転生して会長の甥っ子   作:ぬがー

53 / 68
第53話

 異形と化したヘラクレスが腕を振るう。それだけで並の上級悪魔では自由な動きができなくなるほどの突風が発生し、同時に体に生えた棘が射出された。

 だが俺は『並の上級悪魔』程度ではない。飛んできた棘を氷弾で全て撃ち落とす。

 中間で大爆発が起こり、駐車場を強化している霧の結界が軋んだ。

 

「オオオオォォォォォッ!」

 

 爆炎を突っ切りヘラクレスが突撃してくる。

 さっきの爆発からして棘の威力はミサイルと変わっていない。だがかなり小型化しているため弾幕の密度が高く、破壊力は比べ物にならないくらい上昇している。体当たりと同時に全身の棘が爆発すれば、下手すれば一発で致命傷にもなりうる。

 かといって躱すのも無理だろう。身体能力が跳ね上がって普通に殴ってくるのを躱すのでもきついのに、爆発付きだと攻撃範囲が半端ない。

 となれば防御用の『棺』を使うしかない。

 

「『龍の光翼(ディバイディング・ウイング)禁手化(バランス・ブレイク)

 

 『龍の光翼』は『白龍皇の光翼』の下位互換に当たり、接触した相手の能力を一回だけ半分にする能力を持ったドラゴン系の神器だ。堕天使陣営から買い取り、適性のあったはぐれ魔法使い―――こいつらは割とよく騒動を起こすのでその度に確保できる―――に埋め込んで『棺』に収めた。

 『棺』にすると精神は眠った状態になるので禁手(バランス・ブレイカー)を発現させられなくなるのが普通だ。だがゲオルギウスには『龍を支配する力』があったので、所有者ではなく封印されたドラゴンの方に干渉して無理やり禁手化させた。

 禁手化で発現した能力は、通常時は「接触した相手に任意で」だったのが「接近したモノに自動で」に変わったことだ。殴り合いができるくらいまで近づかなきゃ発動しない上に、離れられると効果が消える、範囲から逃げられなくてもすぐに効果が切れる、という欠点まで追加されているが、その分強制力が高くなっている。高位の神仏にだって通じる性能だとヴリトラからお墨付きだってもらったくらいだ。

 これでヘラクレスの力を半減して氷で防ぎ、魔剣四本のオーラを上乗せしたデュランダルでカウンターをくらわす。

 

「はぁッ!」

 

「オラァッ!」

 

 大爆発が起こり双方吹き飛ばされる。

 ヘラクレスの方は全身の棘も生え変わり完全に無傷。棘の爆発にはオーラを吹き飛ばす性質があるようで、デュランダルが纏っていたオーラを剥がされた。ただの強固で切れ味が良いだけの剣になってしまい、ヘラクレスの皮膚に傷をつけには至らなかったのだ。加えて新しい棘を生やすのにも大して消耗はしないようだった。

 対して俺は爆発でボロボロ。量産品の聖槍にはヒビが入り、氷の鎧は半壊した。即座に聖槍は交換し、鎧は直したが、一方的にダメージを受けた事実は変わらない。完全に力負けしている。棘を撃ちだすのと、生やしたまま爆発させるのでは威力に差があるみたいだ。

 ただ向こうはまだ全力と言う感じではないが、全力で来られたとしても絶望的といえるほどの差はない。なら搦め手を使うよりもう一つの『棺』で出力差を逆転させるのがいいか。

 

「『龍の籠手(トゥワイス・クリティカル)禁手化(バランス・ブレイク)

 

 『龍の籠手』は所有者の力を一度だけ倍加するドラゴン系の神器だ。これも『龍の光翼』同様堕天使から買い取ってはぐれ魔法使いに埋め込んで『棺』にした。

 通常時では埋め込まれた魔法使いのスペックを倍にする力しか持たないが、禁手化させることで超強力な魔法具になる。

 その能力は「自身、及び魔術的に接続している相手の全ての腕に『龍の籠手』を装備」だ。『棺』の中身の魔法使いの性能が四倍になっても大した変化ではないが、俺も四倍、堕天使キメラも四倍、『龍の光翼』の効果も二分の一から八分の一に。この世界ではそうすごい能力とは思われないが、実際に使ってみるとその効力は凄まじいって品だ。

 

「はっ、なんだそりゃジークフリートのパクリか!?」

 

