トウカイテイオーは退屈さを感じていた。
ウマ娘になったところで、彼女の中身は青年だったので、授業も遊びもつまらなかった。
全てが子供だましに感じるのだ。
トウカイテイオーには秘密があった。それは、彼女が別世界から転生した存在であるということだ。
「つまんないなぁ」
独り言ちてしまうくらい、毎日がつまらないんだ。
公園で遊んでいる友達を眺めていると、それがひしひしと感じられる。
冴えない連中ばっかり。なんだか皆ボクにふさわしくないヤツらばっかりだ。
トウカイテイオーは思った。
トウカイテイオーは持っていたサッカーボールを蹴とばしてみた。
蹴とばしたボールは、ベンチに向かっていく。
「あっ」
ボールはベンチに転がっていき、青年の足元に転がっていった。
「すみません」
トウカイテイオーは青年に謝り、ボールを取って戻ろうとした。
青年はスマホに夢中になっているようだった。
イヤホンから音が漏れている。
「……シンボリルドルフ……」
「シンボリルドルフ?」
彼女はそのウマ娘の名前を復唱した。
「あっ、えっ、どうかされましたか」
青年は驚いて立ち上がる。
「いや、ボールが飛んでいったから謝ろうと思ったんだけど、お兄さんなんか夢中だったから」
「……ごめんなさい、集中していて」
青年は自分に非がないのに謝った。
トウカイテイオーはそんな青年を少し可哀そうに思った。
彼女は彼の胸元に何か輝くものを見る。
「もしかして、ウマ娘のトレーナー?」
トウカイテイオーは知っていた。ウマ娘のトレーナーにはバッジが支給されること。
「え、はい、そうですよ」
青年は肯定した。
トウカイテイオーは違和感を感じた。トレーナーっていうのはエリートなんだから、こんな冴えなさそうな人がトレーナーなはずあるのだろうか?
「……一応、ですけどね」
「なんだか訳ありみたいだね」
トウカイテイオーは隣に座った。
目の前の青年に親身になってあげるくらいしてやってもいいと思ったから。
「えっと、僕は、ウマ娘が苦手なんですよ」
「えっ、じゃあ何でトレーナーになんかなったのさ!」
「厳密にいうと女性、です。年頃の女性というものが怖いんですよね……」
「トレーナーになった理由は、まぁ僕がレース関係者の一家だからなんですよ」
「母に無理やり、トレーナーになるか、ウチの組織に来るかと言われ、トレーナーを選んだんです」
「あのさ」トウカイテイオーは青年に告げる。
「お兄さん、年下にくらい敬語外したほうがいいよ」
「ナメられちゃうよ?」
「はは」と力なく笑って彼は言う。
「癖なんです」
「あ、まずい」
彼は液晶に再度目を落とす。
「今日は皐月賞なんです、本当はレースを見に行きたいんですけど、人ごみは苦手で」
「見ていい?」
トウカイテイオーは適当に聞いてみた。
彼は液晶を向けてくる。
そこには、レース場を駆け抜けるウマ娘が映っていた。
トウカイテイオーはなんだか、変な魅力のようなものに取りつかれ、その画面から目を離せなかった。
「……シンボリルドルフ! シンボリルドルフ!」
またその名前だ。きっと注目の選手なのだろう。だけど。
「スゴイな」
その名前を持ったウマ娘は、どんどん後ろとの差を開かせていき、ついにはゴール板の向こう側へと去っていった。
「……シンボリルドルフゴールイン! シンボリルドルフ1着!!!」
その、1着という響きには代えがたい魅力を感じる。
トウカイテイオーは、彼女を間近に見てみたいと、少し思っていた。
「ねぇ、お兄さん」
トウカイテイオーは青年に聞く。
「このシンボリルドルフっていうウマ娘、次はどこのレースに出るかな」
少し考えた後に、青年は答えた。
「多分、次は日本ダービーに出ると思います。五月の下旬くらいかな」
「日本ダービーねぇ」
「やるのは東京レース場です」
「ふーん」
「見に行くんですか?」
「まぁ、暇つぶし程度にね」
トウカイテイオーはそう答えていたが、なんだか、胸の高鳴りのようなものを感じている。
彼女の中の小学生が死ぬ感じがした。
なんだか、わくわくしてきた。
ウゴウゴルーガ - ショーガクセー イズ デッド
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あとがき
この「アルバムサイズド」を書くためにいろいろな方のウマ娘をお借りすることができ、とても光栄に思っております。
少しでも皆様に楽しみを届けられていれば幸いです。