第6話
「特訓の手伝いっすか?」
「ええ、リアスは十日後のレーティングゲームまでグレモリー家が所有する山に籠って特訓をするそうです。その特訓相手をしてほしいと依頼されました」
生徒会室で細々とした仕事を片付けていると、オカ研のところに行っていたソーナ姉さんが悪魔としての仕事を持ってきた。
なんでもリアスさんが親に無理やり結婚させられそうになって拒否したら、レーティングゲームで勝てればなし、負ければ即結婚ということになったとか。相手のライザー・フェニックスが余裕を見せて試合日を十日後にしてくれたので、その間学校をさぼって特訓するそうだ。
俺は数日前から冥界に住んでいた頃に胃をすり減らしながら築いたネットワークで知っていたが、ようやく二つ目の原作イベントが始まったみたいだな。誠二から聞いた限りでは相手も状況も原作と似たようなものだと思う。
違いは特訓相手に俺らシトリー眷属が選ばれたことくらいか。
「つかそんな依頼受けちゃったら、その間この学校はどうするんすか? 放置ってわけにもいかないでしょう」
「勘違いしているようですが、特訓相手を務めるのはあなた一人です。他は残りますよ。それなら生徒会の仕事も問題なくこなせるはずですから」
「マジですか。ひょっとして、あれを使えと? そうでもなきゃ一人で全員の相手とか無理ですし」
趣味で作っている魔法具にそれができるやつはある。原作の事件に向けて作った奴に比べれば大したことはないのだが、あれ作るのに時間をそこそこつぎ込んでいるし、原作ほどではない事件でなら活躍できるのでそう簡単に壊したくない。どうにかならないだろうか。
「ええ、倉庫で埃かぶっているだけではもったいないですから。費用は全てリアスが負担してくれるそうですから遠慮なくやりなさい。それに依頼の報酬としてサーゼクスさまが拾ってきてグレモリー家に放置していたゴグマゴグを数体くれるそうですよ。壊れていて動かないそうですが、あなたには価値のある物でしょう?」
「やりますッ! やらせて下さいッ!!」
古の神が作ったゴーレム兵器のゴグマゴグ! 次元の狭間を漂っていると聞いたことはあったし空いている時間を使って探したりもしたのだが、まだ発見したことはなかった。それが手に入るというのなら安いものだ。
ヤバい、今から楽しみになってきた。ソーナ姉さんは壊れていると言っていたが、それでも研究対象としては興味深い物だし、装甲とかはもういない神が作った物でありとても貴重だ。これで興奮しなければ魔法使いは名乗れない。グレモリー眷属の特訓と並行して解析の準備を進めておかなくては。
「とまぁそんな経緯でこっちに参加することになった。八日間よろしくな、グレモリー眷属の皆」
山の別荘に到着し、これから特訓開始という状況のグレモリー眷属の元に転移で現れた。リアスさんはやっと来たのか、みたいな表情だが、なんというか兵藤が恨みがましい顔をしている。たぶんここに来るまで大量の荷物を背負わされたのに、俺は転移一つでここまで来たからだろう。だが俺はすぐに特訓が必要なわけじゃないし知ったことじゃない。
「で、どうやって全員の特訓相手をするのかしら? ソーナからは「多少費用がかかるけど全員の相手が一度にできる」としか聞いてないのよ」
「了解です。じゃあちょっと下がってください」
グレモリー眷属が離れたことを確認し、巨大な転移魔法陣を展開。そこから多数の人形が現れた。
「へぇ、氷のゴーレムか。珍しいわね」
「俺が魔力で精製した氷を魔法で加工して作った自信作です。そこらのゴーレムとは性能が段違いですよ」
装甲を叩きながら自慢の品をアピールする。リアスさんもこれならいい訓練になりそうね、と満足げだ。ゴーレムを持ってくるのは予想していたそうだが、数を用意するのかと思っていたらしく個体能力が低すぎないか心配だったらしい。
だがこのゴーレムたちは俺の特別製。魔力で作ったゴーレム精製に向いた溶けない氷を、母さんの家系が磨いてきた魔法の技術とシトリー家の対価として受け取り溜めこんできた魔法の知識を使って加工してある。一体でも並の中級悪魔くらいの戦闘力はあるはずだ。
