ここしばらくで
街道をいく
キーノを含む
<朱の薔薇>に加わってからの冒険者暮らしを、キーノはそれなりに満喫している。
呪われた身の上、
もっともこれは、見るからに恐ろしい
<蒼の薔薇>時代、当時は明確にそんなことを意識していなかっただろう、とは思うが、今になって顧みれば、キーノは自身が仲間たちよりも何倍もの長さの時間を生きてきた
さて、今はどうだ?
駆け引きの機微を要求される交渉事においては、一見軽薄ながらその軽薄さまでも相手の懐に取り入る武器として使いこなすリキウス・アインドラの手腕にキーノは正直
友人の子どもだ、とばかり思っていたガ・ギンは実に冷静沈着な剛の者であり、しかも筋肉達磨な見た目に似合わず存外勉強家でキーノが実地で見聞したはずの時代の出来事をキーノよりも詳しく承知していることはざらにある。
クゥイア、クゥイナの双子忍者は……未だによくその正体がわからずにいるが、常に共に行動しているはずなのに、よくもまぁあれだけの
さりとて、キーノは自身を卑下してこう考えているわけではない。魔法に関する見識と潜り抜けてきた修羅場の数でキーノが彼らを圧倒しているのは疑いようのない事実であり、若さがそのまま強さとなっている<朱の薔薇>において、異色な存在である自分の価値はまさにそこにある、とキーノは考えていた。
実際、彼女の加入後の最大の荒事となった、
一方で釈然としないことも少なからずある。
もちろん、仲間たちに対しての不満では決してない。
たとえば目下手掛けている仕事、リ・ウロヴァールへ向かう隊商の護衛は、直接の
加えて、最近
彼女たちの暮らす帝国自由都市群にもスレイン
人の子、と称する新たな国家元首の人となりについて情報は乏しいが、キーノは、それが自身がナザリック地下大墳墓の連中にその始末を押し付けた
そして、これもはっきりと明言されて聞こえてきているわけではないが、人の子が報国において「神殺し」の二つ名で呼ばれ、それこそが
前者はともかく、後者については帝国自由都市群においても、時勢に目敏い輩は既にその含意するところに思いを馳せている。
人の子が殺した神、とは、
すべてが自助努力に任され組織的な警察機構が存在しない当地にあっては、犯罪統計のようなものも当然存在しないのですべては雰囲気からの判断でしかないが、以前はあまり耳にしなかった悪質な野盗の類の噂が増えて来た感がなきにしもあらず。並行して、利に敏い豪商たちは囲い込んでいる
これは、襲う側においても襲われる側においても、<神隠し>の
ところが、だ!
ただ一人キーノだけは、<神隠し>こと傲岸不遜な我儘骸骨アインズ・ウール・ゴウンが、殺されたどころかピンピンしており、しかも、神殺したる人の子を「アレは面白いことになる、ふふふ」と笑いながらスレイン法国に送り込んだ当の本人であることを知っているのだ。
「ギン、どう思う?」
隊商は、街道から少し逸れた崖を背にした草原に今宵の野営場所を定めた。
睡眠を必要としないキーノは常に寝ずの番を買って出るが、<朱の薔薇>の面々は、キーノにお任せは申し訳ない、と途中交代を挟みつつも誰か一人が付き合うのが常で……よもや、キーノ一人では天然ボケをかましかねない、と気遣われてのことではなかろう……今はギンが焚き火を前に共にいる。
「
最近では、ギンはキーノを
何かの拍子に
「こういう仕事、増えてるだろ?
野盗も商人も、神隠しがもうない、と思い込んでるんじゃないか。」
「
ギンは、無論、アインズとキーノの顛末については何も知らされてはいないが、彼なりに常に頭の片隅に
「しっかりしてもらわないと困るよな!」
とキーノ。
「ダカラ……
「<神隠し>だよ!
やるならやるでちゃんと続けてくれないからこういうことになる。」
「……ハ?」
キーノはアインズが気まぐれで<神隠し>を怠けている、と考えているので、ついついその不満がこういう形で漏れたが、ギンにはキーノの<神隠し>に何か期待せんが
「いやいや、ゴホ、ゴホッ!
……ともかく、だ!
<神隠し>が結果的にこの辺の治安に貢献しているのは事実だろ?
