転生して会長の甥っ子   作:ぬがー

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第58話

「シュウの奴、結界張るにも場所考えろよ。下手したら俺も溶けたぞ」

 

 ある程度『豪獣鬼』を痛めつけた後、遊びに専念させるためにシュウは自分と『豪獣鬼』だけで結界に籠ってしまった。

 様子見で放った初撃が予想以上に効いてた―――予想ではシュウと誠二がメイン、俺らが補佐に回れば多少の余裕を持って確殺出来ると言うレベル。実際はシュウ一人でも楽しんで倒せそうな相性の良さだった―――から問題はなさそうだが、結界の位置にはもう少し気を使ってほしい。回避できると信用されてるからなんだろうが、悪魔にあいつの退魔術が弱点ではないやつなどいないのだ。回避できる奴しか出てきてないとはいえ一言警告してくれてもいいだろうに。

 

「まぁいいか。よしお前ら、残った雑魚さっさと片付ける―――前にテロリストの排除だ。小型アンチモンスターは他に任せてそっちに集中しろ」

 

 上空に霧が渦巻く。英雄派がこっちが戦力を集中させられないタイミングで仕掛けてきた。

 防衛戦に出てきた魔王を段階すっ飛ばして狙うか、邪魔ばかりしてきた俺らを狙うかの二択だと思っていたが、こちらに仕掛けることにしたようだ。

 上空の霧を切り裂いて出鼻をくじいてやりたいが、残念ながら硬度が高すぎる。デュランダルを装備していれば空を飛んで斬れる可能性もあっただろうが、エクスカリバーでは無理だろうな。

 そう考えながら観察していると、霧から巨大な物が落ちてきた。

 余所で暴れていたはずの『豪獣鬼』だ。シュウが追い込んだものと似たような戦闘形態に変化している。

 

「はぁっ!?」

 

 攪乱の為に『豪獣鬼』を転移させてくるところまでは想定していたが、シュウが凹ってようやく判明した戦闘形態で来たのはさすがに想定外だ。こいつにルシファードまで一気に駆け抜けられたらとんでもない被害が出る。戦力を分散させてでも足止めに動かざるを得ない。

 

「誠二メインで足止めだ! 兵藤はその補佐、匙はさらなる増援に備えろ! シュウが一体目を倒し終り次第協力して撃破だ! 俺は」

 

 エクスカリバーを振るい、別の位置から転移してきた曹操に斬りかかる。

 

「こいつを始末する!」

 

「予想通りの反応だな。じゃ、付き合ってもらうとしようか」

 

 『透明の聖剣』と『擬態の聖剣』『天閃の聖剣』による多角攻撃が打ち払われると同時に、曹操がつけた腕輪から霧があふれる。『絶霧』で作った結界装置か。

 しかしそれにしては展開が速い。速すぎる。こっちでも引き離すための転移魔法は用意していたが発動が間に合わない。

 なら今するべきことは守りを固める事。全身を氷で覆い、転移直後に殺されるのを防ぐ。そこから先は考えながら行動するしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何もなしか。お前何がしたいんだ?」

 

「雪辱戦、かな? まぁまず話でも聞いてくれ。そちらとしても損はしない話だと思う」

 

 転移先は霧で囲まれてはいるが次元の狭間に作られた空間ではなく同じく冥界のようだ。俺が準備した転移魔法と同じく、世界移動をせず、特定の位置に移動するだけにしたことで天界を速くしていたっぽい。

 ただ罠とかこちらの力を制限する類の魔法が仕掛けられていなかった。曹操もすぐに斬り合うつもりもないのか、距離を取り最低限の警戒をしているだけで何か話し始めた。

 

「まずジャンヌがヘラクレスの死を聞いて『禍の団』を脱退した。あいつは同じ英雄の魂を継ぐ者であるヘラクレスが所属していたから『禍の団』に加入したところがあったからな。元の根無し草生活に戻るそうだ。戦闘要員で機密情報も知らないし好きにさせた。

 次にゲオルグだが、あいつも脱退だ。データはそれなりにとれたし、泥船から離れて分析と研究を行うらしい。今回のアンチモンスターの転送と、この腕輪が最後の協力だそうだ。あいつがどこかへ行くのを止める手段はないから認めたよ。そしたらどうにか喋れる程度に回復したレオナルドもゲオルグに付いて行くと言ってね。俺とアンチモンスターを転移させた後すぐに移動しただろうから、もうどこにいるか俺も分からない。

