転生して会長の甥っ子   作:ぬがー

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第55話

 次元の狭間から帰還し、先に戻ってきていたソーナ姉さんたちから向こう側の話を聞いた。

 始めは原作通りの展開だったみたいだが、細部に差が生じていた。

 美猴の変装が通用せず、曹操とゲオルクだけでなくジャンヌもこっちに来ていたらしい。そのうえでレオナルドは補佐をつけてヴァーリチームの足止めに来ていたとヴァーリが言っていたそうだ。足止め部隊は本当に足止めだけが目的で、オーフィスを狙って来たわけではないと読み取れる構成だったとか。

 俺たちからすれば美猴、アーサー、ヴァーリと入れ替え転移したハティがいる戦場ならシャルバ・ベルゼブブにレオナルドを拉致されにくくなって好都合な変化だとも言えたが、美猴の変装を見破れるようなメンバーが英雄派にはいるとも言える。俺らの存在によるバタフライ効果かどうかは知らないが、正体不明の実力者が現れた可能性があるのだ。より警戒を強める必要があるだろう。

 で肝心の戦いの方だが、こっちは完璧とは言えないが原作よりはいい形で収められたみたいだ。

 戦闘開始早々に「七宝」を全て匙が飲み込み抑え込んだそうだ。曹操は腹の内から攻撃したが、帝釈天でも無理だったんだから当然ながら失敗。槍一本で戦うことになった。その後はグレモリー眷属全員+ルフェイに召喚されたヴァーリによって曹操はフルボッコされていたとか。それでも無防備なゲオルクには一発も攻撃を通さなかったって言うんだからさすがとしか言いようがない。

 その時シトリー眷属はアザゼル総督と共に「魔人化(カオス・ブレイク)」を使ったジャンヌと戦っていたという。こちらは数の利こそあるものの、巨体を生かした攻撃により実力者が弱者のフォローに回らざるを得ず攻めきれなかったそうだ。これは眷属を切り捨てることのできなかったソーナ姉さんのミスだ。代えの効くメンバーは切り捨ててジャンヌを倒すことを優先していれば、アザゼル総督が曹操を攻撃する余裕もでき、英雄派はサマエル召喚前に全滅させられていた可能性がある。

 実力や才能を吟味せず、目についただけで眷属に加えていた頃のツケだ。これを乗り越えられなければこれから先の戦いはきつい、とアザゼル総督も言っていた。それに対してソーナ姉さんは考えてみます、とだけ暗い表情で返した。

 ここで考えを改めるか、もしくは後方支援に徹すると決断してくれれば補佐する俺としてはありがたい。賢明な判断をしてくれることを切に願う。

 

 閑話休題。

 

 そんなこんなでサマエル召喚まで粘られてしまったようだが、ここで意外なことが起きたと言う。

 オーフィスを舌で捕らえたサマエルが、急に苦しみだしたらしい。まるで猛毒でも飲んだみたいに。曹操たちも相当慌てていたそうだ。

 うん、オーフィスに持たせてた毒入りペンダントが機能したようで何よりだ。

 『龍殺し』はあくまでドラゴンに対する殺傷力が上昇する力であり、ドラゴンからの攻撃を緩和するものではない。だから九割がた邪龍な蛇の魔物ヒュドラの毒でも効くと思ったんだが、予想通りだったな。ペンダント自体もドラゴンの鱗を加工して作った物だったからサマエルが触れれば即壊れただろうし、さぞかし飲みやすかったことだろう。我ながら良い物を作ったと思う。

 ま、オーフィスにヒュドラの毒持たせてサマエルにダメージ与えたなんてばれたら曹操やハーデスに恨まれそうだから言わないけどな。リスクにリターンが釣り合わないし黙秘が一番だ。ペンダントを無くしたオーフィスには代わりの物を贈っておこう。

 その後はゲオルクが死にかけのサマエルを無理やり使役してオーフィスから力を奪ったそうだ。結果、オーフィスは原作以上に力を奪われる―――二天龍よりは強いが大きな差はないと言うレベルまで弱体化してしまったらしい―――ことになったが、サマエルもそれで力尽きて死亡。目的を果たした曹操とゲオルクは奪った力だけを結晶化させて持って逃げたので―――俺が大穴開けたせいで結界の修復が間に合わず、それ以外の選択肢はなかった模様―――そこで戦いは終了。みんなも転移魔法で悪魔領に帰ったんだそうだ。

 なおサマエルが死ぬ際に帯びていた『龍殺し』の力がばら撒かれるのを危惧し封印にとどめていたらしいが、死に方が良かったのかそう言った被害は全く出なかったらしい。もし起きてれば兵藤とヴァーリは確実に死んでいたので正直ほっとした、と言うのがアザゼル総督の意見だ。

 これにより『禍の団』とハーデスの協力関係は完全に崩壊したと言えるだろう。なにせハーデスが管理しているはずのサマエルがテロリストに使役され死んだのだ。おまけにサマエルの死体っていう完全な証拠まで残っている。さらに絞った後の方のオーフィスの拘束もやめて早々に撤退している。ハーデスからすれば完全に裏切り行為であり、今後各勢力から監視がついて自由に動けなくなるであろうことを考えると、危険性は下がったはずだ。

