「どうして永賀さんはっ!こんなにも妖力の満ちた空間でっ!妖力をっ!判別できるんですかっ!」
「年の功かな!それよりもハジメ君、息が上がってきているよ?」
俺と永賀さん(と愉快な妖怪迎撃班の仲間達)はロケット発車場に猛ダッシュしている。
先程のの戦いもあって、息が上がってきた俺に対して、同じ様な条件の下走っている永賀さんは、まだまだ余裕といったところだ。
俺は便利な能力もあるので、永賀さんと戦っても勝てる自信はあるが、基礎的な技術や体力ではとても敵わなく思えた。
もしも、永賀さんが能力を持っていたら、どんなに強かっただろうか。
きっと、俺では全く相手にならないだろう。
「あれは…鬼かな?」
「…え?なにも見えませんよ?」
「あはは、まだまだ若いな、ハジメ君は。なに、これも年の功だよ」
じゃあ、そう言うあなたは一体何歳なんだ!それともマ○イ族か!
俺はツッコミたいのを必死に我慢して、永賀さんに対抗すべく目を凝らす。
遠くを…もっと遠くを見たい…!
「どうかな?見えたかな?」
「全然見えないです…」
「まあ、今はこっちからじゃ、瓦礫の影になって見えないんだけどね!」
「先に言ってくださいよ!?」
永賀さんがマイペース過ぎて困る。この人は俺の反応を見て楽しんでいるに違いない。
チラと顔を見たが、思いっきりにやにやしていたし。
そうか、これが…
「まあ、年の功だよ?」
「人の心を事もなげに読まないでください!?覚り妖怪ですか!永賀さんは!」
「ほらほら、そんなにカッカしないで。もうすぐ着くから戦闘の準備をしてね」
…俺、この人に勝てる気がしないや。色々と…
でも、緊迫とした状況下でも永賀さんのお蔭でいい意味でリラックスできたのかもしれない。
俺は改めて年の功というものの偉大さを実感した。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲
ロケット発車場に到着した俺達が目にしたものは、負傷した妖怪迎撃班の人達が瓦礫の山を上手く使って遠距離で大きな青い妖怪を相手にしている光景と、永琳さんが父には敵わないまでも、凄まじい速度で弓を射て、これまた大きな赤い妖怪を攻撃している所だった。
赤い妖怪と青い妖怪。永賀さんはさっき「あれは…鬼かな」とか言っていたな。
頭頂部を見れば確かに角が生えている。赤い方に一本、青い方には二本だ。
鬼達は上半身が裸で、片手には棍棒を持ち、全身が赤、もしくは青一色で、黄色のパンツを履いている。
まるで、子供の頃読んだ『桃太郎』の絵本の鬼みたいだ。
…パンツの隙間からちぢれた毛が見えるのは宜しくないな。
そして、この鬼達はデカイ。下に付いているナニじゃなくて体がデカイ。
と、下な話は置いておいて…
この状況、どう対処すべきか。
「ハジメ君」
「…はい」
目を細めて二体の鬼を観察する永賀さん。
この人、参謀とか向いていそうだよな。しかも戦う参謀。カッコいいじゃないか。
「ハジメ君は永琳と赤い鬼を相手してもらえるかな?赤い鬼は力任せな攻撃が多いから、君なら攻撃の流れを読んで避けつつ、永琳に攻撃させれば何とかなるだろう。青い鬼は私とその他大勢に任せてくれて構わないよ。」
「その他大勢って…いえ、何でもありません。ちゃっちゃと片付けて永賀さん達を手伝います」
「ははは、是非そうしてもらいたいな。期待して待ってるよ」
その後、永賀さんと別れた俺は永琳さんと合流する。
永琳さんは赤鬼からの強烈な攻撃を避け続けてきたせいで、だいぶ疲れてしまっているのか息が荒い。
彼女の特徴的な赤と青の服も汚れて、茶色と黒の服に見える。
「中々しぶといわね…」
「そんな苦戦中の永琳さんを助けにハジメ君、参上!」
「何でそんなに元気なのよ…でも、こっちはもう、残りの矢も少ないわ。来てくれてありがとう」
そう言って隙間の多くなった矢筒を見せてくる永琳さん。
ああ、手までボロボロになってしまっている。永琳さんに無理させないように俺が頑張らないとな。
「残りの矢がなくなり次第、霊力の矢を作るけど…多くは射てないわ。だから、悪いんだけど…」
「巻かせといて!ぶちのめしてくるよ!」
俺が永琳さんと会話している間、律儀にも待ってくれていた赤鬼と対峙する。
逞しい体には永琳さんが射ち込んだ矢が何本も刺さっているが、痛みなどはないようで、顔には『余裕』の二文字が見てとれる。
ムカつく顔だな。今すぐにでもその顔を恐怖と絶望でグシャグシャにしてやろうじゃないか(ゲス顔)
