テフラdeダンジョン   作:唯のかえる

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生贄ダンジョン6F〜7F


生贄ダンジョン麓8

 

『トゲトゲシールド』を『換金の鞄』に押し込んで、それなりのdcを手に入れたテフラは、『魔法の地図』に示された別なアイテムの場所に向かっていく。

 

 先ほどの宝箱が、普通の宝箱であった以上、今回の宝箱はミミックであろう。

 と言っても、もはや処理は手慣れたもので。

 

「どっこいしょ〜!」

 

 背後に回って、一瞬で方がつくようになってしまった。こうなってしまったら、ミミックといえどもただの宝箱と同じだ。

 憐れみを持った目つきでダンジョンに食われていくミミックを眺めながら、ハピネスが小さな声でぼやく。

 

「うーん、毎度おなじみの光景になってしまったね少年。一階層、二階層での強敵具合を忘れそうになるよ」

「まぁ楽に倒せる倒し方があるなら、やったほうがいいだろ?」

 

 テフラも、一階層で口に手を突っ込んででも攻撃を防いだことを思い出したのか、少しだけ気まずそうな表情だ。

 と言っても直ぐに首を振って、考えないようにした。

 目下の問題は、このミミックが何をドロップしてくれるかだ。

 

 今までミミックを倒した時にはアイテムを何か確定ドロップしていたので、テフラとハピネスはダンジョンに食われていく様子をドキドキしながら待つのだった。

 

 ちゃり……。

 今まで聞き覚えのない音。

 

「む、少年」

「……これはまた、どうするかなぁ」

 

 テフラとハピネスは目を瞬いて、地面に落ちた太陽を象る首飾りを眺めてから、お互いの顔を見合わせるのだった。

 

 

 ◇

 

 

 テフラは唸っていた。

 とっくの昔にこの階層の探索は終わり、階段を見つけていた。

 

 その階段の前で、腕を組んで顎に手を当てて、手にある『太陽のペンダント』を付けるか付けまいかを悩んでいるのだ。

 

 ハピネスも頭を悩ませていた。

 ムムム、と思考しているような独り言が漏れている。

 そして、大きくため息。

 

「はぁ、だめだ少年。私の記憶の中でも、こんな首飾りを手に入れてる人物はいなかったよ」

「ダンジョンで手に入るアクセサリーは数が膨大って教えてもらったことあるからなぁ。仕方ねぇよ」

 

 ダンジョン内で手に入る不思議な道具、アクセサリーの類。

 武器や盾などとは違った細かな装備類。靴や腕輪、ネックレスにその他諸々。

 それらの数はあまりにも膨大だ。

 ニシキ村にいるカイズミ爺さんのような様々なアイテムを見てきた人間であれば、模している形から何らかの効果が読み取れるのだが……。

 

「太陽か。うーん、あまり悪いイメージはないから、装備しても平気か?」

「少年、待ちたまえ。それをつけたら、まるで天日に常に晒されているような暑さに襲われるかもしれないよ。もしかしたら『手錠の腕輪』のように呪われていて外せなくなる可能性だって……」 

「うっ……。それを言われちまったらなぁ」

 

 厳しいハピネスの指摘に、テフラは『太陽のペンダント』を着けようとした動きを止める。

 流石にこの階層で『換金の鞄』に『帰還の洋燈』を突っ込んだせいで、効果のわからないアイテムに対して及び腰になっているテフラなのだった。

 

「……換金しておくか?」

「もしくは、また『識別の本』が手に入るまで持っておくかだね。幸いなことに、それは小さいから場所を取らないし……。鞄で換金せずに、君の大好きな店主さんに買い取って貰えばいいじゃないか」

「なっ!? べ、別に好きとかそんなんじゃないって……!」

「ふーーーん?」

 

 何だよその微笑ましいものを見る目は……! と思ったりするが、テフラは口に出さない。

 どうせ言い負かされるのが目に見えてるからだ。

 どちらかといえば、テフラ的にはあの階段で鏡に映った女性の方が……。

 

 ふと、思い出して成長した『鏡面の盾』を眺める。

 あれは本当に、自分の気のせいだったのだろうか。

 考えるあまり無言になったテフラに、からかったハピネスが慌てる。

 

「……」

「しょ、少年? からかいすぎてしまったかい? その、気を悪くしたなら悪かったよ」

「……おう、わかればいいんだ。あまり得意な話題じゃないんだよ。とりあえず、話を戻そうぜ」

「うん、わかったよ少年」

 