それが突然鳴りを潜めれば、当然反動がある。
私が言いたいのは……そういうことだ!」
「キーノハ、<
誤魔化し気味に強弁するキーノに、ギンは落ち着いた声色で尋ねた。
うーん、とキーノは唸る。
そういう訊き方をされると返答に困るのもまた事実。
「
とギン。
「モシ、<
そう語るギンの念頭には、人の子が即位する直前、第二帝都エ・ランテルはロフーレ商会本店の離れにおいて、
「ダガ、フールーダ
まぁ、そりゃそうだわな。傲慢な骸骨だけど。
「デアレバ、ダ。」
ギンは敢えて言葉を切る。
「ソノ所業ニ治安維持ヲ期待スルノハ……。
絶対者ニヨル支配ヲ
キーノは虚を衝かれた感にハッとした。
アインズを絶対支配者として戴く世界、など考えるだけでもゾッとしないが、アインズが今後も悪人たちを屠り続けてくれればいい、と期待するのは、確かにギンの言う通り、その支配を期待しているのと
キーノが押し黙ったままでいると、今度はギンの方から問いが発せられた。
「
「え?」
まさにモヤモヤと考えていたことの真を射られてキーノは驚きの声を上げる。
「今回ノ仕事ニ
ダガ、
キーノモソウダロウ。
ソレハ……
どうやらギンは、キーノのさらに先を考えているらしい。
キーノは沈黙と視線で続きを促した。
「
「私たちが<神隠し>……と同じだと?」
ギンの見解に驚かされたあまり、キーノはギンの言葉をそのまま返して疑問を呈す。だが、問われたギンは涼しい顔だ。
「結局ノトコロ、支配サレテイル
「うーん……言わんとするところはわかるが、そういう理屈で
キーノは素直に思うところを返した。
言われたギンはそれを反論とも思っていない様子だ。
「ソウ
な!
キーノは自身考えたこともなかったギンの言葉に絶句する。
「ツマルトコロ、支配者、統治者ヲ
ダガ、
ふとキーノは、<朱の薔薇>と
「ギンは……ド・クロサマー王国のように暮らすのを理想だと思っているのか?」
トブの大森林とバハルス帝国に挟まれた辺境中の辺境にあって、人間も亜人も、
「ソレハ……ドウダロウナ。
アレハアレデ
ソレニ、ダ。」
「それに?」
「アノ
比類なき傲慢な骸骨、アインズ・ウール・ゴウン!
「オソラクハ<
デアルトスレバ、ソレハ
「でも、アイ……いや、髑髏様は支配者として村に君臨しているわけじゃないだろう?」
「コノ
「……どうでもいい?」
「
百年
「だとしたら……どうなんだ?」
「ソレハ……
なんと!
キーノは目前にある、友人ガガーランの息子、父である
かく言うキーノ自身、アインズに、直接に感じられるその強大さと傲慢さの背後に、底知れぬ奥深い何かを感じないではなかったが、それが何であるかは
「……可愛らしかったおまえが、随分と大人になったものだな。」
照れ隠し気味にキーノがそう言うと、ギンは体躯に似合わぬ屈託のない笑顔を見せた。
「アア、ボクハモウ
「この流れからの
自分の幼さに嫌気がさして死にたくなる……死ねないけどな。」
キーノは自ら
今は亡き戦友、ガガーランよ。
おまえは、素晴らしい息子を遺してくれたな!