 その影響を受けて英雄派はボロボロだ。組織として機能していない。近いうちに他の派閥に吸収されるだろう」

 

 英雄派、予想よりひどいことになってるな。目先の敵が弱るのはいいが、他の派閥が強化されそうで心配だ。

 

「これが自分で思っていた以上に堪えてね……。想定外のところで一時的に躓く程度ならともかく、部下に見捨てられるような者が英雄と言えるのか? そう思えて仕方がなかった。もはや魔王や神を打倒し現代の英雄に、など言えん。『英雄を志した』俺は死んだも同然だ。

 だが英雄の血を守り続けた一族に生まれ、武を磨き曹操の名を襲名するに至った『武人としての』俺は残っている。

 運が悪かっただけで、実力が足りていなかったわけじゃないと証明したいんだ」

 

「それで一騎打ち挑むために俺だけ連れて来たってのか?」

 

「そうだ。雪辱戦も兼ねているがな」

 

 運、か。確かにこいつの言いたいことも分からなくはない。

 俺ら特別な転生者はチートな性能の肉体を持ってるし、スペックだけで見れば魔王級を軽く超えてるからな。こんな異常なのと制限だらけの状態で敵対することになるとか普通ならあるはずないしな。

 原作世界でも兵藤が歴代と同じような赤龍帝なら英雄派の構成員の成長のきっかけに使った後に普通に撃破で来ていただろうから、ちょっかい掛けたのも悪手とは言えないし。

 曹操視点からすれば、生まれた時代がこんなイレギュラーが大量発生する時代だったとか不運だったとしか言えないだろう。

 

 まぁそれは俺の知ったことではないので特に何かしてやろうとは全く思わないがな。

 俺らを囲む霧も、本当に囲んでいるだけで特殊な空間を作っているわけじゃないから『支配の聖剣』で空間を支配して次元の狭間を通れば普通に脱出できる。ゲオルグがいないのなら曹操に超長距離移動の手段はないし、奇襲と撤退を繰り返して足止めし、援軍呼んで数で押し潰して倒そう。話してる間に準備は出来たし、それが一番安全だ。

 

「だがそっちが乗ってこないことは理解している。だから『契約』しよう」

 

「契約? 悪魔の方式での契約か?」

 

「そうだ。受けてくれれば勝敗に関係なく悪魔陣営に下るし、『禍の団』の情報も聴かれたら素直に話そう。実験で得たデータのコピーも差し出す。勝利した時お前が生きていれば止めは刺さないし、負けた時死んでいれば魂を持って行って構わない。

 代わりにそちらには本当の全力で相手をして欲しい。この条件ならどうだ?」

 

「ふむ……」

 

 悪い条件ではないな。逃がすつもりは一切ないが、呼んだ援軍から犠牲者が出る可能性はあるし、万が一突破されて大物以外を狙ってゲリラ活動されたらとんでもない被害が出そうだ。決闘しさえすれば速やかに情報が手に入ると言うのもデカい。英雄派の残党を早期に片付けられれば、他の派閥が強化されるのを妨害できるだろう。それに力づくで捕らえても、神器所有者に武装解除は出来ない。後のことを考えれば自主的に下らせた方がいいか?

 武器の関係上負け=寸止めでもしてくれない限りほぼ確実に死なのは問題だが、足止めを選んでもそのリスクはある。ここは思い切るべきか。

 

「……わかった。その条件をのもう。この契約書に自分の血でサインしろ。襲名した『曹操』じゃなく、真名のほうな」

 

「できれば当代曹操として挑みたいんだが……まぁ仕方がないか。これでいいな?」

 

 亜空間から取り出した高級品の契約書に契約内容を魔力を使って一気に書き上げ、曹操に投げ渡した。曹操はそれに目を通し、俺が内容を改ざんしていないのを確認したのち、指に傷をつけ署名した。

 これで契約は結ばれ、曹操は魂を縛られ契約不履行は不可能になった。

 それと同時に曹操はもう俺にとって『害獣』ではない。『客』だ。悪魔の誇りに賭け、契約をこちらから破ることはしない。

 他人任せにせず、全力で討ち取ってやろう。

 鎧を着こみ、『棺』を五つ装備、最後に槍を一本取り出して装備する。

 

「おう、それで契約は成立した。じゃ、早速始めるか?」

 

「ああ、始めるとしよう!」

 

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