転生して会長の甥っ子   作:ぬがー

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第61話

 頭を使うのは勿論必要だが、それ以前に基礎を鍛える必要があるシトリー眷属。

 駒王学園を空にするわけにはいかないが、あそこの土地の警備は元々グレモリー家の仕事なので割と自由な行動ができる。なのでシトリー眷属は新たな『戦車』と俺の眷属―――支取眷属と名乗っている―――の顔見せも兼ねて、冥界のシトリー領にあるバトルフィールドに特訓をしに来ていた。

 

「ではまずルガールさん、あらためて自己紹介お願いします」

 

「……できればルー・ガルーと呼んでくれ。人狼と魔法使いのハーフで、魔法は補助程度、身体能力と頑強さを武器に戦う戦士タイプだ」

 

 灰色の髪をした巨躯の男が促されて自己紹介をする。といっても戦闘スタイルを一言にまとめて話しただけだが、それだけ分かれば十分だ。戦闘スタイルが分かればチーム分けは出来るし、細かいことは実際にやり合ってみた方がわかり易い。

 あと呼び名だが、たぶんだれもルー・ガルーとは呼ばない。だったそれ個人名じゃなくて種族名か家名みたいなもんだし。眷族は身内みたいな考え方のシトリー眷属では、みんな個人名であるルガールの方で呼ぶだろうな。

 で次は俺の眷属の番。インパクトの弱いやつから順に紹介していこう。

 

「次はこっちだな。まずは『兵士』の華宮(カグラ)だ。元々シトリー家の家臣だったんだが、俺が引き抜いた。個人での戦闘能力は低いが、研究、開発のほうで重宝してる。領地でも文官たちのまとめ役をさせるつもりだ」

 

「華宮です。基本的に裏方なのでこれからもあまり接点はないでしょうが、よろしくお願いします」

 

 暖かそうな毛に覆われた耳を持つ少女が頭も下げずに言い放つ。

 こいつはヤキトリ先生や黄昏色の詠使い同様、他作品世界において主要登場人物をやっていたキャラだ。「ネルの民」と言う亜人種で機械関係の技術に長けている、と言う設定のキャラで、こちらの世界においてはシトリー家に仕える獣人系の悪魔の生まれ。『氷結鏡界のエデン』世界と似た感じに育ち、オートマタやアンドロイドなど機械や絡繰に近い魔法具の開発を得意としている。

 華宮を眷属にスカウトした理由は、単純に優秀だったからだ。

 俺は高性能な体のおかげで、感覚的に優れた魔法具でも術でも作れる。だがオートマタなどは他とは比べ物にならない数の部品の集合体であり、感覚だけでどうこうできるものではなかった。だけど作りたかったので、それができるやつを探した結果見つかったのが華宮だ。

 それ以外にも戦闘能力以外は非常に優秀で、もう三年も俺の補佐を務めてくれている。こいつを眷属にしないと言う選択肢はなかった。

 

「次は氷羽子(ひわこ)、そして使い魔(ドウター)のシャーリーズ。華鳥風月の一つ、氷使いの鳳島(とりしま)家出身の『僧侶』だ」

 

「氷羽子です。よろしくお願いします」

 

 ゴシックパンク風の衣装に身を包んだ黒髪の美少女がお辞儀をする。氷の巨鳥もそれに倣った。

 それに対し、日本の魔法使いの名家の生まれの真羅さんが反応した。

 

「え、華鳥風月って、あの?」

 

「たぶん想像してるので合ってます。意味不明さでは群を抜いてる家系ですからね」

 

 氷羽子が登場人物を務める作品『アスラクライン』において、悪魔とは一巡目の世界から二順目の世界にやってきた際に魔力を扱えるようになった者とその子孫を指す。女の悪魔は最初に性交した者に使い魔を与える能力を持つが、魔力を振るうたびに契約者が悪魔に抱く愛情を失わせていき、契約者の心が悪魔から完全に離れた状態で魔力を振るい過ぎると存在が薄れ消滅する。逆に男の悪魔は魔力を振るうたびに自分が愛している者の記憶を失っていく、と言う設定だ。

 その設定はこの世界でも形を変えて生きているのか、華鳥風月とその傘下にいる術者たちは「どこからともなく表れた人間っぽい生き物」の末裔なのである。古くから生きている日本の神々ですらどこから来たのかさっぱりわかっていないのだ。海外でも似たような例はあるが、そっちもどこから来た連中なのかさっぱり判明していない。

 さらに言うと『アスラクライン』世界では契約者から奪っていたのは記憶だったが、こちらの世界では魔法力になっていて、それでも足りない場合は生命力が削られる。そのうえに使い魔の維持にも魔法力が消費される感じになっているため、余程の実力者でもない限り華鳥風月に婿入りすると戦闘行為を行えば死ぬ可能性が跳ね上がるのだ。