一行は特に波乱もなく、目的地である
途中、伯国とブルムラシュー侯国の丁度中間点辺りとなる見晴らしの良い原野で、顧客たちは気づかなかっただろうが、野盗にしては規模が大き過ぎる騎馬集団の伴走を受けたことに、もちろん<朱の薔薇>の面々は
幸いなことに、半日つかず離れずでいたその一団は、何もせずに西へと離脱していった。キーノは念のための単独追跡を申し出たが、隊商の護衛を最優先すべきこと、夜襲の前触れの可能性もあること、をリキウスとギンに窘められて断念した。
結局何も起こらなかったので、リ・ウロヴァールに入都する時分には
曰く、名前は明かせないがウロヴァーナ伯の遠縁に連なるあまり良い噂のない子爵家がある。代金の踏み倒しを重ねたがために当地を含めまともな商人は相手にしない家門だが、ちょっとした規模の私兵を囲っていて、これに近頃、隊商を襲って荷を奪っている嫌疑がかけられている。
これが不足気味の食糧事情にさらに拍車をかけることに心を痛めたさる男爵が一計を案じた。道楽から帝国の嗜好品を求める
「その男爵から相談を受けたのがかく言う私でして。
すぐにリキウスさんのところのギンさんを思い出しまして、<朱の薔薇>を推挙させていただいた次第です。よもやギンさんが頭一つ抜きん出て目立っている隊商に、仕掛ける馬鹿はおるまいと……ご迷惑だったでしょうか?」
からりとした調子でそう言われてしまえば、リキウスたちには返す言葉もない。
「こうしてお話ししたのは、よもやないとは思っておりましたが、万が一にも連中と対峙して悉く討ち取る、などということをなさいますと、その
道中、騎馬集団の単身追跡を申し出た時点では、野盗であるようならば一網打尽に片付けてやろうか、などと考えていなくもなかったキーノは、
それ以上に、所詮貴族の放蕩と踏んで勝手に不愉快を覚えていた今回の依頼の資金源に、思いもよらぬ深慮が隠されていたことを知り、ただ貴族というだけで
否。
とキーノは、ギンに倣ってもう一歩考えを進めてみる。
男爵がそうであるように、彼らは決して自ら剣を振るったり魔法を行使して事に当たるわけではないだろう。が、彼らの手の届くやりかたで、否、彼らにしか出来ないやりかたで、少しでも憂き世を良い方向に持ってはいけないか、とそれぞれに足掻いているのではないのか。
思えば、採算ギリギリを承知の上で、北辺の食糧不足をこれ以上深刻化させまじとこの仕事を受けた<朱の薔薇>だって、その点においては思いは同じなのではないか、と。
これが……ギンの言う、<神隠し>たるアインズ・ウール・ゴウンが私たちに求めている変容、なのだろうか?
*
「な……何が起こってるんだ!」
旧王国の伝統を引き継ぎ、伯軍は常備軍ではない。ウロヴァーナ伯爵と封臣契約を結ぶ貴族家の私兵が、必要に応じて編成されるものだ。その中にあって、男の所属する某子爵配下の軍団は成り行きから肥大化を重ね、気付いたときには子爵家の税収で養い得る規模を超過してしまっていた。
この一年は、無法な略奪で糊口をしのぐことが増えて来ている。これも、何か明確な意思決定を経てそうなったものではなく、長く<神隠し>の名で呼ばれた問答無用に悪人を屠って歩くという化け物の噂が途絶えたことを受けて、なし崩しに始まった習慣のようなものに過ぎない。
この日も、数日の隊の糧食を賄える程度のつまらない獲物ではあるがないよりはまし、と手下を号令して襲い掛からせた十数頭の
一頭、また一頭、と騎乗者を失って何処かへ駆け去る軍馬を見て、男は漸くさきほどから飛び散る人体が、哀れな隊商の一員のものではなく、自身の部下のそれだということに気づいた。ほぼ同時に、獲物を囲んでいた分隊のうちまだ五体満足な者たちが、男の指示を待たずに四方八方へと散開し始めたが、その背後を
黒い影、に思われたそれは漆黒の
そして、追いつくや否や振るわれる身の丈ほどの大剣。あろうことか甲冑はその大剣を両の手に一振りずつ計二本掴んでいて、まるで軽業の
動きは小刀でも、その刀身は常人では持ち上げることすら叶うまい大質量の重器だ。かすりでもしようものなら、そこから部下の体は
男は不意に、自身の背後にあるはずの直衛の気配がないことに気づく。振り返り見れば
そうこうするうちに、男は一陣の風が自身の真横を背後から吹き抜けていくのを感じた。否、風に
(ふん、私を置いて逃げ去った報いだ!)
