テスト勉強という現実から逃げるついでに執筆していたので。
シリアス(たぶん)とコメディ(になりきれていない)と微グロ(人によっては)に注意です。
「…おいおい、どうなっているんだよ、コレ…?」
それは一面に広がっていた。
目の前を埋め尽くしていた。
赤く…赤く…
力ないものは逃げ、果敢にも挑んだ者は容赦なく蹴散らされ…
息のない者もあった。
まだ動いているのもあった。
身体にあるべき部分のないモノ
言うことを聞かない脚の代わりに手で地べたを這うモノ
死に際の痛みの余りに白目を剥いているモノ
心が壊れたのかケタケタ笑っているモノ
生きているにしろ、死んでいるにしろ
何れのモノも暗赤色に染まり、そこで起きた戦闘の激しさを物語っている…
って、それっぽく言ってみたけどさ。
「これは…青鬼だよな?」
近くの死体の首を掴んで、顔を確認する。
一面に広がっていた『青鬼』の死体。血が付着していない部分を見てみると、元々は青色だった肌は薄くなり、最早白に近い。
いや、血が出ている分、赤鬼っぽいんだけどさ。
青鬼の死体のカーペットを踏んづけ…まだ息のある青鬼の頭も強く踏んで止めを差しながら…戦闘音の聞こえてくる場所へ向かう。
臭い。鉄臭いぞ。
「父上!?」
向かった先には永賀さんが鬼と戦っていた。
その身には大小様々な傷があり、真っ赤な血の化粧をしている。
その体で尚も戦い続けていた。矢は切れたらしく、霊力で矢を作りながらだが。
戦っている相手は勿論青鬼。やはり白くなっている。
永賀さんは青鬼の素早い動きに翻弄され、体の傷を増やしながらも、青鬼を射抜いて絶命させている。
青鬼を殺せたのは良い。だが問題はその後だ。
永賀さんが弓を構えたその先にいる青鬼の”軍団”。数えきれないほどの青鬼で埋め尽くされている。
「ハジメ君…」
永賀さんの声だ。普段ならもっと優しい声のハズだが、今は喉の奥から絞り出すような声だ。
弓を青鬼に向けて構えたまま、顔だけこちらに向けているが、疲労の溜まりきった酷い顔をしている。
見ているこっちが辛くなってしまう。
「永賀さん、喋らない方が…」
「良いんだ。他の人は皆、ロケットに避難した。ロケットはもう少しで発車できるそうなんだ…ハジメ君も永琳を連れて、早くロケットへ…」
…俺、月には行くつもりないんだけどな。
でも今の言い方だと、ここに永賀さんが留まって青鬼と戦い続けて、最悪死ぬことになるだろう。
「父上!?死ぬおつもりですか!?」
実の娘としてはやはり許容できないのだろう。永琳さんが非難の声を上げる。
俺としても永賀さんには死んでほしくない。
「あははは…この怪我の具合だと助かる見込みは、なさそうだしね…残り短い命を有効に使いたいんだ…」
そう言い、顔を青鬼に戻してしまう。
反論されるのは分かっているから、強引にでも会話を切ったつもりなのだろう。
「そんな…父上…」
永淋さんの顔が歪んでいく。普段の冷静な彼女でも、こんな表情をするのだ。
目からは涙が溢れ始め、頬を伝う。
「ハジメ…ロケットに戻りましょう…」
永賀さんの傷では生きたままロケットまで戻れたとしても、治療が間に合わない。
頭の出来の良く、医学にも造詣の深い彼女だからこその答えなのだろう。
「…わかった」
俺達は永賀さんの思いを無駄にしない為にも、ロケットへ向かって走り出した。
俺の前を走っていた永琳さんは自分が拳を強く握り過ぎて血が出ていることに気がつかず、後ろを振り返ることもなく、ただ走り続ける姿に、俺の心が痛んだ。
俺には永賀さんを助けることはできないのだろうか…
その思いが、頭の中をグルグルと回り続けた…