「新しい獲物だぁな?今すぐ叩き潰すんだぁよ!」
「へーんだ。やれるもんならやってみなって!」
俺と永琳さんの会話が終わるまでじっと待っていた赤鬼さんは律儀で変な喋り方の妖怪だった。だぁよって、なんだぁよ。
戦闘開始だな。早速棍棒を叩きつけてきた赤鬼から離れて、現在の俺の状態を確認する。
霊力は『霊力カッター』を7、8発は撃てるほどには回復している。
大気中の妖力は充満しているから使えそうだし、気もあり余っている。
赤鬼の動きもその瞬間の動作、気持ちの
負ける要素は無いに等しい。
「ふうぅんぬぅ!!」
「!? おっと、危ないじゃないか。」
突然、赤鬼が動いたかと思うと、思った以上に素早い動きで俺の目の前に移動し、棍棒を叩きつけてきた。
咄嗟に俺は回避したが、さっきまで俺がいた場所を見ると、棍棒が地面にめり込んでいた。
直撃したらただでは済まないな。
直撃したら、の話だがな。
「ん~?思った以上に素早いんだぁな?」
「その言葉、そっくりお前に返してやるよ!」
この赤鬼、巨体は巨体でも、縦にも長く横にも長い。ノッポなデブといったところか。
その見た目を持ってして、あの動きは驚異に値するだろう。
動けるデブ。なんと恐ろしいフレーズだ。
「今度はこっちからいかせてもらうよっ!」
さっと、大きな腹の前に入り込み、赤鬼の顔目掛けてアッパーをする。
アッパーをしようにも、頭の位置が高いため、俺はジャンプしなくてはいけないが、ジャンプした分威力は上がるだろう。
ブヨブヨとした顎に俺の拳がめり込むが、赤鬼は特に痛がりもせず、俺を掴もうとして手を伸ばしてくる。
俺は赤鬼の胸辺りを蹴飛ばし、間一髪で赤鬼の手を避ける。
赤鬼の手は俺の全身を安易に包み込める大きさだから、捕まったら一環の終わりだろう。
いくら俺が気の流れを活性化させ、細胞の働きを高速化させたとしても、全身がグチャッと逝ってしまってはどうしようもないだろう。
何より痛いのが嫌だ。俺は痛がらせる方が好きだ。
「おおぅ?さっきのおなごの様に遠くから卑怯な攻撃をしないし、強いだぁなぁ!」
突然話し出す赤鬼。相変わらず謎の喋り方である。
「オラァ、ワァクワクしてきただぁよ!」
その台詞は止めろよ。『オラ』違いじゃないか。
…でも、赤鬼の纏う雰囲気が変わった…?
「オラァ、久々に全力を出して遊ぶんだぁよォ!!!」
カッと赤鬼が目を見開いたかと思うと、先程以上の速さで俺に迫って来る。
あの巨体でこのスピードだと、最早壁が迫っているようにしか思えない。
見た目はアレだが、腐っても…いや、デブっても鬼か。
「こっちに来んなっ!」
勿体ないが『霊力カッター』を使う。残り6回使用できるな。
俺から放たれた『霊力カッター』は赤鬼へと真っ直ぐ飛んでいき、赤鬼に直撃する。
だが、腹に傷を付けただけで終わってしまった。
それを見た永琳さんが矢を射って援護するが、赤鬼の肉の前に弾かれてしまう。
「痒いだぁよ!」
スピードを落とすことなくぶつかってきた赤鬼に、俺は後ろの瓦礫まで吹っ飛ばされ、瓦礫の山に埋まった。
ヤツの体はどうなっていやがるんだ…?普通ならキレイに真っ二つにいくだろ?
アッパーも効かないし…
クソッ、鬼って頑丈だな。
「もう終わりだか?」
瓦礫の山から這い出ると、赤鬼が棍棒を肩に担いで立っていた。
表情からも言葉からも落胆の色がありありと出ている。
「オラはぁ、強いヤツと戦いたいんだぁ。お前じゃ弱すぎるだぁよ…」
そう言って赤鬼は担いでいた棍棒を高く構える。
思っていたよりも弱かった俺をさっさと殺して次の獲物を探そうとでも言うのだろか。
だが、俺だってそう簡単に殺される訳ではない。
『弱すぎる』なんて目の前で言われて、黙っている事ができようか。いや、できるはずがない。
身体の節々が痛むのを我慢し、瓦礫の山から這い出る。
「『弱すぎる』?失礼な。俺はまだ"本気"を出してないよ?」
「なんだぁ?弱者の悪足掻きは醜いし、時間の無駄だぁよ」
「それは『弱者』ならだろう?ならよ、俺が『強者』だって、証明すれば良いんだろう?」
人として、男として、『弱者』呼ばわりは訂正せねばな。
「できるんだったらぁ、やってみろだぁよ!」
できるから殺ってやろうじゃないの。能力を使いまくってケチョンケチョンのボコボコにしてやる。
先ずは、霊力の消費が大きくなるが、脳からの体の各部に指示を出す微弱な電流を止めて動けなくしてやる。
「!?」