あっという間に甲冑に追いつかれ、血飛沫と共に飛び散る部下の体の部位を認めながら、男はまるで勝ち誇ったかのようにそう言い捨てて……声が出ないので、そう言い捨てた気分になって、が正しいが……現実から逃避した。
と言うのも、さきほど甲冑が自身の真横を通り過ぎたとき、何かが……大質量の何かが自分の胸元少し下の体内を真一文字に横切ったような気がするからだ。おそらく、体を少し捻ってみれば何が自身に起こったのかはたちどころに判明する。しかし、それを知って何の益があるだろうか。最早すべては手遅れだ。
嗚呼、景色が斜めに崩れ落ちる。
*
<朱の薔薇>の一行は、決して多くはないエ・レエブルへの復路の荷が整うまで、商家の離れを借りてしばしの休息を取った。
キーノとギンが思いを馳せたアインズの真意が買い被りに過ぎることを
「例の騎馬集団が討たれた……っていうのか?」
リキウスが突然大きな声でそう問うたので、得物の手入れをおこなっていたキーノとギンも自然と会話に加わった。
「リ・エスティーゼからの隊商を襲って返り討ち。三十から四十騎が全滅。」
とクゥイア。
はて、リ・エスティーゼの冒険者たちも決して馬鹿に出来たものではないことは承知しているが、とは言え、ちょっとした軍隊規模の騎兵集団を返り討ち、しかも全滅させるほどの
騎兵は騎乗しているからこその騎兵であり、たとえば彼ら<朱の薔薇>がそういった集団と対峙したとして、護るべき対象を一箇所に集め適切に五人で防御線を組めば被害は最小限に食い留めることは出来る。ギンの
が、問題はその
あるいは、あのエリュシオンと名乗ったリ・ロベルの触れ得ざる者たちか?
リキウスは不思議な縁で知り合った恐るべき力を備えた五人組を脳裏に思い浮かべた。連中ならば、数十騎を
「
クゥイアが仕入れてきた話によれば、事件が起こったのは昨日の払暁。
問題の隊商は食料と日用品のみを運ぶ小さな集団で、予算の都合でこれといった護衛を連れてはいなかったらしい。リ・ウロヴァールまで残すところ二日、という距離で夜営を片付けているところに騎馬集団の襲撃を受けたが、たまたま通りがかった二人連れの旅人が火急を救ったのだとか。
危機を脱した隊商が、大慌てで昼夜を継いでリ・ウロヴァールへ駆け込んだのが今日の昼頃。その尋常ならぬ様子が町衆の関心を集め、問われるままに語った顛末が早くも人口に膾炙しているのだそうだ。
「街は<漆黒の英雄>の噂で持ち切り。」
「……
「旅人に付いた二つ名。本人は名乗らず立ち去った模様。」
助っ人した旅人の一人は漆黒の全身甲冑を纏っており、隊商の面々が誰からともなくその人物を<漆黒の英雄>と語ったものらしい。
「たった二人で数十騎の騎馬を返り討ち……だと?」
キーノは首を傾げる。甲冑を着込んでいるからにはその人物は
あるいは、連れのもう一人が魔法の使い手だったか?
「
「ハ?」
これにはギンも首を傾げる。彼自身、並の人間ならば三人掛かりでようやく持ち上がる
「もう一人、は何者なんだ?」
キーノは、その旅人の連れが凄腕の魔法詠唱者で、何らかの
「夜会巻きの美人さん。」
「「「ハァ?」」」
リキウス、ギン、キーノの三人がほぼ同時に呆れた驚きを返した。
「隊商の話では、彼女は見てただけ。
ご丁寧に、怪談紛いの
「オチ?」
「隊商の一人が、彼女の頭が取れて転がったのを目撃。」
駄目だこれは、とリキウスは嘆息する。
これでは
実のところ、隊商から発して街中を席捲している噂は実態に即した誠実極まりないものであるのだが、まぁ、言葉通り信じろ、というのが土台無理な話であることは否定はできまい。
「しかし……その騎馬集団が件の子爵の息のかかった連中ならば、ちょっとした騒ぎになるんじゃないのか。」
一つ間違えれば自分が踏んでいたかも知れない地雷にキーノは懸念を表明するが、案ずるには及ばず、と否定したのはギンだ。
「モシ、コレヲヤッタノガ
と、ここでリキウス、クゥイア、クゥイナの視線がキーノに集まる。
あー、わかってるからそんな目で見ないでくれ!
「
「クゥイア、その危急を脱した隊商のただいまの
と尋ねたのはリキウス。
クゥイアは敢えて答えず両の手の人差し指を隣に立つクゥイナに向けた。
クゥイナは、いつものように黙ったまま、やはり指で円を作って是と答える。
「リキウス……
たちまちに意を察したギンがリキウスに問う。これまたいつものように、嗜めるかのような口調ではあるが口元には笑みが漏れており、既に同心の模様。
「火中の栗、になるとは思ってないが、その阿呆な子爵の手の
問題の子爵が、生還して市中に一連の噂を広めた隊商を逆恨みする可能性はある、と言うか、それこそが
そう考えたリキウスとギンは、背景に気づいている自分たちに出来ることは、せめて当地に留まっている間だけでも問題の隊商をそれとなく保護することだ、とまったく同じ結論に達していた。
「そういうことなら、それは私が請け負おう!」
一拍遅れてようやく話の筋を理解したキーノが、ありもしない胸を張ってそう言う。
「何かあるとすれば今夜だろ。私なら夜を徹して張り込みしても平気だし、万が一隊商を襲う賊があれば……」
スッとクゥイナがキーノの横に立ち、首掻っ切るぞの
「んなわけないだろ!