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
どのくらい走っただろうか。あまり時間は経っていないのかもしれない。
俺は永賀さんを何とかして助けれないものかと考えながら、永琳さんの背中を追いかけていた。
常に堂々としていて、大きく思えたその背中は、今や視界にある少女の背中よりも小さく思える。
その背中を見続けるのは、俺にはとても辛かったが、ふと閃いた事がその時間が無駄ではなかったのかもしれないと思わせてくれた。
覚えているだろうか。
俺が転生初日に空からパラシュート無しのスリル満点のスカイダイビングをしたことを。
俺はアレを忘れることができない。取り敢えず神様を一回殴ってやろうと強く心に決めることになった出来事だからな。
アレは最悪だった。許すまじ。
…俺の愚痴はここまでにしよう。嗚呼、愚痴が喉の奥から溢れ出てきそうだ。
で、だ。
スカイダイビングの結果、地面とキスする事になった俺の首はゴキッ、と良い音を発てて…いや、全然良い音ではない。思わず耳を塞ぎたくなるような、世にも恐ろしい音を発てて、逝ってしまわれたのだ。
今考えてみれば、普通ならもっと大怪我していただろうが、ゴキッで済んだのは運が良かったからなのかもしれない。
お蔭で永賀さんを助けれる方法を思い付いたし、俺の命も助かっているのだから。
俺はあの時、時間の流れを部分的に巻き戻して、首が逝ってしまう前の状態まで戻したのだ。
その後、直ぐに気を失って気絶してしまったが、恐らく気絶したのは霊力が足りなかったからだ。
3日間眠り続けていたのも、霊力が足りないのに、無理矢理能力を行使した反動だろう
だが、言ってしまえば、霊力が足りなくてもその反動を省みなければ能力は発動できる…
つまり…永賀さんの命を助けることができる、という事に他ならない。
ならば、即行動あるのみだ。
「…永琳さん」
「……何かしら…」
俺は永琳さんに声をかけるが、永琳さんは振り向きもせず、返事だけをして走り続ける。
よほど辛いのだろう。肉親を失うかもしれないことは。
…俺は両親よりも先に死んでしまったため、その辛さを共有はできないが、人が亡くなることの哀しさは知っているつもりだ。
「やることができたからさ、先にロケットに向かっていてほしいんだ」
永琳さんは立ち止まった。でも振り返らなかった。
「………ハジメは…戻って来てくれる?」
「必ず、戻ってくる」
少しの沈黙の後の質問。俺はもちろん即答する。
何をしに?という質問がないのは、俺が何をしに行くのか、彼女なりの予想をしたからだろう。
「私はもう…誰にも死んでほしくない。父上がいなくるって考えただけでも、こんなに苦しいのに……」
「大丈夫、大丈夫。俺は死なない。絶対に死なないから…」
永琳さんの不安げな声。今まで俺以外に何人が聞いたことがあるのだろうか。
常に堂々と自信に満ち溢れた彼女は、己の心の不安を他人に打ち明けたことなど、あったのだろうか。
俺には知ることもできないが、少しでもその不安を和らげることならできる…と思いたいな。
「ハジメ…その言葉…信じてるから……」
永琳さんは顔を拭った後、俺の方に笑顔を向けてからまた走り出した。
…信用してもらっているってことで良いのかな?コレ。
俺は取り敢えず、元来た道を引き返すのであった。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
全力疾走してみた。疲れた。…当たり前か。
相変わらず一面血の海である。どうせなら一面の菜の花の方が良いと思ったのは、俺だけではあるまい。
