ゲームの設定そのままの力とフレーバーテキストに応じた人格を得て顕現したNPCたち。そしてその
転移者の宿命として短期記憶を維持することが叶わない彼らは、種族特性から定期的に
一年ほど前、ちょっとした
「ユグドラシルプレイヤーの……子孫?」
少し時間を遡り、どのような経緯でアインズが
「左様で御座います、アインズ様。」
ナザリック地下大墳墓
「シロクロが、当地の人型種族としては突出した力を有していることはご承知のこととは存じますが、私が
自身、子を成すことが種族特性上あり得ないアインズは、自分に先んじてこの世界へやって来たユグドラシルプレイヤーが子孫を遺している、などという可能性を今このときまで考えたこともなかった……セバスが人間の女に子どもを産ませた
「……いかがなさいましたか、アインズ様?
それにアルベドまでそんな顔をして、何か私が申し上げたことにおかしな部分があったかね?」
当の本人だけは、偉大なる我が
逆にアインズとアルベドは、どうして
このままでは話が進まない、と怜悧な思考を最初に取り戻したのはアルベドだった。
「デミウルゴスの話が本当であるとすれば、人間どもがエイヴァーシャーと呼ぶ森の中に
この問題は、デミウルゴスがナザリック周辺の知的種族の動向調査を始めた百余年前から認知されていたものだったが、そもそもエイヴァーシャーの森がナザリックから見てニグレドの探査可能範囲ギリギリに位置していて何らかの誤差と解することもできたこと、また、外形的には一枚岩の単純な専制を敷いている森妖精の王国はアインズの食指が動くような話題に乏しかったこともあり、今日の今日まで誰の深い関心を呼ぶこともなく放置されていたものとなる。
「シロクロ自身はホウガンの元で養育を受けたわけではないため、その祖父母のいずれが、あるいはその両方がユグドラシルプレイヤーであったか、までは承知しておらぬようですが、その
ニグレドの件も合わせて考えれば、それが何らかの
つきましては、お命じいただければニグレドの目を拒む結界へ決死隊を投入し、即刻に引っ捕らえて参りたく思いますが、いかがでしょうか?」
あぁ、こいつは今日も変わらず
「ま、待て待て、デミウルゴス!
確かに興味をそそられる話ではある。話ではあるが、ナザリックに敵対したわけでもあるまいに、決死隊だの引っ捕らえてだのと、いきなり……物騒じゃないか?」
「「は?」」
アインズの反応に対し、デミウルゴスとアルベドがほぼ同時に、
表向きは神を殺した、とされているシロクロへの……正しくはそれを操る傀儡廻したるデミウルゴスへの……配慮もあってここしばらく遠慮気味でこそあるものの、東にムカつく者あれば
言っているアインズ本人ですら、この世界で最も物騒な存在である自分が何を言っているんだ、と思わないわけではなかったが、だからこそ……その気になれば容易に世界を蹂躙できてしまうナザリックを率いる自分であるからこそ、あまりに安易にその力を濫用することには躊躇もある。
さて、どうやってこの場を収めたものか。
「……とりあえずオレが
苦し紛れにアインズがそう言うと、思った通りアルベドに噛みつかれた。
「御冗談を、アインズ様!
姉さんの目も届かぬ領域に至高の
「待て待て、アルベド!