<魅了の
改めてクゥイナが自分の顔で
「そう、そっちだ!」
「ではそこはキーノにお願いしよう。
オレは念のため、ここの
結局、その夜も翌夜も隊商が投宿した商館に異変はなく、逆に件の男爵と商人を通じて子爵が知らぬ存ぜぬを貫いているらしい話が耳に届き、これ以上の監視継続は不要と彼らは判断した。
無駄な試みであった、と言ってしまえばそれまでだが、労を買って出たキーノも含め、たとえそれが自己満足に過ぎないのだとしても、男爵や商人がそうであったと彼らが信じるように、手の届くところから出来ることをやっていくのだ、とする自分たちの
荷が整ったので翌朝出立、が<朱の薔薇>に
気になるのは、噂の<漆黒の英雄>とやら。
<神隠し>にまつわる諸々の話を含め、こういった噂話につきものの誇張を好まないリキウスは、頭から漆黒の英雄とされた人物が成したとされる人間離れした
むしろ常識外れの膂力を振るったとされるその人物は「おまえが垣間見たナザリック地下大墳墓などほんの一部の一部に
しかし、仮にそうだとして、その動機はなんだ?
キーノはアインズを極めて偽悪的な人物、と感じている。
見た目や口調、態度こそ大魔王
見る人から見れば、キーノだってその
彼女自身にはその自覚がいささか欠けているようではあるが。
それはともかくとして。
アインズとその眷属がしばしば問答無用に屠って歩いている相手が、誰しもが悪党と認める連中であることはわかる。が、殺すことそれ自体が目的であるならば
ギンに窘められたように、いくらこの辺りの治安維持に一役買っているからといって、アインズの支配に甘んじるなどということは考えたくもないが、当のアインズたちナザリック地下大墳墓は、その気になればこの世界を征服することすら容易く見えるにも関わらず、それを試みる様子は一向に見られない。
少なくとも百余年前から当地で暗躍し続けているにも関わらず、だ。
スレイン
が、今のところは、国家元首の座に就いた人の子シロクロについて悪い噂は聞こえてこないし……
そして、表立って語られることはないものの、人の子に捧げられる<神殺し>の二つ名は、明らかにアインズを打ち倒したことを匂わせるよう仕組まれたもの、としか思えない。
であるとすれば、アインズはその虚報を以て故意に自身の存在をこの世界の住人からより隠そうと目論んでいることになる。ナザリックの偏執狂的とも言える防諜体制も、これに通底したものと言えよう。
この世界の秩序維持に少なからず骨折りながら、ひたすらに自身の存在を隠そうとする無比なる強者たち。
リ・エスティーゼからの隊商を助っ人しつつ、名も告げずに立ち去ったとされる漆黒の英雄もこれについては同様ということになり……それにしてはやることが派手に過ぎると思わなくもないが……自身が直感的に連関を疑ったのは間違ってはいない、とキーノは確信を深めた。
が。
で……あいつらは結局、何がしたいんだ?
根本的な疑問には答えが得られない。まさかあのアインズ・ウール・ゴウンとナザリック地下大墳墓が、行き当たりばったりに事運んでいようはずもないのに……いや、実態としてはまさにその通りなのであるが、ギンの深読みに引き摺られて、キーノは、アインズには何か自分では考えもつかない深慮遠謀があるに違いないのだ、と思い込みつつあった。
こういった背景もあって、エ・レエブルへの帰投後ほどなくして起こった前代未聞の世界的災厄に際しても、キーノはその背後にアインズ・ウール・ゴウンの計り知れぬ意図が隠れているのではないか、と無駄に勘繰り続けることになるのである。
<次話予告>
誰も想像しなかった未曾有の事変が突如世界を覆い尽くす。
「本日もお日柄
「
「
「ダヨネー、
そしてアインズにも未体験の恐怖が襲いかかる!
「ア……アルベドォ!
あ、頭の中に……頭の中に……」
憶持のオーバーロード第4話『バベルの災厄』
もー、かわいいんだからぁ、