東方流生録   作:トロントロン

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3話

 良い匂いがしてきたので目を覚ました。

 布団をシワが残らないようにきれいに畳み、八意家からもらった服を着る。

 渡された服は平安時代の貴族が着ているようなもので、俺の記憶が確かなら『狩衣』というものだっただろうか。色は紫色で、無地だった。

 ズボンの代わりに渡されたのも『指貫』というもので、同じく平安時代の貴族が着るようなものだったはずだ。こちらは紅色をしている。ゴワゴワしていて、冬場は暖かそうだが、夏場は暑いだろうと思える。

 

 俺の記憶が確かなら、永賀さんはスーツを着ていた気がする。何故スーツのある家にこんな服があるのだろうか。

 しかし、貰えるものは貰っとくべきだろう。

 そう考えた俺は桜琳さんの朝食作りを手伝うべく、キッチンへ向かう。

 それにしてもこの服、とても歩き難い。

 

「おはようございます、桜琳さん。何か手伝えることはできますか?」

 

「おはようございます、ハジメさん。えっと、朝食ならもう作り終わりましたよ?」

 

 何てこったい。終わってたのか。

 俺は何一つこの人達に恩返ししてないや。

 

「まあまあ、取り敢えず朝食を取りましょう?」

 

「・・・はい」

 

 俺は肩を落としながら、食卓についたが、いい匂いのお蔭で直ぐに上機嫌となった。

 永賀さんと永琳さんも既に席についていた。どうやら俺は寝坊助さんだったようだ。

 

「おはようございます、お二人共」

 

「あら、おはよう。遅かったわね」

 

「おはよう、ハジメ。では、食べるとするか」

 

 全員でいただきますと言い、食べ始める。

 くそう、美味いぞ。俺も料理はできなくはないが、ここまで上手には作れない。

 

 軽く敗北感を味わいつつも、美味しい料理も味わった。

 悔しいんだけど、美味しい。何だろう、この複雑な感情。

 

 ご馳走さま、とまた全員で言って、食器などを片していく。

 あ、食洗機だ。すげー。俺の家にも欲しかった器具だ。毎回毎回、食事の度に皿を洗わなくていいから、ずっと欲しかったんだよね。金が無くて買えなかったけど。

 前世では夕食作って片付けするのは俺だったし。

 両親は昼頃に出勤して夜遅くに帰ってきてたからなぁ・・・

 取り敢えず、何が言いたいかって言うと、食洗機は偉大なのである。

 ジャスティスなのである。

 

「それでは、お世話になりました」

 

 食器などを片している間に、永賀さんは仕事に、永琳さんは研究所に行ってしまった。

 あれ?永琳さんは俺と同い年位って聞いていたんだけど、何故に研究所?

 

「もう少し泊まっていっても良かったのよ?」

 

 ただ一人桜琳さんが見送ってくれる。

 そう、俺はこの家から去っていくのだ。

 ただし、その理由は自分の能力の使い方を確認するためだったり、旅に出てみたかったから、というものだったりする。

 

「そういう訳にもいきませんから。では、さようなら」

 

「縁があったらまたお話しましょうね。さようなら~」

 

 八意家をでた俺は暫く町をうろうろしていた。

 始めて八意家で目を覚ましたときは中世ヨーロッパみたいな家だと思っていたけど、思っていた以上に近代的な町並みだった。

 電気も通っていて、食洗機もあるしな。何故か暖房器具はなくて、暖炉だったが。

 

 うろうろしている内に気がついたら町の端っこまで来ていた。

 ちょうどいいので町を出ることにする。手ぶらで。

 

 町を出た先は鬱蒼とした森だった。

 木下まで日の光が届いておらず、俺の歩くところは暗い。

 何かの拍子に躓いて、スッテンコロリンと転ぶのは嫌なので、能力の練習をすることにした。

 

 太陽から出る光の流れを意識してみる。

 その意識してみた流れを俺の元まで引っ張っていく。簡単なことだ。光の流れの一部をこちらに流すだけなのだ。

 少し気だるくなったものの成功したようで、先程とは違い、俺の周りだけ明るくなっている。

 今度はその流れを薄く、森全体に引き伸ばすようなイメージをすると、一気に視界が開けた。

 

 中々使い勝手の良い能力だな。上手く使えば何でもできそうだ。

 お、猪発見。もう一度能力の練習をするか。

 少しエグいことになりそうだな。

 

 猪の体内を流れる血管を意識する。その流れの向きを一ヶ所だけ変える。それも体外に向けてだ。

 猪の血管が破裂し、血の圧力に耐えられなくなった皮膚から血がピューッと流れ出る。ションベン小僧でも見ているような気分だ。

 猪はと言うと、鳴き声を上げて、少しヨロヨロと歩いた後にバタリと倒れて動かなくなってしまった。根性なしめ。

 俺は倒れた猪に近づき、血の流れが止まっているのを確認する。

 能力の練習もでき、食材の血抜きも完了。一石二鳥だね!

 いやぁー、良い仕事をしたよ。

 

 さて、後はよく燃えそうな落ち葉や木材を集めて適当に広いところを探すか。

 全ては俺のため、飯のため。行動開始!

 

 ・・・なんて事をしてから約一時間は経っただろうか。

 日は落ち始めて、辺りを橙色に染め始めた。

 カラスがカアカア鳴いたり、アーホーとか鳴いていて、ボッチの俺を笑っているように聞こえる。

 

「アーホー、アーホー」

「カァカァカァ!」

 

 先程から二羽のカラスがずっと俺の方を見ながら鳴いているのだ。俺も泣きたい。

 

「「アーホー、アーホー」」

 

 二羽とも同時にアーホーと鳴き始めた上に、片方の羽を俺の方に向けている。完全にバカにされている気がする。

 確かに俺はバカだ。残念な子だ。でも、事実をそんなに連呼されるとムカつくので、こんlカラスを追い払うことにする。

 

「ギャアギャア!?」

「アホー、アホー!?」

 

 カラスの周りの風の流れを操ってみた。ただ単に暴風を巻き起こしただけなのだが、カラスは驚いて逃げていった。ざまあみろ。

 ・・・何で俺はカラス如きにムキになっているのだろう。ああ、飯がまだだったからか。

 

 今はまだ料理中なんだよな。その名も猪の丸焼き。日の光のエネルギーの流れを一ヶ所に集めて、落ち葉に火を付けただけだ。

 飛び火の心配もない。広いところでやっているからな!俺に抜かりはない。

 

 ・・・一人でやると、寂しいな。

 俺はそう感じながらも、良い匂いのしてきた猪の丸焼きを回収して、かぶりついた。

 胡椒が欲しいな。八意家に残っとけばよかった。何で出てきたんだろ、俺。

 

 食事を終えた俺は、適当にぶらぶらしていて、偶々見つけた洞窟で一夜を過ごした。

 固い地面に雑魚寝をしたため、翌朝は体を痛めた。

 くそう、カラスが正しいことの証明になっているではないか。




誤字とかあったら、教えてくださいね。その都度直しますので。
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