誰も突入する……とは言ってないぞ。」
アインズは、傍らに寄り添うように立つ
「プレイヤーの子孫、ということであれば、オレたちのように記憶の制約も受けていないだろうから、いろいろと有益な情報を持っているかも知れないだろ。であれば、まずは友好関係を築き、会話でそれを聞き出す
「それは……おっしゃる通りですが。」
愛の軛に縛られた彼女は、愛する
「これは……そう、オレの我儘だ。
プレイヤーの直接の子どもと会って話がしてみたい、というな。
おまえたちは、オレの我儘を……叶えてくれるのだろう?」
「アインズ様ァ、そのおっしゃり
アルベドとて、エイヴァーシャー大森林に潜在する
一方のデミウルゴスはと言えば、
「そういうことであれば、
と、得意の胸を張り両手を大きく開いた
デミウルゴスが一旦話を持ち帰ることなく、その場で代案を即座に示したのは、そもそもこの話題に対してアインズがどう反応するかを予め読み切っていて、代案に思われたそれこそが実は彼が
*
「<
「は?」
再びアインズの骸骨の口が、
(子が
あまりにも意味も脈絡もない森妖精の王の行為に、呆れを通り越してそこで思考が麻痺してしまったがゆえである。即死攻撃ではなく、麻痺攻撃としてなら有効打ではあったのかも知れない。
「死んでも倒れぬとは、頑丈な甲冑だの。」
対する森妖精の王は、自身の放った即死魔法の効果を
「そこの者。」
と、仁王立ちのまま即死した……と彼が勝手に思い込んでいる甲冑戦士の傍らに控えていたアウラに視線を向ける。
「あ……アタシィ?」
言われたアウラもまた、アインズに向かって即死魔法を放つ、などという、まるで火事の鎮火に
「おまえ以外に誰が居る。
着いて参り、
「はァ?」
あまりに堂々と発せられた
対するホウガンは、顔を真っ赤にしたアウラの様子を恥ずかしがっているものとお目出度くも勘違いしたものか、
「何を恥ずかしがっておる。
女の仕事は男の精を受け子を成すもの、と決まっておろう。」
と応じるや、勝手にアウラが後に続くものと思い込んだか、身を翻し自身が現れた壁の穴に向けて歩き始めた。
「フフ。」
「……ん?」
背後から、忍び漏れる微かな笑い声を聞いてホウガンは立ち止まる。
「フフフ。」
再びの笑い声に振り返るが、伽を命じた女は相変わらず恥ずかしげに顔を真っ赤にして立ち尽くしているだけ。共に居た男……なぜこいつは女物の衣服を纏っているのだ、気色の悪い……は、内股気味に不安げな視線を女に向けるのみで、声を上げて笑っている様子はない。
では、笑い声はどこから?
「フフフ……ワハハハハハッ!」
忍び笑いは突如として哄笑に転じた。
ここに至って、ホウガンも笑いの
「貴様!生きておるのか?」
「このオレに向かって即死魔法とは……ここ百年で一番の
……多分。」
「ふんっ!」
「ア……
「死霊系魔法を操りながら、目前の相手が生きているか死んでいるかもわからんとは間抜けにも……」
アインズが言い終わらぬうちに、ホウガンは手にしていた
もっとも、アインズの能力は各種の
「な……馬鹿な!」
「まさか……貴様はプレイヤーなのか!」
「ほぅ。」
アインズは、期せずして発せられた
「であれば
「あーん?
いきなり仕掛けて来ておいて、言葉遣いがなってないんじゃないかぁ?」
錫杖を受け止めた手の平には、未だ脱力せず
が、ホウガンは格の差に気づかないのか、あるいは、わかってはいても素直に認めることが出来ないのか……
「貴様こそ、正体を隠して王たる私に謁見を試みておいて何を言うか!」
と強気の言葉を返すものの、アインズには響かない。
「詭弁だな。オレがこの姿のまま現れていれば、おまえは神聖魔法で仕掛けて来ていただけのこと。負け惜しみにしてももう少し言い様があるんじゃないか?」
真を射抜かれたがためか、ぐぬぬ、とホウガンは言葉を淀ませたが、なおも錫杖に力を込めつつこう
「……わかった、それは不問に付してもよい。」
(……ホンっと、親子揃ってどういう神経なんだ?)
アインズは内心苦笑しつつ、念のため
だが、ホウガンの次の一手は打撃でも魔法でもなく言葉で、しかも自らの死刑執行命令書に署名するかの
「貴様の連れた、その
最早、内から聴こえるぶくぶく茶釜の声を待つことなく、アインズはホウガンを蹴り飛ばした。奥手へ向かって転がり去る醜く哀れなその体躯を眺めつつ、アインズの実体として何処に存在しているのか今ひとつよくわからない頭脳は、誅殺の方程式を演算する。
隠し扉を通してとは言え、己の足で歩いて現れた王。おそらく<
村や道中の案内役の様子から察すれば、この男には信望がなく力づくで民を従わせているだけで、救援や後詰めが現れる可能性もほぼ皆無。
ならば!
