転生して会長の甥っ子   作:ぬがー

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戦争熱望のフォーリンエンジェル
第9話


「これより臨時会議を開始します」

 

 その日、珍しく生徒会室で生徒会以外の会議が開かれていた。部屋には盗聴や透視対策の結界が敷かれ、シトリー眷属がそれぞれの席についている。

 いや、違うか。正確に言うと席が一つ空いていた。匙の席だ。仁村が気にしていたが空気を読んで尋ねたりはしなかったため、会議は進行していく。

 

「議題はこの街に来ている堕天使の幹部、コカビエルの対策について。ジョージ、説明を」

 

「はい。先日、コカビエルが神陣営の管轄である教会を襲撃し七本に分けられた伝説の聖剣『エクスカリバー』のうち三本を奪取。その際、必要以上に暴れていたことから三大勢力での戦争再開を目的としたものだと思われます。ただ教会の人間は騒いでいるようですが、神陣営はなんの反応も示していません。そのためエクスカリバー奪取こそ成功しましたが、真の目的は失敗したと言えるでしょう。問題はここからです。手元の資料を見てください」

 

 眷属一同が自分の前に置かれた資料を手に取り、目を通す。そこには青髪にメッシュを入れた少女と、栗色の髪の少女の写真があった。つい先日、グレモリー眷属と模擬戦をしていたときの写真だ。兵藤と木場が相手をしていて、他は見学している。

 

「この二名は教会からエクスカリバー奪還のために派遣された聖剣使いだそうです。栗色の髪の方は無名ですが、コネを使って調べたところ青髪のほうは『破壊の騎士』と呼ばれる聖剣デュランダルの使い手だと判明しました。ここまでの大物を教会が派遣した以上、コカビエルがこの街に来ているのはほぼ間違いなく、目的も悪魔を刺激して戦争を再開させることでしょう。そのための手段として最も可能性が高いのは、ソーナ姉さんとリアスさんをエロいことしたうえで殺し、シスコン魔王×2をキレさせることでしょう」

 

「ジョージ、真面目に話すのなら最後まで真面目に話なさい。……まぁそういう状況なわけです。加えて言うと、この街の管理を行っているのはリアスであるため私たちは自由に行動できず、リアスも聖剣使いに「エクスカリバー争奪戦に関わらない」と明言してしまったのでもはや積極的に行動することはないでしょう。仕事を放りだして退避するのも当然なしです」

 

「会長! それヤバすぎませんかッ!?」

 

「会長の魔王やってるお姉さんって助け求めたら駄目なんですよね!? リアス先輩もプライドが邪魔して助けとか求めそうにないし!」

 

「それより前に聖剣使いの要請に応じて大丈夫なの!? これ、天使と悪魔が組んで堕天使を滅ぼそうとしてるとかって思われて、戦争の原因になったりしないよね!?」

 

 話し終った途端、眷属の皆はパニックに陥った。伝説に残っているような敵が攻めてきて、対処することもできず、撤退も不許可となったらそりゃパニックにもなるだろう。

 だが説明はまだ続くのだ。このままでは話が続けられないので聖なるオーラで威嚇する。

 

「「「「「「ひっ!?」」」」」」

 

「ジョージ、やり過ぎです。聖剣使いたちが持ってきた聖剣よりよほど強いオーラじゃないですか」

 

「すみません。でもこれで説明を続けられますよ?」

 

「まったく。……まぁ今言ってもしょうがないので説明を再開しましょう。私たちが積極的に行動することはできないので、兵藤君が聖剣使いに自身を売り込みに行くのに匙も同行させました。その結果「悪魔ではなくドラゴンの力を借りる」という名目で聖剣使いも承諾しましたので、現場で情報を集めさせています。またこれらの情報は父にこっそりと伝えているので、実はもうシトリー、グレモリーの両家からの援軍は到着します」

 

「え? でも会長のお姉さんってすっごいシスコンで、こういうことを知ったら即戦争を起こしかねないから伝えちゃダメなんじゃなかったんですか?」

 

「ええ、ダメです。なので『父に』『こっそり』伝えました」

 

 そんなんでいいんだ、みたいな顔を全員がしている。今は落ち着いた表情をしているが、ソーナ姉さんも俺がそう提案したときは同じ顔をしていたな。

 まぁ本来ならそんなので良いわけないんだが。本当にセラフォルーさまがソーナ姉さんのためなら他勢力に戦争をふっかけるような人なら『こっそり』やった程度で隠しきれるはずがない。シトリー家が全力を挙げてやったとしても、魔王の権限と個人の実力で見つけ出し、行動に移すだろう。

