「いや、お前らが逝くのは町じゃなくて地獄だぜ?」
俺は疲れた顔をしているリーダー格の妖怪に『霊力カッター』を放つ。
これで死んでくれると楽なのだが…
「おっと、アブねえな。さっきは油断していたからアッサリやられたが、今度はそうそうやられないぜ?」
リーダー格の妖怪……ああもうめんどくせえ。略してリーダー格でいいや。
リーダー格は難なく『霊力カッター』を避けて、俺に挑発的な笑みを向けてくる。
(精神的に)疲れた顔をしていても、そこは腐ってもリーダー格。なんとか避けることはできるらしい。
…なんだか「お前の攻撃はもう見切ったぜ?ハッハッハ」って言われているような気がしてムカつくな。
今ふっと閃いた技の実験台になってもらおうか。拒否権はない。
「じゃあさ…」
「何だよ?」
俺が手を開いたまま向けると、リーダー格は『霊力カッター』を警戒してか、体を低くして、何時でも回避できるような姿勢を取った。
この実験がうまくいけば、回避できるような姿勢を取っても、意味などないのだがな。
「『避けれなくなる』っていうのはどうだい?」
「!?」
俺が開いたままの手をぎゅっと握りしめると、リーダー格がピタリと動かなくなった。
瞬きすらせずにその場で銅像のように硬直している。
俺はそのリーダー格にゆっくりと近づいていく。
周囲の妖怪は俺とリーダー格から距離を取って、こちらの様子を窺っている。
これは怖いもの見たさというべきか、好奇心が強いというべきか、はたまたその両方か…
俺はリーダー格の顔を覗きこむ。
「ねえ、今どんな気持ち?油断していないなら簡単にはやられないんでしょ?ねえ、どうなの?動けなくなってどんな気分?こんなにウザったく話しかけられてさ、他の妖怪も見ているだけで助けにこようともしないしさ、何も喋れなくなっちゃってさ!ねえ?ムカつく?俺を殺したい?ああ、今は喋れないんだった!ゴメンゴメン、忘れてたよ!でも喋れても動けないからどうせ俺を殺せないよね!まあ、そもそも動けても俺を殺すなんてお前のような実力じゃあ無理だろうし?この状況から脱するのも不可能だろうし?この後俺に殺されて人生終了だね!ああ、可哀想に、可哀想に!じゃ、死んで?」
俺は飽きるまで長々とできるだけウザったく喋り続け、最後に『霊力カッター』でリーダー格の首を切り落とした。
こんなに長々と喋ったのは時間稼ぎというのもあるが、ただ単に自分がやってみたかっただけというのもある。というかそれが理由の内の9割を占めていたりする。
やってみた感想としては、疲れるし、めんどくさかった。
でも結構楽しめたので、機械があればまたやろうと思う。
ちなみにリーダー格が動けなくなったのは、当たり前だが俺が能力を使ったせいだ。
生物が体を動かすには脳が出す電波を筋肉と繋がった神経が受けとる必要がある………ハズ、なのだが、俺がその電波の流れを止めたのだ。
すると当然リーダー格の筋肉が脳からの指示を受け取れなくなり、動けなくというわけだ。
…アレ?これってやられたら一貫の終わりじゃね?最強じゃね?
ワアオ。チートだ!
「さて、リーダー格は死んだね。次は誰が死ぬ番かな?ほら、遠慮なんて要らないよ」
俺が能力を使ってもいないのに動かない周囲の妖怪達に一歩踏み出す。
俺が一歩踏み出すのを見た周囲の妖怪は一歩後ろに下がる。
また俺が一歩踏み出す。
周囲の妖怪は一歩下がる。
…なんか虐められているような気分になってきた。
酷いや。俺はなにもしていないのに(大嘘)。
許せん!こんなにも優しい俺から距離を取ってボッチにする状況を作り出して表面上は俺に殺される恐怖を見せながらも心では「こいつボッチだぜwww」みたいに嘲笑っているんだ!(実際には妖怪達は怯えています)
絶対に許さんぞぉ!