「おまえには、特別に死霊系魔法の真髄を見せてやろう。」
アインズは両の手を八の字に大きく開いた。
「冥途の土産に出血大サービスだ。
<
ようやく体を起こしたホウガンは、
「生きながら死ね、<
詠唱と共にホウガンへふわっ、と骨の手を触れると、直立不動のまま推移を見守っていたアウラとマーレの間、少し後ろへと、やはり目にも留まらぬ速度で立ち位置を戻す。
「無用かとは思うが……ベラ、ベロ。
アウラもマーレも、一旦
その間にも、アインズの背後の時計の針は無情にも時を刻み、ゴーン、ゴーン、と鐘の鳴る音が響き渡る。
「な……何も起こらんじゃないか!」
しばし立ち尽くしていたホウガンが、苛立たしげにそう言い放ったのと時計の針が
「<
「……
「おまえの余命だよ。」
アインズの冷酷なその声を聞いた瞬間、ホウガンは自身の体が金縛りにあったかの
第十位階死霊系攻撃魔法<
その効果は、被術者の身体の自由を奪い、その
この
とまれ、この
まさに。
まさにこの局面で、こういうクソに対して用いるのが相応しい!
「な……な……」
ホウガンは己の肉体が生きたまま腐っていく過程に
「た、助けてくれ、私は強い子を遺さねばならぬ……」
「スレイン報国の白黒頭のおまえの娘は、オレが立派な王に押し上げてやる。安心して死ね。」
自分らしからぬことを言っているな、と思いつつも、アインズはホウガンの助命嘆願にそう答えた。
が、
「あ、あんな出来損ないではなく……!」
とのホウガンの言葉と同時に、今再び自身の内なる声を聴くことになった。
(サトルくん、
結局ホウガンは、魔法の効果による全身腐敗を待つことなく、アインズ渾身の右
「やまいこさん……言われずとも
シロクロは、愚かで幼くはあったが、真正面から正々堂々アインズに戦いを挑んだし諭された後は礼も執った。たとえアレの実親であろうとも、この
そして、命を屠る瞬間に覚えたその苛立ちは、そのまま
(プレイヤーの子は
この分だと孫も多分きっと……)
ペカー!
いかん、いかん!
オレは何を考えてるんだ!
「しかし……結局、
まずは友好関係を築く?
会話で聞き出す
偉そうなことを言っておいて、とどのつまりはコレだ。
デミウルゴスはともかく、アルベドに合わせる顔がないな。
究極的には彼女がアインズを拒絶することは決してない、と知っているだけに、返って申し訳なさが募る。アルベドから捧げられる無条件の愛は、アインズにとっては、彼女の期待を裏切る真似だけは決してすまい、と己に定める強固な内的規範になっていた。
これは、アインズがアルベドに捧げる愛、の別の言いでもある。
「万が一こうなった場合にどうするか……たしかデミウルゴスがメモをくれていたような。」
アインズはごそごそと
言葉の上では「万が一」となってはいるが、どう考えてもデミウルゴスは、こうなることを事前に見通していた、としか思えない。
「……用意周到にもほどがある。
完全にオレはデミウルゴスに踊らされているな。」
よもやデミウルゴスにアインズに対する悪意があるとも思えないが、さりとてあまりに整い過ぎた
「……ま、いっか。」
こうなってしまった以上、踊れるところまで踊るしかあるまい。
なーに、今に始まったことじゃないさ……多分。
アインズはアウラを傍らへ呼び寄せて指示を与えると共に、自身は、<
*
「そうそう、キミの父上が
「……え?
くぅ……あ…ぁ……いやぁぁぁぁー!」
デミウルゴスが
むしろ彼が嗜むのは、肉体を犯すのみならず心をも犯すこと。
「そんな大きな悲鳴をあげて、流石のキミでも父の死の報は堪えるかね?」
問われたシロクロはまだ肩で息を整えており、火照りきった
「はぁ……はぁ……
そんなわけないのは承知でしょう、ナモン。」
ナモン、というのは、
「本当に意地の悪いナモン。」
ようやく整った息の下、心身ともに深い満足を覚えながら溜息をつきつつシロクロはそう言う。
心も体も、今の彼女は犯されるがままに彼の虜だ。
「当然だよ。
私は
着衣のまま事に及んでいたデミウルゴスは、既にその乱れを整え常の彼に戻っている。
「……やはり至高の
シロクロは、デミウルゴスがその真名を決して口にしないことを憚って、愛人の主人に当たるアインズのことを「至高の御方」と呼ぶ。
「それを知ってどうする?