時々聞こえてくる断末魔らしき叫び声、や何かが破裂する音、妖力の密度の濃い場所を目指して、休むことなく走る続けると、未だに戦っている永賀さんとそれを円になって囲んでいる大量の青鬼を見つけた。
先ほどよりも全身の傷を増やしている永賀さんに対し、青鬼の数はさほど減っていないようだ。
その代わりか、青鬼の体は真っ白に燃えつきたと言える程白くなっている。
「永賀さんっ!」
「…ハジメ…君か…何で、戻ってきたんだい…」
青鬼の囲みを抜ける際に、空気中の妖力に流れを作り出して、鋭い刃…所謂『霊力カッター』の妖力版、『妖力カッター』を作り出す。燃費は『妖力カッター』が圧倒的に良いな。
スパッと数十体の青鬼の首を飛ばし、永賀さんに合流してみたものの、息も絶え絶えといった様子だ。喋ることすら厳しくなっている。
俺の到着がもう少し遅れていた時の事を考えるとゾッとする。全力疾走の甲斐があったのかもしれない。
「戻ってきた理由何て決まっているじゃないですか。…永賀さんを助けるためですよ!今度は俺が永賀さんの命を助ける番です!」
「…フフッ。じゃあ、頼りに、させてもらおう…かな」
この人にはこれ以上辛い思いはさせたくないな。
俺と永賀さんでロケットまで戻れれば良いのだから、青鬼を全部倒す必要はない。
でも、鬼から逃げ切るのは至難の技だ。結局全部倒すかもしれない。
…どっちだよ。
「助けに来ただぁ?」
「ソレはぁ、もう虫の息だぁ」
「助かるハズもないだぁ」
「そもそも逃がしはしないだぁよ」
「殺すだぁ」
「仇討ちだぁよ。赤と緑と黄の仇討ちだぁよ」
「「「「んだんだ、仇討ちだぁよ」」」」
ええい、順番に喋るな鬱陶しい。何故俺が信号機…ではないな。三色の鬼を殺したのを知っているんだコイツ。だいたい、鬼って全員こんな喋り方なのかよ!!!
「『分かつ程度の能力』…」
「え?」
「この
「永賀さん!!それ以上無理しないで!」
永賀さんがポツリと呟き、いきなり血を吐いた。咄嗟に口を手で抑えたが、口と手の隙間からドロドロとした赤い液体が滴り落ちる。
もう、体も限界なのだろう。早くロケットまで戻らなければ。ここで治療したところで、俺が気絶したら元も子もない。治療された永賀さんが直ぐに動けるようになるとは限らないのだ。
しかし、永賀さんの呟いた言葉…『分かつ程度の能力』とは何だろうか。鬼達っていうのはここにいる青鬼の事を指しているのか?
「オラ達の能力だぁ」
「よくわかっただぁな」
「オラが何故赤、緑、黄とオメェの事知ってるか…」
「知りたそうだぁな?」
何故こいつは分けて喋るんだ?能力のせいか?能力のせいなのか?
「魂って知ってるだぁな?」
「オラ達は元々一つの魂だぁよ」
「魂を分けただけだぁ」
「お手軽分身だぁよ」
「先に逝ったアレも一つだっただぁ」
「オメェはオラの魂の一部を永遠に奪っただぁ」
「許せないだ」
「許せないだぁ」
「許せないだぁよ」
「「「オメェを、絶対に許さないだぁよ」」」
もうツッコミは入れんぞ。鬱陶しい。
今の話を聞く限り、元々一つだった魂を分けた結果、信号機(とついでに緑)の鬼ができあがったと。
ってことは大元にもう一体鬼がいるってことか。厄介な。
大元の鬼が出てくる前に青鬼を片付けておきたいところだな。
出てこないなら、それに越したことはないけど。
「「「許さないだぁ」」」
「「「許せないだぁよ」」」
…ええい、騒がしい。早いとこ黙らせないと俺の気がおかしくなる。
永賀さんはよくもこんなに五月蝿いのを相手していたもんだ。本当に尊敬できるよ。
「年の……功…ガフッ!」
「頼むから安静にしていてください!?」
何故俺の考えていることがわかるんだ。何故その重症な体で無理して喋ろうとするんだ。何で親指立ててサムズアップしているんだ!?
