「おいシュウ。お前雑魚蹴散らしながらボス倒しに行くのと、雑魚は他に任せてボスに集中するの、どっちがいい? 前者なら打ち漏らした分だけ俺らで対処するが」
「んー、じゃあ雑魚は任せていいか? 近くで見ると思ったよりでかいし、アレで存分に遊びたい」
「オッケー。なら俺がでかいのを撃ちこんで、誠二が撃ち漏らしを潰す。匙と兵藤はそのフォローだ。いいな」
「「「了解」」」
簡単にだが攻撃の手順を確認しつつ『
ま、その方が俺としては都合がいい。シュウが雑魚まで喰ってしまうと、試し撃ちをする的がいなくなるからな。
シュウが結界で作った足場を蹴り、上空へ駆け上がっていくのを見ながらオリジナルの魔法具を取り出しす。
出てきたのは人間が浮かんだカプセルから足が生え、手が銃になった腕が生えている、と言う姿のゴーレムだ。材料には俺特性の氷と魔法で加工された水、そして駒王学園での会談の際に攻めてきた魔法使い達が使われている。
首を刎ねただけで死んではいなかった彼らの首を繋ぎ合わせて装置に詰め、その魔法力や魂などを圧搾しエネルギー弾として撃ちだす構造になっている。契約の対価を払えなくなって奪った魂をエネルギー源として有効活用するための装置をイメージして開発したものだ。なので悪魔の倫理的には問題のない道具になっている。構造を余所に絶対漏らすなよと政府から念押しはされたがな。
バッテリーとして詰まれているのが中級悪魔相当の魔法使いだけあって、魂まで絞れば上級悪魔相当の火力が発揮できる。バッテリーになってる魔法使いはなかなか手に入らないのでコスパは悪いが、攻撃に魔力は使わないためアンチモンスターの相手にはぴったりの兵器だ。
ただ普通に撃つだけじゃ十分なデータが取れないので、数体だけ『支配の聖剣』を使って魔法力も魂も一気にすべて搾り取って撃ってみようと思う。
「発射ー」
予想通り銃身が爆発した。一度に全部放出するんじゃなく、少しずつ搾り取って撃ちだすつもりで設計していたから当然の結果だな。
砲撃を収束させきれず、広範囲に拡散して射出される。
視界に存在していたアンチモンスターが一気に消し飛んだ。さすがに『豪獣鬼』は拡散した砲撃では小揺るぎもしなかったがな。『豪獣鬼』の向こう側で生成されていたアンチモンスターも探知魔法で感じる限りそのまま残ってしまったようだ。
まぁそれでも十分な成果である。これとの比較で一般人や兵藤みたいな魔法力ほぼゼロの『人類』―――神が作った人間ではなく、自然発生した動物―――寄りのやつも圧搾して全力射撃のデータをとってみたいが、さすがにその辺の一般人を拉致してくるわけにはいかないからな。悪魔の一生は長いんだし、機会を待つことにしよう。
それよりも今は目先の事だ。作られていたアンチモンスターはほぼ一掃できたが、まだアンチモンスターの生成は続いている。造られたばかりの奴がシュウの邪魔をしないよう、現れた端から潰していかなくては。
「皆行くぞッ!」
誠二の精霊魔法がアンチモンスターを襲う。
風が飛ぼうとするモノを落し、火が地表を舐め、それを耐え切ったモノを水が押し流し、地割れがアンチモンスターを飲み込み押し潰していく。相性の問題もあって、もうあいつ一人でいいなってレベルだ。匙たちも同じ判断のようで、無駄に援護しに行くことなく戦場を見張っている。
ただこの誠二がいても倒しに行くとは決断できなかったのが『豪獣鬼』だ。シュウ一人じゃ倒しきるのはきついだろう。いざって時に備えとくのが俺らの仕事だな。
―――姫島朱羽 side ―――
「うはー、でっかいなぁおい。こりゃやりがいがありそうだ」
上空に駆け上がり
