転生して会長の甥っ子   作:ぬがー

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第67話

 シトリー眷属、支取眷属の合同会議から遅れることしばし、吸血鬼の国でクーデターが発生したとの連絡が入った。

 これに対処するために追加で人員を派遣することになった。

 だが派遣されるメンバーは原作と違う。

 原作と違ってこの街に残っていたアザゼル総督はともかく、グレモリー眷属からは兵藤とギャスパー、塔城の三人、シトリー眷属からは匙にルガール、支取眷属からは俺と氷羽子、そして天界からは『ジョーカー』デュリオ・ジェズアルド、あと誠二と契約している精霊たち―――こいつらは数が多すぎるので凍らせて亜空間に入れて連れて行く―――というメンバーだ。

 いくら非常時とはいえ吸血鬼が「人数制限なし。いくらでも来い」とか言い出して怪しいと思ったのだろう。まず間違いなく罠、と天界も思ったようで惜しみなく戦力を出してくれた。

 その分この街の守りは薄くなるが、『刃狗(スラッシュ・ドッグ)幾瀬(いくせ)鳶雄(とびお)がいれば大事にはならない。神滅具持ちを二人も投入して事件を起こす気すら無くすより、事件を起こさせてから対処した方がマシと判断されたわけだ。

 これのおかげで織莉子の未来予知能力を公開せずに済んだ。この前話したメンバーには『金銭を受け取る代わりに織莉子の情報を余所に漏らさない』って契約を結んであるし、織莉子の存在は秘匿し続けることができたわけだ。織莉子は厄介さゆえに狙われやすく、自衛能力が低いからな。ある程度強くなるまでは表に出ず、隠れて助言する立場にいるのが一番だろう。予知でもたいていの場合はこの流れだったが、たまに違うのもあったので上手く事が運んでよかったぜ。

 なおグレモリー眷属の『騎士』たちがリアスさん救出に向かいたがっていたが、それは認められなかった。理由は連れて行っても範囲攻撃であっさり無駄死にする可能性が高いから。木場は火力不足、ゼノヴィアは速度不足で殺される前に手傷を負わせられる程度の実力があるか怪しいしな。いくらそれ以外の実力が高かろうが、抗魔力の低い連中は足手まといでしかないのが現状である。あからさまな罠に足手まといを連れて行くわけにはいかなかった。

 で今俺らは駒王学園の地下にある遠距離転移用の巨大魔法陣の所に来ていた。

 転移先はカーミラの領地だ。複雑で見つけづらく、一度入ってしまえば逃げ出せない経路を通らずに、直接彼らの本拠地へ転移できるよう先方が配慮してくれたと言う。

 これを聞いてお偉いさん方は「クーデターを起こした連中に泳がされている」と判断した。この業界は外敵が都市内部にいきなり転移してくるのを防ぐために結界を設置するのが常識だ。ツェペシュ派、カーミラ派は別の結界が張られているだろうが、両方をまとめて覆うような結界も張られているはずである。この結界を無視し領内へ直接転移できる魔法陣を準備できるほどの権限が当主の座を追われた者に残っているはずがない。クーデターを起こした者達が一切妨害をしないから可能なのだ。これで罠の可能性はさらに増した。

 とはいえ罠だから行かない、と言うわけにはいかない。一応すぐに戦闘が行えるよう準備をしてから吸血鬼の国に転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 転移してすぐには罠はなかった。敵の軍勢も待ち構えていない。先にここに来ていたバラキエルさんと案内役の吸血鬼―――前に駒王学園に交渉に来ていたエルメンヒルデ―――だけが待っていた。

 

「よう、バラキエル。こっちで問題はなかったか?」

 

「あったから呼んだんでしょうが。詳しい話は移動しながらします。エルメンヒルデ嬢、案内を」

 

「かしこまりました。皆さま、カーミラの領地までよくぞお越しになられました。手前どもはギャスパー・ヴラディだけの方が良かったのですが…………まぁ良しとしましょう。到着早々で申し訳ございませんが、車まで案内いたします」

 

 特にジョーカーを警戒しながらも、普通に車まで案内してくれた。まぁエクソシストとか内乱を抑えるんじゃなく、吸血鬼を滅ぼす方向で行動しそうだし、手綱が握れる程度の奴だけ来てほしかったという気持ちもわからなくはない。堂々と不満を言っても全員スルーした。

 転移魔法陣を設置した建物から出ると、外は真夜中だった。ちょうど吸血鬼たちの活動時間だ。

 俺たち悪魔は暗視能力もあるのでこの暗さも全く問題にならない。堕天使も同様だ。問題は自分が光って辺りを明るくするのが常なせいで暗視能力を持たない転生天使のジョーカーだが、魔法の道具を使ってどうにかしていた。

 そのまま何事もなく車は進み、バラキエルさんから現状の説明を受けた。

 まとめるとこういうことらしい。

 ・クーデターを起こした反政府勢力には『禍の団』が力を貸している。

 ・クーデターに巻き込まれ、リアスさんと誠二はツェペシュ側に行ったきり戻っていない。

 ・クーデターで男尊女卑思想のツェペシュ派の当主にギャスパーの幼馴染で女の半吸血鬼なヴァレリーが着いた。

 ・カーミラ派は「ツェペシュの真の当主を援護する」と言う名目で反政府勢力を鎮圧するつもり。

 ・もう鎮圧の準備は済んでいる。

 この状況で俺たちは内情を調べつつリアスさんたちを救出し、聖杯(とついでにヴァレリー)を回収しなければならない。ただしまだ実力行使は無しだ。客として許されない範囲に触れないように情報を集めないといけない。

 これには理由があって、吸血鬼は『禍の団』の関与が疑われているが、まだ「疑われてる」だけだしその程度もはっきりとは分かっていない状態だからだ。「『禍の団』の傀儡にされているかもしれない」という理由で内政干渉を認めれば、真っ先に標的にされるのは三勢力だから確証の持てない内は仕掛けられないのである。最悪武装解除して敵に包囲されてからようやく行動を開始できると言った事態になりかねないが、同朋の未来について考えれば仕方ないことだろう。出たとこ勝負で行くしかない。

 車で移動すること2時間、カーミラ派が確保できたツェペシュ城下町に多重結界を抜けて行けるゴンドラに乗り換えてさらに三十分ほど移動する。

 山をいくつか越えて着いたのは、ツェペシュ城下町近郊のゴンドラ乗り場だ。

 ここから先はツェペシュ側の用意した馬車に乗って移動する。

 が、ここから先は俺は氷羽子とルガールと共に別行動だ。具体的に誰が行くとかを伝えたりはしていないので「支取眷属は来ていなかった」「吸血鬼の国に人狼連れて行くわけないじゃん」で押し通す事になっている。ツェペシュ派はカーミラ派の客である俺らが全部で何人来たかすら把握していないからな。

 目的は市街地の様子を調べることと、脱出ルートの確保。そのために隠密行動が出来て、魔法に詳しく、長年吸血鬼と敵対してきた経験から奴らの術式に詳しいルガールが最初に選ばれた。俺と氷羽子はその補佐だ。これは選ばれたのではなく俺が立候補した。

 どちらかが圧倒する結果にならない限り最後まではやらないとはいえ、総力戦じみた戦いをすることになるんだから色々と準備しておきたいこともあったしな。自分たちの土地では当然できないし、余所の土地でも責任を敵になすりつけられる状況でしか使用不可な技術がようやく使える。何気に楽しみだ。

 

 

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