 こんなので大丈夫な理由は簡単で、セラフォルーさまは皆が思っているほどシスコンではないだけである。妹が大好きなのは事実だし、妹のためなら魔王の職権を乱用することはあるし、甥が妹に手を出したりしないかと見張りをつけることもある人だが、魔王にふさわしい人でもあるのだ。自分の作ってる『キャラ』的に、知ったらまずいことは気づかなかったことにしてくれる。

 

「事情の説明も終わりましたし、本題に入りましょうか。ジョージ」

 

「はい。援軍からの伝言を発表します。

 

 「見ててあげるから自分らでやってみなさい」

 

 以上です。目標はリアスさんが連絡を入れてから援軍が向かったと仮定して、到着まで大きな被害を出さずに全員が生き延びる事。案が思い浮かんだらドンドン言ってみてください」

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

 おー、さっきとは一転、今度は見事に固まってるな。俺はいつまで固まってるか見てみたかったが、ソーナ姉さんが「早く再開しろ」と目で言ってくるので良い情報も話すか。

 

「ただオレと誠二がコカビエルと正面から本気で戦ったらそれだけで勝てるでしょうが、被害がかなり出ると予想されるので別の方法でチャレンジします。なにか意見はありますか?」

 

「えーと、質問、いいかしら?」

 

「どうぞ真羅さん」

 

「譲治はコカビエル相手に勝てると言うのは本当ですか? 相手は古の戦を生き抜いた、聖書にも名を記された堕天使の幹部なんですよ?」

 

「大丈夫です。所詮は部下を無くした戦争狂、個人での戦闘力なら上級堕天使の中の下から中の中くらいらしいですから」

 

 これはマジな話。そもそも実力者同士の一騎打ち、もしくは少人数での戦闘が勝敗を左右することが多いこの業界で、戦闘狂というのならともかく戦争狂という時点で個人戦力の低さを自白しているようなものだ。光力自体は堕天使の幹部と名乗るにふさわしいものだそうだが、戦争用に特化しているせいで瞬発力が低く、時間をかけて大軍を殲滅する術は使えても、目の前の敵に即座に強力な攻撃をはなつことはできないのだ。高速での白兵戦を強いれば確実に勝てるだろう。

 かつてのコカビエルは、強者同士の戦闘が始まれば背景として吹っ飛ばされるだけの存在だった雑兵たちを一つの生き物のようにまとめ上げ、四大魔王が死に、いくつもの家系が断絶し、神陣営も神が死に、戦争が不可能になるほどの痛手を受けた戦争を『部下の全滅』だけで凌ぎ切った名将だったが、率いる部下がいなくなればただの上級堕天使。楽に倒せて大きな功績を挙げられる、絶好の獲物でしかないのだ。

 

「そ、そうなんですか……」

 

「はい。他に質問はありませんか? なかったら作戦を考えてください。どんな策でもいいのでドンドン言ってみるように」

 

「最終的な判断は私がやりますから、皆は練習だと思って気負わずに、だけど真剣にやりなさい。良い作戦を思いついた者にはボーナスを出すことも考えています」

 

「「「「「「ッ!? わかりました!」」」」」」

 

 割と余裕そうと思えたところに『ボーナス』と聞いて俄然やる気になる眷属の皆。欲望に正直なのは悪魔的には美徳だな。

 

 その後、戦闘記録などの資料をひっくり返したりしながら数時間に及んで話し合いを行い、結局『コカビエルが攻めてきた場合、シトリー眷属からは俺と匙がグレモリー眷属の一部と共に前線に出て遅延戦闘をし、万が一でもやられたらまずいソーナ姉さんを後方に下がる。その護衛を真羅さんが勤め、他は被害拡大防止の結界を張り続ける』という戻ってきた匙が提案した無難な物に決まった。敵は少数だから策の立てようがないし、作戦を立てても中心はグレモリー眷属になるんだからこの程度が当たり前なんだけどな。いくら俺の正面突破は無しで作戦を考えろと言われたからって、俺を遊ばせたまま無駄に色々考えた連中は灰になってたな。一部はボーナスが出た匙にたかって、高い物おごってもらおうとしてたけどさ。

 

 

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