「あ、こら。ダメだよ、リッくん。トイレに行くときはわたしを呼んでって言ったでしょ?」
突然後ろから声をかけられ、思わず背中がビクッとなる。振り向くと、穏やかに微笑んだ恋人が立っていた。目は全く笑っていないが。
「ねぇ、どうしてかな?どうしてわたしにコソコソ隠れてトイレに行こうとしたの?一緒に行ってあげるっていつも言ってるのに」
現在、絶賛監禁中の俺は彼女に食事から排泄まで徹底的に管理されている。彼女は俺のやることなす事すべてに自分が関わらないと気が済まないタチなのだ(彼女自身が外出中を除く)。
「いや、えっと…すぐにでもトイレに行きたかったからさ。マジで漏れそうだったんだ」
咄嗟にそんな言葉が自分の口から出てくる。あながち嘘ではない。まぁバレないかな?という希望的観測があったのもまた事実だが。
「ふーん…まぁたしかに部屋でお漏らししたら、人として恥ずかしいよね。わたしはリッくんがお漏らししても全然気にしないけど。汚れたところのお掃除だってちゃんとするし」
改めて言おう。俺の彼女は異常者だ。俗に言うヤンデレというやつである。俺の世話のためなら汚物の掃除すら厭わないなんて、ヤンデレ以外の何であるというのか。
「とりあえずトイレはもう済ませたんだよね?じゃあ、わたしを伴わなかった罰として、わたしにチューすること。いい?」
良くないに決まってる。が…
「わ、わかった…じゃあいくよ…」
俺に拒否権などあろうはずがなかった。彼女の目はドス黒く濁っている。あれにどう逆らえと言うのか。覚悟を決めて、俺は彼女の元に近づいて、唇を重ねた。
「ンッ…好きィ…リッくん、大好き!」
明らかに発情した様子の彼女に壁際まで追い込まれ、今度は彼女の方から唇を奪われる。ひたすら舌を絡められ、彼女の舌が俺の口の中で縦横無尽に暴れ回っていた。率直に言って呼吸ができない。
「ハァッ、ハァッ…ねぇ、リッくん?あたし、これだけじゃ全然足りない…もっとシようよぉ♡」
これである。彼女の言いつけを守らないと罰としてキスなどエッチぃ行為をさせられ、それによって発情した彼女に襲われるというルーティンが我が家では出来上がっていた。
「あー、えっと…い、今はそういう気分じゃないかなって…あはは…」
「え?なんで?ねぇ、なんで?気分じゃないって…リッくん、わたしのこと好きなんだよね?なのにどうしてわたしを拒否するの?ねぇ、教えてよ」
やんわり断ろうとしたが、悪手だったらしい。彼女のメンヘラスイッチを間違って全力で押してしまったようだ。心なしか、瞳がさっきよりもドス黒く濁っているような…
「リッくん、全然わたしのこと理解してくれてない…わたしがどれだけリッくんのこと愛してるかってこと、もっとちゃんと分からせなきゃダメだよね?うん、分からせなきゃ…それが彼女としてのわたしの使命…」
彼女の負のオーラが目に見えて大きくなった(ように見える)。俺は思わず天井を仰ぐ。こうなった彼女には手の施しようがない。
どんな言葉をかけても無意味。暴力的な手段は逆に火に油を注ぐようなもの。俺が身をもって体感したことだ。
弱者は強者に踏み躙られるだけという世界の理を、俺はこの数ヶ月間で嫌というほど理解してしまったのだった…
「リッくん…わたし、一生リッくんのこと愛し続けるから…ずーっと一緒だよ?」
彼女のドス黒い瞳に吸い込まれて返事ができない俺に、彼女はひたすら愛の言葉を囁き続けるのだった…
クオリティ低めなのは許していただけたらと思います(震え声