「値が張りそうだけど、しょうがないわね。じゃ、外で修業を始めましょうか」
兵藤の訓練はリアスさんが自分でやり、アーシアは姫島さんが担当するとのことなので、俺の仕事は他三人となった。基本のできていない二人を指導しなくて済んだのはラッキーだったな。
―――『騎士』の訓練―――
「木場、お前は自分の弱点は理解してるのか?」
「防御の薄さ、だよね。力の強い相手にまともに攻撃を喰らうと、たった一発でもやられかねないくらいだから」
問いかけると、木場はそう返した。確かに防御の薄さは短所だろうが、回避性能で補える程度なので弱点と言う程ではない。弱点というべきものは他にあるのだ。
「違う。お前の弱点は攻撃力のなさだ。魔法抵抗力と物理防御力の両方が高いやつに力任せに押し込まれたら何もできないだろ? 最悪の場合、敵の『戦車』に無視されてそのまま攻め込まれるぞ」
聖魔剣ならともかく、今はただの魔剣だからな。天然物でもない聖剣使いの振るう七分の一のエクスカリバーにも簡単に折られる程度じゃ、硬いやつなら皮膚を斬れるかすら怪しい。ライザーさまのとこの『戦車』も真面目に魔力で駒補正を高めて戦えば間違いなく弾くだろう。普通に修行を続ければリアスさんの公式戦デビューには余裕で克服できていた程度の弱点だが、現時点ではゲームの駒として致命的過ぎる弱点だ。
「ッ! ……確かにそうだね。僕にはお師匠さまのような切断力はまだない。この状態じゃいくら速く動けても、ただいるだけになりかねないか」
「つーわけで、お前の相手はこいつだ。まずは一対一でどうにかして破壊する。出来たら数を増やしていくぞ」
ゴーレムのなかでも一際巨大なやつを動かす。棒立ちから戦闘態勢に移行するゴーレムに合わせて、木場も魔剣を作りだして構えた。
「さすがに会長が推薦しただけあってスパルタだね。……行くよッ!」
―――『戦車』の訓練―――
「まずは塔城だ。お前の弱点は丸わかりだな。遠距離攻撃ができないことだ。どういう対策をとる?」
「……魔力で『戦車』の補正を高めて突撃します。私にはそれしかできませんから」
仙術を使えばどうにかできるはずなんだけどなー。まぁ仕方ないか。塔城は姉が仙術の暴走で『居場所がなく野垂れ死にしかけていた自分たちを拾ってくれた一人目の命の恩人』を殺してしまったと思っているから『二人目の命の恩人』であるリアスさんを殺したくなくて使えないのだろうし。周りが強くなって暴走してもそう簡単に死にはしないと思えたら、何かきっかけがあれば使うようになるだろう。
「じゃあこいつだな。逃げながら砲撃をするこいつを追いかけて破壊するんだ。まず一体で、徐々に増やすぞ」
さっきは召喚していなかったゴーレムを召喚する。筒型の体に車輪を持ったゴーレムだ。どう見ても大砲にしか見えないが、これでも立派なゴーレムである。
塔城の特訓相手が決まり、次は誠二だ、と言うところで先にあいつが意見した。
「俺の相手はどうするんだ? どうもこのゴーレム共じゃ数が足りそうにないんだが」
確かにこいつの相手はゴーレムには荷が重いだろう。数十体一気に使おうと、『
「お前の相手は俺が直接する。だけど物をあんまり壊すなよ。そういうルールのゲームだと思ってやってみろ」
「まぁ俺らが被害気にせずに暴れたらヤバいし、そうなるか。実際のゲームでもあり得るルールだしな」
「それと空中戦だ。グレモリー眷属には空中戦ができるのがリアスさんと姫島さんしかいないからな。どっちも遠距離型だし、空で接近戦ができるやつもいないと場合によっては詰む」
「それもそうだな。じゃあ派手にやりますか!」
テンション高いなー、こいつ。まぁ俺も本格的に魔力使って暴れられるようになったときははっちゃけたし、こいつもそうなんだろう。ほぼ全力ってくらい力を発揮しても大丈夫な相手なんてそういなかっただろうし。今にして思うと相手する側からしたら面倒なことこの上ないな。自制が効きそうにない。爺さまマジですまんかった。