「誰だそいつッ!?」

 

 ヘラクレスがさっきと同じように殴ってくる。

 俺も同じように防いで斬りかえした。

 再び起こる大爆発。だがその結果は先ほどとは逆だ。

 無傷な俺に対し、ヘラクレスは浅いが傷を負い血を流している。力比べは今度はこちらの勝ちだった。

 だがそれは俺の優位を示すものではない。攻撃があたる直前に倍加の力を発動させると、ヘラクレスは全力の一撃を止めて体を引いたのだ。そのせいで一刀両断できるはずだった斬撃は浅い切り傷をつける程度で終わってしまった。

 俺が四倍に増えた魔力、魔法力、そして身体能力を制御できる―――生まれつき神器を持っていた場合以外だと急激に増えた力を制御しきれないことが大半。適性がないと良くて通常時より動きが悪くなり、悪いと自爆する―――とばれたので、次からはそれを想定の上での攻撃を仕掛けてくるだろう。当てるのにも苦労することになりそうだ。

 一方ヘラクレスはというと、向こうは向こうで警戒を強めていた。

 初代ヘラクレスはヒュドラの毒を塗った矢を活用していたし、死因は毒の激痛に耐えかねての自殺だ。毒の恐ろしさは魂に沁みついているはず。そして初代ヒュドラよりは劣るとはいえ、未だ魔王も殺す猛毒を持ったヒュドラの子孫がいる森が悪魔の領地にはある。それを俺が持っているかもしれないと考えたんじゃないかと思う。爆発で弾き飛ばせる皮膚ならともかく、血管に流されればマズイと判断したとかな。

 実際今のヒュドラは毒以外は怖くないから微量だが採取していたし、ちょっと調べれば使い魔の森の深層部に何度も潜っていることはわかるからな。向こうが多少でも情報収集していればそれくらいは連想してたと思う。実際はオーフィスに渡したペンダントくらい頑丈な容器でないと危なくて使えないから意味ないんだが。

 まぁそれでも使えないってことをわざわざ言わなきゃ勝手に向こうが悩んでくれてる可能性がある。黙っていよう。

 

「……このままじゃきつそうだな」

 

 そう言ってヘラクレスは目を閉じ、さらに異形へと変形していく。

 他の相手がこんなことをしていたらためらい無しに殺しに行くが、ヘラクレス相手だとそれは出来ない。「魔人化(カオス・ブレイク)」を投与した直後もそうだったが、変形中は身体能力強化に使われていたオーラが全て爆発力に回っている。俺の生存を考えるならここで仕掛けるのは無理だ。ヒーローの変身を眺めることしかできない悪役の気持ちになってくる。こっちが治安維持側だし、見かけ的にもこっちのが人間っぽいのに。

 変形が終わったヘラクレスは体高は三メートル程度まで下がったが、肘から先と膝から先だけはさらに大きくなったうえに刃物のような鋭さを持っている。当然オーラもその四か所に集中しており防ぎきるのは困難だと一目でわかった。

 

「準備完了だッ! 第二ラウンド、始めるぞ!」

 

 開始の合図を待ってやる必要はない。爆発力がある程度落ちた時点で魔力に加え魔剣聖剣のオーラを乗せた氷柱を大量に生やす。回避するスペースなど与えない広範囲攻撃だ。

 とは言えこんな大雑把な攻撃でヘラクレスを倒せるとは思っていない。氷塊の壊し方から戦闘力の予測するのが主目的で怪我を負わせられればラッキー程度だ。

 なのにヘラクレスの気配がしなくなった。探知魔法を使っても何の反応もない。駐車場を覆う霧の結界にも綻びは一切関知できない。

 

「え、ひょっとしてこれで死んだのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なわけねぇだろぉがッ!」

 

 床を突き破ってヘラクレスが真下から飛び出してきた。

 そのままベイの胴体を掴まれ、派手に爆破される。

 

「ッッッッッッッ!!!???」

 

 初めて味わう神器損傷による所有者へのフィードバックに目を白黒させながらも、どうにかベイを消し足元から氷柱を生やして反撃する。

 それをヘラクレスは足で掴んだ空気を爆発させて躱す。

 さらに手で空気を爆発させてとび蹴りを仕掛けてくる。

 急いで氷を纏い防御するが、纏った氷を爆破され吹き飛ばされた。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。