とシトリー眷属は試験に向けての合宿って名目で学校に寝泊まりしてオーフィスの面倒見てやってくれ。試験が終わってからの事は、それまでに考えとく。じゃ小難しい話は終わりだ。解散!」