……落ち着け。落ち着くんだ、俺!
ここは敵地。周りも囲まれている。敵は鬼。強い。遊んでいる場合じゃない。
幸い、ここは妖力の濃度が濃い。これを活用して鬼を一気に殺ってしまおう。
俺が内心でツッコミを入れたり、落ち着いたりしている間にもジリジリと詰め寄って来る鬼。全員が全員、同じように眼をギラつかせ、真っ直ぐと俺を睨み付けている。
今にも飛びかかって俺の身体を引きちぎってきそうな迫力だ。
…まあ、飛びかかってくる前に倒す積もりなのだが。
新しい技を思い付いたのだ。この状況だからこそ効果を発揮できる技を。
風を吹かそうではないか。
「何だぁ?」
「風だぁな?」
青鬼達が突然吹いてきた不自然な風に警戒したのか、足を止める。
先程までは無風だったのに、急に髪の毛が靡くような強い風ならば不審に思って当然だろう。
ましてやそれが…妖力の風ならば。
「もっと強く…もっと…もっと…」
妖力の風は俺と永賀さんを中心に同心円上に広がって吹いていく。
「妖力の風だぁ…!」
「強いだぁ!風当たりが強いだぁ!」
「社会からの風当たりも強いだぁ!」
やめんか、最後の発言。妖怪に社会なんてあるのかよ?
風は徐々に強くなり、鬼達も後ろにたじろいでいる。
「風が!風が痛いだぁ!」
「身体が千切れそうだぁよ!?」
「風を!風を止めるだぁ!止めてくれだぁ!」
「んだば、逃げた方が早いだぁよ!」
一体の鬼が、あの鬼が逃げようとすると、それに便乗するかのように他の鬼も俺に背を向けて逃げ出そうとする。
鬼なら正々堂々と勝負してくると思ったんだが…はて?
でも結局の所は、歯向かってくるにしろ、逃げるにしろ、全滅してもらう積もりなんだけどね。
「逃がさない…ハァッ!」
俺の叫び声と共に、一際強い風が吹く。
「お助けだぁ~!?」
「オラまだ死にたくな"い"た"あ"ッ!!」
「アーッ!!」
「や"め"て"く"れ"た"ぁ"!!」
風に吹かれた鬼は身体を痙攣させた後、パァン!という音を響き渡らせ、破裂してしまった。
風とは言ったものの、俺から見ると、気味の悪い紫色の壁が鬼を飲み込んだように見える。
この紫色が妖力であり、周囲にあった妖力を風として鬼にぶつけた結果、妖力の負荷に耐えれなかった鬼の身体が破裂した訳だ。
俺の能力で、思った以上に遠いところの妖力にも流れを作り出し、鬼にぶつけることができた。俺の能力の効果範囲は一体どれ程なのやら。
しかし、鬼がいなくなった途端に静かになったものである。静寂が心地よい。
妖力の風に吹かれて破裂した…というか消し飛んだのは鬼だけでなく、辺りに散らばっていた瓦礫や青鬼の死骸もであり、見通しがよくなっている。
しかし、鬼の断末魔が中々に気持ちよかった。
迫り来る死に、絶望したかのような、あの魂からの叫びは良かった。
おおう、ゾクゾクすんぜ。
…ていう冗談は置いといて。
さっさと永賀さんをロケットまで連れて帰らなきゃ。
「永賀さん、ちょっと失礼しますね」
「済まないね…ハジメ君…」
永賀さんを背中に背負い、スタコらさっさ~とロケットに向けて走る。
永賀さんは怪我人だから、走る際の振動がなるべく伝わらないようにしている。
永賀さんを背負って走るのは、中々に疲れるが、永賀さんに恩を返すためにもう一頑張りするぞ!と内心で気合いを入れ直して俺は走り続ける。
月はまだ、空で輝いている。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
最近走ってばっかりだ。少しは歩かせろ。
心の中で一人不満を呟く。
空気中に漂う妖力の中に、ポツリと感じ取れる霊力を目標に走っていた。あと少しで到着だ。
今のところ走っていても妖怪には遭遇していない。逃げたのだろうか。
それはともかく、永賀さんが随分と衰弱してきた。
あんなにも出血し、怪我を負って尚も生きているだけでも大した生命力だとは思っていたが、流石に治療も無しだと身体が持たないようだ。
永賀さんから感じる気が随分弱くなっている。
…ロケットに戻っても治療が間に合うだろうか。流石に時間の流れを巻き戻しても、失われた魂を戻すのは無理じゃないかな、と思うのだが…
「…お?」
あれこれ考えている内にどうやらロケットに到着した。
目の前にズシリと聳え立つ圧倒的な存在感。月の光に照らされて輝く、思っていたよりも縦にも横にも大きなボディ。俺の前世で建造途中だったスカイツリーとやらよりも高く造られているのではないだろうか。
それにしてもナイスボディ!