 結論、原作よりはいい方向に動いていると思っていいだろう。正体不明の敵が出てきてる可能性があるが、兆候もなくいきなり現れるのに比べたら万倍マシだな。

 その後で俺たちの方で起きたことの説明をした。とはいえ「ヘラクレスと戦って、倒して、休んで、帰ってきた」としか言うことがない。無事でよかった的なことを言われこの話は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やったことの報告が終わった後は現在の話だ。

 時間的猶予はそれなりにあるみたいだが、結構マズイ状況らしい。詳しいことはアザゼル総督が説明してくれるそうだ。

 

「緊急で美猴から連絡があってな。戦闘中にシャルバが乱入して来て、『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』のガキを使って何か作ってどっかに放った、っていう大雑把にもほどがある内容だ。何かやってる間にハティが噛み殺したらしいんだが、現魔王やそれに従う悪魔への恨み言を呟いてたって話だ。で、念のため調査してみると、冥界の辺境でこんなのが見つかった」

 

 そう言ってモニターに映し出された映像には、超巨大なモンスターが映っていた。

 見た目はよくいるキメラと言った感じだが、とにかくでかい。周囲の木々のサイズから体高が百メートルくらいあるのが分かった。

 原作で言う『豪獣鬼(バンダースナッチ)』か。敵とは言えアーサーや美猴、ハティのいるところにレオナルドがいるのならシャルバは行動を起こせないかと思ったがこうなったか。この面子のいる戦場に乱入すれば確実に死ぬって判断ができないほど慢心+キレてたのか、それとも誰かにそうするよう唆されたのか気になるところだ。今度アーサーか美猴に会ったら聞いてみよう。

 ただこいつだけ見せてもっとデカい『超獣鬼(ジャバウォック)』は見せないってことは、いるのはこいつだけか? それなら楽でいいんだが。

 

「こんなのが全部で十三体、バラバラの場所に現れてた。。どいつも基本スペックが高いうえに、悪魔の魔力に対して非常に高い抵抗力を持ってる。あと再生能力も高いし、小型のアンチモンスターを量産し続ける能力も持ってることが確認できてる。そんなのが首都の方角に進行中って言うのが現状だ。悪魔の戦力だけじゃ倒せるまでにどれだけ被害が出るか分かったもんじゃない。なんで堕天使陣営(うち)や天界、協力関係を結んだ勢力から援軍を呼んで悪魔陣営の精鋭と時間を稼ぎ、アジュカが対抗術式を創ってから一気に撃破って作戦になった。連戦で悪いが、お前らには今日一日しっかりと休み、明日からこいつらのうち一体の足止めに参加してもらうことになる」

 

「わかったわ。断れるような余裕のある状況じゃないものね」

 

「すみません。私の眷属では小型のアンチモンスターの処理ですら貢献できるのはジョージと匙だけでしょう。私と二人は参加するので他は不参加でも構いませんか?」

 

 アンチモンスターに通用する火力、もしくは魔力以外が必要な作戦だ。バ火力を誇るグレモリー眷属ならともかく、うちは俺と匙以外一切作戦に貢献できない。むしろ足を引っ張り今回の二の舞になるだろう。ナイス判断だと思う。

 この申し出は粘って交渉する必要もなく普通に認められた。ま、当然だな。アザゼル総督は対応が柔軟で何よりだ。

 俺もこの事件に向けて作ったコネを使えるよう許可取るとするか。

 

「ちょっといいですか?」

 

「どうしたジョージ。何か意見でもあるのか?」

 

「ええ。金さえ積めば俺並の戦力を連れてこれるかもしれない個人的なコネがあるんです。参戦は遅れるかもしれませんが、そっちに行ってきていいですかね? あと契約にかかった金は経費で落ちますか?」

 

「マジでお前並の奴が来るんなら文句言うやつなんていねーよ。あと金は経費で落とせるだろうが、その場合お前ひとりの功績にはならないから注意な。ソーナもそれでいいな?」

 

 よし言質とれた。功績はこれ以上いらないし、経費で落ちないって言われてもアザゼル総督経由で落ちるように工作できる。不安が一つ消えたな。

 

「構いません。それよりジョージ、そんなコネを作ってなぜ報告しないんですか? 私はしないと信じていますが、他なら裏切りの準備だと思われかねませんよ」

 

「理由もなく話すなって契約してるんです。今回、ようやく話す条件が揃いました」

 

「もう少し考えて契約内容を決めなさい。で、交渉はいつから行く気ですか?」

 

「許可してもらえるんなら今すぐ行こうかと。俺は次元の狭間で休憩挟んでから帰ってきましたし」

 

「許可します。遅れた分だけ辺境に住む民に被害が広がります。一刻も早く呼んできなさい」

 

「わかりました」

 

 

 

 

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