体高百メートルを超える殴りがいがありそうな巨体に、壊して怒られるものが何もない平地。存分に力を振るえる場所。これを用意できただけで譲治と繋がりを持ち続けて良かったと思えてくる。何回か自由に暴れられるあいつが羨ましくてキレかけたこともあったが、それも全部許せる気分だ。
足元のウザい雑魚も片付いたみたいだし、さっそくだが始めるとしよう。
「まずはこれだな。どれだけ効くかなー?」
錫杖の先端に霊力を集中させ、朱色の砲撃を放つ。デカブツ相手なので収束はさせず、拡散させた一撃だ。
なおこの術、化生の類を払う術なので物理的な破壊力は低い。だからこそダメージの受け方によって相手を物理で攻めるか術で攻めるか決めるのには向いた攻撃だ。
結果、術を受けた部分が削れるのではなく消失したので術で攻めるのが良いみたいだ。自分の肉体を持つ魔獣より実体化した怨霊とかに近いっぽい。退魔術の類がよく効きそうだ。嬉しい誤算と言うやつかな。
とはいえこのデカさだと何発撃たなきゃならないかわかんないし、アンチモンスターの生成速度が若干落ちた代わりに再生も始まっている。燃費のいい術で行く方が良さそうだな。
「ならこいつだ。デカブツ相手にはデカい獲物を使うに限る」
退魔術の朱い輝きが錫杖に集まり、ビルのように巨大な刀身になる。
でかいやつの最大の強みは、どれほど強力な攻撃だろうが攻撃範囲が狭ければろくにダメージを受けないことだと思う。どれだけ技術があろうとも、人間サイズの武器でチマチマ削っているだけでは決して勝利することはできないからだ。かといって普通に術で削れば先に術者が力尽きる。このサイズでこの硬さ、この再生速度だと俺ら特別な転生者でもきつそうだしな。物量で押し潰すと言う戦法をもっとも体現しているのがこういう奴らだろう。
だが敵の強みを生かさせないのは戦いの基本だ。当然ながら対抗策は用意してあった。
それがこれ。でかい敵はでかい武器を作って斬ればいいっていう単純な策だ。
「オラオラオラオラッ!」
反撃しようと光力を溜めている箇所を優先してガンガン斬りつけていく。
悪魔の首都へ向かって巨体で押し潰したり小型のアンチモンスターをばら撒いたりしながら進む、という指示だけで作られたのか、反撃が弱い。全力で作った霊刀で全力で斬りつけるのも初めは楽しかったが、すぐにただの作業になっていった。
なにか面白い反応しないかなー、と思いながら斬り続けていると望んだのとは少し違うことが起きた。
「お、変形か。形的にスピード重視か? 俺がめんどくさいからって無視してく気かよ」
『豪獣鬼』が巨大な虫のような形に変形しはじめた。先ほどの肉の塊みたいな姿よりは戦闘向けの体になったが、どう見ても空中にいる俺を倒そうと言う形はしていない。高速で動いて俺を振り切り、一気にルシファードまで障害物を弾き飛ばしながら進むつもりなのだろう。こいつが作られた目的を考えると、そうとしか思えない。
だがこれは悪いことではない。俺を厄介だと判断してるのは分かったし、
なので手早く結界で俺と『豪獣鬼』を囲う。人外種である譲治たちも増援に来れなくなるが、まぁヤバくなってから解除するのでいいだろう。
『豪獣鬼』は結界も気にせず突き破ろうとしていたが、何度やっても変形しても無理だったので諦めたようだ。アンチモンスターの生成も止まり、俺を倒すための空中戦用に変形していく。
「ようやくやる気になったか。それじゃ本番、始めるとするか!」
変形中の『豪獣鬼』を切り裂きながら地面に降りる。小型アンチモンスター回避とこっちに意識を向けているかの確認の為に空中にいただけで、俺が得意な戦場はこっちだからな。
こっちでの人生初の全力戦闘だ、存分に楽しませてもらうとしよう!