「本当に意地悪なナモン……そんなわけないじゃない。
でも、敢えて御礼は申し上げないわ。本当は自分の手で殺してやりたかったもの。」
「我が至高の
対するデミウルゴスは楽し気に……本当に楽し気にそう尋ねた。
まるで、明日は
「え?」
「無論、最低位の復活魔法をお使いいただくのだよ。そうすれば、辛うじて拮抗するかに思えたキミと父上の実力差は復活に伴う
しばしシロクロは自身の手の平へ視線を落としたまま沈思黙考を続けたが、
「……遠慮しておくわ。」
とデミウルゴスに向き直った。
「自分の手で殺してやりたかったのではないのかね?
そういった愚かしい欲望を叶えてやることもまた、悪魔たる私の望むところではあるのだよ。」
「人の子は、悪魔の誘惑には屈しないのよ。」
にこり、とシロクロは
その様子に、デミウルゴスはいっとき思案する様子を見せたが、
「もう
と、淫靡に腰を突き出す動作を見せた。
「もちろん……それは話が別だわ。」
シロクロは纏った
あんなクソのことなど最早どうでもいい話だ。
私は既に望んだものを得ているのだから。
*
スレイン報国の一般国民にはほとんど知られぬまま進んでいる話になるが、エイヴァーシャー大森林はスレイン報国庇護下の自治領に編入される方向で細部の調整がおこなわれている。
アインズが
想定外だったのは……無論、
これに対してマーレは、これまた
かくして森妖精たちは、アウラ、マーレ、シロクロを、失われたトブの大森林の王族末裔三兄弟と解釈し、彼らの企図により自分たちは、暴虐の王とかつて奴隷狩りと戦争で苦しめられた隣国の双方から救われるに至ったのだ、と理解するに至った。
シロクロは、報国の建国とほぼ同時に、六大神から伝わったとされる人間種優遇を否定する意味合いから奴隷解放宣言を発しており、対するエイヴァーシャー大森林側は、そもそもホウガンが国の統治にはほとんど関心を有しておらず、実務は村々の自治に任されていたこともあって、国家統合の障壁は思いの外低いようである。
無論、双方が歴史的に積み上げた差別、
この新しい潮流を拒むもの、乗れないものは、人知れず
「で、どうだ?」
とアインズが尋ねた相手は、彼の事実上の息子、パンドラズ・アクターである。
パンドラズ・アクターは、ここしばらくはいくらかの新奇ではあるがさして貴重でもない
「ハッ、父上。
未だ正確な年譜の再現……までには至ってはおりません。
が!
少なくとも……デケム・ホウガン、なる者の母親!
……と思われるプレイヤーがこちらの世界に渡って参ったのが……件の六大神のそれよりもさらに遡ることは確実……で御座います。」
ホウガンを殺害した後、アインズはアウラ、マーレに森妖精の王国々民への宣撫を委ねる一方、パンドラズ・アクターを隊長に、
ここにパンドラズ・アクターが抜擢されたのは、第一義的にはニグレドの目を阻んだ魔法の品の特定が最優先課題であったことによる。
ホウガンが死んでも変わらずニグレドの探査が阻まれたことから、その要因が永続的な
無論、ここ数十年来財政が安定しているナザリックにおいて、パンドラズ・アクターが長く無聊を託っていた、というのもある。
問題の品は存外簡単に見つかったが、いささか想定外の要素を含んでいた。
ホウガンの執務室と思われる空間から、上級アイテム<
これを並ならぬ品に押し上げていたのは、日傘と共にあった
パンドラズ・アクターは、この発見からさらに一歩進んだ推理をおこなっていた。
「旧スレイン法国を除き、我々が鉄壁の防御にて常に備えを怠らずにいるにも関わらず!
……ナザリックを探査魔法で探ろうと試みた現地勢力は、これまで……確認されておりません。
これは!
現地人たちの間では探査魔法があまり重用されていないことを意味し、彼らが基本的に<
にもかかわらず!
ホウガン、あるいはその母親が、これらの品を以て探査魔法対策をしていた……ということは!