俺も小さい頃憧れを抱いていたロケットが今、目の前に…!
「さ、急いで治療しなくては」
小さい頃の俺の憧れ<永賀さんの命、なのである。人命救助が一番だ。命を大事に、なのだ。
ロケットの入り口らしき穴に俺が駆け込むと、穴は勝手に塞がった。
ロケットの内部は暗いんだな…と思っていると、明かりが点いた。どうやらここは通路のようだ。
「ハジメ!」
取り敢えず道なりに進んでいると、急に横から永琳さんの声が。
通路に声が反響して非常に耳が痛い。
声のした方を振り向けば、永琳さんの顔が。
…でも何で天井の穴から頭をひょっこりと出しているんだろう。
逆さまになっているせいで頭に血が昇っちゃうよ?
「えっと…何で逆さまなの?」
「ロケットの構造上仕方のないことなのよ…あ、梯子を降ろすから登ってきて頂戴」
俺の質問に遠い目をしながら答え、顔を穴に引っ込める永琳さん。
何故貴女が遠い目をするんだ。もしかして設計は永琳さんではない別の人がやったのだろうか。
流石の永琳さんも設計に手を回す時間がなかったのかな?
少し待っていると、天井から勢い良く鉄製の梯子が
ガッシャーン!とけたたましい音を通路に響かせ、俺はその反響で再び耳が痛くなる。更に頭まで痛くなった。
背中で生死の境をさ迷っている永賀さんが小さなうなり声を上げた。…きっと生死の境で言うと死に近づいてしまったに違いない。
頭の痛みに堪えつつ、梯子を登った先には当然ながら永琳さんの姿が。少し、少しだけ申し訳なさそうにしている。
いや、何で少しだけなんだよ。と無粋なツッコミは入れてはいけない。
「父上…いえ、今は治療が先決ね。ハジメ、私に着いてきて」
「はいはい」
己の感情よりも、優先すべき事を選ぶ事のできる永琳さんを俺は素直に凄いと思う。
俺なんて前世では
尊敬するよ。うん。
連れていかれた先は広い部屋で、多くの怪我人が床に敷いたタオルなどの上に横たわっている場所だった。怪我に程度の差はあれど、死に至りそうな怪我人は永賀さんの他にいなさそうだった事に安心する。
「ハジメ、父上をここへ…」
部屋の端っこに空いていた場所に永賀さんをゆっくりと横たえる。
「父上…この傷じゃあもう助からない…」
「いや、俺の能力でなんとかなるかもしれないから取り敢えず連れて帰ったんだけど?」
「本当なの!?」
永賀さんの状態を改めて見て、目に涙を浮かべる永琳さんに俺が連れて帰った理由を話すと、ガバッと俺の肩を掴んで前へ後ろへと揺さぶられた。ああ、目が回る。
「えい、りんひゃんおち、ふいて!」
(訳:永琳さん、落ち着いて!)
