テフラdeダンジョン   作:唯のかえる

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生贄ダンジョン麓5F

作者がサブタイをミスっていたので、前話の後書きに色々と実階数等の追記をおこなっておきました。
申し訳ないです。


生贄ダンジョン麓2

 

 悪役魔法使いのような風貌をした長杖持ちモンスターが小部屋に控えている。それを壁床のテクスチャが完全な岩場となった狭い通路から、テフラとハピネスが覗き込む。

 

「ところで少年、あいつの名前はなんていうんだい?」

「え?」

 

 小首をかしげるハピネス。

 まじまじとテフラが部屋の中にいるモンスターを見て……。

 

「知らないけど……。悪い魔法使いっぽいし、『ワル魔導』とかでいいんじゃない?」

 

 ドヤ顔で言った。めっちゃ分かりやすくていい名前! とか思ってそうな表情だ。

 その視線からそっと目を逸らして、ハピネスが小声で呟いた。

 と言っても耳元なので聞こえるのだが。

 

「……少年、ネーミングセンスが。もしかして少年が言ってた弓猿人も……?」

「それも俺が考えたけどよ……! じゃあハピネスは何かないのかよ!」

「ふむ、そうだね『イービルマジ「よし『ワル魔導』に決定! いくぞ!」あ、ちょっと少年!」

 

 長くなりそうだと思ってテフラは言葉を遮る。

 盾と斧を構えたテフラは、勢いよく狭い通路から飛び出しワル魔導へと向かっていく。

 

 ステップを踏むように、左右斜めにフェイントをかけながら前へと進んでいく! 

 

 飛び出してきたテフラに気がついたワル魔導は、咄嗟に長杖を振る。

 振るった長杖の先が輝き、何か不思議な効果を持った光が飛び出した。

 

 杖から飛び出た光は、まるで弓矢と同じような速度。

 普通であれば避けられない。

 だが、前もって来ることが分かっているのであれば、狙いをつけられる前に動いて撹乱できる速度であった。

 テフラは杖が向いた方向の逆へステップを踏んで、飛んでくる光を見事に躱していく。

 

 この生贄ダンジョンで経験したことを生かす。

 彼は前の階層でスラットの群れが、テフラの振るった『稲妻ワンド』の光を避けていたことを思い出したのだ。

 

 徐々に距離が詰まっていく。

 あと数歩。

 ワル魔導の持つ杖がどんな効果かわからないが当たらなければ効果を発揮することはない。

 そう思ってテフラは、ニヤリと笑って大きく手斧を振り上げた。

 それに慌てたワル魔導は、杖の光を放つのではなく杖で攻撃を仕掛けてくる。

 

 手斧と長杖が交差する。

 そして、次に驚くのはテフラの番だった。

 

「なん、ッ!?」

「キキッ!」

「少年危な、きゃっ!?」

 

 斧刃の一撃が、長杖をスルリと滑る。

 上から勢いよく振るった手斧マスターキーが逸らされた。

 ある程度力任せとはいえ、テフラの日頃の鍛錬の成果が出ている攻撃だ。

 それが簡単に受け流された。

 

 このモンスター、不思議な杖の一つ覚えじゃないのか!? 

 杖の扱いが巧い! テフラが驚愕しながら目を見開く。

 

 手に帰ってくる反動を計算に入れて、強めの攻撃をしていたテフラの体勢がわずかに崩れる。

 

 それを見逃さずワル魔導は口元を歪めて笑い、更なる攻撃を仕掛けてくる。

 器用に長杖を操り、杖先をテフラの胸元に打ち込む! 

 

 衝撃、痛み。

 盾が間に合わなかった。痛みにテフラが仰反る。

 

 仰反るテフラの鼻先。

 そこでワル魔導が流れるように構えた長杖の杖先が、一段と輝く。

 

 やばい、という思考に頭が埋め尽くされそうになる。

 が、一瞬息を思いっきり吸い込み、ジリッと力強く地面を踏ん張る! 

 

 ワル魔導を睨みつけるテフラの思考が加速する。

 

 ────ダメだ、この一撃は食らう。

 

 ()()()()()()()()

 

 杖の先から光が迸った。

 テフラに当たる。

 

 ────()()()()()()()()

 眼前からワル魔導の姿が掻き消える。

 

「──ぉおおおおおお!!」

 

 覚えがあった。

 その視界の移動には馴染みがあった! 

 どんな不思議な効果が待っていようが、知っていれば対応できる効果だ! 

 回転切りを放つように、()()()に向かって痛烈な一撃をテフラが放った!! 

 

「ぎっ!?」

 

 先ほどの光。

 それは『場所がえワンド』で見て感じたことのある効果だった。

 つまり、敵は先ほどのテフラと場所が入れ替わっているはずだ!

 

 振るった武器に、強い反動が帰ってくる。

 予測通り手斧マスターキーの斧刃が、ワル魔導の肉体を痛烈に打ち据えた! 

 

「まだだぜ!」

 

 ワル魔導に当たった手斧マスターキーを、そのまま接近するように前へと刃先で突く!

 長杖を使って距離を稼ごうとしているのが見えるが、この距離の取り回しなら手斧の方が遥かに強い。

 襤褸フードから驚愕の視線を感じる。

 

 テフラは応じるようにニヤリと笑い、ワル魔導の襤褸ローブの胸元を握り込み、引き寄せながらインファイトを仕掛ける。

 

 引き寄せながら、覗く青い鷲鼻に向けて痛烈な頭突き!