 眺めた『鏡面の盾』には何も映らなかった。

 首を振ってハピネスのからかいを躱して、本来の悩みである『太陽のペンダント』の処遇を考える。

 

 ちゃり、と細かな金の鎖で繋がれ、美しい宝石と金属で象られた黄金の太陽。

 自分は、よほど黄金と縁があるのだろうか? しかも悪縁で。

 いつかの『黄金の罠』や、先ほどの『換金の鞄』を思い出してテフラはゲンナリする。

 

「よし、とりあえず取っとくぜ。『換金の鞄』を壊して次に進もう」

「少年一応だけど、壊しても本当に中のdcが出てくるとも限らないからね。期待しすぎないように」

「……そういえば、まだこれも謎に包まれた鞄だったんだっけ」

 

 ゲゲッとなおさら顔を顰めたテフラは、地面に『換金の鞄』を置いて手斧マスターキーを振り上げるのだった。

 

 

 ◇

 

 

 先ほどと打って変わったほくほく顔で、テフラとハピネスは階段を降りていく。

 チャリ、と鞄の中にしまったウサちゃんガマグチもご機嫌な様子に見える。

 

「よかったね、少年」

「ん? おう! 次の階で『ダンジョンショップ』があれば、店主に『識別の本』が売ってるか聞かないとな。……でも店主に鑑定してもらうのとどっちが安いんだ?」

「それは……聞いてみれば? そもそも鑑定して貰えるのかい?」

「金さえ払えば、なんでも分かりそうな気もするけどな……。それに今は、なかなかの金持ちだからな!」

 

 現在のウサちゃんガマグチの中には、大量のdcが入っていた。

『換金の鞄』は、テフラの斧の一撃によりビリビリと裂けて、ダンジョンに食われていった。

 そして、残ったのは大量のdcの山。

 それは『手錠の腕輪』を売った後に見せてもらったテーブルの上に積もるdcと同じくらいの量であった。

 

 そんな会話をしながら、二人は次の階層に降り立つ。

 当然、浮かれた会話であるが決して油断をしていない。

 

 前回、降りたところをナニモノに強襲され、そしてさらに前に鳥籠のようなモンスターに襲われているのを覚えているのだ。

 

『魔法の地図』をすぐさま取り出し、すぐに周囲を警戒する。

『魔法の地図』さえあれば、姿の見えないナニモノですら居場所を特定することができるのだ。

 その『魔法の地図』が一番の自衛方法なのだから、ソレを真っ先に確認して、信頼するのは当然であった。

 

「割と近いところに敵がいるな」

「うん、気をつけてね少年」

 

 そういって『魔法の地図』を注視しながら、テフラは一歩踏み出す。

 だから。

 

 ────地図に映らないモノの存在を、少しだけ意識から逸らしてしまう。

 

 カチッ。

 

「まっ、ず」

「少年!?」

「大丈夫だ!」

 

 テフラの足元で何かが蠢く。

 それは大きく広がるように、テフラに襲いかかり……手斧マスターキーと『鏡面の盾』を弾き飛ばした。

 装備外しの罠と呼ばれる、嫌がらせの罠。

 

 思わず弾き飛ばされた装備に動揺し、安堵。

 よかった、致命的な罠ではなかった。

 そう思って飛ばされた武器を回収するために駆け寄る。

『魔法の地図』が示すところでは、敵がすぐ近くまで近寄ってきている。

 急がなくては! そう思って気が急く。

 

 そうして踏み込んだ先。

 カチッ。

 

「嘘だろ!? ぅぉ……」

「少年!! ここは、二階層と……zzz」

 

 プシュ!! っと真っ白い煙がテフラの足元から噴き上がり、睡眠効果のある不思議なガスをテフラとハピネスを包み込んだ。

 煙が晴れた時。

 地面に座りこむようにして、意識を朦朧とつなぐテフラの姿があった。

『睡眠トラップ』だ。

 

 必死で目開こうと、ピクリピクリと痙攣するように瞼が動いて、睡魔と闘っているのが見てとれる。頼みのハピネスはマフラーの中で、すやすやと睡眠に入ってしまっている。

 

 ──タタタ。

 テフラの今にも落ちそうな意識の中、小走り気味の足音が聞こえる。

 歯を食いしばって、落ちそうな意識を耐え続ける。

 