「あ…ごめんなさい…」
肩を離してもらえた。た、助かった…
永永琳さんは少し恥ずかしくなったようで顔がホンノリと赤い。
涙目気味なのもあって少し可愛いと思った俺は、状況的に不謹慎だろうか。
「ふぅ、えっとね。俺の能力って『流れを操る程度の能力』だから…」
「なるほど!時間の流れを戻すのね!」
えーいりーんさーん!最後まで!言わせてよッ!
今度は永琳さんが希望を持てたためか笑顔になった。
うん。人間は皆、笑顔が一番だよね。
「ただ、俺が気絶したら…その時はお世話をお願いできるかな?」
「構わないわ。むしろ父上の命が助かるならお安いご用ね」
俺の世話はお安いご用らしい。いや、表現なんだろうけど、文字通りの意味として受け取ったらそうなるよね。
「じゃあ、早速…」
「お願い…ハジメ。父上を助けて…」
いざやるとなると、不安になったらしい。急に永琳さんがしおらしくなる。
永琳さんの言葉に無言で、だけれども力強く頷き、意識を集中する。
体内のなけなしの霊力をかき集め、永賀さんの傷ひとつない姿を強くイメージする。
更には『時』という名の川の流れに逆らっていくイメージもする。
…意識が遠くなっていくが、イメージを崩さないように必死に耐える。
…
……
………………
【オメェは何で戦うだぁ!】
【勝ち目のない戦いだなんてぇ!】
【意味もないだぁよ!?】
暗くなっていく意識の中で、声が聞こえる。青鬼の声だろうか。
【私は!娘のために!命を挺して私達を助けてくれた少年のために!】
これは…永賀さんの声?
強い、とても強い意思のこもった声だ…
【君達は何故戦う!君達には戦う理由などないハズだ!】
【理由がないだぁ!?】
【ふざけるでねぇだ!】
【オラ達の同胞の命さ、奪ってぇ!】
【卑怯にも遠くから攻撃してきてぇ!】
【地上を好き勝手に荒らしてさぁ!】
【永遠に生きるだぁ!?】
【都合が良すぎるだぁよ!!】
ヒュッと風を切る音がして、数秒。大きな何かが倒れるような音も聞こえる。
【先に人類を攻撃したのは君達妖怪じゃないか!】
やはり…これは先程の戦いの様子のようだ。
俺の視界は真っ暗で何も見えないが、音から判断するとそうとしか思えない。
【全ての妖怪が同じだと思うじゃねぇだぁ!!】
【力ある者はぁ!周囲への被害を考えてぇ!!】
【その力を奮う事はないだぁ!】
【なのにぃオメェら人間はぁ!!!】
【クゥッ!何て力なんだッ!?】
永賀さんが押されている…?
鬼達にとってのこの戦いの意味は…復讐なのか…?
【オラ達はぁ!】
【オラはぁ!オメェらを許さないだぁ!】
【『分かれろ』だぁ!】
鬼の言葉と共に、風船が破裂するかのような音が聞こえた。
【アアァァァァァッ!!!】
…永賀さんの叫びと共に俺の意識が完全に闇に沈んでいく。
「ハジメ…ありがとう…」
深い…深い…底の見えない闇へと…
ハジメ「待て待て待て。まてぇーーーい!!」
どうしたんだよ、ハジメw
ハジメ「おい!これは俺どうなるんだよ!?て言うか!シリアス(モドキ)とコメディ(になっていない)がごちゃまぜぇい!」
ああ、それはご免なさい。特に読者様。ご免なさい!
少し時間も飛んでしまいます!申し訳ない!
ハジメ「えぇー…もうどうにでもなぁーれ☆」
ハジメが壊れた!?何で!?
えぇっと…ここで失礼しますッ!次回もお楽しみに!
ハジメ「アハハハ~、グーパン☆」
フベラァ!?