 その後、力強く足を蹴り払い、ワル魔導の体勢を崩す。

 そして。

 

 無防備になった胴体に痛烈な斧の一撃を食らわせ続ける! 

 

 その場に残ったのは。

 ふぅふぅ、と息を荒らげ斧を振るった獣じみたテフラと。

 必死でマフラーにしがみついていたハピネスであった。

 

「よし、倒し方がわかったな!」

「……少年、その。戦うのって怖いね」

「……すまん、それだけは我慢してくれ」

「うん……」

 

 モンスターとインファイトとなると、親玉ファットラット戦では大丈夫だったハピネスでも恐ろしく感じてしまったそうだ。

 でもモンスターと戦う以上仕方がないと、半ば諦めの境地である。

 遠い目をして、マフラーの中でそっと息を吐くのだった。

 

 

 ◇

 

 

『魔法の地図』を開く。

 どうやら、近くに宝があるようだ。

 青い光点が、今ワル魔導と戦ったばかりの小部屋の横の部屋にある。

 テフラ達はそちらへと移動していく。

 

「少年、宝箱じゃないかい! ふふふ、この間は呪われたアイテムだったけれど、やっぱりダンジョンといえば宝だよね少年! ダンジョンショップにあったみたいなものすっごいアイテムも手に入るかもしれないよ!」

「おう、そうだな。……そうなんだけどな?」

「うん? 何かあったのかい少年?」

 

 苦い顔をしてテフラが思い出すのはミミックである。

 開けようとして襲われるのは、勘弁願いたいテフラはハピネスにそれを伝えた。

 するとハピネスは、もっともらしく頷き告げる。

 

「少年、開ける前に叩き割ればいいじゃないか。宝ならアイテムがドロップして、ミミックなら武器が育つ! 一石二鳥だよ少年!」

「……お前、天才かよ! わかった!」

 

 宝箱とはちゃんと開けるものとしての認識を持っていたテフラの目から鱗が落ちる。

 

「いや、少年が考えそうなことを言っただけなんだけどね。まぁ叩き割るのも宝箱の開封と変わらないだろうし……」

 

 ハピネスは遠い目をしてそう呟く。

 テフラもハピネスから学ぶことが多いようだが、ハピネスもテフラから何かを学び取っているようだ。それが良い事かは置いておいて、良い関係になってきていることは確かだった。

 

 その後『魔法の地図』を敵情報に変え、二人はその小部屋に向かっていく。

 地図上に映る赤い光点を見ながら、ハピネスがつぶやいた。

 

「少年、この階層からは敵が本当に一新されている。上の階層ではまだ弓猿人やファットラット系の敵がいたけれど、本当にガラリと変わっているんだ。一応私も見ていたことがある場所だから、知っている敵も多いと思うけれど…………『アイツ』がダンジョンをいじれるみたいだから余計な情報は出さないでおくよ」

「おう、そうだな。……ま、何が出てきても全部ぶっ飛ばすだけだぜ!」

「ウゥーン、少年がそれでいいならいいんだけど……。見るからにヤバそうなのは避けようね」

 

 おう! と返事はよくテフラがハピネスに頷く。

 頭の上からハピネスはまぁなんとかなるかと前向きに考えるのだった。

 

 そして、しばらく進み。

 

「どっこいしょー!」

「ギィっ!?」

「ミミックだったね少年……。おや、なにか落としたみたいだよ少年!」

 

 敵のいなかった小部屋に鎮座していたミミックを、後ろに回り込んだテフラが自慢の手斧で真っ二つに唐竹割りする。

 その躊躇いなく斧を振るう様子を見ていたハピネスは、完全に擬態しているせいで、後ろに回り込まれてもピクリとも動かなかったミミックを僅かに哀れに思う。

 

 ミミックがダンジョンに食われていき、村でもよく見ていた不思議なアイテムが落ちた。

 

 まだ生贄ダンジョンで一日しか経っていないとはいえ、少し懐かしそうにテフラはソレを拾い上げた。

 ハピネスが不思議そうに首を傾げ、そのテフラの手の中で揺れる緑色の炎を内包する洋燈を眺めている。

 

「『帰還の洋燈』か」

「少年わかっているだろうけど……」

「おう、あの『休憩階層』に戻るんだろ? ま、使いすぎると食料がなくなって詰みそうだからな……。ここぞって時にとっておこう」

「それがいいね!」

 

 テフラは拾った『帰還の洋燈』を腰につけたカラビナ部分に引っ掛けて、不思議な杖と干渉しないような場所かどうかを数回確かめて頷く。

 腰の回復剤等の入った鞄や食品多めの肩掛け鞄も含めて、アイテムが多くなってきたなと少しだけ考えるが、全て必要なものだ。

 

「……たくさん入る鞄があればなぁ」

「そううまくはいかないさ、少年。いざとなったら何かを捨てて、新しいアイテムと入れ替えることも必要になって来るかもね!」

「うーん、贅沢な悩みになりそうだ」

 

 沢のほとりダンジョンで、ラカブが見つけたような見た目よりもアイテムが入る鞄が手に入ればなぁと、少しだけ欲を出すテフラ。

 まぁないものはないのでしょうがないとため息をついて、顔を上げた。

 

 そして再び、階段探しと倒すべき新たな敵を求めて『魔法の地図』を開いて、ダンジョンを歩き出すのだった。

 

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