 思考、思考思考。

 睡眠トラップは、昏睡とまではいかない。村で習ったことを思い出す。

 

 敵の攻撃の痛みで、この頭にかかったモヤのような睡魔はどこかにいくはずだ。

 大丈夫だ。

 モンスターが現れれば、攻撃をしてくるはずだ。

 その一撃を耐えて、痛みで覚醒して、そいつを『鈍足ワンド』で……。

 

 うつら、うつら。

 テフラの霞む視界に、二足歩行の猫のようなモンスターが見える。

 緑色の生地に白い唐草模様の風呂敷で、顔を隠すような頬被りをしたモンスターだった。

 そいつが素早い速度で、地面に座り込んだテフラに向かってきて……。

 

 テフラは、歯を食いしばる。

 ハピネスを守れるのは自分しかいないのだと、友達の命を預かっているのだと気合を入れて敵の攻撃を待った。

 

 しかし。

 

「にゃにゃっ!」

「……?」

 

 現れた猫のようなモンスターは眠りかけたテフラの懐を漁ると、そそくさと何かを盗み出し、天井へと大きく跳躍して消えていった。

 そこで睡魔に抗えきれなかったテフラの意識が、頭の中で大量の疑問符を浮かべながらブツリと途切れる。

 

 しばらくして。 

 

 先に起きたハピネスに、必死に起こされるテフラ。

 眠っている間、なんとか他の敵に襲われずに済んだようだ。

 

 目を覚ますと先ほどの小部屋で手斧マスターキーと『鏡面の盾』がそのまま地面に転がっているのが視界に入ってくる。

 足元には作動を終えた『睡眠トラップ』と『装備外しの罠』が存在を主張している。同じ場所を踏めば、もう一度作動してしまうから慎重に離れて、足元に細心の注意を払いながらすぐに装備を回収する。

 

 そして回収した手斧と盾を装備し直すと、焦るテフラは先ほどの泥棒猫モンスター『シーフキャット』が、懐から何を盗み出したのかをすぐに確認した。

 

「……くそ、『魔法の地図』がない!」

 

 無い。

 先ほど、魔除け紋のカーディガンの裏に仕舞った『魔法の地図』がどこにも見当たらない。

 

「なんだって!? そんなモンスター、見た覚えがないのに……!」

「……『王様』が仕掛けてきたな。どうやら、相当邪魔だったらしいぜ」

 

 テフラが天井を睨みつけて、歯を食いしばる。

 何者かが、その様子を見て嘲笑っているような気がして……テフラは大きく深呼吸。そして憎たらしげに口角を吊り上げて笑ってやった。

 

 ──絶対に負けねぇ。

 

 そう思って、逆に燃え上がる。

 そんな奮起するテフラに、ハピネスが冷静な様子で声を掛けた。

 

「少年、聞いたことがある。アイテムを盗む敵、それはアイテムを盗んだ後にその階層の中を逃げ回るらしい。ただし……」

「おう、時間制限だな。『掃除人』がくる前にそいつをとっ捕まえないといけないわけだ」

 

 モンスターにアイテムを奪われたことへの対策、取り返し手段をハピネスが告げる。

 幸いなことに、睡眠トラップの持続時間は短かったようだ。

 この階層には降りてきたばかりで、天井はまだまだ明るいままだ。『魔法の地図』を盗んだシーフキャットを見つけ出す時間は十分にある! 

 ハピネスも、テフラの肩でムンと翼を膨らませて気合を入れる。

 

「なんだ、わかっているじゃないか少年!」

「そりゃそうだ。なんたって俺は────」

 

 それを聞くと、ハピネスをマフラーに押し込んで、テフラは武器を構えた。

 ペタペタ。

 上の階層で聞き慣れた、ナニモノの足音。

 

「────ニシキ村の森番の倅、テフラだぜ!!」

 

 そうだろ? 

『魔法の地図』を前提にダンジョンに潜っていたのはここが初めてなんだ。

 

 脳裏にラカブやマクキタラやリーブ。

 たくさんのことを教えてくれた村の衆のことを考えて、村で学んだことを思い出す。

 

 だから、大丈夫。

 

 テフラは不敵に笑って、『鏡面の鏡』に映るナニモノへと襲いかかるのだった。

 




本当はいただきキャットにしたかったんですが、なんかすっごく聞き覚えがあって……。

  \\\\ ダイヤモンドくれないかニャ! ////

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