少なくとも彼らがエイヴァーシャー大森林に王宮を構えた時点で……彼らを探査魔法で探らんとするユグドラシル勢が他に存在したことを示唆するもの……と考えますが。
……いかがですかな、父上?」
スレイン報国首都に六大神のものと思われるギルドが埋没しているのに対し、ホウガンの王宮からはそういったものが見つからなかった。
ユグドラシルプレイヤーがこちらに顕現するに際し、そのフレーバーテキストとして<ギルドの
そして、王宮から見つかったユグドラシル由来と思われる品は、<淑女の日傘>と<鍵盤打楽人形>の他にはホウガンが身につけていたさして興味を惹くでもないいくつかの装備のみ。ということは、ホウガンの母親は自身のギルドを放棄するに際し、何はさておきこの二つを優先的に持ち出したことになる。
これが、パンドラズ・アクターの推理の背景にあることは、そう言われればアインズにもすんなりと理解できたが、パンドラズ・アクターに言われるまではそこまで深読みしていなかったのも事実だ。我が息子……ながら、どうして優秀で頼もしいやつ、とほくそ笑むも、
(これで……普通の調子で喋ってくれれば文句ないんだけどな!)
と、彼にそれを強いているのがかつての自分自身が与えた設定であることを棚上げして、内心身勝手な悪態をつくアインズ。
「……ゴホンッ!
見事だ、パンドラよ。オレもおまえの見解通りだと思う。」
「お褒めのお言葉を賜り……光栄で御座いますーーーっ、んぁアインズ様ァ!」
(暑苦しい……)
「では……引き続き真相に迫るべく、解読作業を進めたく思いますが……
(……近いよ!)
一気に距離を詰め、アインズの鼻先数センチのところで作業続行の許可を求める息子に、アインズは無言のままこくこくと頷いて同意を与えた。
パンドラズ・アクターが取り組んでいるのは、ホウガンの王宮から同じく接収された大量の書き付けの解読である。
ホウガンの母親は、おそらくは母語を日本語とし、
対して、大森林の森妖精固有の文字、と思われるもので記された書き付けが膨大な量存在し、その大半がおそらくはホウガン本人しか立ち入れないであろう領域から見つかったため、書いたのも当人で間違いなかろう、と判断されている。保存状態から推定して古いものは云百年の昔となる彼の青年期にまで遡れそうな勢いだ。
厄介なことには、ホウガンがあまりに野放図に国家を支配していたため、現存する森妖精たちの識字率はすこぶる低く、仮に発声は出来たとしても含意まで理解できるかはかなり怪しかった。また、読み解いてみるまでどんな爆弾を抱えているやもわからぬ情報を一般の森妖精の目に入れることは憚られたし、ましてや読み上げさせた後に口封じする、などといった対応はアインズの矜持に触る。
そのような次第で、パンドラズ・アクターはこの解けるやら解けぬやら見当もつかぬ
森妖精の王国が、いわゆる官僚機構的な政治機関を有しておらず、
正直なところ、アインズ自身にその点にさほど強い関心があるわけではなかったが、ホウガンの母親が存在を意識していたと思われるプレイヤー……よもや
「念のため繰り返し言っておくが、この
あまりシズを酷使し過ぎないよう、配慮はしてくれよ。」
「承知して……おりますともぉーーー、父上!」
(……ホントにわかってんのかなぁ?)
アインズとナザリック地下大墳墓に対する忠誠、という点において、
この父に似て優秀な息子の趣味とも道楽ともつかぬ取り組みが、これから世界を呑み込む大異変の背景に少なからず関わって来ようとは、さしものアインズもこの時点では知る由もなかったのである。
<次話予告>
旧王国貴族領を舞台に、傲慢不遜な骸骨が暗躍を開始する。
「たった二人で数十騎の騎馬を返り討ち……だと?」
「街は<漆黒の英雄>の噂で持ち切り。」
キーノ・インベルンの脳裏を占めるは、
百年来大陸の闇に蠢く比類なき
「そういうことなら、それは私が請け負おう!」
憶持のオーバーロード第3話『噂の漆黒』
「ソノ所業ニ治安維持ヲ期待スルノハ……。
絶対者ニヨル支配ヲ求メテイル、トイウコトニハナラナイカ?」