 そんなわけで不気味過ぎて現代でも業界では少し浮いた存在なのが華鳥風月とその傘下の連中だ。

 だが俺はそんなの気にしないし、なにより魔力使い放題ならすごい戦力になるので眷属にスカウトした。鳳島家としても婿はなかなか見つからないし、シトリー家と繋がりを持てるのはチャンスに思えたようですんなりと決まった。

 

「そうか、譲治君くらいの魔法力があれば彼女達と契約しても問題なしなのね。ちょっと予想外で驚いたわ」

 

「複数契約でも平気ですよー、やりませんけど。じゃあ次。つい最近まで『棺』に入っていた、摩理です。神器無しでなんと二駒の『騎士』!」

 

「「「「「「「「「「神器無しで二駒ッ!?」」」」」」」」」」

 

「ひあっ!?」

 

 全員の驚きの声に摩理が変な声を上げる。

 まぁそれも仕方がない。なにせライザーさんやサイラオーグさんのとこの純血の上級悪魔―――レイヴェルフェニックスとベルーガ・フールカス―――とかでも『兵士』三駒分で眷属にできているのだ。見た目は痩せた小柄な少女でしかなく、動きも武術をやってるようには見えないので、完全に才能だけでその倍近くすごいと言うことになる。

 現状では身体能力を跳ね上げられたただの少女だが、育てば最上級悪魔でも殺しうる英雄候補と言うわけだ。そんなのがこちらの業界的には一般人の家系から生まれるってこと自体が驚きだし、当然の反応である。

 

「……すいません、取り乱しました。それにしても女性ばかりですね。眷属ハーレムは男のロマン、というやつですか?」

 

「それもなくはないですけど、ぶっちゃけ男連中には拒否されたってのが理由ですね。人間で満足してるから悪魔になる気はないみたいで」

 

 “かっこう”とか坂井悠二とか、組織のルールを理解したうえで行動できて非情な手段も取れるやつは眷属にしたかったんだけどな。

 せっかく魔法を教えて裏社会に引っ張り込んだのに、原作嫁となぜか遭遇して幸せにやってやがったせいでスカウトしても断られた。違う時間を生きていくのは嫌なんだと。お前らならすぐに上級悪魔になって嫁さん眷属にできるってのにもったいないことしやがって。

 まぁ無理にスカウトして敵になられても困るので、結局雇い主と傭兵的な関係で落ち着いた。危険な任務を回すのはちょっと申し訳ないので、よほど切羽詰らない限り割のいい仕事を回すいい雇い主をやっていけると思う。

 

「では最後、いきますよ」

 

「え、ここにいる三人だけじゃないの?」

 

「別の場所で待機させてるのが一匹な。じゃ召喚するから巻き込まれるなよ。『戦車』でドラゴン・キメラのタマだ!」

 

 魔法陣が輝き、そこから八本の足を持った馬が現れた。

 

「馬じゃねぇかッ!?」

 

「にゃー」

 

「鳴き声は猫!?」

 

 予想通り、シトリー眷属の面々は混乱している。一通り見て楽しんだ後で説明を始めた。

 

「タマは俺の使い魔だった冥界の羽根猫でな。ロキ戦の時に手に入れたミドガルズオルム・クローンの死体をベースに造ったドラゴン・キメラに魂を移したんだよ。で、さらに仙術使いの塔城の細胞とスレイプニル・クローンの死体も移植してあったから、省エネモードでこっちの姿にもなれるようになってるってわけだ。

 普通こんなのすれば数秒生きていられればすごいってレベルなんだが、魂を移した直後に『悪魔の駒』で転生させたから上手く馴染んだ。これ開発したアジュカさまってやっぱり頭おかしい天才だ、って再認識できたよ」

 

「……それ上手くいかなかったらタマ死んでね?」

 

「失敗したら猫の体の方を修復してそっちに戻したさ。タマは可愛いペットだったし、殺すのは嫌だったからな。つーか駒の性能に驚けよお前ら」

 

 俺、これが上手くいったときに思わず引いたのに。まさかできるとは思わなかったから。

 それと同時にかなり怖かったけどな。この技術が外に漏れたら、俺を殺してこの体を使おうとするやつも出てくるかもしれない。天使、堕天使への技術早まったんじゃね? と思ったほどなのに。

 まぁその辺は今さら考えても遅い。キメラに魂を移して眷属化もいつか誰かがやってたことだろうから隠しても意味はないと思うし、体を奪われないよう自己強化を続けていくとすることにした。

 

「これで支取眷属で見せられるのは全員です。後のは時期が来れば公開しますが、もう少しだけ隠していたいんで」

 

「ふむ? まぁあなたが言うのなら納得しておきましょう。それよりせっかく眷属を見せ合ったんだから模擬戦でもしてみます?」

 

「基礎訓練で。摩理とかまだ完全に素人なんで戦ったら死にかねませんから」

 

 一時間後、槍と魔力の扱いを軽く教えただけでシトリー眷属の大半より摩理は強くなった。やっぱ眷属にできてラッキーだったわ。

 

 

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