「えー。お前らが逃げるんだったら、俺から攻撃しちゃ……ん?」
いざ、血祭りじゃあ!ヒャッハー!ってやろうとしたら、俺の後ろの方…つまりは町の方からゴゴゴゴゴ!と大きな音が発生して、台詞を途中で止められた。せめて最後まで言わせてほしかった。ちくせう。
で、俺の台詞を途中で止めた大きな音の発生源は何だろうと思って振り替えると、高層ビルっぽい建物が音を発てて崩れていくところが見えた。
「え……え?何事?」
まさかまさか建物が崩れるなんて思わなかったいやもうほんとビックリしたよなんで倒壊したんだよ普通ならここは町の一般人を乗せたロケットが無事に月に向かって出発する場面だろなんか期待を裏切られたような気がするよいやいやでもこの町は広いからその分町に住んでいる一般人も多い訳で結果的にいくら永賀さん達が避難のための指示を出したりしているとはいえ一般人の避難が遅れるのも当然だけどやっぱりなんであの建物が倒壊するんだよどこにそんなフラグがあったんだよなにメタな発言しちゃってるんだよ俺はというかなんでこんなに長々と考え事しているんだよ俺そもそも句読点付けようぜ俺
………落ち着け、俺。
まずはこのビクビクと震えている妖怪達から事情聴取(物理、脅迫、強制、etc…)からだ。
いきなり建物が倒壊するなんて普通ならあり得ないからな。妖怪を疑うのが自然じゃないかな?
「おい、そこの木陰で気配を消そうとしているけど消せてない上に、頭は隠せていても尻を隠せていない典型的な殺され役っぽい妖怪。俺の質問に答えろ」
「かなり具体的に指名された!?分かった!質問に答えるから、その物騒な霊力の刃w「霊力カッターだ」霊力のやいb「霊力カッターだ」……霊力カッターを消してください!?」
物分かりの悪い妖怪め。なぜ俺の素晴らしい命名を無視しようとするのだ。
いや、待てよ…?妖怪だから人間である俺との価値観が違うせいで、俺の命名の素晴らしさを理解できないのかも…
哀れなものだな!ハハッ!
「お前はここにいる妖怪だけが町を目指していると思っているんじゃないか?俺たち妖怪はもっとたくさん存在しているんだぜ?今頃は別動隊が町に着いて、人間を喰ったり、ロケットを破壊しようとしているんじゃねかな!」
人間を、喰う、か。
「……そうか、分かった。」
俺は礼を述べた後、今話していた妖怪を含めた、生き残っている周囲の妖怪の気の流れを止めた。
すると、気の流れを止められた妖怪達はウッと小さく呻いた後、倒れた。
この場で立っているのは俺だけとなり、他に生きていた者は『霊力カッター』で体を真っ二つに斬られたか、気の流れを止められて活力を完全に失った妖怪達の死体が転がっているだけとなった。
そもそも、俺が妖怪達の気の流れを止めたのは、派手に動き回って、妖怪達を『霊力カッター』で殺して回るのがめんどくさくなったからだ。動きたくないでござる。
そして、殺害の手段を気の流れを止めることとしたのは、気の流れを止めることによって、体から活力や生命力が失われるからだ。気とは生命力とも言えるからな。
生命力がなくなって、活力も失った。それによって生命活動が止まり、死に至ったという訳だ。
俺はその場から動いていないし、『霊力カッター』のように血で周囲が汚れることもないから、その点では楽だといえる。
欠点を挙げるとすれば、能力を使用するに当たって、霊力の消費が多くなることぐらいだろうか。
俺の保有霊力量は多めなので基本的には問題にならないが、今回は殺す対象の数が多かったので、かなりの霊力を一度に消費してたため、少しクラッとしていたりする。
あくまでも"少し"だけなので町に戻って別動隊の妖怪と殺り合っても大丈夫だろう。多分。きっと。そうだったらいいな。
まあ、気持ちの問題なので、大丈夫だろうと信じていこう。
ところで、暇だったときに計測してみたのだが、ここから町まで身体強化なしで歩いて行って約25分。身体強化ありで約15分かかった。距離としては大体2キロ程だ。個人的には散歩に丁度いい距離だと思う。
さて、世のため人のため。月に移住する一般人や、それらを頑張って誘導している永賀さん達のためにも、約15分の記録を大きく塗り替えてみせなくてはな。目指せ、10分代だ。
霊力が少なくなっても気合いで頑張ればなんとかなる…ハズ。
俺は能力を使って、気の流れを活性化させなくても、ある程度自力で気を全身に巡らせられるので、霊力を後にあるであろう妖怪との戦いに備えて温存するべく、なんとか全身に気を巡らせた。
能力を使ったとき程ではないにしろ、体の底から沸き上がってくる活力を確認した俺は、町の方へと矢のごとく駆け出した。
俺の戦いはこれからだ!
遅くなって申し訳ない。
文字数少なくてゴメンね。