邪龍がいなくなったのを機に、天使たちが動き始める。
代表で話していたのを筆頭に、顔を隠していなかった天使たちが前に出て光の矢で弾幕を張る。
とはいえこの程度なら避けるまでもない。多少視界がピカピカ光ってうっとおしい程度だ。向こうのローブを着た二人の戦闘準備が整うまでの時間稼ぎだし、こっちも準備を済ませるとしよう。
鎧は既に着込んでいるし、エクスカリバーも手に持っている。消耗の激しい魔剣は氷羽子と契約しそちらに魔法力が流れるようになったため、もう自分で使う気はない。『棺』を取りだし装着するだけだ。数は六つ。日々の練習のかいもあって、今までより扱える数が一つ増えた。
その間にローブの二人の準備も整ったようだ。
片方は座っていた玉座っぽいのから剣を引き抜き、光と共に紫色のドレスのような鎧を纏った姿に変化した。そのうえで玉座を細分化し、剣と一体化させて身の丈を超える剣をさらに巨大に変えている。その剣が放つ威圧感はゼノヴィアが振るうデュランダルをも上回っているな。
もう一人は炎を纏うことで装いを変えた。鬼のような角と巨大な戦斧を持ち、和服っぽいのを着た姿だ。聖なる炎を纏っており、かなりの熱量を感じられる。
また現時点では感知できないが、予知だと影の中に七、八人隠れていたはずだ。七人か八人かはっきりしないのは、六人しか出てこず影の中から能力を使ってきたやつがいたから。他人の行動を操るのと、音による援護と攻撃だったのでおそらく影の中にいるのは八人だな。
一人を除き前世の作品『デート・ア・ライブ』のキャラを模して造られたと思われる存在だ。一人だけ例外なのは、第6のセフィラ「ティファレト」に由来する「天使」―――『デート・ア・ライブ』においてヒロインである精霊たちが持つ武装の事。セフィロトの10大構成要素セフィラの守護者に由来した名を持つ―――を持ったキャラが登場していなかったからだろう。少なくとも俺の原作知識にそんなキャラはいない。
舞台となった学校も発見できていないし、主人公の五河士道とかの他の『デート・ア・ライブ』キャラも全く発見できていないので元からいた存在を従えているとは考えづらい。的外れな予想ではないはずだ。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」
その証拠に、この二人は戦闘技術は優れているのに叫んだり唸ったりは出来ても言葉はろくに話せない。他の六人も予知ではそうだった。
それに技術は優れているが、それを使いこなせているとは言えないのも造られた存在である証拠と言えるだろう。
炎使いが範囲攻撃で防御を広げさせ、剣士が一点突破を図る。あるいは剣士に意識を集中させ炎と戦斧で奇襲を図る。そういった連携は出来ているのだが、その運用がかなり単調だ。これのせいで本人たちの能力に対して対処が容易となっている。
とはいえ長引けば影の中の奴らも出てくるだろうし、向こうの手数が増えればミスしてしまう可能性もある。さっさと片付けよう。
『棺』を四つ起動させる。
しかしパッと見た限りでは変化は何もない。それなりレベルであれば感覚が鋭いやつが見てもそう思っただろう。
この『棺』の中身は堕天使から買った神器を埋め込んだ人間だ。身体運用の補助を行う神器と、魔力や魔法力などのエネルギーの運用を補助する神器が二つずつ使われている。
これらの神器は未熟な幼少期は神童扱いしてもらえるが、成長して素で技術を身につけるとほぼ機能しなくなるため凡人になってしまうという、自転車の補助輪のような性能ゆえに需要の少ない神器だ。少なくとも神器を買い求めたり、所有者を狩って奪ったりできるような奴で欲しがるのは神器自体の研究をしたいやつくらいしかいなかった。
だがこれらが残り二つを使うために必要なのだ。
「
『棺』の神器を禁手化させ、両手に籠手を出現させた。
どちらも『龍の籠手』を埋め込んだ人間を内蔵した『棺』だ。ヘラクレスや曹操と戦った時に、一つだけ使ったやつだな。正確にはあのころは一つしか使えなかった、が正しいが。
能力は「全ての腕に『龍の籠手』を装備させる」こと。普通の人間が使ったんじゃ4倍が限界だが、姿を変えられる生態を持つ悪魔が使うとこういうことが出来る。
「はぁああああああああああっ!!!!!」
背中から腕を生やす。
封印されているドラゴンの格が低いせいか『龍の籠手』一つの禁手で出せる籠手の数は最大で四つなので、それに合わせて六本生やした。これで俺の全能力は256倍まで跳ね上がった。
この膨れ上がった力を『
ともかく今はこの火力で押し切ろう。
情報源は多い方が良いし、『デート・ア・ライブ』の精霊もどきも体の構成を調べれば向こうの技術を盗むことが出来る。殺してもこっちに特はないし、捕らえるのでも労力は変わらないからそっちで行く。
「凍てつけ」
言葉と共に白い空間の全てを冷気が覆い尽くした。
天使も精霊もどきも空中で凍りついて動かなくなって落下し、精霊もどきが潜んでいる影すら物体ではないにもかかわらず床に張り付いたまま変化できないでいる。影の中にいる精霊もどきも同様に凍り付いているだろう。白い空間に仕掛けられた撤退のための仕掛けも完全停止しているため逃げることもできない状態だ。
物理的なものではない、魔力で起こした『凍結』ならこういうこともできるのだ。 あとは匙が戻ってくれば完全勝利と言えるだろう。ただここの座標は分かってないから、駒王学園に直接帰ってくるはず。俺もこいつら亜空間にしまってさっさと撤退するとしよう。
「あの、譲治先輩?」
「何?」
「私、なんでこっちに配置されたんですか? 何もやってないんですけど?」
俺の後ろでベイに乗っていた塔城が訪ねてきた。そんなの決まってるじゃないか。
「グレモリー眷属からは一人も出さずに、シトリー眷属と支取眷属だけで解決しちゃメンツが立たないだろ?」
誘拐犯の要求通りシトリー眷属と支取眷属、グレモリー眷属が全員で向かうと、回避能力は高いが対魔力の低い木場をはじめとした面々が行動を操られ、生き残るのは支取眷属と譲治に守られたソーナ、自力で生き残った匙、ルガール、ギャスパーのみという事態になってました。