吾輩はトットムジカである   作:sysy

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第二楽章

「さて、次の航海だが……ウタ、お前はこの島で留守番な」

「はぁ!? 何言ってんのシャンクス! 昨日の話なら、私は赤髪海賊団の音楽家って言ったじゃん! ウソついたの!? 信じらんない!」

「いやな、別に嘘をついたわけじゃない。ただ、今度の航海で行く場所はお前にはまだ早いと思ってな。大人の事情ってやつだ」

「何それ! そんなのルフィじゃないんだから平気に決まってるでしょ! 私はもう一人前のレディなんだから問題ないもん! ね、みんな! 私がいないと困るでしょ!」

 

 ウタが船員たちに声をかければ、その通りだ! ガハハッ! ウタの歌がないなんて考えらんねぇ! と口々に騒ぎ立てる。副船長であるベックマンこそ中立を保つように何も言わずにタバコをふかしていたが、それ以外は幼い歌姫に逆らえなかった。

 

「おいおい、お前ら」とシャンクスは呆れるが、押し切れない時点で彼も似たようなものである。

 

「ほらね」とウタは得意気に胸を張った。

 

「それに、ちょっと聞いてて。……ガーザンター」と歌い始めた途端にトットムジカが現れて歌を中断させる。

 

 そして、「ムジカ、上に乗せて」と言えば、ウタと同程度の大きさになったトットムジカは彼女を持ち上げ、平たく伸ばした頭の上に乗せた。

 

「ね! こんなことも出来るようになったんだから。フフッ、今度フーシャ村に行ったらルフィにも聞かせてあげないと」

 

 ウタは小さな空中ステージとなったトットムジカの上でポーズを決め、トットムジカはチャラランと鍵盤を鳴らした。

 

「ウタはすごいな~。だっはっはっ」

「むぅ、ウソつき! そんなこと思ってないくせに!」

「あ~、凄いとは思ってるぞ。本気でな」

 

 実際問題、凄まじい事ではあるのだ。ウタウタの実の能力者とトットムジカ。この二つの組み合わせは例えトットムジカが暴走する危険性がなかったとしても無視できないもの。それこそ世に出れば世界が放っておけないほどに。

 

 故にシャンクスはゴードンを交えてウタの今後を話し合ったのだ。

 

「なぁ、ウタ。なにも置き去りにしようってわけじゃない。ちょっとした野暮用が済めば、すぐこの島に戻ってくる。それまでの間に此処でゴードンさん達にもっと歌や音楽にそのトットムジカのことも教えてもらえ。ここは世界一の音楽の島だからな。ここで学べばお前ならきっと世界の歌姫にだってなれる。これはゴードンさんのお墨付きだぞ」

 

「世界の歌姫って、赤髪海賊団の歌姫じゃダメなの? それに音楽を学べっていうならパンチとモンスターは?」

「よし。パンチ、モンスター。お前らも船下りろ」

「えええエエエ!? そりゃあないぜお頭!?」

 

パンチに続いてモンスターも抗議の鳴き声を上げた。

 

「うるせェ! よくよく考えたらウタを一人で置いていけるか! 船長命令だ!」

「出たよ親バカ」

「いや、まあ、気持ちは分かるが」

「実際、誰かしら残った方が良いだろ。耳の良い奴がな」

 

 船員たちが頭を捻って意見を出し合う中、「……分かった」とウタは小さな声で言った。

 

 本当に置いて行かれるわけではないこと、何かしらの事情があることを察したウタは我慢することにしたのだ。自分は一人前のレディなのだからと言い聞かせて。

 

「でも絶対に! すぐ、迎えに来てよ! 約束だからね!」

 

 目に涙を浮かべながらも気丈に振る舞うウタの頭にシャンクスは手を乗せる。

 

「ああ。約束だ」

 

 そんな二人の元にいつの間にかいなくなっていたトットムジカがやってきた。そして、ウタとシャンクスへと両手にそれぞれ持ったものを差し出した。

 

「これって電伝虫?」

「お前、どっから持ってきた? いや、分かった」

 

 慌てた様子で走ってくるゴードンを見てシャンクスは察した。

 

「そっか! これなら離れててもシャンクスたちと話せるし、歌だって聞かせてあげられるってことね、ムジカ!」

「おい、待て。こいつらたぶん島の……」

 

 その後、二匹の電伝虫はゴードンより正式にウタとシャンクスに送られることとなった。

 

 そして、ウタとトットムジカは涙声の混じる歌と演奏を奏でながら離れ行く赤髪海賊団の船を見送った。世界の歌姫になれるよう国を挙げて協力すると宣言したゴードン、本当に残されたパンチとモンスターと共に。

 

「おがじらァ~!」

「なぐなおばえら! 今生のわがれじゃねェ! 笑ェ!」 

「お頭だって泣いてんじゃねえェか!」

「あァ! お前も残るかァ!」

 

 喧騒をバックに「(こりゃ思ったより早く戻ってくることになりそうだ)」とベックマンは思った。

 

 

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