「どうした?俺は『弱者』なんだから、今すぐに叩き潰せるだろ?ん?どうなんだ?」
脳からの指令が出ないため、赤鬼は全く動けなくなっている。勿論喋ることもだ。序でに煽っておく。
「あ、そうか!俺が『弱者』何だから、先に攻撃させてくれるのかい?流石は鬼だねぇ、『弱者』の人間にハンデとして先制攻撃を許してくれるとは」
かるーく煽っているだけです。憂さ晴らしとか嫌がらせをしたいとか、そんな邪な気持ちは一切ありません。たぶん。きっと。
こうしてみると、遊んでいる様に見えるが、実は俺は赤鬼を殺しきるために妖力の流れをある一ヶ所に向けて作り出していた。
『霊力カッター』では赤鬼にダメージは通らないし、『妖力球』では周囲の被害が大きすぎる。
ならば『妖力触手』(今命名した)を使うしかないではないか。
ある程度自由に動かせ、そこそこの威力(そこそこの威力と言っても下級妖怪は一撃で倒せる)の出る『妖力触手』がここでは一番有効な攻撃だと考えたのだ。
「…!?…ッ!…ッ!」
脳からの指示が出ないため、一切の行動ができていない赤鬼。口からは声にもならない音を出している。
また、恐らく呼吸もできていないはずだ。呼吸ができずに弱ったところを触手で一撃…なんて言うのも実は作戦の内だったり。
既に妖力が目に見えてしまうほどに集まった。
ウネウネと動く姿はどう見ても触手だ。
そろそろ良いかな。
「さて、『弱者』に先手を(強制的に)譲った赤鬼くーん?この『妖力触手』でさ…」
「…ッ!ッ!」
赤鬼の目を見れば恐怖の色がありありと浮かんでいる。
為す術もなく、一方的にやられる気持ちとはどんなものなのだろうか。
俺は今のところ大きな挫折などは経験していないので、その気持ちを知ることはできない。
「死んじゃえ!」
俺の言葉と共に赤鬼へと向かっていく『妖力触手』。
赤鬼の体と比べて小さな『妖力触手』だったが、赤鬼の左胸を貫いた。
その際、赤鬼の血が飛び散り、瓦礫を赤く染め上げる。
心なしか、血を被った触手のウネウネが少し激しくなっている。
血でも吸って興奮しているのだろうか。
「ウガァ…」
俺が赤鬼の能から出る電流を元通りにしたため、ドシンと巨体が地面に落ちる。
背中からは未だに血が流れ出ている。臭いから流血を止めておいた。つまり止血した。
だが、赤鬼の心臓部分(たぶん)を攻撃したので即死だろう。
「ハジメ!後ろ!」
切羽詰まった永琳さんの声が聞こえたので後ろを振り返ると、そこには…
「仕返しだぁよぉ~!!」
棍棒を横に振り払った
「グァッ!?」
強い衝撃。
回避が間に合わず、赤鬼の棍棒を脇に喰らってしまう。
地面を数回転がり、大きな瓦礫にぶつかって漸く止まる。
何とか立ち上がったものの、転がったせいか視界がグラグラ揺れていて気持ちが悪い。
しかし、どこから黄色い鬼が現れた?気配なんて感じなかったぞ…?
俺は黄色い鬼を睨むが、黄色い鬼(黄鬼って呼ぼう)は気にすることなく、何故か目の前の空間を棍棒を持っていない方の手で断ち切るような動きをしている。
「ハジメ、大丈夫?」
「何とか。永琳さんは…大丈夫そうだね」
近寄ってきた永琳さんと互いの無事を確認し合う。
「黄鬼って最初からいたか?」
「いえ、私が戦っていた時は今倒れているアイツだけだったのだけれど…」
永淋さんがチラリと鬼達の方を向いたので俺も釣られて鬼達を見る。
そして愕然とする。
「赤鬼がハジメの攻撃で倒れた次の瞬間に、もう一体が突然何もない空間から現れたのよ…あんな風に…」
そう、本当に何もない空間から、今度は緑色の鬼(こいつは緑鬼と呼ぼう)が現れたのだ…
黄鬼と緑鬼が俺達を見てニタァと気味の悪い笑みを浮かべた…
HAHAHA!
もっと苦戦するがいい!足掻け!もっと足掻k…ゲフゥ!?
ハジメ「何で後書きの最初からぶっ飛んだ事を言いやがるんだ、この作者は…?」
良いではないか、少し遊んだって…
ハジメ「そしてこの復活の速さ…」
それは置いといて…
ハジメクゥ~ン?苦戦してきたみたいじゃなぁ~い?
ハジメ「どうしてウザイ喋り方になった!?ええい、もういい!今回は油断しただけだ!不意打ちなんて卑怯なことをする鬼なんて、いるとは思わなかったんだよ!」
まあまあ、落ち着いて、落ち着いて。
次回でフルボッコ(再起不可)にしちまえば良いんじゃないかい?
ハジメ「殺ってやる!殺ってやるぞぉ~!」
うわ、何か凄いやる気になった…
え、えっと、次回もお楽しみに!